変わってないと思うのは自分だけ、周りが見ると変わっている。
リスティアさん一家が住む家に入ったが、間取りは似たようなもので1階は5部屋2階は3部屋と言った感じの家だった。母さん達に聞いてみるとどうやら家は同じ設計図で同じように大量に建てるそうだ。家の中を自由に設計して建てる事が出来るのは貴族などの上流階級だけだそうだ。
「トキ君は、少し雰囲気が変わったわね」
テーブルのある部屋で座っているとリスティアさんから話しかけられた、そんなに俺の雰囲気が変わって見えるのだろうか。
「そうですか?」
「ええ、分かる人には分かる変化ね、レイちゃんに怖がられなかった?雰囲気が変わっていて」
この人はあのやりとりを見ていたのだろうか。ほとんど当たってる。
「うん、近づいたら泣かれたよ」
包み隠さずに言う、別に言って困ることでもないし。
「なんでトキ君は怖がられたのかな?」
子供に問題点を諭させるような口調で質問してきた、多分魔眼の事ではなく子供特有の反抗期の事と勘違いしたのだろう。
「うん、魔眼に覚醒したから?」
そんな意図なんて無視で答えを言う、別に言っても困ることでも無いし。
「魔眼!?、トキ君は魔眼が発現したの?」
驚いたようにリスティアさんが声をあげる、近くに居たアリアちゃんに抱っこされていたレイシアがビクッと震えた。
「え、えっと…うん」
思いもよらない反応に少し困りながら答える、そんなに魔眼の覚醒は珍しいのか?
「少し、目を見せてちょうだいね」
そう言うとリスティアさんは席を立ち、俺の近くに来て目線を俺に合わせうるように膝を折り目を覗き込んできた、母さんとは違う女性の匂い、そして母さんとは違う服の隙間から見える乳房…精神年齢22歳の俺には少し刺激が強い。
「左目の色が青から赤に薄らとだけど陣が見えている…驚いたわ、本当に魔眼だわ」
そう言うとリスティアさんは立ち上がった、そうすると次は母さんに話し始めた。
「ニア、トキ君の魔力総量って多いのかしら?」
魔眼と魔力の総量はどんな関係があるのだろうか、魔眼に覚醒すると魔力が増えるとは聞いたけど。
「魔眼に覚醒したというのはそういう事よ」
母さんは何か含みのある答えを返す、魔眼に覚醒した息子が居るんだから包み隠さずに言ってくれよ。
「母さん、魔眼と魔力総量ってどんな関係なの?」
気になったので母さんに質問してみる。
「えっと、魔眼に覚醒するには条件があるのよ、1つは親のどちらかが魔眼を持っている、2つ目はその人の魔力総量が多いこと。この2つの内どちらかを満たしていると魔眼に覚醒することがあるらしいの」
母さんが説明してくれる、魔眼で魔力が増えるのに発現条件に魔力の総量が多いって…鬼に金棒じゃないか。
「それじゃあ、俺は魔力の総量が多いの?」
「そうなるわね、魔眼に覚醒する量を潜在的に持っている、まだ子供だからまだ伸びるでしょうね」
母さんは肯定し尚且つまだ伸びる事を示唆した、これ以上増えても扱いに困るだけだよ…。
さっきから話に参加できないアリアちゃんとクレイちゃんはレイシアを見て微笑んでいるようだ、サイリスちゃんはと言うと俺を危ない物を見るような目つきで俺を睨んでいた。
「小難しい話はこれでおしまい。トキ君達は遊んでらっしゃい」
リスティアさんが手を叩きながらそう言った、子供達が遊ぶために来たのに遊ばないのはもったいないしね。
「・・・私の部屋に…行こ?」
そういってサイちゃんは二階を指差した。
その言葉に従って俺たちは二階にあがった。
サイちゃんの部屋の前に着いて、最初にサイちゃん、次にアリアちゃんとレイシア、その次にクレイちゃん、それに続いて入ろうとするとサイちゃんは俺を軽く押して後ろに下がらせると扉を閉めた…そこまで拒絶しますか?
しょうがないので母さん達の居る部屋に戻った。
「あら、トキ君どうかしたの?」
リスティアさんと雑談をしていた母さんに話しかけられた。
「サイちゃんに部屋から追い出されてね」
正確には入る前に拒否されたんだけどね。
「サイはしょうがないわね、トキ君着いてらっしゃい?」
そう言ってリスティアさんは立ち上がりサイちゃんの部屋に向かった。
そうしてサイちゃんの部屋の前に立つと扉を荒くノックし始めた。
アリアちゃんが扉を開けるとリスティアさんはサイちゃんを呼んだ。
「サイ?なんでトキ君をお部屋に入れなかったの?」
少し責めるような口調でサイちゃんに質問した。
「だって…トキ怖いんだもん、ママ…トキのお目目は真っ赤かなんだよ?」
サイちゃんにも怖いと感じられたようだ。
「サイ、トキ君の目は変わったかも知れないけど、トキ君はトキ君なのよ?ちゃんと仲良くしなさい?」
サイちゃんから理由を聞けたからだろう一転諭すような口調で話し始めた。
「でも…」
サイちゃんはまだ何か言いたそうだがリスティアさんは続きを言わせなかった。
「だってじゃないでしょ?ママ言ったわよね、人を見た目で判断して酷い事をしちゃダメだって。サイはママの言ったことを守れない悪い子なの?」
サイちゃんは首を横に2、3度振った。
それを見るとリスティアさんは軽く微笑み。
「それじゃあ、皆で仲良く遊びなさい?」
そう言って俺の背中を軽く押して部屋の中に入れた。
中に入るとアリアちゃんがレイシアを膝に乗せてベッドに座っていた、その前に地べたに座るクレイちゃんがいた。
「私たちもサイちゃんと話していたの、トキは見た目が変わってもトキだから酷い事をしてあげないでねって」
クレイちゃんが説明してくれる、どうりで遊ぶ準備をしていないはずだ。
「・・・トキ、ごめんね?」
後ろから声がすると申し訳なさそうにサイちゃんが呟いていた。
「ううん、大丈夫だよ?」
そう言ってサイちゃんの頭を撫でた、茶色の髪は指に吸い付くようでレイシアとは違う質感を感じさせてくれる。
「それじゃあ、何して遊ぼうかしらね」
アリアちゃんの声で頭を撫でるのを止める、部屋を見るがベッドとタンスと机しか家具はなく遊ぶ道具なんて無い。
「・・・おままごと」
サイちゃんが遊びに来た時と同じおままごとをするそうだ。
「おままごとねぇ、今日は、少し違う遊びをしない?」
毎度おままごとでは楽しく無いので違う遊びを提案してみる、おままごとが恥ずかしいからではない。
「トキが考えた遊びねぇ、どうやって遊ぶの?」
アリアちゃんが食いついた、レイシアのような小さな子でも遊べる遊戯を思い出していた。
前世の記憶を引き出すと一つの遊びを思い出した。
「そうだね、それじゃあ…しりとりをしよう」
そう言うと全員が首を傾げた、どうやらこの世界には「しりとり」という日本の伝統的な遊戯はないようだ。
なので4人にしりとりのルールを説明した、レイシア以外は理解してくれたのでレイシアはその都度その都度に指摘していこう。
しりとりを始めると年上であるアリアちゃんとクレイちゃんの語彙力に圧倒されたがサイちゃんも結構色々と知っておりそれに交戦していた。
レイシアの番になると詰まるがそこは皆で少しづつヒントだして答えを導かせていった、しりとりと言うよりもレイシアに言葉を教えたり、答えたあとのやりきった顔を見て微笑む遊びになった気もしない。
しりとりと言うのはハマると一気に時間が経つ、気が付いたら母さんがドアを開けて立っていた。
「それじゃあ、帰りましょうか」
母さんの声を聞いて俺たちは一斉に立ち出す、帰り、レイシアを抱っこするのはクレイちゃんのようだ。
「それじゃあね、リス。また来るわ」
「ええ、いつでも来て頂戴」
母さんとリスティアさんが軽く挨拶を交わし合う。
「それじゃあね、サイちゃん」
アリアちゃんはサイちゃんを撫でなでしながら別れの挨拶をしていた。
「それじゃあね」
クレイちゃんも別れの挨拶をしている、レイシアは手を振っているだけだ。
「レイちゃん、バイバイ」
そう言って、サイちゃんも手を振った。
「バイバイ、サイちゃん」
最後に俺が別れの挨拶をする、するとサイちゃんは俺の手を握ってきた。
「バイバイ、トキ」
そう言って手を上下に振り始めた、いわゆる握手である。
「トキだけズルーイ」
アリアちゃんから避難の声が聞こえるが無視しておく。
そうして俺たちはリスティアさんの家を出た、外に出ると日が落ちかけており暗くなる一歩手前だった。
帰り道は行きの事件の影響か母さんの周りには人が集まらなかったので事件もなく帰れた。
家に帰って母さんが晩ご飯の準備を始めると父さんが帰ってきた。
「ねぇ、父さん『殺戮の治癒師』って何?」
テーブルのある部屋で椅子に座っていた父さんに今日聞いた母さんの二つ名について聞いてみた。
「それをどこで聞いた?」
父さんの真面目な口調に驚きながらも今日あった事件を話した、すると父さんは軽くため息をつき説明してくれた。
「母さんが怒った時は人を傷つけては治すと言った行為に畏怖の念を込めて皆そう呼んだんだ」
どうやら今日の朝絡んできた獣人にやった事を過去に何度かやったようだ、その数だけ地雷を踏んだ人がいるのだろう。
「あら、あなた。何の話かしら?」
後ろを向くと晩ご飯の準備をしていたはずの母さんが立っていた。
「えっと、『殺戮の治癒師』について聞いていたの」
母さんの反応を見たさに正直に答える。
父さんの目に怯えが入ったように見えた。
「それで、パパは話したのかな?」
俺に笑顔で聞いてくるが声は全く笑っていなかった。
それに俺は頷いて答える、あんな母さんでも俺は頼りがいのあってカッコイイ母親だと思う、一応その旨を含んだ言葉も添えておく。
「ちょっと、パパこっちに来て?」
母さんは父さんを呼び出すが呼び出された父さんは少し震えていた。
そして父さんと母さんは使われていない一室に入っていった。
晩ご飯になると父さんと合流できたが目が虚ろだった、何をされたのかを聞くのも怖いし想像もするのも怖いので俺は、考えるのをやめて晩ご飯を食べた。
今日の教訓は、母さんを怒らせないようにしよう。
殺戮の治癒師;ニアに付いた冒険者時代の異名、うっかり地雷を踏む強い打撃を受けつつも治癒され致命傷には決していたらない無限ループが発生するの。「殺しながら生かす」という喩えから生まれた、本人は冒険者を引退しているので今言われると怒ったりする。




