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54話 陸亀守護獣の指輪

 パチン! という音がダンジョン内に鳴り響く。

 それと同時に青い炎の稲妻が宙を走り、グレイトケイブリザードと呼ばれるトカゲの魔物の口内に突き刺さった。

 するとその瞬間、グレイトケイブリザードの口内が勢いよく爆発する。



(おお、試しにグレイトケイブリザードの口内の水分を水素と酸素に分解するイメージだけで魔法を使ってみたけど、意外といけるもんだな。ちゃんと水素爆発もしたし、これなら実用できそうだ)



 カズトは今、アームホーンゴリラの巨大個体で実験しているときには思いつかなかった事を実験している。

 それもリディアがそばにいるため、たとえ何が起きても守ってくれるというおまけ付きだ。

 そのため彼は危険が伴う実験をいくつも躊躇なくやってのけた。



「……凄いね」

「そうかな?」



 口内が爆発したことによって事切れたグレイトケイブリザードを見ながらリディアがポツリと呟いた。



「うん。だってグレイトケイブリザードはこのダンジョンのボスだから。なのにカズト君はそれを一方的に倒した。これなら奪還作戦に参加しても生き残れると思う」

「本当に? 良かったあ。それなら参加するよ」



 ランクB冒険者で、しかも二つ名持ちのリディアにそう太鼓判を押されたカズトは嬉しいような安心したような声でそう言った。

 するとリディアはグレイトケイブリザードに近づいて手で触れ、亜空の腕輪に収納する。



「ありがとね、リディアさん」

「これくらい問題ない」



 これまでリディアはカズトの実力を調べるために襲いかかってきた全ての魔物を倒させた。

 そしてその倒した魔物は全てリディアが亜空の腕輪に収納していたのだ。

 そのためカズトは今回もまた倒したグレイトケイブリザードを持ってくれたリディアに対して礼を言った。

 するとリディアはその場で少し考えた様子を見せた後口を開く。



「ねぇ、カズト君。奪還作戦の時、パーティー組まない?」

「パーティー?」

「うん。パーティー組んだ方が生き残れる確率が上がるから」

「それはありがたい。むしろ僕の方こそ頼みたいくらいだよ。リディアさんがいるなら心強いからね」

「よかった。それなら決定。よろしく、カズト君」

「よろしくね、リディアさん」



 二人は軽く握手をする。

 それからカズトはこのダンジョンのボスであるグレイトケイブリザードがいた部屋の奥に目を向けた。

 そこには先程まで無かった木でできた箱がポツンと置いてある。



「……さっきから気になってたけど、あんなの無かったよね?」

「あれは宝箱。ダンジョンボスを倒したら稀に出てくる。カズト君は運が良い」

「へぇ、あれが宝箱か! 僕が開けてもいい!?」

「う、うん。どうぞ」

「ありがとう!」



 やはり宝箱と聞いたら胸が躍るのは誰でも同じなのか、それを知ったカズトは目をキラキラとさせて興奮している。

 そして興奮している故に無自覚にリディアに顔をズイッと近づけて開けても良いか聞いたカズトは、許可を貰えた直後に走って宝箱を開けに行った。



「……びっくりした」



 リディアはそんなカズトがあまりにも顔を近づけて聞いてきたものだから、驚きながら思わず頷いてしまった。

 宝箱にも当たり外れがあるから過度に期待しない方が良いと言いたかったのだが、それを言いそびれたままカズトは宝箱を開けてしまう。



「ん? これは……」

「何が出たの?」

「これなんだけど……」



 宝箱を開けたカズトはそう言って訝しげな顔をしながら中に入っているそれを取り出す。

 彼の手の中にあるそれは亀のような生物の顔がある指輪だった。



「……凄い。まさかこの難易度が低いダンジョンからそんな物が出るなんて……」

「リディアさんはこれが何か知ってるの?」

「うん。それは陸亀守護獣の指輪。最初に装着した者を所有者とみなして、その者に降りかかる害のある攻撃を全て結界で守ってくれるというもの。それだけじゃなくて、好きなところに結界を生み出すことができる。しかも一度装着すれば他の人が装着してもその効果が発揮されない。つまりカズト君がつければそれはカズト君以外使えないものになる」

「なにそれ……。凄い道具じゃん。これってもしかしてマジックアイテム?」

「うん。それはれっきとしたマジックアイテム。それもマジックアイテムの中でも相当強力な物。そんなのをここのダンジョンで出すなんて凄いとしか言い様がない。カズト君、一生分の運を使い切ったよ」

「それは嬉しいような、悲しいような?」



 基本ダンジョン自体の難易度が高く、そして強い魔物が跋扈している所にある宝箱程、そこから希少価値が高い物が出てくる傾向にある。

 そしてカズト達がいるダンジョンはそれ程難易度は高くなく、しかも魔物の強さもまた強い訳ではないため、マジックアイテムが出る確率はゼロに等しい。

 それでもカズトはマジックアイテムを引き当てたため、リディアが言った通り彼は一生分の運を使い切ったと言っても過言ではない。

 いや、むしろ使いすぎてマイナスになったという方がさらにしっくりくるぐらいだ。

 カズトはそんなリディアの言葉を聞いて早速陸亀守護獣の指輪を右手の人差し指に嵌めた。

 すると亀のような生物の装飾の両目が一度赤く光り、消えた。



「なにこれ?」

「それは所有者の登録が完了した証。これでその指輪はカズト君専用の物となった」

「へぇ、そうなんだ」



 そう言ってカズトは嬉しそうに顔を緩ませながら指輪を見る。

 それから気になったことをリディアに訊ねた。



「そうだ。この指輪にある顔って何の顔なの?」

「それはベヒモス。巨大な亀の魔物でランクS。だけどランクSよりも上のランクがあったならば、必ずそこに分類されると言われている程強い」

「……恐ろしい魔物がいるんだね」

「でもそういう強力な魔物たちは人間が住んでいるところじゃなくて、人間の手の届かない未開の地に住んでいるから大丈夫。それより一度使ってみたら?」

「そうだね。一回やってみるよ」



 そう言うとカズトは立ち上がり、リディアから距離をとって指輪に魔力を流す。

 するとカズトの周りに球状の薄い膜のような物が発生した。



「おお、これが結界か」

「そう。ちなみに魔力を流せば流すほど強度を上げることができる。後は結界の大きさを変えたりとか離れたところに生成させたりとかもできる。けどどれも魔力がたくさん必要らしいから実用的じゃないと聞いたことがある」

「そうなんだ。少し実験してもいい?」

「もちろん。私ももっと見てみたい」



 それからカズトはしばらくの間練習も兼ねて何度か結界を生成する実験をした。

 そのことで分かったのは強度を上げれば上げる程、大きくすればする程、結界を生成する場所が離れれば離れる程、必要となる魔力の消費量が多くなるということだ。

 しかしカズトの保有魔力は神でさえも莫大と評する程のため、必要となる魔力量は問題ではなかった。



「問題は僕の魔力制御の技量か」



 魔力制御の技量によって一度に操れる魔力量が変化する。

 例えばダムの水を魔力と見なしたとき、細いパイプで外に放出するようなものだ。

 そのパイプの太さが魔力制御の技量と言えば分かるだろうか。

 そのためカズトがある程度の強度がある結界を生み出すには必要となる魔力が多くなり、それを結界に込めるための時間がかかるのだ。



「それでも使い方次第では武器になるな」

「武器? どうして?」

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