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呪具と杖と制服と

目を開けると回りに皆がベッドに座っていた、どの位気を失っていたのだろうか。

「母さん、どのくらい時間経った?」

体を起こして一番近くに座っていた母さんに聞いてみる。


「鐘が2回鳴ったから1のこく位かしら」

前世で言う1時間位気を失っていたそうだ。

「体調が悪いなら悪いと言えば良いのに、トキはまったく」

そう言って父さんが俺の頭を優しく撫でてた。


「これは私達に心配をかけたバツね」

そう言ってアリアちゃんは俺の頭にチョップをした。

「私も、これはバツね」

クレイちゃんも俺の頭にチョップした。


「ダメ~」

レイシアにも怒られてしまった、皆に心配かけたし仕方無いと言えば仕方無いか。


アリアちゃん達のお陰でほんわかとした空気が流れ始めた、可愛かったもんな三人とも。

「トキ君」

母さんの真剣な声がしたのでそっちを向く。


「トキ君は今、魔力を強制的に排出している状態なの、左手に指輪がはまっているでしょ?」

そう言われて左手を見ると中指に漆黒の指輪がはまっていた。


「それは『散魔の指輪』っていう呪具なの、効果は魔力を無くす力なの」

効果を詳しく聞いてみると魔力を吸収してそれを消化する力があるそうだ、本来は犯罪を犯した魔法使いにはめて無力化させる物らしい。


「ねぇ、母さん。結局、呪具って何?」

散魔の指輪は分かったが呪具ってのが結局分からない。

「呪具って言うのは、所持者に良くない影響を及ぼす物って思ってちょうだい」

そんな呪具が生命維持装置っていうのか、笑えないな。


「トキ君、今魔力はどうかしら?」

母さんに言われて魔力を操作する、散魔の指輪をはめる前に比べると段違いに操作しやすくなった。

「うん、ちゃんと操作できるよ」

そう言うと母さんは驚いたような顔をした、そんなに驚くようなことなのかな。


「散魔の指輪は魔力をほとんど吸収する呪具で操作なんてできないはずなの、それだけトキ君の魔力が多いってことかしら」

散魔の指輪が付けられても魔力が使えたら犯罪を犯した魔法使いに着ける意味が無いからか。


「それじゃトキってすごいの?」

さっきから話に入ってこれないアリアちゃんが質問をしてきた。

「魔力が多いからと言ってすごい訳じゃないわ、魔力を制御できるのが凄いのよ?」


力が有ってもそれを使いこなせなかったら意味がないって事か、心に留めておこう。

「そうなんだ、トキって魔眼もあるし魔力もあるし凄いって思ってた」

「クーねぇ、俺はその『凄い』魔力に殺されかけたけどね」

笑えない冗談だ、言っていて笑えないぞ。


「トキ、笑えない冗談はよせ、生きているから笑えるが死んでいたら笑えんぞ」

父さんに怒られる、少し冗談が過ぎたか。


「その散魔の指輪は決して外しちゃダメよ?外したら魔力が回復してトキ君の体を蝕むから」

母さんから絶対外しちゃダメという…フリでもなんでもない生きるために必要だからだろう。


そうしてドタバタしたがアークライスに来て初めての一日が終わった。

朝になって起きると魔力が良い感じに馴染んでおり調子がよかった、右を見るとアリアちゃん、左を見るとクレイちゃんが眠っていた。


寝顔を確認すると眠れないが横になってクレイちゃんの寝顔を堪能した、この寝顔も後ちょっとで見れなくなるのか、寂しいな。

「にゅふふ」


半目が開いたクレイちゃんに頭を掴まれそのまま唇と唇が触れ合った、前世と合わせ22年間生きて初めてのキスだ。


「☆&%><♯!???」

クレイちゃんは半裸を俺に見せたり…痴女の才能でもあるのだろうか?弟としては心配でしかないです。

クレイちゃんの将来を少し心配したが今はこの状態から脱出するとしよう。


試しに頭を離そうとしたが頭をがっちり掴まれているので離れることができない。

ジタバタと暴れているとそれに気がついたアリアちゃんが目を覚ましたようだ。


「クレイ!アンタ何やってのよ!」

アリアちゃんの怒声が聞こえるが話しかけることができない。

「っぷは、何って…えっ?」

目を覚ましたクレイちゃんが唇を離して状況を確認していた。


「クーねぇ…覚えてないの?」

俺のファーストキッスを寝ぼけて奪ったのかい?

「全然、覚えていない…私トキと…トキと…」

見る見るうちにクレイちゃんの顔が真っ赤になっていく、俺だって真っ赤だろうけどさ。


「さいってー!私の初めて返してよ!!」

クレイちゃんに頭に何度もチョップされる、痛いし初めてを奪われたのは俺も一緒だ。


「どうしたの?」

騒ぎを聞いた母さん達が目を覚ましたようだ。

「聞いてよ!クレイがトキとキスしてたのよ!!」

アリアちゃんが大きな声で起きた事を言うが、言われる度にあの感触を思い出してしまう。


「止めて、アリア思い出させないで…なんで私こんな事したんだろ…」

クレイちゃんが顔を真っ赤かにしたまま怒鳴り返す、ホントになんでこんな事をしたんでしょうかね。


「二人共少し落ち着きなさい」

そう言って母さんが二人宥め始めた。


少し時間が経ってアリアちゃんとクレイちゃんは落ち着いたようで皆ベッドに座っている。


「それで、何があったの?」

母さんがアリアちゃん達に話しかけた。

「トキが暴れるから起きたら、トキとクレイがキスをしていたの」

アリアちゃんが起こったことをありのままに話す。


「私だってキスをしたなんて感覚はなかったし目が覚めたらキスしている感じだったし」

クレイちゃんはもじもじしながら答える、前世の俺だったら萌えていただろうな、今は姉なのが悔やまれる。


「それで、トキ君言う事は?」

「クーねぇの寝顔を見ていたらいきなり頭を掴んでキスをしてきた」

母さんに言われて俺に起きた事を話す、クーねぇの寝顔可愛かったですと付け加えそうになったが止めておいた。


「クーちゃんも寝ぼけていたんでしょう、次から気をつけなさいね?」

次なんてあったら困る。

「私の初めてが…初めてが‥弟に捧げるなんて」

クレイちゃんが少し壊れている、そっとしておこう。


「それで、トキ。キスってどんな感じだった?」

アリアちゃんも年頃だし気になるようだ。

「どうって…柔らかくて…いい匂いがして」

俺も思い出すと顔の熱が上がっていくのを感じる。


「ほうほう、私もキスするような男の人と会うのかな」

「それは断じて許さんぞ、俺の娘を嫁にしたければ俺を倒せないとな!」

アリアちゃんの呟きを父さんが拾う、俺より強い奴じゃないとダメか、どの世界でも父さんは娘の旦那には強さを求めるんだな。


「あなた、それを言うのなら私達に勝てるような男性じゃないと」

母さんは父さんの言葉を修正したがハードルが上がったようにしか聞こえない。


レイシアは状況を理解できていないのか可愛らしく首を傾げていた。

そんなキス事件が終わって宿で出される朝ごはんを食べて皆でアリアちゃん達が入学するにあたって必要なものを買いに出かけた。


買う物は魔法を使うのに使う杖とローブの下に着る学校指定の服の二つだそうだ、学校指定の制服は魔術学校に所属していることを表す為に作られたそうだ。


まずは杖という事になって杖の専門店に行くことになった。

杖の店は宿のすぐ近くに有り外観は茶色がかった木で作られている所為なのか凄く古錆びて見える。


中に入ってみると見渡す限りに杖が並んでいた。

「いらっしゃいませ、どのような杖をお探しでしょうかな?」

店の奥から白髪頭で身長は150cm位で年齢は60は過ぎている男性が出てきた。


「娘たちが魔術学校に入学するので」

「魔術学校で使う杖ですか、こちらに来てください」

そう言うと老人は店の一角に案内した、そこには小さい石の付いた杖が並んでいた。


「石は属性である、火、水、雷、土、氷、風、炎の7種類を表しておりますので自分にあった杖をお選びください」

火は薄い赤 水は蒼 雷は黄 土は茶 氷は透明 風は翠 炎は濃い紅だそうだ。

そう言うと老人は店の奥に戻っていった。


「自分にあった杖って言われても何が得意か分からない」

アリアちゃんはそう言いながら色々な杖を手に取り始めた。

「そうね、自分に合った杖を選ぶには魔力を杖に流してみなさい、そうすると分かるから」

母さんも杖を見ながらアリアちゃん達に助言をしていた。


「杖に魔力を…」

クレイちゃんは確認するかのように杖を選んでいた。

俺はレイシアを抱っこしながらそれを眺めていた。

結局、アリアちゃんは水を司る蒼をクレイちゃんは風を司る翠の石が付いた杖を買った。


次に制服を買う為に通りを進んだ先にある学校指定の服屋に着いた。

外観は若い人が入りやすいようにか分からないが白色に塗装されて清潔感のある木造物件だった。


中に入ると身長170cm位はありそうな緑の髪をした若い男性が出迎えた。

「いらっしゃいませ、どうぞゆっくり見てください」

「魔術学校指定の服が欲しいのですが何処にありますか?」

「魔術学校指定の服でしたらこちらにございます」

そう言うと男性は店の奥に案内した、案内された先には高校の学校のブレザーによく似たデザインの服があった。


ベースは紺色、肩から袖にかけて赤のラインが2本入っているのが特徴だそうだ。


「それでは、サイズを図らせて頂きますんので、こちらに来ていただいてもよろしいでしょうか?」

店員に案内されながらアリアちゃん達は視覚に入らない場所に移動していた、プライバシーとか女性に配慮したためなんだろう。


俺と父さんとレイシアは採寸が終わるまで簡単な話をしながら待っていた。

戻ってくるとアリアちゃんとクレイちゃんは自分の胸を恨めしそうに見ていた。

因みにアリアちゃんとクレイちゃんは母さんからの遺伝だろう、胸が小さい。


「サイズに合った服がございますのでそのままお持ち帰りください」

ほぼ同じサイズの服を2着受け取り会計を済ませて店を出た。これで入学に必要なものは揃った。


「行きたいお店があるの、ちょっと良い?」

母さんの発言でもう一件行くことになった。

服屋から少し進んだ先に有るアクセサリーを売るお店のようだ。


「アーちゃんとクーちゃんが頑張れるようにママとパパからのプレゼントよ」

そう言ってアリアちゃんとクレイちゃんに一個だけ好きな物を買っていいと言った。


女性の買い物は長い、前世でもよく聞いた単語だが、あれは飽きっぽい男性が揶揄する為に言った言葉だと思っていたが嘘ではなかった、アリアちゃんとクレイちゃんはあれがいいこれがいいと言いながらアクセサリーを選んでいた。


鐘が3回鳴ったあたりでようやく決まった、アリアちゃんは杖と同じ色のブレスレットでクレイちゃんは杖と同じ色の髪留めを買ってもらっていた。

「「ママ、パパありがとう」」

店を出るとアリアちゃんとクレイちゃんはお礼を言っていた。


「二人共、寂しいかもしれない。だけどこれを励みに頑張るんだぞ?」

そう言って父さんは二人の頭を荒く撫でた。


昼を少し過ぎていたが全員お腹が空いたので宿に戻ってお昼ご飯にする事になった。

お昼ご飯はパンとスープとサラダの簡単なものだったが動き回ったので美味しくいただくことができた。


お昼ご飯を食べ終えてやる事もなかったので荷物を部屋に置いて昨日見て回れなかった場所を見て回ることになった。

先ほど杖や制服を買った通りは皇国通りと呼ばれる一番活気の溢れる通りらしい。


そこを真っ直ぐに進むと聖宮と呼ばれる昔の西洋のお城に似た建物がある、そこに国主である皇王が住んでいるらしい。


聖宮を北としてみると東に魔術学校、西に剣術学校 北東に商人学校があるそうだ。


外を歩いて満足したので皆で宿に戻り晩ご飯を食べて眠りに就いた、今日は母さんと父さんに挟まれる形でベッドに入った、クレイちゃんが寝惚けてレイシアにキスをしない事を祈りながら俺は眠った。

呪具;能力は多岐に渡るが基本的には所有者に悪い影響を与える物しか無い

呪具を作る専門の職人もいる

(トキの場合は例外的に生命維持装置状態)


散魔の指輪;魔力を吸収して消化する力が込められている、吸収量が多く、魔法使いにはめると魔力の操作ができなくなり魔法の行使が不可能になる呪具、主に犯罪を犯した魔法使いにはめる(奴隷にされた魔法使いにも着ける)。


トキの魔力の原因を書くとか言って結局解決策しか書いてないですね、ここで説明しますと、トキ自身が感じていた魔力は上辺だけのもので怒りがトリガーとなって潜在的に秘めていた魔力と魔眼によって増えた魔力が一気に溢れたのが原因となります。


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