ep001:その顔合わせ、衝撃につき
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Scene001【誰も気付かない】
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今日は授業が無く、ホームルームのみで解散だ。
ホームルームが終わると、キャサリンはクラスのメンバーに囲まれた。
「日本語うまいのね!」
「はい! アニメの痴女派での放送をリアルタイムで見たくてベンキョウしますた」
(”地上波”じゃなくて、”痴女派”なんてね)
キャサリンが心の中の声で俺をからかってくる。
「どんなアニメ見るの?」
「やっぱりラノベ原作のアニメがイチバンでっすネ」
(一番楽しみにしているのは、パパのハーレム生活ですよ)
「晴道君と千紗が出たドラマも見たっていってたね」
京子も声を掛けた。
「モウ奈美だボロボロでしヤ。」
(”涙”じゃなくて、”奈美だ”ね)
キャサリンは千紗の手を取り言った。
「千紗ちゃんの演技が一番好きでした。
逢えてとっても光栄です」
その挨拶は完璧な日本語だった。
(だって千紗ママへの挨拶だからね。私は晴道パパの娘としても晴花の記憶は引き継いでいないけれども、消えたあの未来のキャサリンの記憶は引き継いでいるわ。消えた未来のキャサリンは、パパにとって千紗ママが特別な人だって知っていた)
そこで俺は我慢できずに言った。
「なあ、皆、キャサリンと千紗ってどう思う?」
「どうって?」
皆が顔を見合わせる。
「いや、二人ってそっくりじゃないか?」
「え? キャサリンは千紗と違って金髪碧眼だし、全然違うでしょう?」
京子が答える。
「晴道、同じロリ巨乳だからって、区別つかないんじゃないの?」
由美子が俺をからかってきた。
千紗もピンと来ていないようだ。
「じゃあ、二人を同じポーズで写真撮らせて」
「いいわよ」
「良子デス」
俺は撮影した写真をスワイプで交互に表示させる。
髪と瞳の色を変えただけにしか思えなかった。
しかし顔識別アプリに読み込ませると、完全に別人と判別された。
これは……電子機器の識別すら変えるほどの認識障害の術?
消えた未来のキャサリンも使っていた!
(その通りよ)
(キャサリンは俺の心の中の声が聞こえるのか?)
(ええ、もちろん気の放出を抑えてたら無理だけれどもね)
「変な晴道」
千紗に呆れられた。
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Scene002【真実】
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そこで、職員室に帰らず、皆をニコニコと眺めていた花音さんが、俺に声をかけてきた。
「晴道、少し話したいことがあるの。いつもの部屋に 来てくれるかしら?」
(キャサリンのことよ)
まあ、そうだろう。
「分かりました」
「キャサリンもね」
「はい」
えっ、どういうことだ?
「晴道には、キャサリンの通訳をお願いしたいのよ」
花音さんはクラスの皆に聞かせるように言った。
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俺とキャサリンはいつもの指導室へと連れられてきた。
「花音さん、入学式は参加しなくていいんですか?」
俺たちの学校では、4月の始業式の後に新入生の入学式が行われる。
そのため、俺たち2・3年生は今日はホームルームのみで解散なのだ。
「今日はキャサリンと今後の生活について相談に乗らなきゃいけないから、遅れて参加する事になってるの」
花音さんはそう言って、キャサリンに話し始めた。
「ねえ、キャサリン。私に認識阻害の術は意味がないわ。
私は貴女の正体を全て知っている」
さすがは花音さん。キャサリンが千紗の姿をしていることにも、気づいているんだ。
「分かりました。花音さんには隠し事は無理ですね」
キャサリンは認識阻害の術を解いたようだ。
花音さんが目を見開く。
「えっ、なんで千紗ちゃんと同じ姿なの?」
「「へっ?」」
俺とキャサリンの声が重なった。
「消えた未来のキャサリンと同じ姿のはずなのに、どうして私はそう認識できないのかが疑問で、鎌をかけたのだけれども……」
あー、”鋭そうなのに、どこかポンコツでずれている”。
それは前世以前の印象で、今世では印象が違うなと思っていたのだけれども、
やっぱり変わらないや。
「それはともかく、貴女はあの消えた未来のキャサリンと同じ存在なの?」
そうだ、俺もちゃんと聞きたかったことだ。
さっき心の中の声で『消えたあの未来のキャサリンの記憶は引き継いでいる』とは聞いていたけれども。
「はい、私はあのキャサリンと、あの事件を引き起こした、あなた方の言う二人目の”愛の女神”が融合した存在です」
えっ、そうなんだ……。
「そう。貴女は被害に遭った女の子たちのことをどう思っているの?」
「とても酷いことをしてしまったと思っています。
可能ならば、謝罪したいとも」
それは時が巻き戻された直後にも、俺が花音さんに説明していたことだ。
「じゃあ、あの消えた未来の記憶を持っている女の子たちを全員集めましょう!!」
えっ? それって
花音さん・花月さん・杏奈先輩・洋子先輩・真帆先輩・由美子・結衣・遥。
全員一堂に会するってこと!?
波乱の予感しかないんですが!!
「そんなことが可能なんですか?」
「もう根回しは済んでいるの。キャサリンが参加するかどうかは別にして、みんな集まって一度話しましょうってね」
やっぱり、花音さんの行動力は半端ない……。
「明後日からの土曜日曜で集まるわ」
「えっ、泊まりがけなんですか?」
どう考えても、俺も呼ばれるんだよな。
聞いてないよ。
「言ったでしょ、根回しは済んでいるって。
全員のご両親には私が直接挨拶に行って、許可を得ているわ。
晴道のご両親も含めてね!」
「聞いてません!!」
「沙織お母様は”オッケーよ”と二つ返事だったわよ?」
沙織母さん、絶対に驚かすつもりで俺に何も言わなかったな……
しかしそんな考えは、花音さんの次の言葉で吹き飛んだ。
「キャサリンも大丈夫よね。
だって貴女、両親なんて存在しないんですもの」
「「えっ!」」
俺とキャサリンの声が重なった。
「キャサリン、貴女の履歴は徹底的に調べたわ。
何もおかしな所はない、完璧すぎるのが逆に怪しい。
あの消えた未来と同じでね。
貴女のお父様は転勤でアメリカから日本へ来るのだけれども、日本への赴任はまだ先。
でも貴女は日本の高校の新年度に合わせて、先に日本に来ている。
そうでしょう?」
「はい、”そうして”います」
なんだか凄い話になってきた。俺は口も挟めない。
「でもね、貴女のご両親はまだ存在しない」
「はい」
「どうやって辻褄を合わせるつもりだったかは知らないけれども、今は一人でホテル暮らしよね」
「はい、そうです。辻褄は”愛の女神”がうまくしてくれるはずでした」
「だったらね、私が身元引受人になるわ」
「えっ?」
「貴女の履歴、ハイスクール1年は私も所属していた高校ってことになっているわよね。
その縁で、私が身元引受人になったってことにしましょう。
キャサリンが先に日本に来たという設定はそのままで、
しばらくしたらご両親の転勤が取り止めになったことにして、
キャサリンが『自分は一人でも日本に居続けたい』とわがままを言ったことにしましょう」
その時、どこからともなく声が聞こえた。
『花音さん、ありがとうございます。その設定で調整します。私の娘、キャサリンのことをよろしくお願いします』
花音さんは周りを見渡してから、俺に聞いてきた。
「今のは、晴道の言う”愛の女神”?」
全員に聞こえていたようだ。
「はい、そうだと思います」
「なら決定ね!
私の部屋に住むといいわ」
杏奈先輩は仕事が順調で、既に独り立ちをしている。
杏奈先輩が居た部屋を使わせるのだろう。
「それで一つだけ条件があるの」
花音さんは真剣な目付きでキャサリンに言った。
「認識阻害の術を完全に解きなさい」
「それはどういう思惑でしょうか?」
キャサリンは首をかしげる。
うっ、千紗がもう一人いるみたいで可愛い……。
キャサリンは俺にとって千紗が特別な存在だと知っていて、この容姿になったらしい。
これは反則だろ。
惚れちゃうだろ!!
「だって、晴道の周りに、まるで双子のようなそっくりな色違いの美少女が住んでいるって
ラノベの舞台みたいで”凄く面白そう”じゃない!!」
「それはそうですね!!」
花音さんとキャサリンは顔を見合わせて笑った。
もうこれは波乱の予感しかないんですが!!
教室で試した顔識別アプリをもう一度試すと、
同一人物として認識された。
ちなみにアプリは霞の者に配られている物で、
世界最高レベルの技術が導入されているサーバーで動いているそうだ。
このアプリは例え一卵性双生児であっても、成長による差異やほくろの位置等で、完璧に区別してみせるという。
それは千紗とキャサリンが髪の色と瞳の色を合わせたら、この世界に二人を区別できる術はないという事だ。
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Scene003【衝撃の顔合わせ】
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「そういえば、今度の土日の予定は、土曜が由美子とデートで日曜が千紗とデートでした」
俺がつぶやくと、花音さんが答えた。
「由美子ちゃんは納得済みよ。千紗ちゃんには晴道から話しなさい。
千紗ちゃんを集まりに呼ぶかどうかも併せてね。
キャサリンがこの容姿ですもの、千紗ちゃんも他人事ではいられないわ」
そうだ、そういえばこの事態になって、
『千紗が仲間外れじゃないか。千紗には今回のこと、話してあげようかな』
と考えつつも、先延ばしにしたままだった。
俺は千紗に全てを話す決心をした。
千紗にはただ一人、娘の晴花のことすら話した。
千紗には隠し事をしたくない。
(ふふ、やっぱり千紗ママは晴道にとって特別な存在なんですね)
キャサリンの心の中の声が聞こえてきた。
そうさ、だからその姿を選んだキャサリンはずるいと思う!!
(恋する乙女はずる賢いのよ)
キャサリンから届いた心の中の声は、いつだったか由美子が言った言葉と同じだった。
「はい、俺は千紗に全てを話します」
俺は花音さんには直接声で伝えた。
「そうね、それがいいわね」
(千紗ちゃんはいつだって、晴道の特別。前世の記憶のことだって、千紗ちゃんには全てを話しているのよね)
花音さんはいつも、俺に心の中の声が届かないようにしてくれているけれども、
今のは意図的に伝えたのか、それとも思わず零れ出た強い感情なのか。
それは強い嫉妬なのかもな。
「キャサリン、千紗の所へ一緒に来てくれるかな?」
「うん、若葉ッタよ」
「その変な日本語キャラ続けるのか?」
「だって、千紗ママと区別付かなくなっちゃうでしょ!」
まぁ、いいけれどもさ。
俺は千紗に『少し話したい事があるので、部屋で待っていて欲しい』とLINEで連絡をした。
「じゃあ、私は入学式へ合流するわね」
花音さんはそう言って席を立った。
「そうそう、今日は花月もいないから、部屋の準備は明日以降ね。
今日は晴道の部屋に泊まらせてもらったら?」
そうだ、今晩は俺の両親は不在だった。
またしてもお約束は守られたのだ。
「はい、分かりました!!」
俺の意思は?
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俺はキャサリンを引き連れ、マンションへと戻った。
意を決して、千紗の部屋へと赴く。
ピンポーン
『はーい、晴道!! いま開けるね』
インターフォン越しに千紗が答え、ドアが開いた。
「晴道、あらたまって話ってなに?」
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「わっ、私が居る!?」
うん、普通そうなるよな。
「千紗、さっき教室で顔を合わせただろ。
早乙女キャサリンだよ」
「なっ、なんだって~~~」
千紗の定番が炸裂した。
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Scene004【閑話】
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私は千紗ママの驚く顔を見て、笑ってしまった。
キャサリンに認識阻害の術を使わせていた甲斐があったわ。
こういうのを、いたずら心というのかしら?
私は自分が感情豊かになっていくのを実感している。
いつか私も、晴道の世界に降りていきたい。
そう思っている自分に気づいていた。




