第263話 ターニング・ポイント
治った少年ふたりは眩しそう、
元盲目聖女で僕の義姉になるふたりがさっさと奥へ連れて行く。
(名前覚えてるよ! ソフィーさんの姉がアンジさんで、ベルルちゃんの姉がビアンカさん、だよね?)
見ると『えっ、こんなに居たんだ』って感じの大教会聖教会の僧侶が確認している、
身体の様子はどうか……うん、聖女ふたりが身体に手を当てて頷いている、治ったみたいだ。
「ミストくん、初めて言いますが、今日のこの治療は、我々のターニングポイントでした」
「ですわ、この治療の結果がフォレチトンの、さらにはこの国の命運を握っていましたわ」
「えっ、そんなに?!」
こういえば片方の男の子、国王陛下が直々にお見舞いするくらいだから、ひょっとして……
「その表情は気付かれたようですね」
「ですわ、あの少年は王位継承権が相当上、一桁の前半ですわ」
「い、一番じゃないよね?! そ、それでも凄く大切なお子さんだったんだ」
失敗したら首を刎ねられるレベルの。
「それじゃあ、もうひとり、ナリューくんも実は……?!」
「彼は普通の重病の孤児ですね」
「いざという時はあの子を使う予定でしたが、回避できて安心ですわ」
使う……使う?!
「つまり、移植を」
「そうですね、去年、『年内に双方の治療が見込み無い場合には』と決まっていました」
「今日、この女神像の完成による魔法で完治の見込みがなければ、ナリューくんの身体から」
そうか、このくらいの小さな子供だと、
移植するにも敵兵からって訳にはいかないからね。
(いや待てよ、ナリューくんが完治して、公爵家の跡継ぎが治らなかったら、その時は……?!)
「あの、ちょっと疑問が」
「それより、この眩しいのは一般公開には不向きですね」
「でもすでに、外は長蛇の列ですわ」
ああそうか、これこのまま見せられないや。
「ミストくん、今回は何も考えなくて構いませんから」
「ベルベット、アンジお義姉様とビアンカお姉様をお呼びになって」
「はぁい、しっしょー!」
師匠が失笑になってら。
(にしても七色に光り輝くって、魔法防御で見えてても目に辛い)
この大きさと光の強さだからね、
全体にコーティングか何かをするのだろうか?
「よんできましたぁー」
僕を中心に左右にソフィーさんベルルちゃんでいつものビッグバンメテオの構え、
さらにソフィーさんの背中にアンジさん、ベルルちゃんの背中にビアンカさんが両手を添えた、
そして僕の背後には……
「りょーしゅさまー」
ベルベットちゃんが抱きついてきた、意外と可愛いなぁ。
「「サンクスチュアリバリア!!」」
あー、クスタ城を真っ二つにした時の、
下ごしらえに使った魔法だ、でも見えない壁を感じるくらいで眩しいまま。
「では予備を」「はいですわ」
ソフィーさんに言われてベルルちゃんが出したのは、
七色に光り輝き続ける女神像と同じ大きさの、輝く前と同じ物だ。
「もし魔法付与が失敗して崩壊とかした時の、予備でした」
「これを前に立たせますわ」
見えないバリアが張られている部分にその女神像を設置している、
このバリア、目には見えないけど僕でも魔力で感じる事はできるんだよなぁ。
「あとはバリアを可視化します」
そう言うとソフィーさんベルルちゃんが手をかざし、
見えなかったバリアが白く濁った壁になり、光は予備の女神像だけを通す。
「あ、これなら見える、のかな?」
「そうですね、これは『御前立』という文化です」
「神聖なる、信仰する像を守るために複製を用意して前に立たせるのですわ」
「それで本体は奥に隠すっていう」
「風化による劣化防止、盗難防止、さらに本体の価値を高めるための方法です」
今回に関しては本体が眩しすぎて見られないから、
複製に光を通す事で弱くして、見られるようにするためか。
「ではテストを、どなたかいらして下さい、何人か」
ソフィーさんの呼びかけで大教会聖教会の僧侶が何人か、
怪我してる人もいるな、火傷のあとがついている、ってあれ?
「お、おお、傷が消えて行く!!」
凄いな、御前立から通した光でも高い治療効果が。
「ではまずはそこの貴方から」
ひとりの僧侶を連れて御前立の横から白く濁った壁へ、
あ、ふたりまとめてするっと通り抜けた!
つまりソフィーさんと一緒なら入れるのか。
「次は貴方ですわ」
ベルルちゃんの番だ、
こうして繰り返し、僕の番になった。
「では貴女で」「はいっ」
入ってきた時は手首に切り傷があった女性だ、
理由は聞きたくない、もう跡形もなく治っているし。
(入れるかな?)
手を繋いで白濁した壁に入ると、
うっわまっぶしい、もうさっきの防御魔法が切れはじめているみたいだ、
背を向けて女性を見るとこっちもすっごい眩しそう、
一緒に入れた事が確認できたので一緒に出る。
「次はベルベットですわ」「はぁい、ししししょーーー!!!!」
(なぜ『し』が多い!)
こうして無事、魔法の壁を作った時に繋がっている六人は、
誰かを連れて壁の向こうへ入れる事がわかった。
「ミストくん、これで特に酷い重病の人は中で治せるはずです」
「ですわ、入ってしまえば欠損以外は治るはずですわ」
「この魔力、治癒力だと欠損すらニョキニョに生えてきそう」
「ししょー、そろそろ時間ですー」
あー、これから一般公開か、
結局、見せるのは御前立だけど、
むしろ見世物としては適した形になった。
「ミストくん、これで私たちの負担も減ります」
「ですわ、治療もこの女神像に連れて来ればそれで治る方が多いはずですわ」
「うん、本当にこのフォレチトンの、みんなにとってのターニングポイントだったね」
「ベルベットは、お店をてつだいまぁーす!」
(えっ、お店?!)
「ミストくんはパーティーの準備へ」
「私達も、オープニングが済んだら追って行きますわ」
「あっはい、よろしくお願いします」
帰り、背中がやたら冷たいと思ったら
ベルベットちゃんのヨダレでべっとりだった
だめ貴族だもの。 ミスト
(あんのメスガキがああああああああ!!!)




