ep012:その帰国子女、デンジャラスにつき
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Scene033【決戦】
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「マジック・アロー」
あれ、キャサリン。
発音が日本語っぽい。
それに、いつの間にか魔法少女の衣装になっていた。
「気分ですから」
ふっ、こんな決戦を前にして……。
それなら俺も一度、光の剣を納める。
「我が意思の力、刃となさん。
光よ! レイブレード!!」
キャサリンの光の矢が鬼の注意を引き、
俺の光の剣がいつもよりも長く伸び、鬼の左腕を斬り飛ばす。
気の技はイメージが重要だ。
格好をつければ、威力は増すんだぜ。
なんて考えていたら、鬼が口からビームを放ってきた。
うぉ! 俺は横っ跳びでかわす。
「マジック・シールド」
キャサリンは光の盾を展開するが、
「キャー」
吹き飛ばされた。
「大丈夫か!」
「ダメージは大したことありません」
「連携するぞ」
俺たちは頷き合った。
「マジック・アロー」
キャサリンの光の矢が鬼の視界を奪い、
「はぁーー!」
俺の光の剣が、今度は鬼の右腕を斬り飛ばす。
ガゥァア
しかし、鬼の両腕が生えてくる。
「繰り返して、消耗させます!」
「おうよ」
俺たちは何度も連携を繰り返し、
左右の腕を何度も切り落とした。
やがて、右腕の再生が止まった。
「いけるぞ!」
「はい! マジック・アロー」
「おらぁーーー」
左腕も吹き飛ばす。
「後はとどめを!」
キャサリンがそう言った時、
鬼が大きく口を開いた。
口の中が光る。
またビームか!
「いっけーー」
俺は光の刃を飛ばす!
それは狙い通りに鬼の口の中に命中し、
まさに発射されようとしていたビームに干渉した。
ドガーーン
鬼の頭が吹き飛んだ。
「やったか?」
その時、鬼の腹が蠢く。
守さんが抜け出してきた裂け目が再度開く。
「なっ、何が起きている!?」
そこには牙が生えていた。
中には舌が見える。
口だ。腹に口ができた。
さらに人間で言う胸元、大胸筋辺りにも割れ目ができる。
それが開くと目が現れた。
「これは、また腕が生えるパターンだな」
俺は他人事のように呟いた。
ガッウォーーン
鬼が叫ぶと、左腕が、続いて右腕が生える。
顔に足と腕が付いているような異形の物ができた。
そう言えば以前、千紗の兄の健一さんに勧められてプレイした古のRPGのリメイクに、こんなラスボスがいたっけ。
「鬼は憑依された者のイメージに強く影響を受けます」
あー、守さん、対人格闘ゲームだけでなく、RPGもやるんだ。
それはともかく、それならこのままダメージを与え続ければ、頭が生えてくる。
ゲーム通りなら、それで最終形態だ。
俺は光の剣で斬りつける。
ガシ
鬼が光の刃を右手で掴む。
おいおい、掌が溶けているぞ。
しかし俺は光の刃を一旦消し、
自由になってから再度刃を伸ばし、
胸の目を突いた。
ギャーー
再生しないようだ。
いけるぞ。
「マジック・アロー」
バシュ
キャサリンの光の矢が反対側の目を潰す。
グォーーーン
鬼はのけぞり返る。
そして、
ブクブクブク
予想通りに頭が生えてきた。
「やらせるかよ」
俺は光の刃を最大出力にした。
日本風に言えば“斬馬刀”。
いや、今はこちらの方が合っているか。
ファンタジーゲーム風に“光のバスターソード”を作り出した。
「これで、終わりだ」
鬼を一刀両断にした。
鬼は叫び声を上げる間もなく、
真っ二つになった。
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Scene034【決着】
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鬼が消えるのかと凝視していると、
「晴道! 女性たちが!!」
キャサリンの声に千紗たちを見ると、
千紗たちが磔にされていた十字架が、霞んできていた。
「あれも、鬼と同じ物質だったのか」
千紗たちが落ちる!
俺は“迷わず”千紗の元へ走り寄り、
千紗を抱きとめる。
しかし、早紀と栞さんが!
俺が振り向くと、早紀はキャサリンが、
栞さんは意識を失っていたはずの守さんが受け止めていた。
「守さん、いつの間に!」
「ふっ、休ませてもらったからな」
いやいや、さっき守さんが力尽きてから、
大して時間は経っていません。
愛のなせる業かな。
「仕方ありません」
京子が、いや京子に憑依している情報生命体が呟いた。
レイスが何体も出現する。
千紗たちの生命力を吸い尽くすつもりか?
俺は光の剣を……いや。
「キャサリン、レイスを頼む」
キャサリンは頷く。
「京子!
そんな奴に負けるな!」
俺は京子に向かって叫ぶ。
「京子は千紗のように、他人を思いやれる!」
そうだ。
「京子は由美子のように、他人を優先できる!」
そうだよ。
「京子は早紀のように、控えめだ!」
そうなんだ!
それにな。
「京子だって、長身巨乳じゃないか!!」
「やっぱり、そこですか」
キャサリン、良いシーンなんだから、やめて。
「そんな奴に頼らなくても、
俺は京子のことが大好きなんだ!!」
その瞬間、大量に発生していたレイスが消えた。
そして、
「きゃー、きゃー、晴道に告白されちゃった!
きゃー、これはもうゴールインよね!!
結婚よね!!!
初夜に突入よ、きゃーきゃーきゃー!」
あぁ、いつもの京子の心の中の声だ。
実際に声に出ちゃっているけれども。
「えっ? この状況なに?」
分かった。
たった今、あの情報生命体は京子から弾き出されたんだ。
俺はキャサリンと目を合わせた。
キャサリンも笑っている。
俺たちは、思わず笑い合った。
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Scene035【愛し合う】
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気づくと、あの前世で死んだ時に来た部屋にいた。
「おいおい、ハッピーエンドじゃなかったのか?」
俺は思わず呟いた。
『大丈夫です、晴道。
貴方は死んでいません。
少し伝えたいこととお願いしたいことがあって、
お呼びしました』
そう言うのはあの”自称・愛の女神”。
いや、二人いる。
『わたし、なんてことしていたの? あんな酷いことを……。そんなつもりじゃなかったの。ごめんなさい、許して。本当にごめんなさい』
その一人はうずくまり、泣いていた。
『お分かりでしょうが、貴方の世界に干渉していた、私の分身です』
「分身だって?」
『私たち高次元の情報生命体は本来、群であって、個ではありません。
それが貴方の世界を観測することによって、
愛を知り、
自我を得て、
個となったのです。
この子も元々は私と同じ存在でした』
「それが何故、あんなことを?」
『この子は、貴方の世界を観測し、自我を得た時、
愛をもっと知りたいと思い、
貴方の世界に直接降り立ったのです』
「それで、京子に憑依したと」
『はい。そのため、あの少女の視点でしか世界を観測できなくなりました。
だから今、自分が起こしたことの結果をすべて知ったのです』
『ごめんなさい。許して。私はただ、愛を深く知りたかっただけなの。少女たちがあんな思いをするなんて、分からなかったの』
そうだな。
鬼が暴力で想いを叶えようとしたり、
少女たちを犯そうとしたのは、
憑依された男の欲望が解放された結果だって話だったな。
「ああ、全てが君のせいだったわけじゃないよな」
『ありがとう、晴道。
それでお願いなんだけれども、
この子を愛してほしいの』
「えっ?」
『深く深く愛を教えてあげてほしいの』
それは、抱くってことだよな。
でも、どう見ても情報生命体には肉体がなかった。
『それは……キャサリン、体を貸してくれない?』
あー、ここでも考えていることは筒抜けなんだな。
って、それよりキャサリン?
いた。でも……存在が薄い。消えかけている?
『キャサリンを貴方の世界に送り込む時に、
大量の私の因子を埋め込みました。
それがここに来たことで、私に戻ってきてしまったのです』
だから、存在が薄くなっているということか。
「はい、私の役目は終わりました。
どうぞご自由にお使いください」
『いいえ、その体は貴女のものです。貴女が主体なんですよ』
「分かりました。
それでも、どうぞお使いください」
『ありがとう。
さあ、行きなさい』
もう一人の情報生命体がキャサリンに重なる。
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・
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そこには元通りのキャサリンがいた。
俺の理想通りの女性。
晴花の成長した姿。
『晴道も自分の体をイメージして』
そう言われて気づいた。
俺も存在が薄くなっていた。
自分をイメージする。
『えっ、パパ……』
俺は今世の16歳の姿ではなく、
18歳から19歳の大人の体になっていた。
“深い深い愛”と言われて、“大人でなければ”と
そう思ったのだ。
『それでは、場所を準備しますね』
そう情報生命体が言った瞬間、
俺とキャサリンは俺の部屋にいた。
そうだな、深く深く愛し合うなら
自分の部屋が一番だ。
俺はキャサリンを抱きしめて言った。
「愛してるよ」
俺はキャサリンと心の底から愛し合った。
もう一人の情報生命体の存在を感じながら。
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Scene036【結末】
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気づくと、俺たちは元の部屋にいた。
『ありがとう、晴道』
『愛って素晴らしいんですね』
喋っているのはキャサリンの肉体だけれども、
これはきっともう一人の情報生命体なんだろうな。
『それでは、お伝えしなければいけないことです』
何があるんだ?
『今回、貴方の世界は大きく書き換えられました』
レイスや鬼が出たり、
心の中の声が聞こえなくなったりした。
『こうなってしまっては、元に戻すのは困難です』
このままでも良いのでは?
『そういうわけにはいきません。
歪みがどう影響するか分からないのです』
バタフライエフェクトってやつか。
『そうです。
なので、時を世界が書き換えられる前まで戻します』
えっ、そんなことが……って、
世界をやり直せるんだ。それくらい簡単か。
『はい。時を晴道の感覚でいえば、2月末に戻します』
そっか。
それなら犠牲者たちの経験は無かったことになるな。
『それが、申し訳ございません。
貴方と深く愛し合った女性たちは、記憶が残るでしょう』
それって……。
『混乱するでしょう。
ケアをしてあげてくださいね』
えっと、それは……
花音さん
花月さん
洋子さん
由美子
真帆先輩
結衣
遥
杏奈先輩
……大変じゃないか?
あっ、それより、また千紗が仲間外れじゃないか。
千紗には今回のこと、話してあげようかな。
そう考えながら、俺の意識は白濁していった。
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Scene037【閑話】
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私は晴道を見送った後、キャサリンに話しかける。
「ねえ、貴女はどうしたいの?」
「私は……
晴道と一緒にいたい。
あの世界で生きていきたい!」
「そう、なら行きなさい」
「良いの?」
「貴女の人生は貴女のものよ」
『なら、私も行きます』
それは、キャサリンに同化している、
もう一人の私だった。
『この子は、もう一人では存在を維持できないんですよね』
「ええ、だから私の因子を埋め込んであげて……」
『代わりに私がキャサリンと行きます』
「そんなことを続けたら、貴女はせっかく獲得した自我が消えてしまうかもしれませんよ」
『いいんです、キャサリンと一緒に晴道に愛されるなら、それで』
そうなのね、もう一人の私は本当の愛を知ったのね。
「それでね、お願いがあるの。
今度の私はね……」
「ふふふ、そっか、それが良いわね。
それじゃあ、もう行きなさい」
「うん、ありがとう、ママ」
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それにしても”ママ”か。
今まで観察するだけだった母子愛。
それを実感する日が来るなんてね。
”パパ”は晴道になるのかな?
私はそんなことを考えながら、
時間を巻き戻し、世界を元に戻していった。




