ep007:その体験、ただの順番につき
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Scene023【由美子】
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俺は高校を飛び出すと、由美子の家まで全力で走った。
由美子の家は学校から見ると、俺たちの住むマンションを通り越し、さらに一駅遠い場所にある。
その時の俺は、由美子の怪我を心配するあまり、自分が息一つ乱していないことにすら気づいていなかった。
「ママ、あれ何!? ロケット?」
道ですれ違った子供が、ぽかんと口を開けて目を丸くしているのにも気付かず、俺はただひた走る。
やがて、由美子の住むマンションへと到着した。
ピンポーン、ガチャリ。
扉が開くと、由美子が出迎えてくれた。
「晴道……もう来てくれたの?」
片足をかばうようにして立つ由美子の姿が、ひどく痛々しかった。
「由美子、大丈夫だ。俺が治してあげるよ」
「うん、ありがとう……」
由美子は恥ずかしそうに俯いた。
(シャワー、間に合って良かった……!)
「さっそく始めよう。ベッドに横になってくれるかい?」
「う、うん……」
(ベッドで晴道に……って、ダメダメ! 晴道は真面目に私のことを心配してくれているのに!)
無心だ、無心になれ、俺。
ベッドに横になった由美子の、捻挫をした足首にそっと手を当てる。
患部は熱を持って、赤く大きく腫れ上がっていた。
俺は由美子の捻挫が完全に治るように強く念じながら、掌からゆっくりと気を送り込んでいく。
「あっ、晴道……何かが、入ってくるよ……」
みるみるうちに赤みと腫れが引いていった。
「はっ、晴道、もぅ大丈夫……っ」
気づくと、由美子はすっかり息を荒くしていた。
「ごめん、少し気を送りすぎたかな?」
「大丈夫……ちょっと、気持ちよすぎただけだから……」
(もっと……もっと、晴道に触れられていたい……)
俺は前世での治療の時のことを思い出した。
そうだ、気の注入は、受け手の性感すら鋭敏にさせてしまうんだった。
上気した由美子の表情が、あまりにも色っぽい。
ダメだダメだ。俺は頭の中の煩悩を必死で振り払い、治療の結果を確かめるべく、彼女の足首に触れた。
「由美子、どうだい?」
「……痛くない、みたい」
由美子はベッドから降りると、恐る恐る足を動かしてみた。
そして、その場で軽くジャンプを繰り返す。
「すごいよ、晴道! なんともない!
それどころか……今朝までよりも、体がずっと軽いよ!?
どこまでも高くジャンプできそう!」
「そっか。良かった……」
俺は心の底から安堵した。
それと共に由美子の胸元に視線が釘付けになっていた。
昨日迄押さえつけるブラから、今朝の盛って見せつけるブラに変わって気付いていた事だったけれども
由美子バストは凄く成長していた。
更に由美子は今シャワーを浴びた直後でノーブラだった。
そんな状況でジャンプを繰り返したんだ、当然それはポヨンポヨン揺れてしまい・・・
そんな俺の視線に気付いた由美子はベッドに戻ってきた。
「ねえ、晴道。……もっとマッサージしてくれる?」
由美子の表情は、16歳になったばかりとは思えないほど艶っぽかった。
「えっ、あの……」
俺はうろたえてしまった。
なにせ今世の俺は未だ童貞、ファーストキスすら、ついさっき済ませたばかりなのだ
「体がまだ火照っているの。
もっとしてほしいの、今日は私の誕生日だから……」
(今日は最後まで……これだけは千紗より先に。私、これが終わったらバレーボールを全力で頑張るから……!)
「……分かったよ」
俺は覚悟を決めた。
昨晩、武と優香も大人の階段を登ったんだ。
幼馴染たちが先に一線を越えたという“事実”が、今の俺にとって最大の免罪符となった。
こうして、俺と由美子は、一緒に大人の階段を登ったのだった。
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「ねえ、晴道。私は本当に幸せだったよ。
だから……千紗のこと、よろしくね」
気づけば、なぜか由美子の心の声は聞こえなくなっていた。
「それって、どういう意味だい?」
「晴道をここに来るように後押ししてくれたの、千紗でしょ?
だったら、私は千紗にちゃんと恩を返さないと。
私は、千紗とは対等でいたいんだ」
そうだ、これこそが、俺の大好きな優しくて真っ直ぐな由美子だ。
「私は明日から、バレーボールを頑張るよ!!
それで、3年後のオリンピックでスターティングメンバーになれたら、晴道に告白するの」
「そんな気の長いことを言わなくても……」
俺の気持ちは、もう決まっている。
「由美子。好きだ、愛している。
俺には好きな人がたくさんいるから、由美子一人だけを特別に愛するわけにはいかないかもしれない。
それでもよかったら、俺と付き合ってほしい!」
「ぷっ、ふふふ!」
なぜか由美子が突然噴き出した。
「由美子、酷いな。一世一代の告白だったんだぜ?」
少なくとも、今世においては。
「ごめん、ごめん。
だって、晴道がたくさんの女の人を愛しちゃうなんて、そんなの最初から分かりきっていることだもん」
まあ、その通りなんだけれどもさ。
「私の言う『告白』はね、そんなんじゃないの。
3年後のオリンピックでスターティングメンバーになれたら……
今度は私から、晴道に『私と結婚してください』って言うのよ」
そう言って悪戯っぽく笑った由美子の笑顔は、とても、とても素敵だった。
そして”晴花の母親は由美子だったのかもしれない”
そんな風に思えたんだ。
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Scene024【由美子と千紗】
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俺はふと思いついた。
「そうだ、千紗に連絡しないと。
“由美子はもう大丈夫だ”って」
「うん、お願い。
もうそろそろ午後の授業終わりかな?
電話で連絡して、後から私にも代わってね」
由美子がそう言ったので、俺は千紗に電話をかけてみる。
ツッ……。
『もしもし、晴道!? 由美子はどうなったの!?』
千紗は一瞬で電話に出た。
それだけずっと心配していたのだろう。
だからこそ、俺は誤魔化さずに正直に話すことにした。
「ああ、由美子は“俺が治した”から、もう大丈夫だよ。
明日からまた部活の練習に出られる」
『ああ、良かった……本当に良かった……!!』
受話器の向こうで、千紗が心の底から安堵して息を吐くのが分かった。
「千紗、大好きだよ」
『えっ、ちょっ……晴道、突然なに言ってるのよ!』
「俺は、由美子のことをそれだけ純粋に心配できる、千紗のことが心から大好きなんだ」
『……そこに、由美子ちゃんもいるんじゃないの?』
「ああ、隣で聞いているよ」
俺の言葉に、隣の由美子が深く頷いた。
それは千紗に対してではなく、俺に対して“全てを受け入れる”という強い意思表明だった。
「俺、由美子にも“好きだ”って伝えたよ」
『そっ……そうなんだ……』
「ねえ晴道、ちょっと代わってくれる?」
由美子に言われ、スマホを彼女に手渡した。
由美子は画面を操作し、スピーカーモードに切り替えて話し始めた。
「ねえ千紗、本当にありがとうね」
『えっ、突然なに?』
「大丈夫、私、全部分かっているから」
『そっ、そう……』
「それでね……ごめんね。
私、先に体験しちゃったの」
由美子は“何を”とは決して口にしなかった。
でも、千紗はすぐにすべてを察したようだった。
『……うん、分かった』
「でも、それはね、順位とかそういうのじゃないの。
単純に私の誕生日が早かったっていう、ただの順番。
私が先に16歳になったってだけだから」
『……じゃあ、私は来月だね』
「ふふ、そうね。
ねえ、私たち、これからもずっと”友達”だよ!」
『えーー、なんでーー!』
「えっ、嫌なの!?」
『私は、ずっと“親友”だと思っていたよ!!』
「あはは、ごめんごめん!
そうだよね、私たちは、同じ人を愛した同士――親友よね」
俺には、そんな二人の会話が、眩しくて仕方がなかった。
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Scene025【閑話】
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――俺は、真っ白な部屋で目を覚ました。
壁も、床も、天井も、すべてが境界を失ったかのように純白に染まった、奇妙な空間。
「俺……確か、腹をナイフで刺されて……」
そこまで呟いたとき、ふと、正面に一人の女性が姿を現した。
「ああ……俺は、死んだんだな」
その姿を見た瞬間、俺は自分の死を直感的に、そして明確に理解させられた。
なぜなら、目の前に佇む女性はあまりにも美しく、どこまでも神々しく、およそこの世の存在とは思えないほどのオーラを放っていたからだ。
『はい。貴方は死にました』
「そっか……。そうだ、妻と娘は!? 二人は無事なのか!?」
『申し訳ございません。それにお答えすることはできません』
「……っ! 死んだ人間には、残された家族のその後を知る権利すら無いというのか!?」
『いいえ、違います。……貴方が先ほどまでいたあの世界は、“貴方を観察するために作られた世界”なのです』
「……え?」
『したがって、観測対象である貴方が死んでしまった以上、あの世界はその役割を終え、消滅しました。存在しないものの“現状”を、お伝えすることはできません』
「なっ……なんだって!?」
あまりにも不条理なその宣告に、俺はただ愕然とすることしかできなかった。




