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だめ貴族だもの。~だめダメ貴族の尻敷かれハーレム~  作者: 風祭 憲悟@元放送作家
第七章 他国を平和にすると侯爵が付いてくるとかなんとか編
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第272話 過ぎる力に群がる人々

 ダンスの汗をお風呂で流し終え、

 湯冷めの心配のない保温の服を着て合同教会へ。


「うっわ、ほんとに凄い列だね」

「明日夕方まで誰でも最上級の治療魔法を受けられるようなものですから」

「モラベスクから転移テントで来られた方も多いようですわ」


 かろうじて息をしている感じのお婆さんを背負った女性騎士が並んでる。


「ヒスチェではないか」

「リア様! その、あと何時間待ちでしょうか」

「急を要する者の列は別だ、ついてこい」


 一足先に連れて行ってしまった、

 これだと今から並ぶと夜中どころか明け方になりそうだ。


「これ王都からも結構来てるのでは」

「元々フォレチトン、ミストシティへ引っ越された方は、

 モラベスクでさえ完治が無理な病人を抱えた方が多いですから」

「ですわ、今日このようになる日を待ちわびていた方々ですわ」


 そういった人たちの期待を一身に背負っていたのか、

 ソフィーさんベルルちゃんたちは。


「えーおっほん、聖女ソフィーに聖女ベルルだね?」


 あーなんか偉そうな人、

 よく見ると公爵図鑑に顔があったような……

 あの小冊子持ってきてないや、ここは僕が名乗る事で確認しよう。


「はじめまして、合同教会を運営しております、フォレチトン領主、

 ミスト=ポークレット侯爵と申します、はるばるようこそいらっしゃいました」


 僕を一瞥するやすぐさまソフィーさんの正面へ移動する、

 ええっと僕は侯爵で相手が公爵なら僕は何も言えないのかな。


「王都のパーティーで話を聞いてすぐに飛んできた、

 何やら『誰でも欠損以外は完璧に治す、治療魔法を放つ女神像』とやらを公開中だそうだな」


 もうそんな噂になっているのか。


「ミストくん、行きましょう」

「ミスト様、先を急ぎますわ」


 公爵らしき偉ぶったおっさんをスルーして進む僕ら、

 後からついてくるキリィさんモリィさんもガード気味に歩く。


「ま、待たれよ、良い話だ、参拝客、観覧客をさばくのに苦労するだろう、

 全国から、いや世界中からの参詣客を集めるのも噂だけでは事足りぬであろう、

 この私に任せれば、転移テントの使えない者たちをツアーで……」


 それをまさしく無視するかのようなソフィーさん。


「ミストくん、侯爵になるとミストくんを利用してお金儲けを企む人もいっぱい来ます、

 ご注意して下さいね、それがたとえ公爵家であったとしても」

「ですわ、わたくしの大お婆様、アビゲイル聖司教の一般公開集会の時も、

 参加料自由にもかかわらず、勝手にツアーを組んで遠方の方々からお金を巻き上げた公爵も居たようですわ」


 なんだかばつが悪そうにしている所を見ると、

 それがこの公爵か、ほぼ無料のものを移動費で稼ぐっていう。


(結構な中抜きをしていそうだ)


 教会の入口が見えてきた、

 本当に急患用とそうでない人の入口が分けてある、

 急患用はちゃんと本当にそうか神官がチェックしているみたいだ。


「待たれい待たれい、我がニックポルクス公爵家はモラベスクの教会にこれまで、いくらお布施をしていると……」


 僕らが入るとうるさかった公爵は警備に止められる、

 うん、僕を相手にしなかった時点で、ソフィーさんベルルちゃんは大憤怒だ。


「あら、やっと来たわね」


 騒がしく参拝客が流れている中、

 ひとり呑気に休憩の部屋で濃そうな紅茶を飲んでいた偽ソフィーさん、

 お風呂で聞いた例の、ソフィーさんそっくりな姉、スフィアだ。


「ミスト=ポークレット侯爵、就任おめでとう、お久しぶりね」

「は、はい、まあ」


 あんな話を聞いた後だからどうしても、そういう目で見てしまう。


「あら、あまり歓迎してくれないのね」


 僕が返事をしようとするも、

 遮るかのようにソフィーさんが恐い笑顔で尋ねる。


「こちらへは、いかようなご用件で?」

「ふふ、決まっているでしょう、可愛い妹の力になりにきたのよ」

「力ならアンジ姉さんで十分足りていますが」

「んもう、こういう時は私も頼りなさい? さ、結界を張り直して」

「どうしてですか? 張り直さないといけない理由はありませんが」


 ベルルちゃんを見るとなんていうか、

 睨んでいるとか恨んでいるとかいうのを通り越した目をしている、

 醒めているというか冷たいというか、なんだろうこれ、虚無にも近い。


(関わりたくないのか感情を抑えているのか、あきれてるを通り超しているのか……)


「私が結界内に入れるようによ、聖教会の女が入れてなぜ私が入れないの?」


 あ、聖教会の話になったとたんベルルちゃんが前に出た!


「わたくしのビアンカお姉様が何ですの?」

「あらルルーシャ、大教会のお仲間としてお願い、私も」

「わたくし、聖教会のベルル=ヴェルカークですわ」


 僕の顔を見るスフィア。


「ねえ義弟クン、ソフィーに言ってあげてよ」

「要はスフィアさんは御前立の奥、最大級の治癒魔法がかかるエリアに出入りしたいんですよね?」

「そうよ、そうすればソフィーやアンジ姉さんの負担も減らせられるわ」


 ……駄目だ、この人を見てるとムカムカする。


「あら義弟クン、ソフィーから何か聞いた? 私は悪い事何もしていないわ誤解よ、

 ソフィーを殺そうとしたって疑惑をかけられた、ただそれだけ、あ、あとルルーシャの事?

 いまだにあの事を根に持っているのかしら? 私だって騙されたのよ、いわば被害者……」

「出て行って下さい」


 わかりやすく歓迎しない動作で外へ出るように促す。


「……それはモラベスクの大教会や、ミンスラー家の半分を敵に回すという事かしら侯爵」

「ここにおいては僕が領主であり、合同教会の持ち主です」

「何を偉そうに、これはソフィーとルルーシャが造ったものでしょ? 大教会のものよ」

「で・て・いっ・て、下さい!」

「ならば大教会の聖女として、ミンスラー家としての命令よ、私をこの教会の大司教に……」


 パッシーーーン!!

 響き渡る頬を叩く音!

 打たれたのはスフィア、そして打ったのは……そう、僕だ。


(だってソフィーさんやベルルちゃんが打ちそうだったんだもん!)


「な……何を、大教会の聖女に平手打ちなんて不敬よ!」

「モラベスクならそうかも知れませんが、ここはフォレチトンです、不敬は貴女の方です」

「大教会を敵に回す気? 大教会のトップは国王陛下よ、反逆罪に問われるわよ」


 何をわけのわからないことを。


「キリィさんモリィさん、この女を地下牢へ」

「「はっ」」

「ちょ、ちょっと離しなさいっ、私にこんな事して只で済むと……きいいいいいいいい!!!」


 うん、うるさいのが外へ行った。


「さあソフィーさんベルルちゃん、早く奥へ」

「ミストくん」「ミスト様」


 あーさすがに怒られるかな、

 お仕置とかそういうレベルじゃなく。


「……嬉しいです」

「素敵ですわあ!」

「え、そ、そう?!」


 褒められちった。


「ミストくんも行ってください」

「ですわ、ミスト様もベルベットと交代を」

「あっはい」


 御前立の隣で重病人を奥へ出し入れする元盲目聖女ふたりに、

 ソフィーさんベルルちゃんが何か話し込んでる、さっきの事かな。


(ええっとベルベットちゃんは……こっちか)


 可愛らしい声のする方へ行くと……


「さあ、さんぱいがおわった方はお代を、おふせをお好きながく、こちらへー!」

「ベ、ベルベットちゃん?!」

「あーりょーしゅさまー! こうたーい」


 こうして僕はお布施回収係に回った

  だめ貴族だもの。 ミスト


「ぢゃあベルベットは、お店の方へ行きまああっす!」


(だーかーらー、お店って、何だろう……??)

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