ep003:その騒ぎ、お約束につき
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Scene009【3人の夜】
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街を案内しつつ、キャサリンはホテルの部屋に荷物を取りに戻った。
花音さんの部屋に引っ越すのは明日でも、着替えくらいは必要だろう。
ホテルの部屋まで付いていった千紗が言った。
「晴道、明日は買い物よ!
キャサリンったらね、ろくな着替え持ってないのよ。
今晩の寝間着と下着は私のを貸してあげる」
キャサリンは赤くなって俯いていた。
可愛い。
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俺たちは千紗の部屋に戻り、美優さんの夕食をいただいた。
暖かな時間が流れる。
食事の後、俺は切り出した。
土日の泊まりがけの集まりに千紗を誘ったことだ。
「キャサリンちゃんの歓迎会でしょ、オッケーよ。
花音さんからも連絡がきたわ」
千紗が来るって決めた時、花音さんにもLINEで連絡しておいたから、根回ししてくれたんだな。
さらに千紗も切り出した。
「美優お母様、今晩はキャサリンの所に泊まりに行っても良いかな?」
(キャサリンと晴道、二人きりにはさせられない)
「晴道くんの部屋よね。
沙織さんと洋介さん、旅行中ですものね」
そうだ、俺の両親は
今日木曜から三泊四日で二人で旅行に出かけている。
俺が土日に泊まりがけで出かけるのを知って、
自分たちもと計画したんだろう。
「三人なら、変なこともしないでしょうし。
良いわよ」
バレてると言うか、美優さんフラグ立てないでください。
それ、変なことしちゃうパターンです。
千紗は赤くなって俯いていた。
可愛い。
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俺は先に自分の部屋に戻った。
俺の部屋にはお約束の書き置きがあった。
『シーツ変えてあるから、ダブルベッド使っても良いわよ』
あー、うん、今回は使わせてもらうよ。
さすがに千紗とキャサリン、二人と一緒にこのベッドでは寝られないや。
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俺がシャワーを浴び終わると千紗がやってきた。
「ねえ、晴道、キャサリンはまだお風呂に入ってるの。
だから今のうちに……」
そう言って、背伸びをして俺の首に腕を回してきた。
俺は熱いキスをする。
大人のキスだ。
「はぅ、はるみちぃ」
「キャサリン、ここまでだよ」
「気づいていたの?」
一瞬で金髪碧眼のキャサリンに戻っていた。
「そんなこともできるんだ」
キャサリンは声も千紗と同じだ。
だから区別のために、あの変な日本語を使っているのだろう。
もしこれがアニメならば、同じ声優が演じるであろう。
実は全く区別できていなかった。
でも、千紗ならこういう時、照れ隠しに心の中の声でからかってくる。
それが無かったから、分かった。
「パパのい・じ・わ・る」
上目遣いで唇を突き出すキャサリン。
可愛すぎだろ!
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すぐに本物の千紗もやってきた。
(ねえ、二人で何してたのよ)
心の中の声で問い詰めてきた。
微妙な空気感を察知したらしい。
「二人はこの部屋で、寝てくれ」
俺は二人を両親の部屋へ案内する。
「「ねえ、晴道も一緒に寝よ」」
いや、そんなことをしたら、寝られなくなるって!
「「私と一緒じゃ嫌?」」
ダブル千紗のおねだりだ。
抗えるわけがなかった。
俺は美優さんが立てたフラグを見事に回収してしまった。
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Scene010【三人の登校】
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次の朝、千紗が作った朝食をいただく。
「千紗ママのご飯、美味しいです!!」
そうだろ、千紗の作る食事は心がこもっていて、最高なんだぞ!
そして、三人で登校する。
由美子がいつもの場所で待っていた。
「千紗が二人いる!!」
お約束の反応だ。
「だから、昨日教室で言ったろ。
なのに由美子ったら『同じロリ巨乳だからって、区別つかないんじゃないの?』なんて言ったんだぜ」
「私、なんでそう思ったんだろう……」
由美子はしゅんとしていた。
(ねえ晴道、キャサリンって、あの消えた未来のキャサリンなの?)
いや、だから、由美子は俺が心の中の声で答えても聞こえないだろ。
(えっ? 今、晴道の声が聞こえた!?)
えっ?
(私が晴道パパと由美子ママを通じさせました)
キャサリン、そんなことまでできるのか。
(由美子、聞こえるか?)
(うん、聞こえる。これが心の中の声なのね)
(全てはこの土日の集まりで話すよ。由美子も来るんだろ?)
(分かった、もう明日だしね。その時まで待ってるよ)
それにしても、由美子もママか。
キャサリン晴花と同等の存在っていう、あの一人目の愛の女神の因子を通して、前世の記憶を持っているんだよな。
俺が由美子と結婚した前世の記憶も持っているんだな。
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由美子も一緒に登校すると、
「「「千紗が二人いる!!」」」
大騒ぎになった。
「美奈さん、おはようございマッスル。
キャサリン早乙女デスます」
「昨日、晴道が言っていたとおりなんだ……」
落ち着くまでしばしかかった。
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授業はあっけないほど順調に進んだ。
キャサリンは積極的に手を挙げて、
おかしな日本語で笑いを取る。
キャサリンはあっという間にクラスに溶け込んでいった。
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Scene011【歌】
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学校が終わった後、俺たちは少し離れたターミナル駅前にあるショッピングモールに来た。
キャサリンが楽しそうに歌っている。
「Shopping with Daddy, shopping with Mommy,
Happy, happy, I’m so happy! ♡」
「えっと、『ダディ、マミー』って『パパ・ママ』だよね」
隣で歩いている千紗がつぶやく。
色違いの美少女二人が並んで歩く風景はとても目立つ。
(パパ・ママって呼んだら駄目?)
キャサリンが心の中で聞いてきた。
(えっ! キャサリンの心の中の声?)
えっ、千紗にも聞こえた?
(まるで、テレパシーチャットだな)
(便利でしょ!)
それにキャサリンがなんでもないように答える。
(心の中の声なら、ママって呼んでも良いよ)
千紗も答える。
(歌でも、晴道パパと千紗ママのことだって分からないよ)
キャサリンの返しに、
(まあ、良いんじゃないか)
俺は答えた。
「Shopping with Daddy, shopping with Mommy,
Happy, happy, I’m so happy! ♡
I love Daddy, I love Mommy,
That’s why shopping’s so much fun!
What should I buy? What will Daddy buy me?
What will Mommy buy me? I can’t wait to see! ♡」
キャサリンは歌い続けた。
(えっと、晴道、なんて歌ってるのかな?)
(えっとね、『何買おうかな、ママには何買ってもらおうかな?』ってところかな)
(私が買うわけじゃないんだけれども……)
そう心の中でつぶやく千紗に、キャサリンが話しかけてきた。
「そうだ、花音ママから手紙を預かっているの」
(ふーん、花音ママね)
千紗の心の中の声が冷たい。
(そっ、そういう前世もあったって話さ)
そう誤魔化す俺に、
(私と結婚した前世はないくせに!)
千紗のツッコミが厳しい。
(千紗は結婚しなくても、いつも俺にとって特別だよ)
俺は人目をはばからず、千紗の肩を抱き寄せる。
「そういうの、ずるい」
千紗は口に出して顔を赤くする。
「千紗ちゃんだけずるい!!」
キャサリンも反対側の腕にしがみついてきた。
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Scene012【閑話】
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それは今まで語られたことのなかった、晴道の前世。
それをしばし、晴道の視点から外れて語ろう。
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それは晴道が芸能界に入らなかった前世。
花音が1年で霞の宿に戻ってしまった前世。
由美子は2年ぶりに晴道に会いに行った後、第一彼女に収まった。
そのまま一度も第一彼女から落ちることなく、大学を卒業する。
そして、晴道が大学院に進み、由美子がバレーボールの社会人チームに所属した年、彼女はオリンピックの代表選手に選出される。
そして日本に金メダルをもたらした。
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「晴道、私やったよ」
「うん、由美子は凄かった」
「私ね、オリンピックのレギュラーメンバーになれて、
金メダルが取れたなら、実行しようと思っていたことがあるの」
晴道にはそれが何か、予想がついていた。
それでも優しく聞いた。
「それはなんだい?」
由美子は大きく息を吸ってから、
力強く言った。
「晴道、私と結婚してください」
晴道も応える。
「俺はしがない大学院生で、由美子を養うこともできない。
それでもいいのかい?」
由美子はにっこりと笑って言った。
「私、お給料もちゃんともらっているし、
CMの出演料なんかでも稼いでるよ。
晴道のことも養えるから。
晴道は一緒にいてくれれば良いの」
「分かったよ。俺も早く研究者として、稼げるようになるから。
俺と結婚してくれるかい」
そうして二人は結婚した。
さらに四年後、晴道は早くも准教授に就任していた。
異例の速さだった。
由美子はオリンピックで日本に二大会連続の金メダルをもたらす。
そして、そのインタビューでこう宣言した。
「今大会をもって、私はバレーボール選手を引退します。
次は一番のママを目指します」
その宣言通り、二年後には長女を出産。
晴花と名付けられる。
ちなみに千紗は、この前世でも晴道の傍らに居続ける。
そして由美子の子育てをサポートし続け、
由美子の子育てのインタビューやTV取材でも、度々名前と顔が出る。
その結果、ある子育て雑誌での特集記事『遠くの実母より近くの親友。第二のママはそこにいた』で有名になるのだった。
晴花は母の血を濃く受け継ぎ、スポーツ少女として成長する。
そして、母娘二代でバレーボールのオリンピック選手となり、日本に金メダルをもたらすのだった。




