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初の外、初の冒険者通り、初めてづくしのお出かけ

レイシアの警戒が解けてから数日が経った、相変わらず魔力の微調整という課題はクリアできずにいた。

朝ごはんを片付けている最中も魔力の微調整を練習しているが進歩している感じがしない。

そんな時、母さんが前世で言う「シンク」に食器を入れて魔法で作った水で「シンク」を満たしながら言った。

「今日はね、リスの家に行ってみようと思うの」

さり気なく言うが5歳にして初のお出かけである。


「リスティアさんの家に行くのはトキが生まれる前かな?」

「ママのお腹が大きい時だったよね」

アリアちゃんとクレイちゃんは行った事があるようだ。


「そうなんだ、行ってみたいね」

初お出かけに初他人の家、興味がない訳が無い。

「食器の片付けが終わったら行くからね」

母さんはそう言って「シンク」に入った食器を布で洗い始めた、俺達はその間に準備をするべく部屋に戻った。


準備と言っても服を着替えることも無く持っていく物が無いのでやる事が0なのだ。

アリアちゃんとクレイちゃんは女の子だから準備はあるだろう、だから俺はその間魔力の微調整の練習を行うことにした。


部屋のドアを叩く音で母さんが食器を片付け終わった事を察したので魔力の微調整をすることを止めてドアを開けた。

「トキ君は準備できたかしら」

そこにはいつもと同じ白っぽいワンピースを着ていた、この世界ではパジャマはあるが余所行きの服という概念は無く、同じデザインの服が数着とパジャマがあるだけである。


「うん、準備と言ってもやる事無かったからね」

そう言って部屋から出るとそこには母さんと同じ様な服だが赤い色のワンピースを着て長い髪をゴムで結わたアリアちゃんとクレイちゃんが立っていた。



「そんなに私たちが気になるのかな?」

アリアちゃん達を見ているとクレイちゃんが少し笑いながら話しかけてきた。

「うん、何時もと違って髪を束ねているのが少し珍しくてね」

クレイちゃんに率直な感想を言っておく、母さんと同じロングもいいけどポニテもいいよね。


「母さん、レイシアは?」

レイシアの姿が見当たらないので聞いてみる。

「レイちゃんはね、私の部屋で待っているのよ」

レイシアはまだ母さんの部屋に居るようだ。


母さん達と合流してレイシアの待っている母さんの部屋に向かった。

レイシアも白いワンピース姿で髪はまだ短いので飾りっ気は無いが可愛いと思う。

レイシアとも合流して俺たちは家を出た、家を出る際に母さんは扉に魔力を込めて扉が開かないかを確認していた、どの世界にも防犯意識というのはあるようだ。


外に出てみると住宅街らしく住宅が並んでいたが人があまり外に出ていなかった。

母さんに聞いてみると、どうやら冒険都市ということもあって根なし草に近い冒険者が多くこの都市で居を構えている人の多くは此処で店を構えたりしている人らしい。


住宅街を抜けて大通りに出るとそこにはローブを纏って杖を持った獣耳の男性や体を覆う鎧を着てその背中には剣を携えている冒険者、守る気があるのだろうかと疑問になるビキニアーマーを着て腰にレイピアを差している耳の尖っている女性などなど多くの冒険者が歩いていた。


「此処が冒険者通りと言われる通りでその名の通り冒険者が多く集まるのよ」

母さんを先頭にして1列で並んでいる俺たちに母さんが説明してくれる。

「人が多いね、それも俺たちとは違う耳をしている人が居るね」

俺はさっき見た冒険者の見た目を思い出しながら感想を言った。


「この世界には人、獣人、エルフが居るもの」

母さんは普通の事だと言わんばかりに説明してくれたが母さんは日常的に教えてくれる勉強の中では種族の説明なんてなかった。


「それと、この人ごみに乗じて人を攫う人が居るから気を付けてね」

母さんは重大なことをさらっと言った、気になったので後ろを見るとレイシアを抱っこしているアリアちゃんと少し不満そうにそれを見ていクレイちゃんが居たので前を見た。


「この冒険者通りを抜けた先がリスの家よ」

何百メートル進んだのだろう、人の流れは少なくなるどころか進めば進むほどに多くなっていった、少し興味を持ったので魔眼を使って通りが違う場所を見てみると歓楽街…いわゆる性に関わる物件が多く立ち並んでいた。少しも隠そうともしない看板に売り文句をすべて見なかったことにした。


「いってぇなクソガキ、どこ見て歩いてやがる!」

歩いている最中に冒険者であろう獣族の男の人にぶつかってしまった、見上げてみると顔には大量の傷、着こんでいる鎧には細かな傷が大量に付いており歴戦の戦士を思わせる風貌をしていた。


「ごめんなさい」

俺は頭を下げて謝罪をしておく、だが獣族の男は引き下がらなかった。

「ごめんなさい、じゃなくて誠意を見せてもらわなくちゃな、ほら親は居るんだろ?」

この獣族は5歳児にたかろうとしているのである、恥ずかしくないのかな…。

騒ぎを感じ取った母さんが獣人の前に立った。

「この子の親は私ですが、息子が何か?」

母さんの声に少し怒気が孕んでいるのは分かったが獣人は気づかないようだ。


「いや何、この子とぶつかって俺が怪我をしちまった、その責任は親が取らないとな。2万クランで勘弁しておいてやるからよ」

クランとはこの国の通貨である。


「そう、言いたいことはそれだけかしら?」

母さんの声にどんどん怒気が孕んでいく、ここまで怒ったのは初めて見る。

「払えないのならその貧相な体でも良いんだぜ?」

獣人はどんどん調子に乗っており気づいていない様子だ、母さんの唯一踏んではいけない地雷に踵から全体重をかけて踏み抜いたことを。


「そう」

母さんは短くそういうと獣人を殴り飛ばした、鎧を着ているし母さんとは体格からして違いすぎる、なのにその獣族の人は2~3メートル位吹き飛んで行った。


「私の子供に手を出すし、金品は要求するし、挙句の果てには貧相な”胸”ですって?」

吹っ飛んだ獣人の上に跨って殴っては治癒、殴っては治癒を繰り返していた。

それと母さん貧相な”胸”じゃなくて貧相な”体”て言ったからねその人。


騒ぎを感じ取ったのか周囲から囁き声が聞こえてきた。

「あの獣人、ガキに絡んだ挙句その親にボッコボコにされてるぜ」

「あの女性って『殺戮の治癒師』じゃないか?あの有名な元冒険者の」

母さんは有名なようだが何とも言えないストロングな二つ名を持っているんだな。


「母さん、早くしないとリスティアさんが待っているよ?」

いまだに獣人を殴っている母さんの所に行って母さんに話しかける、アリアちゃん達も母さんの変貌ぶりを見ていたがあまりの豹変っぷりに言葉を失っているようだ。


「ふぅ、そうね」

母さんは獣人の上から降りて身だしなみを簡単に整えた。

そして獣人を冷たく見下して。

「子供に絡んでお金を巻き上げる冒険者が居ることで冒険者の品格は下がるの、元・冒険者として恥ずかしいわ、次に見つけたら…これだけでは済まないわよ」

底冷えするような声で獣人に伝える、周りの冒険者もブルっと震える。


獣人の方は首から頭が落ちるんじゃないかと言う勢いで上下に振っていた。

獣人は足を絡ませて無様に走っていった。

「さて、行きましょうか」

さっきと変わって優しい声だが顔に付いている返り血を見ると「行こうか」が「逝こうか」にしか聞こえない。


「母さん、返り血が付いてるよ?」

母さんのホッペに血が付いていることを自分のホッペを突っつくジェスチャーで教える。

「あら、ホントだわ」

母さんはそう言うと魔法を使い返り血を洗い流す、その様子を見て俺は母さんのように微細な魔力操作を覚えたいと思った、さっき絡んできた獣人の事なんて記憶の遥か彼方に行っていた。


さっきの騒ぎのせいか母さんの周りに冒険者が全く居なく、少し余裕を持って冒険者通りを進むことができた。

冒険者通りを抜けるとまた住宅街があり、自宅の周りと同じで人が少なかった。


「この先にリスの家があるのよ」

そう言って住宅街を歩き出した、周りを見ても木造で作られ全部が全部同じ家にしか見えない。

ある程度歩いただろう、さっき見た家とは違いがわからないが家の前で母さんは止まった。


「ここがリスの家よ」

母さんはそう言って門をくぐり扉を叩いた。

家の中からドタドタと走る音が聞こえて扉が開いた。

「いらっしゃい、ニア」

そこにはリスティアさんとサイちゃんが立っていた。

冒険者通り:冒険者に必須な物が揃う通りで冒険者が多く集うが中には人攫い屋が居たりもする、結構治安が悪い。筋が違うと歓楽街がある。


エルフ族;尖った耳が特徴的で魔法の使いに長けているが剣術も使える人がいる。礼儀正しい人が多い

獣族;ケモ耳が特徴、剣術に長けているが魔法が使えないというわけではない。ガサツで酒好きが多い。

人族;剣術も魔術も平均的に使える

魔力:人の体内にある魔力は感知できないが体外に出た魔力なら感知できる。エルフに限り接触のみだが体内にある魔力を感知できる。

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