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斡旋所での一幕

途中で行き詰まって時間がかかってしまい申し訳ありませんでした。

トキ君が人攫いに攫われそうになって1日が経った、その時拾って来たと言っていた杖の鑑定を頼むために私は斡旋所ギルドに来ていた。

右手には魔力を吸っている杖を握っている。


「おはよう、ギルド長は来ているかしら?」

受付に居る女の子に話しかける、年齢は15歳位だろう、私にもあんな若い時期があったわ。

「ええ、来ていますよ、ご用件は?」

「杖の鑑定を依頼しに来たの」

「ギルド長は自室にいらっしゃいますので」

受付の女の子と話して私はギルド長の部屋が有る2階に上がった。


ギルド長の部屋の扉をノックする、すると声が返ってきたので扉を開けた。

「誰かと思ったらニアか、どうした夫が浮気でもしたか?」

部屋の中では背の低い初老の男性が書類仕事をしていた。


「冗談は止してちょうだい、今日は鑑定を依頼しにきたのよ」

そう言って私はギルド長の前に杖を置いた。

「ふむ、珍しい形状の杖じゃな、何処で手に入れた?」


「人攫いから逃げていた息子が偶然拾ったものよ」

「と言う事は、息子は無事だったか」

「ええ、冒険者の皆が無償で探してくれたからね」

トキ君が人攫いに追いかけられていた情報は直ぐに手に入った、通りを走っている子供と人攫いの面々は目立つから。


「そうか、それは良かった」

そう言ってギルド長は杖を握って鑑定の魔法を唱え始めた。

鑑定の魔法は治癒と同じく使い手が少ない魔法だ、斡旋所ギルドの長になるにはこの魔法は必須とされている。


「ふむ、興味深いな」

杖の鑑定を終えたギルド長がポツリとつぶやいた。

「興味深いと言うと?」

「この杖は宝具で間違え無い、魔力を吸う能力以外は一切不明、それが興味深いんじゃよ」


宝具、それは迷宮ダンジョンの最深部に安置されている道具で宝具には固有の能力が付与されており、鑑定の魔法ではその能力を明らかにさせることが出来るのだが、この杖はそれができない、それが興味深いのだろう。


「あの子はまだ5歳よ?一人で迷宮ダンジョンに行って宝具を持って帰るなんて無理よ」

「確かに有り得ぬ事だな、その時の状況は聞いておるか?」

「ええ、簡単にだけど聞いているわ」

ギルド長にトキ君から聞いた事をすべて話した。


「ふむ、一つ仮説を立てるとしたら、その迷宮ダンジョンはこの杖を持った者には罠や守護獣が反応しないのかもしれんな」

「そんな迷宮ダンジョンがあるの?」

「分からんが迷宮ダンジョンはまだ分かっておらんことが多いからの」


ギルド長から杖を渡されて受け取るが、また魔力を吸われる事によって起きる疲労感に襲われる。

「ギルド長、この杖の能力は魔力の吸収だけじゃないの?」

「有り得るの、魔力の吸収能力だけの杖か…」


所有者の魔力を吸うだけの杖、存在価値は無いに等しいだろう。

「これを持っておったニアの息子はどうじゃった?」

「普通でしたよ、私もこの杖を持つまで魔力吸収に気が付きませんでしたよ」

助けた時トキ君は普通の杖のように持っていた、私も普通の杖だと思っていた。


「ふむ、確か息子は散魔の指輪を嵌めておったじゃろ?」

「ええ、魔力が多すぎてね」

自分自身の体を破壊するほどの魔力を宿している私の息子、あの子を生かしている呪具、本来は犯罪を犯した魔術師に嵌める物、昔は捕まえるのに使用していたのに今は息子に使うなんて。


「散魔の指輪とその杖を持っていても平然と出来る魔力量、はっきり言って規格外じゃな」

「我が子ながら凄い子だと思うわ」

家でレイちゃんと遊んでいるであろうトキ君の事を思い出す、あの子はあの魔力と魔眼と向き合って生きていくのだろう。


「それじゃ、今日は失礼するわね」

「次来るときは息子を連れてきてもらおうかの、興味が湧いてきた」

「ええ、今度があれば」

そう言って私はギルド長の部屋を出た、時間の鐘は1回しか鳴っていない。


「おい、あれって」

「ああ、殺戮の治癒師だろ」

「誰か声かけてみろよ」

1階に降りると周りの冒険者からの奇異な視線に晒される、たった1年で此処まで有名になるなんて思いもしなかった。


「おい、あんた」

斡旋所ギルドを出ようとすると男性に声をかけられた、身長は170位で筋肉質で腰にはロングソードが差してあった。


「なにかしら、子供が家で待っているから早く帰りたいのだけど」

「なぁに、別に要件は一つ。お前の息子を探してやったんだ、礼の一つ位貰わねぇとな」

「そ、ありがとう」

礼を一つ言って私は斡旋所ギルドを出ようとしたが腕で制されてしまった。


「別に言葉のお礼が欲しい訳じゃないんだ、金かその体で払ってもらおうか」

あまりに露骨な要求にため息が出そうになったが堪えた。

「お前、何を言っているんだ?」

男の後ろから声が聞こえたので見てみるとそこには。

「あれは無償で探す、そう決まっていただろうが」

冒険者時代の私達と何回も死線をくぐり抜けて来たターレンスの姿があった。


「誰だ、テメェは引っ込んでろ、俺は今交渉中なんだよ!」

男はそう言ってターレンスにあっち行けと手で合図をしていた。

「お前は…冒険者…いや、男の風上にも置けない奴だな」

そう言うとターレンスは男の手を捻り上げた。


「イテテテテテテ、テメェ、何しやがる!!」

男は激昂した用に怒鳴っているがターンレスは無視をしていた。

「ニア、さっさと帰れ、トキ達が待ってるんだろ?」

「ええ、ターレンスもまた今度家に来て頂戴、あの子達も楽しみにしているから」

そう言って私は斡旋所ギルドを出た。


   ☆ ☆ ☆

「それで、お前はニアに何を言っていた?」

俺はそう言うと男の腕を離した。

「何って息子を探してやったんだ、報酬を受け取るくらいイイだろうが!」


鎧の隙間からブロンズランクの証が見える、探したのを口実に金をせしめようとしたのだろう。

「お前はさっき相手していたのは誰か分かってないだろ?」

「誰だって構わねぇよ、俺は仕事をしただから報酬を貰おうとした何がおかしい!」

男の言っている事は最もだ、仕事をしたら報酬を貰う、これは冒険者…いや、生きていく上では重要な事だろう。


「それは正しい、だが相手と事を考えろ」

「なんだ、あんたはあの女にでたらし込まれたってか!」

男の暴言に拳が出そうになるが、堪える、此処で拳を出してもこの男は納得しないだろう。


「捜索にあたった冒険者は無償という条件で捜索に当たった、それなのに金品、それどころか肉体関係まで要求するのは違反じゃないのか?」

あの日ニアの出した依頼は無償での捜索だ、本来ならそんな依頼は受理もされなければ受注者も居ないだろう。だが、斡旋所ギルドはそれを受理し多くの冒険者がその依頼を受注した。


「あんなに探させておいて無償なんて都合が良すぎるんだよ!」

男はどう足掻いても金が欲しいようだ。

「その都合が良い依頼を受けたのはお前だろ、それを今更言うのは都合が良すぎないか?」

男にそう言うと男は押し黙ってしまった。


「納得したのなら行かせてもらうぞ」

そう言って男の横を通り過ぎた。

「クソッタレがぁ」

後ろで何かを叩きつける音が聞こえたがこれ以上関わっても意味がないと思い無視をした。


「此処にアニルド・クライ・ディゼンという男が居るか?」

声のする方向をみると入口に黒服の男性が2名立っていた。

「な、なんだよ」

先ほどニアに絡んでいた男が声を出す。


「貴様に貸していた300万クランの返済期限が過ぎた、今からお前は奴隷になってもらう」

そう言って黒服の片方が男の身柄を拘束し始めた。

「た、頼むもう少しで金が入るんだ!」


男の嘆願も聞き入れて貰えずに黒服に連れられていった。

「あいつ、金に困ってたのかよ」

「それであの殺戮の治癒師相手にごねてたのかよ」

「どんだけ困ったらそんな選択できんだよ」

「あの依頼はアイツに恩がある奴が受注してたのにな、恥知らずにも程があるだろ」


周りの冒険者の言っている事を聞き流しながら俺は依頼が貼ってある壁を見ていた。

依頼を見ながら昨日の事を思い出していた。

あの日はニアが物凄い形相で斡旋所ギルドに走り込んで来たのを覚えている。


息子が人攫いに攫われたと聞いたから捜索を手伝って欲しい、報酬は払えないがやってほしい、冒険者なら誰も受けないであろう依頼だったが何十人もこの依頼を受けて探し回った。


後で捜索していた冒険者に話を聞くと昔助けてもらったという言葉を多く聞いた。

ニアは手が早いかもしれないが心優しく困っている人を見つけると助けるそんな奴だった、だからあんなにも捜索する人が多かったのだろうと俺は思った。


「これにするか」

俺は一枚の紙を壁から引き剥がした。

受付嬢の居るテーブルに持って行ってそれを渡した。

「ターンレスさん、この依頼の受注でよろしいですね?」

「ああ」


受付嬢の言葉に頷いて答える。

「それでは『人攫い一家の撲滅と子供救出』の依頼を受注いたしました、期限は7日後の水の1の炎の3の氷の刻になります」

依頼期限を聞いて俺は斡旋所ギルドを出た。





あの杖は魔力の吸収だけが能力ではないですがそれは今後分かっていきます。


ターレンスの受注した依頼は期限を地球時間に直すと5月9日に受注して期限は5月の16日になります。今度早見表を書いておきます。


言葉の説明

鑑定魔法:治癒に並びレアな魔術、物の用途や能力を判断できる。

宝具;所有者にとってプラスな能力を持っているアイテムの総称、主に迷宮ダンジョンの奥に安地されている。

迷宮ダンジョン:どうして作られたか不明、分かっている事も少ないが最奥に宝具が眠っていることもあり国や冒険者は我先に走破せんと躍起になっているが最奥に行けるのはほんのわずか、なので冒険者の中でも腕に覚えのある者しか行かない。

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