第264話 パーティー前、段々からくりがわかってきた
共同教会からもすぐ近くの我が城へ帰ってきた。
「ほら、時間がないざーます!」
早速、今日からメイド教育係のノーリさんがてきぱき働いている、
主に指示っぽいがそれも的確だ、ひとりのメカクレメイドがあたふたしている。
「ほらサリー! 肉を掴むトングと野菜を掴むトングは完全に別の場所にするざます!」
「は、はいいいいぃ」
「パンは焼きたての物を置く場所と、冷めている物を置く場所で分けるざーます!」
あーあ、領主代行が顎で使われている、
自ら望んで臨時メイドやってるから仕方がないとはいえ。
「ミランダも、花の配置はもっと色のバランスを考えるざます、上手は紫! 良いざーますね?」
「か、かしこまりましたっ!」
メイド長まで……あ、エスリンちゃんが花瓶を磨かされている!
よっぽど末端のメイドと思われているんだろうけど、
最後に第四夫人でしたってネタばらしした時のノーリさんの顔が恐くて見られない。
(あ、ノーリさんがつかつかとエスリンちゃんの方へ!)
ここで『磨きが甘い!』とかどやしてるの見たら、僕が我慢できないかも……
「エスリンさん、花瓶と言うのは花の一部であり、花を反射で映す事も考えられて作られております、
心を込めて磨く事は、花の華やかさに磨きをかける事にもなりますゆえ、
第四夫人になってもメイドにその事を教えていただきたいざーます、よろしいざますね?」「はいっ、ノーリ様」
ばれてるううううううううう!!!
(お城から来たらそりゃそうか)
まあ、あくまで結婚式までメイドでいたいって希望を叶えてはいるものの、
花嫁修業するなとは言ってないからね、そういう意味でもノーリさんは適した人なんだろう。
(にしても言葉遣いとか、あたりのやわらかさが他のメイドとまるで違う)
と見ていたらキリィさんがやってきた。
「御主人様、執務室まで」
「はいはい」
お城らしく領主謁見の間もあるにはあるが、
広いのにあそこ事実上、椅子だけで退屈なので、
人が来たら基本的に執務室まで来てもらっている。
(さすがに公爵になったらそうも言ってられないが、今は、ね)
勝手知ったる僕の椅子、
王様椅子と違いゆっくりできるのが良い、
今朝来た肉重の塔ことボリネー先輩の寄贈らしく褒めておいた。
「こちらを」
「あー今日のパーティーのプログラム」
「この順番を必ず守って下さい、もちろんソフィー様ベルル様リア様がフォロー致しますが」
おそらくフォローどころか進行全てやってくれるだろう、
もう前のような大失態はできないからね、
あの時はぎりぎり伯爵だったからまだ『不勉強』で済んだっぽいし。
(それでも後始末は大変だったけれども!)
「では時間まで、しっかり覚えて下さい」
「あっ、はい」
うー、さすが侯爵、来客が多い!
ミストシティがそれだけしっかりした都市ってことか、
人口何万人だっけ、十万人超えるのも時間の問題とかなんとか。
(フォレチトンの領都、ミストシティかぁ)
背を深くもたれて天井を見ながら考える、
あの巨大女神像で大概の病気が治るとなれば、
拝観目的に凄い沢山の人が来るだろう。
「凄い魔力だったなぁ~……」
思わずつぶやいてしまう程に。
でもあれって、魔力があれほどまでに大きくなったのって、
愛情の深さ、大きさによるものらしい、それってひょっとして……
(あの像を作るために、王位継承上位者の命を救うために、僕を愛した?!)
より大きな治癒魔法を完成させるためには『愛』が必要、
その媒体に最も適したのが、魔力がほとんどなかった僕だとしたら?
じゃあ例の、女神マルシー様の遺跡とその効果も初めから知っていて?!
(さらに、魔法の完成には僕から聖女への愛も必要だったとしたら……!!)
全て仕組まれていたとしたら、
からくりが見えて来た事になってしまう。
「沢山の人を救うため、この国を救うため、さらには世界を平和にするため、僕を愛する、と」
自分で言ってなさけないやら、わけがわからないやら。
でも以前、そういった事を否定していなかったっけ?
単なる場所としか考えてない訳じゃないとか、ちゃんと愛する理由があるとか。
(……そうか、ソフィーさんベルルちゃんは、みんながみんな大好きなんだ!)
あの卒業式直後の告白イベント、
あそこに居てソフィーさんに告白した全員の事が同じくらい好きで、
でも全員の想いに応えられるのに一番適しているのが僕だったとしたら?!
「みんなを愛するために、僕を愛する、って感じか」
代表して僕を愛するというよりも、
僕を愛する事で世界を平和にしてみんなを愛するため、
だとしたら辻褄が合うような気がしないでもない。
(だとしたら、どれだけ博愛主義なんだ……)
でも、平和を願う真の聖女ってそういうものなのかも?
これなら僕を愛する理由は納得できる、
僕に対する愛と同じだけ、他の男性、いや他の人、全てを愛しているとしたら。
「でもそれだと、結婚式はどうなるんだろう」
千人くらいの男が『ちょっと待ったーーー!!!』って来て、
全員がソフィーさんベルルちゃんにプロポーズして、
それを『全て受け入れます、皆さんを愛していますから』なんて落ちになったら……
(究極の寝取られだな)
うん、これだったらリア先生がいつか言っていた、
聖女ふたりが僕を愛する『真の理由』を知ったときの、
『なんだそんな事か、と鼻で笑うだけかもしれないし、血の涙を流し発狂するかもしれない』
に、当てはまる気がする。
(あ、でもベルルちゃん、いつだったか僕以外に抱かれたくないみたいなこと言ってた気が)
でも、僕っていうか、全ての男性を同じ『人』であると解釈していたら?
極端に言えば僕に抱かれるのも誰に抱かれるのも、それこそボリネー先輩に抱かれるのも同一視しているとか。
「さすがにそれは無理があるか」
じゃあ何だろう、
みんながみんな好きだけれど代表して僕ってこと?!
だとしたらその理由は、僕が魔力を増やすのに最も適していたから?!
(その辺も一度、否定されたような気が、いや厳密には違うか?!)
厳密に違うといえば、
ソフィーさんとベルルちゃんが実は女神や天使だって事は明確に否定された、
でも女神マルシー様はベルルちゃんが「悪魔になる」って危険性を指摘してくれた。
「すなわち、人じゃない、って可能性が強いのか」
あえて口に出して言ってみた、
もし誰かが盗み聞きしてたら、と思って。
だから何だって理由も明確に言えないけれども!
(女神でも天使でも人でも悪魔でもない、という事はやはり)
以前も頭をよぎった、ふたりの正体が『魔王』という発想、
魔王が愛せる人間は魔力を合わせるのに適した者、唯一の相手が僕だったとしたら?
前に思ったのは一番力の無い貴族しか愛する事を神に許されなかったら、だったっけ。
(どっちにしても、僕しか駄目って理由にはなるのか)
僕の中で彼女たちの、聖女たちのからくりが解けてきた気がする、
単なる妄想でした、でもいいから、次の返答はこれで行こう。
コン、コン
「あっはい、どうぞ」
入って来たのは着飾った少女だ。
「アンタがミスト=ポークレット?」
「はい、そうですが」
「お兄様の言った通り、貧相な準男爵ねえ」
えっ?!
「さっさと辺境伯様の所へ案内しなさいっ!」
「だ、誰?!」
「アンタに名乗るワケ無いじゃない、ウチは男爵家よ、ダ・ン・シャ・ク!」
よく顔を見ると誰かの面影みたいなものが……?!
「えっと、どちら様?」
すると机をバシッと叩いたうえ、
僕の髪の毛を掴んできた!
「ハプスプランカ男爵家の令嬢、カルモ=ハプスプランカよ!」
「い、いだいいだいいだい!!」
「さあ、とっととこのお城の主、辺境伯様か奥様のソフィー様の所へ案内なさいっ!!」
扉から足音も立てずモリィさんが入ってきて、
カルモとかいう少女を荒々しく掴んで剥がす!
あ、僕の髪がぶちぶちと! い、いっでえ……
「御主人様、今すぐ始末してもよろしいでしょうか?」
「始末って! ていうかそれ誰なの!!」
「確か、ご主人様の御友人の、妹君かと」
友達の妹……ああ!!
「いっつも僕に学院で自慢していた、メイソンの妹か!」
「そうよ、このダメ準男爵! 早く降ろさせなさい!!」
「あーー……確かにメイソンの妹って感じの顔してるね」「フンッ!」
靴を飛ばされ僕の頭に当たった
だめ貴族だもの。 ミスト
「とりあえずメイソンに返してあげて」
「いえ、まずは地下牢へ」
「はなしなさいよおおおおおお!!!」
(大変だ、メイソンを探さなきゃ)




