ep001:その開店、波乱の予感につき
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Scene001【予兆】
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あの旅行の後、花音さんがなんだか慌ただしい。
学校が終わるとすぐにどこかへ行ってしまうし、
部屋へ帰ってくるのも遅く、夕食も別々なことが多い。
ある日の食事中に花月さんへ聞いてみた。
「花月さん、花音さんって何かやっているんですか?」
「知らないわよ」
(絶対に手伝わないんだから)
珍しく、心の中の声も漏らしていた。
「キャサリンは何か知ってるの?」
「内緒です♡」
ウィンク一つ、可愛すぎだろ。
「あら、晴道は知らないの?」
一緒に食事を取っていた沙織母さんが意外そうに言った。
「えっ、母さんも知ってるの?」
「うん、でも花音さんが秘密にしてるなら、
母さんからは言えないわね。
守秘義務もあるし」
守秘義務ってことは出版社の仕事関係か。
ますます分からない。
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旅行の後と言えば、真帆先輩は本当に部活を引退した。
「あの時も話したけれども、タイム伸びないし、
だらだらと続けるよりはね」
そんな風に話していた。
そして、すでに就職先も決めており、
卒業までも、その就職先でアルバイトもするのだとか。
「やりたいことが見つかるまでなんだけれどもね」
うちの学校は基本は土日祝日のみアルバイトが許可されている。
そして、進学や就職の決まっている三年生のみが、
平日学校が終わった後もオッケーだ。
「やりたいことが見つかったら、
仕事を辞めて、進学し直してもいいと思っているの」
そう言っていた。
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旅行の後と言えば、杏奈先輩がモデルとして誌面デビューを果たした。
3月初旬には、香織姉さんの店のモデルとしてWeb上でデビュー。
続いて沙織母さんが担当しているファッション雑誌のWeb記事にも出た。
そして、この度、店頭に並ぶファッション雑誌でいきなり表紙に採用されたのだ。
あっという間に話題沸騰となり、SNSのフォロワーは数万人になった。
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Scene002【驚愕】
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それからしばらくしたある夜、俺が部屋に戻ると、
”誰もいない”ダイニングテーブルの上に沙織母さんが手掛けている、
ファッション雑誌のサンプルが置かれていた。
「えっ!」
思わず声が漏れた。
表紙が杏奈先輩だったのだ。
しかも下着姿で!!
『大きなカップ専門店が東京に!
会津若松で話題のランジェリーショップ「VERDE」、
初の支店を今週末オープン!』
そんな見出しの下で、にっこりと微笑んでいた。
記事の内容を要約するとこうだ。
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お店の名前はVERDE。
緑を意味する言葉らしい。
それは会津若松にあるランジェリーショップ。
大きなカップの品揃えが有名で、
モデルや役者の芸能人にも、都内からわざわざ会津若松まで通う顧客が多いという。
元々は周りに多い、旅館に勤める仲居たちの需要に応えるために立ち上げられた店だったが、
オーナー自身が自分のバストに合う下着を揃えていたところ、
『大きなカップの品揃えが日本でも随一』
と有名になっていったという。
そしてインタビューを受けているオーナーは、花音さんだった。
杏奈先輩は、モデル兼店員として働くらしい。
あの合宿の日、千紗と由美子が行った店なんだろう。
最近花音さんが忙しそうにしていたのは、これだったんだな。
沙織母さんの言っていた”守秘義務”も、まだ発売前の雑誌の記事と考えたら当然だ。
さらに、店長として紹介されていたのは、中田美由さんだった。
「美由はね『晴道に逢えるなら』って言って、
店長を引き受けてくれたの。
晴道にはオープンしてからしばらく、
ボディーガードを引き受けてほしいのよ。
霞の者としての任務よ」
そう、俺はいつの間にか、霞の者としての月給を受け取ることになっていたのだ。
初めは作戦に参加した都度の報酬だったはずなのに……。花音さん曰く、
『沙織さんは二つ返事でオッケーしてくれたわよ』
だ、そうだ。
波乱の予感しかしなかった。
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って、花音さんいつの間に湧いて出ました?
今、部屋には誰もいませんでしたよ!
久々にこの人は”忍者の末裔なんだ”と実感した。
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Scene003【オープン準備】
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俺はオープン当日になって初めて、花音さんにそのお店に案内された。
お店は俺のマンションから近く、駅から少しだけ離れた大通りに面していた。
俺が通っている高校の生徒がよく歩く道だ。
全然知らなかった。
いつの間に準備していたんだ?
今日は招待客とメディア関係者のみだという。
オープンにはまだ時間があるはずだが、
それらしき人たちが三々五々集まり出していた。
周りにはいかにもSPといった格好の霞の者が厳しく警護している。
「さあ、晴道入って」
俺は周りを見回して言った。
「俺はボディーガードって言っていましたが、
霞の者の人たちがすでに警護についていますよ?」
花音さんは呆れたような表情で言った。
「だから、ボディーガードよ。
警護とは言ってないでしょ?
晴道の持ち場は店内よ」
(なっ、なんだって〜!)
その声はなんとか心の中だけに収めた。
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「女性店員だけだからね、裏に男性の更衣室はないのよ。
だからここで着替えて」
俺は事務室らしい所に案内された。
まぁ仕方ないな。
準備されたのはシックなスーツだった。
「ボディーガードって、何するんだ?」
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売り場フロアに出ると、店員が集まっているようだった。
俺と同じシックなスーツ姿だが、妙に胸元が強調されていた。
しかも全員が巨乳だ。
花音さん
美由さん
栞さん
杏奈先輩
真帆先輩
キャサリンまでいた。
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「美由さん、お久しぶりです」
「晴道くんは、私たち店員のボディーガードよ。
今日はメディア関係者の出入りで人が多いから気をつけてね。
通常営業になったら、基本男性一人での入店はお断りだから、
そんな危険はないと思うけれどもね」
(私は晴道の女になりに来たのよ)
ちょっ、美由さん何爆弾発言を心の中の声で飛ばしているんですか?
美由さんだって霞の者だから、俺が心の中の声を聞けるのを知っているでしょうし。
気の放出を抑えることだってできるでしょうに。
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「栞さん、どうしたんですか?」
「守さんに勧められてね、ここに就職したのよ。
前の仕事よりお給料も良いしね」
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「杏奈先輩、雑誌の記事驚きました」
「あなたのお母様の雑誌じゃない」
母さんは編集長じゃなくて、編集部長なんだが、まぁ変わりないか。
「母さん、全然教えてくれなくて」
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「真帆先輩、もしかしてすでに決めた就職先って……」
「ええ、ここよ。
だから今はアルバイトで入っているの。
前にも話したけれども、何かやりたいことを見つけるまでって約束だけれどもね」
(一番なりたいのは、晴道のお嫁さんなんてね)
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「花音さん、なんですかこの店員のメンバーは」
「ふふ、ボディーガードに晴道がうってつけでしょ!」
まぁこのメンバーなら頼まれなくても、守ってみせますよ。
「ところで、キャサリンは?」
「キャサリンは英語圏のメディアが来た時の対応をお願いしようと思っているの。
今日は私もいるけれども、ずっとメディア対応しているわけにもいかないしね」
ちなみにキャサリンのヘンテコ日本語は皆を楽しませるための演出だと、そろそろバレ始めている。
それでも皆に不快に思われていないのは、人柄のおかげだろう。
(本当は何語でもオッケーなんだけれどもね)
キャサリンが心の中の声で伝えてくる。
キャサリンは、生い立ちから考えたらそうなんだろうな。
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そして、もう一人店員さんがいた。
村澤 美久さん
今世では初めて会う。
前世でもあまり交流はなかったが、和也さんの恋人だった。
前世で唯一、美貌で千晴さんを超えていると言われていた超美人。
俺より身長の高い和也さんと並んでも映える長身。
そしてなにより、花音さんや美由さんに匹敵するような巨乳だった。
正直、俺の好みのどストレート。
「あっ、初めまして、小泉晴道と言います。
よろしくお願いします」
そう言った俺に、美久さんは言った。
「えっ、本当に晴道くん!!
私、あのドラマで大ファンになっちゃいました!
ファンクラブにも入っています!!」
(実物もかっこいい!!もう惚れちゃう。抱いて!!!)
美久さんの目線が熱い。
ちょっ、前世の美久さんはあまり知らないけれども、
前世で和也さんから聞いた感じだと、
こんな人じゃなかったよ!?
美由さんに美久さん。
超どでかい爆弾が爆発した気がする。
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Scene004【オープン】
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店舗は10時にオープン予定。
今日は13時までメディアのみに開かれ、
1時間の昼休憩を挟み、14時以降は招待客が招かれる。
オープン前に店員の皆を再確認しておこう。
一ノ瀬 花音:オーナー
中田 美由:店長
斉藤 栞:店員
村澤 美久:店員
神谷 杏奈:モデル兼店員
藤原 真帆:アルバイト
早乙女 キャサリン(さおとめ きゃさりん):通訳
花音さん、杏奈先輩、真帆先輩、キャサリン。
七人のうち四人、俺と関係したことがある。
前世での美由さんも含めれば五人。
栞さんは関係したことはないけれども、
あのハプニングで、全てくまなく見てしまったことがある。
あとは美久さんだけ……。
駄目だ、これは完全にフラグでは?
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「それじゃあ、オープンしてマスコミ関係者を入れるわよ」
花音さんの合図で取材が始まった。
俺はボディーガードの役目のため、
耳を澄ませて、周りの心の中の声を聞くようにする。
花音さんが店の前でマスコミの取材を受ける。
その後、店内の取材が始まる。
(何この広さ、ランジェリーショップのレベルじゃないわ)
(本当にモデルの杏奈がいるわ)
ちなみに杏奈先輩は、名前はそのままモデル名にしたが、 苗字を非公開にしている。
実家との決別の意思表明だろう。
(えっ、晴道がいる!!なんで?)
あっ、自分のことをすっかり忘れていた。
俺だって、昨年のドラマ出演に、それ以前からのモデルの仕事で、
マスコミにはそれなりに顔が知られている。
「あの、店長、なぜ俳優の晴道さんが、ここに?」
(あっ……。俳優がボディーガードって無理があるわね)
花音さん、何も考えていませんでしたね!
「彼にはお客様に、男性からの視点でアドバイスをしてもらえればと思いまして、
来てもらいました」
いやいや、それじゃあ『なぜ俳優が?』の答えになってないですよ!
(えっ! 晴道くんに下着を選んでもらえるの?凄いサービスじゃない!?)
花音さーーん、なんか変なことになりそうなんですけれども!
「それでは、晴道さんに男性目線で下着を選んでいただけると?」
「はい、そうですね」
花音さん何言ってますか!
「体験させていただいても?」
「はい、よろしいですよ。
取材時間が終わりましたら、ショッピング体験時間とさせていただきますので、その時に」
(花音さん、俺、そんなアドバイスできませんって)
(晴道なら大丈夫よ。相手の心の中の声を聞いて、相手が言って欲しがっていることを言ってあげれば良いだけだから)
いや、それは確かに今世での俺の生き方だから、
難しくはないんだけれどもさ。
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1時間半程経った頃、花音さんが声をあげた。
「それでは、これよりショッピング体験時間とさせていただきます。
男性スタッフの方はご退出ください。
また申し訳ございませんが、当店は最低カップがEとなっておりますので、ご了承ください」
何名かの取材陣が残った。
そのうち、先ほど俺のことを花音さんに聞いたレポーターが声をかけてきた。
「晴道さん、私プライベート用の下着を選ぼうと思うの。
アドバイスをしてくれます?」
TVのレポーターさんらしい。
名前は知らないが、なかなかの美人さんで、
この状況で残るだけあって、服の上からでも分かる巨乳さんだった。
(晴道くん、やっぱりかっこいい。お近づきになれたら良いな)
おーい、レポーターさん、25、6歳ですよね。
俺はまだ今年で17歳ですよ?
8〜9歳年下じゃないですか?
「プライベート用なんだけれども、この赤いのと黄色、どっちが似合っていると思う?」
(赤は派手すぎかな?自分では黄色が似合っていると思うのだけれども……)
「お客様には、そちらの黄色の方がよくお似合いです」
「そう、ありがとう」
(私のこと、よく分かってる。実はお似合いなんじゃない?)
それを見ていた他のレポーターさんも次々と俺に意見を聞きに来た。
俺は都度、心の中の声で相手が言ってほしいと思っている言葉を返していった。
(((晴道くんって、実は前から私のファンだったりして。こっそり誘ったら、ワンチャンある??)))
全員の好感度を上げてしまった。
(パパ、見境ないのね)
珍しく、キャサリンの心の中の声が冷たかった。
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Scene005【閑話】
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もう晴道ったら、何をデレデレしているのかしら。
そりゃね、テレビ局のレポーターをやるだけあって、みんな美人さんで、
このお店で下着を買うだけあって、巨乳さんだけれどもね。
私だって、なかなかのものでしょ!!
成長したら、どの人生だって美人の長身巨乳になるんだから。
あら、前にもこんなことを考えたわね。
でも、今の私は明確に、
『晴道の世界に降りて行きたい』
そう切に考え始めていた。




