第285話 出発前の冒険者ギルドにて
「ミスト様、お待ちしておりました」
「えっ、ジゼルさん?!」
サーカス午前の部を見終え、
お昼ご飯を済ませ冒険者ギルドへ集合というので、
メイドエルフ三人と一緒に来てみたらお久しぶりのドワーフ準愛人さんだった。
「ポークレットファミリー再始動、残念ながら私は一緒に旅立つ事はできません」
「うん、なんでも依頼殺到らしいね」
「これもミスト様のおかげです、ありがとうございます」
いや僕は何もしていない、あいかわらず。
「ジゼルさんの実力ですよ」
「いえ、やはり『勇者ミスト=ポークレット伝説の剣』の宣伝効果は抜群で」
「あーあーはいはい、僕なんかの名前で良ければいくらでも使って下さい」
「ではこちらを」
アイテム袋からやたら目立つ剣を渡される。
「なにこの七色の剣!」
かといって合同教会の女神像みたいな魔力はまったく感じない。
「見た目重視、ポーター専用剣『レインボーソード』ですっ!」
そんな鼻息荒くしなくても。
「ええっと威力は」
「スライムくらいなら、ぺしぺしできますっ!」
「そうなんだ、通りで軽いと思った」
これどっちかというと展示品というか、観賞用だな。
「必ず持ち帰って下さいねっ!」
「う、うん、わかった、わかりました」
でもこんなの例えば鍛冶屋に展示しても、
わかる人にはわかって逆に悪く見られるんじゃ。
「ちなみにミスト様がお持ち帰りになったら、領主謁見の間に飾っていただけるそうです」
「あっ(察し)、ありがとう」
ならいいや、
僕がどういう人間か底が知れるし。
っていいのか?! いいやもう。
「ソフィー様たちは合同教会でまだ少し時間がかかるそうです」
「あーサーカスついでの偉い方々を女神像まで入れてるのかな」
「それとベルベット様が宣伝をされたそうですので」
あれが効いたか。
「じゃあ、もう今からメイドエルフを冒険者登録してもいいのかな」
「そういう事かと、では私は鍛冶屋へ戻りますね」
「うん、ありがとう、また」「素材を沢山持ち帰って下さいね!」
あーやっぱり僕本人より素材か、
かと思ったら背伸びして僕の耳にキスして去って行った、
なぜ耳。
「あー悔しいです」
「わかってやっているのでしょうね」
「あのドワーフに挑発されました」
ざわついでいるメイドエルフ、
あいかわらず背が低いのから順に喋っている。
「どういうこと?」
「エルフの世界では耳にキスするのが最愛のキスです」
「昨夜で気が付きませんでしたか?」
「それをドワーフにされてしまいました、今夜は枕を涙で濡らします」
そんな大袈裟な!
「ではドワーフも耳が?」
「いえ、確かドワーフ最愛のキスは腕か足ですね」
「しかも筋肉がついている場所です」
「もしくは腕か足、全体を」
あーーー……胸に心当たりが、いや腕や足に心当たりが、あるっ!
「とっ、とにかく手続きをしよう」
そして冒険者ギルドの受付で、
ポークレットファミリーの新メンバー追加を行った、
新しい冒険者カードはみんな個人はFクラスからだ。
「あっ、ギルマス!」
「ミスト様、いよいよ行かれるのですね」
「うん、日時が指定されてるらしいからね」
ここミストシティの冒険者ギルドマスター、
学院時代のリア先生の、ってその説明はもういいか、
とにかく年上お姉さんのプリマさんがわざわざ来てくれた。
「次、大きな成果を上げれば晴れてS級パーティーです!」
「えっ、もうなってるんじゃないの?」
「個人ですとそうですが、パーティーとして」
そういえばS級パーティーって、
世界的な活躍をして複数の国の冒険者ギルド総長が推薦しないとなれないんだっけか、
それが三か国必要だとしたら、アルドライドとナスタと、あとメランってことになるのかな。
「わかりました、それでアンデッドダンジョンって、大変そうですよね」
「はい、詳しくはメランの冒険者ギルドで」
「そうだった、そうだった」
僕の手を握ってくれるプリマさん。
「皆さん無事に帰ってきて下さいね」
「は、はいっ」
「ふふ、ふふふふふ」
(僕の手を頬に持って行って、スリスリしてるう!!)
きっとリア先生を触っている手だからだと思う、
だめ貴族だもの。 ミスト
「行きましょう」
「さあ行きましょう」
「もうこんな所に用はありません」
(メイドエルフに、嫉妬されてるううううう?!)
とまあこんな感じで冒険者ギルドを出るが、
あいかわらず僕の偽物なかっこいい像に申し訳ない気分になる。
「領主様!」
「あ、ジンくん、ロックくん!」
弟分冒険者パーティー、
マジカルリスタートの魔法使いだ、
元は魔法研究所の重要所員だったはずだけど、すっかり冒険者の顔だな。
「残りのメンバーは?」
「僧侶ふたりは転移テント設置にあちこっち、前衛ふたりは休みです」
前衛とは元山賊で元奴隷のふたり、
解放されても仲良さそうで良かった。
(普通に儲かるだろうからね、このパーティーだと)
「それじゃあ今から、ふたりで狩りに?」
「いえ、依頼の確認です、チュニビからアルドライドの国境を出た先、
隣国のダンジョンがいくつか危なくなってるらしくって」
「そっちもかあ、なんだか世界中で大変なんだね」
スタンピードが世界規模で起きたら……アルドライドは他人事じゃない。
「あ、そういえばパーティーに女性を入れる気は?」
「どなたか紹介して下さるのですか?」
「いやその、女性っ気ないなって思って」
そういやインチキストーンみたいなパーティーから来た三十代聖女、
もう引退して落ち着きたいって言ってたんだっけ、無理に掘り起こすのは可哀想か。
「いえ、もう恋人は居ますが」
「えっ」
「というかこのパーティー、全員彼女持ちです」
「ええーっ」
「今度、ご紹介しましょうか」
余計なお世話だった
だめ貴族だもの。 ミスト(二回目)
「ごめん、相手は冒険者とは限らないからね」
「みんな教会の女性だったりします」
「これもフォレチトンに教会が集まっているおかげです、領主様のおかげで」
うん、僕のおかげって事にしてしまえ、もう!




