第273話 リア先生とあらためて語り合う
遅くなった夜、日付が変わる前に寝室へ戻ると、
リア先生が先回りしておりすっかり『出来上がった』姿で待っていた。
(うっわ、色っぽいを通り越して妖艶だぁ)
ワインを呑んで待っていたみたいでそこは叔母譲り、
アメリア先生譲りか、僕を見てなんていうか『オンナの表情』になっている。
「さっきの、騎士団員のお婆さんはもう大丈夫なんですか?」
「ああ、それは良いのだがソフィーの姉とトラブルがあったようだな」
「そのあたりは明日にでも何か動くでしょう、今日はとにかく、今夜はもう……」
リア先生に甘える僕、
丁寧に服を脱がせてもらう。
「ミストも一口どうだ」
「あっはい、いただきます」
口当たりの良いワインだ、
リア先生と間接キスになるなこれ、
よく見るとグラスに口紅がついているし。
「さてミスト、私はすっかりその気になっている」
「はい、今日は疲れたからこのまま一緒に、並んで眠りましょうとか言ったら」
「そんなに疲れているのであれば私は私のやりたいように、一方的にするが」
うん、それはそれで、怖い。
「安心して下さい、リア先生に満足してもらうために頑張ります」
「それは嬉しいのだが、その、私は改めて、誕生日の今日、確認がしたい」
互いに向かい合ったままベッドで横になる、
じーっと見つめてくるリア先生、真面目な表情だ。
「ええっとリア先生?」
「私で……ミスト、本当に私で、良いのか」
ここまできて何を今更だけれども、
誕生日の今夜だからこそ、きっちりしたいのだろう。
「僕が侯爵になれたのはリア先生のおかげですし、
女性としても、これほど素敵な大人の女性はそうそう居ませんよ」
「二十四歳でもか」
「これからじゃないですか、そういう心配をして良いのはアメリア先生ですよ」
でもあれだけの美熟女なら五十直前まで美味しいと思う。
(って違うお嫁さんの話をするのは機嫌を損ねるんだけ?)
「……ソフィーの話していたミストへのハーレム、その役割、
ベルルは妹もしくは従妹、私は姉もしくは従姉と説明を受けたが、
私はそのような役割を、きちんとできているのであろうか」
「リア先生はリア先生です、僕の学院での、剣術の先生です、
その思い出の先生が学院教師を捨てて僕の元へ嫁いでくれて、嬉しいです」
入り込んで甘える僕……
い、今はまだ、純粋に甘えているだけだからっ!!
「そうか、こんな私で、良かったのか」
「リア先生には感謝しかありません、リア先生って、
ソフィーさんやベルルちゃんの先生でもあるんですよね?
そういう繋がりもちゃんとありますし……あっ、二人の学院時代の話、聞きたいな」
僕の知らないソフィーさんやベルルちゃんが聞けるかも。
「わかった、それはわかったが……私は女としては相当汚れている」
「辛かったんですよね学院時代、嫌いな親が勝手に決めた婚約者としか接触が許されず、
でも学院時代の恋愛とか、そういう青春はしたい、追い詰められての行動でしょう、察します」
僕なんかは同じクラスに女性すら居なかったけれども、
だからってアレグやメイソンとそういう事をする気なんてならなかったな、
当然、向こうもお断りだっただろうけれども!!
「卒業後、騎士団長と」
「過去の男はどうでも良いです、今は僕だけを愛してくれているなら……
それにハーレムとはいえ、僕だって他の女性やメイドと、アレですし」
まあもちろん、だからって僕が他の奥さんと愛し合っているからと、
その間にリア先生が他の男とどうにかやって良い訳じゃないけれども。
(そう考えると、ハーレムって女性に申し訳ないな)
侯爵になって今更ハーレムの罪深さを実感するが、
僕は四人全員をはべらせてどうこうする気にはならない。
「全てをわかったうえで受け入れてくれるミストには感謝だな」
「僕が底辺貴族過ぎて、リア先生程の女性を受け入れないという選択肢が無いだけです」
「……私ももはやミストしか選択肢は無い、もし私から条件を出し始めると、
きりがないうえに相手が誰ひとり居なくなるからな、相手がミストのみとなってむしろ、嬉しい」
ぎゅうううっと抱きしめられる、
この感覚が心地よく、落ち着く感じ……。
「捨てませんが、もし僕以外で誰かと結婚しろって言われたらどうするんですか」
「そうだな、その時はミストをアシストできる相手と……例えばボリネー先輩とか」
「あっ、あの先輩もリア先生の婚約者になったんでしたっけ、買ったとはいえ」
「あの先輩の事だ、フォレチトンに、ミストに近づいて商売をするきっかけのために買ったのだろう」
「本気じゃなかったんですかあの肉専用騎」「事情によってはあわよくば、はあったかもな」
でも最終的には決闘で負けたんだっけ、
今やフォレチトンの商業面を全て任せる存在になったばかりだ、
あの変な公爵の旅行業者についても次に会ったら相談しなきゃな。
「私はミストの第三夫人として一生愛すると腹を決めた」
「このお腹ですか、ぷにぷに」
「……そのような遊びをするなら後を覚悟するんだな」
あーさすがに女性にこれはまずかったかー!
「僕だってリア先生を一生愛しますよ」
「嬉しい……正直、結婚式が待ち遠しいが、恐怖もある」
「な、なんですかそれは、何が恐いんですか」
「それは……いや、まだ言えない、直前になったら言おう」
「早く言った方が楽になるのでは」
ちゅっ、と僕のおでこにキスしてくれる。
「結婚式というのは身内が来るはずだ」
「あーリア先生の両親が」
うん、リア先生を事実上虐待していたという。
「それだけではない、いや、それについてはまた」
「誰が来たってリア先生は僕のお嫁さんです、僕が護りますよ」
「本当か」
「そういう時に護らなくて誰が夫ですか」
「う、うっ、嬉しい……」
あ、身体が震えている、
そんなに両親が怖いのか嫌いなのか会いたくないのか……
「リア先生、もしリア先生を幸せにできるのが僕だけだったら、
僕は僕なりに、僕の全力で、リア先生を幸せにしますよ」
「……ならば約束して欲しい、何があっても、もしソフィーやベルルが
ミストを愛する『本当の、一番の、真実の理由』を聞いても、変わらずミストで居てくれる、と」
ここでそれが関係してくるのか。
まだよくわからないけれども!
「リア先生が僕を愛する理由は、ソフィーさんベルルちゃんと同じにしたんですよね?」
「そうだ、なかなか悪いものでは無いぞ」
もしソフィーさんとベルルちゃんが魔王ならリア先生も魔王もしくはその眷属に、
ソフィーさんベルルちゃんが淫魔だったらリア先生も淫魔かその仲間、仲魔に……??
「ひょっとして理由を同じにするとき、覚悟が必要でしたか?」
「もちろん、相当な覚悟だったぞ」
「そうですか……うん、すごい覚悟です」
でもリア先生としては
『なんだそんなことか』
で済ませて欲しいんだよな、
これはこれで僕にも物凄い覚悟が必要だ。
「ミスト」
「はいリア先生」
「そろそろ日付けが変わる、私が誕生日の間に……」
唇を重ねてくれるリア先生、
僕は全てを受け入れるように……愛し合った。
(覚悟、か)
愛し合うといっても気が付いたらすぐ受け身に
だめ貴族だもの。 ミスト
(これが受け入れる覚悟ああああああ!!!)




