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53話 初めてのダンジョン

「へ? ダンジョン?」

「うん。ダンジョン。そこだと強さが測りやすい。この近くに一つある」

「そ、そうなんだ」



 突然のリディアの提案に混乱するカズトだが、一度深呼吸をして考える。



(依頼を受けるのは宿代を稼ぐ為だけど、倒した魔物の素材を売ることでもある程度稼げる。それなら一日くらいダンジョンに行ってもいいか。それに身体能力も上げれるし、ランクB冒険者のリディアさんがいてくれれば安全だし、良い機会かもしれない)



「わかった。それなら今日はダンジョンに行こうか」

「うん。それじゃあカズト君、準備して。あなたの用意が出来次第出発する」

「それはこのバッグに一通り入っているから準備はできてるよ。リディアさんは……あ、亜空の腕輪があるのか」

「うん。私の準備も万端。行こう」



 リディアはそう言うと早くもスタスタと歩いていく。

 カズトもその後を追って冒険者ギルドを出て行った。


 それから彼らはバッセルの街を出てそのまま南にある森へ向かう。

 リディア曰く、これから行くダンジョンは森の中にあるらしい。

 そしてそのダンジョンは初心者から中級者向けの難易度のため、ダンジョン都市奪還作戦に参加するために強さを測るには丁度良いとのこと。

 そんな風にカズトとリディアは雑談をしながら森に向かって歩く。



「そういえば、昨日カズト君が使った爆音を発生させるマジックアイテムって何?」

「ん? 爆音を発生させるマジックアイテム? そんなの使ってないけど」

「うそ。あなたの荷車にマジックアイテムが四つついてあるのを見た。まあ話したくないならこれ以上詮索はしないけど」

「いや、別に話したくないわけじゃないよ。それより四つ? それってこんな感じの金属箱のこと?」



 カズトは両手でその金属箱の形を表す。

 するとリディアはそれだと言わんばかりに頷いた。



「あれはマジックアイテムなんかじゃなくて、普通の金属箱だよ。僕が前の街で鍛冶屋さんに頼んで作ってもらったんだ」

「あれが普通の金属箱なわけがない。だってあれに触ったらすごい熱かった」

「ええ!? あれに触ったの!? 火傷しなかった?」

「うん。これでも体強いから簡単に火傷なんかしない。それであの金属箱は結局何なの?」

「あれらは中で爆発を起こして、その勢いを活かして荷車の動力にするためのものだよ」

「爆発を起こす? 起こさせるわけじゃなくて?」

「うん。爆発は魔法を使って起こしてるんだ。こんな風に」



 そう言ってカズトはパチン! と指を鳴らす。

 すると空中で水素爆発が起こり、辺りに爆音を響かせた。

 ちなみにここは街からある程度離れているため、前回のように爆音によって街が騒ぎになる心配はない。

 しかしその爆発を見たリディアは大きく口を開けて驚いていた。



「なに……今の爆発……無詠唱で、しかもあれだけの威力がでるなんて……信じられない。もしかして矢を防いだときの爆発って……」

「うん。あの時も今と同じように爆発させたんだよ」

「マジックアイテムじゃ無かったんだ……。それじゃあ止まった荷車の下に泥があったのももしかしてカズト君の仕業?」

「そうだよ。あの時は荷車を止めるのに必死だったから、あの方法で止めるしか無かったんだ。今冷静になって考えれば、前方に付いている金属箱の中で爆発を起こしてスピードを殺した方が良かったと反省してるよ」



 カズトは自分の失敗を人に聞かせたからか、やや恥ずかしそうに笑う。

 しかしリディアはそんなカズトの話しを聞いても信じられないでいた。



「カズト君はそれだけの実力があるのに何故ランクEなの? あなたなら私と同じランクBと言われても納得できる」

「まだ冒険者ギルドの依頼を全然受けたことが無いからだよ。僕も早くランクを上げて報酬がたくさん手に入る依頼を受けたいんだけどね」

「大丈夫。カズト君ならすぐになれる」

「あはは。ありがとう」



 そんな風に彼らは話しながら森へ向かって歩く。

 時々魔物が彼らの行く手を阻もうとしたが、それも呆気なくやられるという結果に終わった。







 そして彼らは森に入り、リディアを先頭にしてしばらく歩く。

 すると木々に囲まれている中に人が三人ほど通れる大きさの穴が地面に空いていた。



「これがダンジョン?」

「うん。知る人ぞ知るダンジョン。ちなみに私が見つけた」

「へぇ。よく見つけたね。ここに来るまで結構複雑な道を通ってきたけど」

「私の趣味はダンジョンを探すことと潜って宝探しする事だから。これはまだ見つけやすい方。見つけづらいのはもっと分かりにくいところにある」

「そうなんだ。なんというか珍しい趣味だね」

「よく言われる。行こう」

「あ、うん」



 そう言うとリディアはスタスタとダンジョンの中へと入っていったので、カズトもその後ろについて行く。

 中は洞窟のようになっており、カズトがダイアナ達と共に入った魔人がいた洞窟と似ている。

 しかしここは一本道ではなく、少し歩いただけでいくつもの分かれ道に突き当たる。



「おお、これは凄いね」

「そうでもない。このダンジョンは小さいタイプだから。ダンジョン都市のダンジョンの方がもっと凄い」



 そう言いながらリディアは迷う様子もなく足を進める。

 何回分かれ道に当たってもどの道に進むかを瞬時に決めて進む彼女の様子を見てカズトは口を開いた。



「リディアさん。さっきから迷うことなく進んでるけど、このダンジョンに詳しいの?」

「うん。宝探しをするにはダンジョンの中をくまなく探すのが基本だから。とは言っても限度があるけど。でもこのぐらいの規模のダンジョンだったら2日あれば事足りる」

「へぇ、そうなんだ。ちなみにお宝ってどんなのが出るの?」

「基本的にはポーションや普通の武器とかが多い。稀に金とか銀とかの金属塊や宝石。滅多に出ないけどマジックアイテムなんかも出る」

「おお、金属も手に入るのか! それは欲しいな!」

「何故? 金属は売るしか使い道がない」

「普通はそうだと思うけど、僕の場合は魔法を使うときに必要になったりするからね」

「そうなんだ。なら帰りに宝箱があれば開けて帰る?」

「え? ここのダンジョンの宝箱はリディアさんが探し尽くしたからもう残ってないんじゃないの?」

「それはない。ダンジョンの宝箱は中身を回収すればダンジョン内のどこかに中身が補充された状態で転移するから。それも通路の真ん中とかじゃなくて人目につかないところに」

「そうなんだ。それならお言葉に甘えて帰りに探していい?」

「もちろん。……止まって、罠」



 リディアはそう言って立ち止まると、足下にあった大きめの石ころを目の前の地面に向かって投げる。

 するとそこの地面が崩れ落ちぽっかりと空いた穴がでできた。



「落とし穴……。こう言うのがあるってのは知ってたけど、実際に見たのは初めてだよ。それにしてもよく分かったね」

「慣れたら簡単に分かる。この落とし穴の場合は床の色が薄かった」

「……全く気づかなかったよ」

「最初は誰でもそんなもの」



 そう言うとリディアは穴を避けて歩いていく。

 そしてカズトもそれについていくのであった。

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