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人の心が見える俺にはハーレム生活イージーモード、でも一人に絞るのは無理ゲーだったin二度目の人生。  作者: iron-bow
第13話【その体験、二度目につき】

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ep007:その選択、二度目につき

⸻


Scene013【やり直し:杏奈】


⸻


次の日は呼び出されなかった。


「やっと繰り返しを抜け出せたか」


俺はそう思ったが……。


「これってどういうことですか?」


俺は自分の部屋で杏奈先輩を問い詰めていた。

部屋に帰ると、夕食の準備を始めている花月さんに花音さん、さらに杏奈先輩がいたのだ。


そして、その杏奈先輩は髪の毛が短く刈り込まれていたのだ。

それは髪型を変えたとかではなく、乱雑に切り落とされたようだった。


「何があったんですか!? 誰にやられたんですか!!」


憤る俺を杏奈先輩はたしなめた。


「晴道くん、落ち着いて。これは自分でやったのよ」

「えっ?」


それから杏奈先輩から聞いたのはこんな話だった。


⸻


私、神谷(かみや) 杏奈(あんな)は”自室”で目を覚ました。

えっ、何故?

私は一ノ瀬先生の部屋で仮住まいさせてもらっていたはず。

慌てて枕元のスマホを確認すると2月の最終土曜だった。


何が起こっているの?

しばらく混乱した。


普通なら信じられないような出来事だけれども、

私の身体に起こった奇跡を考えれば、

これくらいあるかもとも思えた。


そして、私は悩みに悩んで、ある決断をした。

それを早く両親に伝えたかったが、両親が揃ったのは、

もう木曜の夕刻だった。


⸻


「お父様、お母様、私は今の縁談を断ろうと思います」


当然両親は激怒した。

交互に私を罵った。


「何を言っているんだ!!」

「この縁談が、家にとってどれだけ重要なのか、

知っているでしょ」

「この縁談の準備にどれだけ金をかけたと思っている?」

「貴女をここまで美しく育てるにも、どれだけ手間暇かけたことか」


そうよね、相手の殿方を喜ばせるために、

私が18歳になったら、純潔を奪って性技を叩き込むくらいですものね。


「縁談は進んでいる、いまさら無かったことにはできない」


なによ、私が鬼に汚されたら、すぐに見捨てて、

何もなかったことにしたくせに。


酷い両親だったが、私は悲しくなかった。

あの未来で両親の本性を知ってしまっていたから。


「では、私は女を捨てます」


そう言って、こうなることを予測して準備しておいた

裁ちばさみで、自分の黒髪を切り落とした。


「なっ、何をする!

あの御曹司は、お前の黒髪をいたく気に入ってくれたのだぞ!!」


そう、私はまだ婚姻前だというのに、

もうその御曹司の”相手”をさせられていた。


あの御曹司は、私と”して”いる間、私の黒髪をずっと愛でていた。

私自身なんて、目にもくれずに。


だから、私はなるべく髪を短く刈り込んだ。


「ああ、ああ、もう駄目だ。

御曹司はまたお前の髪が伸びるまで、待ってはくれまい。

お前なんぞ、もう娘でもなんでもない。

出て行け、今すぐ出て行け!!」

「はい、そうさせていただきます。

これから荷物をまとめるので、明日の朝一で出ていきます」


私はそう言って、両親と決別した。


⸻


Scene014【共感】


⸻


両親の元を離れ、自室に戻った私はまずスマホである人物に連絡をした。

生徒会長の特権で手に入れていた、先生方の緊急連絡先。

その中からお目当ての番号を見つけ出す。


「一ノ瀬先生でしょうか?

私は神谷と申します。

唐突で信じられないかもしれませんが、

私は未来の記憶を持っています。

そのことで明日、お話しできないでしょうか?」


一ノ瀬先生は驚くかと思ったが、予想していたようだ。

そんな気がしていた、一ノ瀬先生も未来の記憶を持っているのだろう。


「やはり、こうなったのね。

もちろん大丈夫よ。

しばらくうちに泊まりなさい」


一ノ瀬先生、いいえ、花音さんの声は優しかった。


「はい、ありがとうございます。

“また”お世話になります」

「ふふふ、そうよね、”また”よね」


⸻


翌日の午前中。見送りもなく家を出た私を、

車が迎えに来てくれた。

運転していたのは、たしか斉藤さん。

花音さんと同じマンションのひとつ上のフロアに住んでいた。

斉藤さんは何も言わなかった。

かける言葉が分からないのではない。

何も言わないことが優しさだと知っている、大人だった。


⸻


「お世話になります」


ニット帽を脱いで頭を下げた私を、花音さんは突然抱きしめてきた。


「辛い選択をしたのね」

「えっ?」


花音さんは泣いていた。


「私には分かるの。

ううん、私だけには分かるの」


花音さんはそう言って、自分の過去を話しだした。

いや、それは過去ではなかった。

前世の記憶だという。

前世の花音さんは厳しい一族の元に生まれたという。

一族の伝統を守るための辛い修行。

私よりずっと幼い頃に純潔を奪われ、男の人を操るための性技を仕込まれたという。


「だから、私はね、貴女の辛さが分かるの」

「今世はどうなんですか?」

「今世の私はとっても幸せよ。

家族も里のみんなも優しいわ。

だからこそ、私は貴女にも幸せになってほしい」


そう言ってくれる花音さんに、私ははっきりと答える。


「大丈夫です。

私は自分の幸せのために、選択しました。

だって、私はこうしないと、晴道のそばにいられませんから」


花音さんは笑って答えた。


「そっか、そうよね。

世界の異変より、家のことより、

そっちの方がよっぽど重要よね!」


私も笑って答えた。


「はい、その通りです」


⸻


Scene015【わがまま】


⸻


話を聞き終わった俺は、杏奈先輩に確認する。


「もう、何があっても、家の人が杏奈先輩を取り返しに来るようなことはないんですよね?」

「ええ、ないでしょうね」


杏奈先輩は少しだけ寂しそうに言った。


「もし、そんなことがあったら、私たちが動くわよ」


花音さんが笑いながら言った。

霞の者が動くなんて、怖すぎる。

でもその意味が分からないのか、杏奈先輩は首を傾げていた。

杏奈先輩が首を傾げると、あの美しい黒髪がさらりと流れる。

俺はあの光景がたまらなく好きだった。

だから、こう言った。


「杏奈先輩、一つだけ俺の”わがまま”を聞いてもらえますか?

あっ、いや、”わがまま”を“させて”くれますか?」

「ええ、いいわ。私、晴道くんの望みなら、なんでも聞くよ」

「それじゃあ、じっとしていてもらえます?」


俺は杏奈先輩に椅子に座ってもらう。

俺は後ろから、杏奈先輩を抱きしめる。


「晴道くん?」


俺は杏奈先輩の頭部に気を流し込む。


「晴道くん、気持ちいい……」


その様子を見ていた花音さんと花月さんが息を呑む。


「えっ、ええええ」


杏奈先輩は声を上げる。

杏奈先輩の髪は腰まで伸びていたのだ。

いや、俺がやったのだが、あの未来の時は頭皮の治療も含めてだったから、結果として髪が伸びたのだけれども。

今回は髪を伸ばすことだけ意識したからか、効果が出すぎた。


「昨日までだって、胸元までだったのに……。

こんなに長いと、お手入れも、まとめるのだって、アレンジだって大変なのよ」

(でも、うれしい。私だけの特徴、晴道くんが好きだって言ってくれていた髪が戻った)


「ねえ、晩御飯にしましょう。

ちゃんと食べないと」


花月さんが声をかける。


「えっ?」


杏奈先輩が首を傾げると、黒髪がさらさらと流れる。

俺が好きな光景が戻った。

花音さんが説明する。


「あのね、無から有は生まれないの。

それだけの髪の毛を作り出すタンパク質は、

どこかで消費しているはずなのよ」

(おっぱいは減ってなさそうよね、ウエストがさらにくびれていたりして。巨乳にウエストがくびれていて、そこまで伸びる黒髪。強敵すぎるでしょ)


花音さんの心の中の声のぼやきが聞こえてきた。

花月さんの心の中の声は遮断しているのか、

聞こえてこなかったが、ため息をついていた。


「あっ、俺、シャワー浴びてきます」

「えっ?」

(まだ早いんじゃ)


杏奈先輩? 何想像してますか?

こっちまで意識しちゃうじゃないか!


「部活の後なんで」

「そっ、そうよね、うん、ははは」


笑ってごまかす杏奈先輩に、

花月さんが追い打ちをかけた。


「私たちの部屋はまだ準備終わってないから、

杏奈さんは、こっちに泊まってくれませんか?

晴道くんのご両親は二人とも出張だし」


そう、両親不在のお約束はまたしても、守られたのだ。


(部屋の準備が終わってないのは、嘘だけれどもね)


花月さんがわざと心の中の声を飛ばしてくる。

そして、


「どうせ、ベッドは一つしか使わないでしょ!」


杏奈先輩は真っ赤になって突っ伏していた。


(晴道くんと再会できるならって、期待はしてたけれども、早すぎじゃない?)


4人で夕食を終え、俺は杏奈先輩の期待に応えてしまった。

ベッドに広がる黒髪は、とてもとても美しかった。


⸻


Scene016【再び】


⸻


翌日土曜は由美子とのデートの約束だったが、

昨晩こんな連絡がきていた。


「明日の土曜のデートだけれども、キャンセルでいいかな?

私は月曜いっぱい愛してもらったし。

晴道は土曜から金曜まで、7日7人連続でお疲れでしょ!」


全部バレてる……。


だから土曜に俺は香織姉さんにお願いをして予約を取り、

香織姉さんが勤める表参道のサロンへと連れて行った。

消えたあの未来と同じだ。


「毛先が揃ってないけれども、それ以外は生まれたてのような、みずみずしい髪ね。

任せておいて。毛先だけ完璧に仕上げてみせるわ」


香織姉さんはそう言ってくれた。

そして続けて、


「ねえ、うちのヘアモデルをやってくれない?

カットじゃなくて、セットの。

報酬は弾むわよ」

「はい、あの、やりたいです!」


これも同じだ。


「香織姉さん、杏奈先輩は今、仕事を探しているんです!

モデルとか役者とかできるかな?」


香織姉さんは俺には冷たい目を向け、


「ふうん、杏奈先輩ね」


杏奈先輩には温かな視線を送った。


「良家のお嬢様って感じだけれども、

訳ありなのね」

「あの、はい。

厳しくしつけられているので、

茶道、琴、華道、何でもできます」

「だったら、モデルだけじゃなくて、役者もいけるかもね。

そういうシーンに映える役者って意外といないのよ」

「私、頑張ります!」


⸻


その後、杏奈先輩はサロンのセットモデルを手始めに

グラビア界に鮮烈なデビューを果たした。


なにせ、超美人でかつ清楚なイメージ・長身でほっそりしている・なのに爆乳・しかも腰まで伸びるつややかな黒髪なのだ。

唯一無二となる。


そして、少し先の話だが、俺が彼氏役でデートのイメージグラビアを出版する。

それは伝説のミリオンヒットとなるのだった。


ちなみに、杏奈先輩の活躍を知り、杏奈先輩の両親は接触しようとしたらしいのだが、

霞の者たちが裏から手を回し阻止した。

さらには神谷家は没落したらしい。

霞の者を敵にして、この日本で生きていけるわけがないのだ。


杏奈先輩には内緒の話である。


⸻


Scene017【閑話】


⸻


私は悲しくなっていた。

子を愛さない親がいるなんて。

この子には幸せになってほしい、そう切に願った。


だから、ほんの少しだけ、世界に干渉をした。

ある結果を書き換えた。


⸻



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