ep002:その来店、豪華絢爛につき
⸻
Scene006【昼休み】
⸻
やがてショッピング体験時間が終わり、花音さんが締めの言葉を発する。
「それでは、ショッピング体験の時間を終わらせていただきます。
本日お買い上げありがとうございました」
結局レポーターさん全員が自分の下着を購入したのだ。
俺のアドバイスに従って……
(晴道が居れば、いくらでも売り上げが上がるんじゃない?)
花音さんの心の中の声が漏れていた。
「この後、1時間の休憩をはさみまして、招待客をお招きします。
先にインタビュー可能なお客様が来店し、その後一般のお客様となります。
インタビューご希望の方は、1時間後に再度店頭にてお待ちください。
なお店内には入れませんので、お客様が買い物を終わられた後、お店の前にてお願いします」
そうやって一旦解散となった。
⸻
「みんな、取材対応お疲れさまでした。
休憩の後もよろしくね。
キャサリン、海外メディアの対応ありがとうね。
休憩の後は、来客と一緒に買い物していいわ。
約束通り下着3セットね」
「やったー、花音さんありがとう!
目を付けてる海外ブランドのエロいのがあるの!!」
キャサリンはにこやかに言った。
うん、確かに品揃えが凄い。
なんでも花音さんは、海外ブランドの直輸入はもちろんのこと、
国内ブランドもメーカーに掛け合い、通常の出荷では大きなカップは製造されていないラインナップも、
「VERDE」専用に出荷させているんだとか。
あと「VERDE」ブランドの小さく見せるブラ(和装用・スポーツ選手用)なんかもラインナップにあった。
何度か前の由美子と結婚した前世では、花音さんがメーカーに掛け合って作らせて、由美子と一緒にCMに出演していた。
今世はさらにもう一歩進んで、自社ブランドで発売してしまったわけだ。
「私と美由はお店を空けるわけにはいかないから、事務所でお弁当でも食べるわ。
出前で時間かかったら食べられなくなるから、晴道、悪いけれども何か適当にお弁当を三人分買ってきてくれる?」
「はい、分かりました」
「ありがとう。
ほかのメンバーは外で何か食べてきて。
キャサリンのカードで払えば、私持ちで上限なしよ」
花音さんはみんなの顔を見回してウィンクひとつ。
「やったー」
真帆先輩が単純に嬉しがっているが、
その”上限なし”が文字通りの意味だということを知ったら、どんな顔をするだろうか。
たとえ一人十万を超えても、花音さんは『あら、ちょっと豪勢にしたのね』程度しか言わないだろう。
⸻
俺は事前に聞かされていたので、近くの有名天丼屋の持ち帰り弁当をオーダーしておいた。
すぐに取りに行って帰ってきた。
アナゴ入りの少し上等なやつだ。
といっても2,000円程度なんだが。
「美由、ここの天丼美味しいのよ!」
俺は彼女たちとのデートのチョイスに何度か使っている。
当然花音さんも連れて行った。
「本当! 美味しいわね!!」
美由さんの笑顔がまぶしかった。
『私は晴道の女になりに来たのよ』
あの心の中の声をどうしても意識してしまう。
(ふふふ、晴道、私の胸元ばかり見ているわね)
と美由さん。
(晴道、節操ない)
と花音さん。
仕方ないだろ!!
シックなスーツなのに胸元がやたらと強調されていて、
かといって実際に谷間とかブラジャーのラインとか何か見えるわけでもないんだ。
気になって仕方ない。
美由さんのからかうような目線。
花音さんの冷たい目線。
両方辛かった。
⸻
食事を終えた他のメンバーが帰ってきて思った。
今までじっくり見るタイミングがなかったので気付いていなかったが、
一番凄いのは美久さんだった……。
(あっ、晴道くんの視線が私の胸元に! 熱くなっちゃう。これから接客なのに困っちゃう)
おーーーい、何処が熱くなりますか?
前世での和也さんの彼女の時も、和也さんが心の中の声を知らなかっただけで、本当はこうだったのだろうか?
いや、違う気がする。
それにしても香織姉さん、千鶴さんとキャラ被り過ぎじゃないですか?
この物語どうなっていますか?
(この世界はパパを中心に作られた世界ですから。パパに都合の良いようになるのは必然よ)
キャサリンが心の中の声で解説してくるが、
”都合の良い”って、トラブルや心労も多いですよ!!
(それも含めて、観察しがいのある世界なのよ)
そうですか、なら楽しむしかないのかな?
⸻
Scene007【招待客】
⸻
「さあ、そろそろ招待したお客様が来るころよ。
晴道は店頭でお客様をお迎えして。
他のメンバーは各自持ち場で待機。
キャサリンちゃんはしばらく晴道と一緒に待機して、
海外メディアの方が残っていたら通訳してくれる?
「「「はい、分かりました」」」
みんなの声が揃った。
⸻
招待した方々には、少しずつ来店するようにそれぞれ時間を指定したそうだ。
初めに姿を現したのは……。
二人のメディア男性スタッフがひそひそ声で話していた。
「おいおい、なんだあの美女は? 凄い胸してないか?
グラビアアイドルとかか?」
「お前、見覚え無いのか?
あれは、あの霞の宿の女将”一ノ瀬 葉月”じゃないかよ」
((あんな巨乳だったんだ! エロいぞ!!))
二人のメディア男性スタッフの心の中の声が揃った。
えっと、花音さんのお母様。
いや花音さんより若く見えるんだが、正真正銘お母様。
俺は前世の記憶でも写真でしか見たことなかったが。
あんな巨乳だったんだ!
あっ、二人のメディア男性スタッフと同じことを考えてた。
「葉月母様、よく来ていただきました」
「なに言っているのよ。
この事業は会津若松の本店と同じで、株式会社霞の宿の事業の一環でしょ。
だったら、取締役の私が視察しないでどうするのよ」
ああ、登記上はそうなっているんだ。
「晴道くん、お久しぶりね。
夏の合宿、そろそろ人数教えてね。
4人を超えるようなら、特別室以外も押さえなきゃだから」
えっ、あれ、本気だったんですか!?
⸻
「おいおい、あれは”如月 美優”じゃないか!」
「あの、経済アナリストの?」
今世での美優さんは、個人投資家としてだけではなく、経済アナリストとしても有名だった。
度々TVにも出演している。
((相変わらず、エロいな))
そうなんだよな。
さっき美久さんが一番凄いと思ったばかりだが、
千紗の母親ということでなるべく意識しないでいるけれども、実は一番凄いのは美優さんだった。
俺の長身巨乳年上好みの根源は、香織姉さんだけでなく美優さんにも強い影響を受けているんだ。
「えっ、隣にいるのは、元モデル・役者の千紗か?」
「そういえば、あの去年のドラマでの役名は”如月 千紗”だった。
あの二人は母娘だったんだ」
((千紗は相変わらず、ロリ巨乳でエロい))
(パパ、海外メディアは残らなかったみたいだから、私は千紗と一緒に中に入るね)
キャサリンは心の中の声で伝えてきて、
千紗と一緒に中に入っていった。
(えっ、さっき中にいた金髪のスタッフ、誰かに似ていると思ったら、千紗と同じ顔じゃないか)
二人が並んだところを見た男性スタッフが驚愕の心の中の声を上げていた。
⸻
「おいおい、今度は”千鶴”じゃないかよ」
「元グラビアクイーンと新グラビアクイーン候補の杏奈、凄い対決じゃないか」
(エロい二人が並ぶところを見られなくて残念だ!)
ちなみに千鶴さんも苗字は非公開だ。
メーカー島村の社長ご令嬢だということを隠すためだ。
大手スポンサー会社の影響を排除して活動したいのだ。
千鶴さんは取材陣に気付かれないように、俺にウィンクをしながら店に入っていった。
⸻
ここで葉月さんが出てきて、取材が始まった。
⸻
「おいおい、今度は”瑞月”じゃないかよ。
主演女優賞受賞の瑞月と助演女優賞受賞の千鶴がかち合うのか!?」
「いえ、それより隣の美女は誰だ」
「ああ、お前は知らないのか、表参道のカリスマ美容師”小泉 香織”だぞ」
「有名なのか?」
「ああ、芸能人にも大量の顧客がいる。
それにな、彼女はそこに居る”晴道”のマネージャーをやっているんだ。
もしもだ『彼女が芸能事務所でも立ち上げたら、芸能人の移籍希望者が殺到するだろう』と言われるくらいのカリスマを持っている」
(素人なのに巨乳でエロいな)
瑞月さんのこと”水澤 美月”さん、本名は未公開。
今世では俺も知らないことになっている。
⸻
ここで美優さんと千紗が出てきて、取材が始まった。
プライベートに関する質問は、美優さんがうまくはぐらかしていた。
さらに千鶴さんと香織姉さんも出てきて、取材が始まった。
(香織さん、晴道くんの大切な人。でも負けられない)
(千鶴ちゃん、晴道のもろ好みのタイプ。でも負けられない)
取材陣は、二人が心の中でどんな牽制をしあっているかなんて、知る由もなかった。
⸻
少し遅れて瑞月さんが花音さんと一緒に出てきた。
瑞月さんの取材が終わると、
「本日取材可能な方は、これで以上です。
本日は当店を取材いただき、誠にありがとうございます。
この後は一般のお客様となりますので、取材はご遠慮願います」
そう伝えた。
そして、
「晴道くんも中に入りましょ」
そう言って、なぜか瑞月さんも一緒に店内に戻った。
⸻
Scene008【この子たちのために】
⸻
店内に戻った瑞月さんは美久さんの元に走り寄った。
「美久!」
「美月!」
ああ、これは前世でもあった、幼なじみの再会イベントか。
「二人は幼なじみなんですって」
美由さんが話してくれる。
やっぱり、前世と同じ関係なんだ。
⸻
しばらくして、花音さんが外の様子をうかがう。
「メディアスタッフは撤収してくれたみたいね。
そろそろ、次のみんなにも来てもらいましょう」
『次のみんなにも』
その言い方に首を傾げた俺だったが、やがて訪れた面々を見て納得した。
嶋田 洋子
里塚 由美子
香川 遥
森下 結衣
斉藤 早紀
俺の関係者ばかりじゃないか!
ちなみに名前の順番は年齢順、俺と出会った順で、
他意はない
「花音さん、この人選は?」
「だって私、この子たちのためにこの店を立ち上げたみたいなものですもの」
そして花音さんはみんなに向かって言った。
「今日はオープン記念のモニター価格よ。原価割れだけれども、何着買っても良いわよ。
品揃えは豊富だから、晴道に見せてもダブる心配ないわよ」
えっ……花音さん、やっぱり半端ねえ。
その後、俺は延々と
”下着の感想を聞かれては、心の中の声で求められる答えを返す”
そんなマシーンとなったのだった。
しかし、心の中の声のことを知っていて、
気の放出を抑えることができる由美子だけが強敵だった。
俺は由美子にだけ、本気で考えて答えることになる。
周りから見れば、俺は由美子の時だけ答えに歯切れが悪く見えるだろう。
由美子以外の女の子たちからすると
『私の方が理解してもらえている』
そう捉えたかもしれない。
他の女の子たちを適当に考えているわけじゃないけれども、
結果として由美子のことを一番真剣に考えている。
とてつもなく、賢い勝ち方だった。
⸻
Scene009【閑話】
⸻
私は由美子の勝ち方に感心していた。
あえて相手を不利に陥れ、自分のことを深く考えさせるなんて。
恋愛関係はまだまだ奥が深いのね。
その時、キャサリンが晴道に話しかけた。
「ねえ、晴道。
私の下着も選んで!」
キャサリンは晴道に心の中の声を聞けないようにしていた。
それに対して晴道はこう答えた。
「なあ、キャサリン。
二番煎じって、決して一番目には勝てないんだよ」
キャサリンはがっくりと落ち込んでいた。
ふふ、頑張りなさい、私の可愛いキャサリン。




