ep002:その転校生、不可思議につき
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Scene005【もののけ】
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晴道が守から聞いた情報はこうだ。
晴道たちの住む大田区周辺で、何か異形の物に襲われる事件が発生し始めた。
被害者たちが口々に言うのだ。
「鬼に襲われた」「悪魔に襲われた」
この時代、どこにでも監視カメラはある。
事実はすぐに明らかになるだろう――そう思われたが、事態は意外な方向へ動いた。
確かに“鬼”や“悪魔”に見える物が人を襲っている記録映像は、すぐに複数見つかった。
問題はそこからだった。
その“鬼”や“悪魔”に見える物の足取りを追いかけると、それらはやがて苦しみ始めて倒れ込む。
そして、そこには衰弱した人間が残されるのだ。
最近多発していた、衰弱して倒れているところを保護される人々の案件が、ここに繋がった。
ここで大きな疑問が浮かぶ。
衰弱して倒れているところを保護される人々は、
確かな身分を確認できる人ばかりだった。
身元不明な人など、ほんの一握りだったのだ。
ならば、なぜそれらの人々は“鬼”や“悪魔”になっていたのか?
それも監視カメラから追いかけられた。
人を襲った“鬼”や“悪魔”の足取りを遡ったのだ。
すると、それらの人々が突然“鬼”や“悪魔”になったとしか思えない記録が複数見つかったのだ。
そして、さらにその瞬間が捉えられている記録が2件見つかった。
普通に歩いている彼ら。その背後に何か不透明なモヤのようなものが現れ、彼らに触れた瞬間――。
彼らは“鬼”や“悪魔”のような異形へと変わっていったのだ。
警察は何か不可思議なことが起きていると判断し、政府に報告を上げる。
そして、政府はそれを霞の者に調査・解決の依頼をしたのだった。
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Scene006【転入生】
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やがて新学年が始まる。
晴道たちは2年生となった。
2年1組にはこんなメンバーが集まる。
担任
一ノ瀬 花音
男子には
小泉 晴道
高村 武
篠原 潤
女子には
如月 千紗
斉藤 早紀
早乙女 莉子
里塚 由美子
中里 京子
氷室 優香
まるで、誰かが仕組んだようだった。
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そして、初のホームルーム――。
「おはようございます。
今年1年このクラスの担任になりました、
“一ノ瀬 花音”です。
よろしくお願いします」
花音はクラス全員を見渡してから続けた。
「今日は皆さんに転校生を紹介します。
早乙女キャサリンさん、入ってください」
入ってきたのは金髪碧眼の美少女だった。
「彼女は日本人のお父様とアメリカ人のお母様の間に、
アメリカで生まれました」
少女は英語で挨拶をした。
「Hi, nice to meet you. My name is Catherine Saotome.
I’m sorry, but I’m not very good at speaking Japanese.
I can understand spoken Japanese pretty well, though, so please feel free to talk to me.」
花音は自分では通訳せず、晴道を指名した。
「晴道、通訳してあげてくれるかしら」
しかし、晴道は呆然としていた。
その美少女を凝視していた。
なぜなら、その美少女はあの夜の魔法少女に違いなかったのだ。
キャサリンは晴道の元に歩み寄って、彼だけに聞こえるように耳元で話しかけた。
『We meet again. I told you we would. I was born to meet you.』
晴道にはその言葉が、運命の歯車を切り替える合図に聞こえた。
花音が慌てて声をかける。
「ちょっと難しかったかしら? 彼女はこう言いました。
『こんにちは、初めまして。キャサリン・早乙女です。
日本語を話すのはあまり得意ではありませんが、聞き取ることはできます。
皆さん、気軽に話しかけてください』
皆さん、仲良くしてあげてくださいね」
クラスの生徒たちは納得した。
『そうだ、花音先生はハーバード大学卒で、英語がネイティブレベルに使えるんだった。
それでこの帰国子女を迎えるのに、うちのクラスの担任になったんだ』
そんな中、晴道だけが何かに仕組まれているような、
そんな違和感を拭えなかった。
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Scene007【違和感】
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この日はホームルームだけで終わりだった。
花音さんが解散を告げるとクラスは騒然となった。
キャサリンの席は俺の隣に指定されていたので、
みんなが集まってきた。
そんな中、莉子が真っ先に話しかけてきた。
「キャサリン!!
ええっと、あれ? この場合どう言えばいいのかな?」
「えっ? 何々?」
優香が莉子に問いかける。
「えっとね、キャサリンは私の従姉妹なの」
まあ、ファミリーネームからそんな気はしていた。
「でも、ずっとアメリカに住んでいて、直接会ったのはこれが初めてなの!
文通やチャットではたくさん会話をしてたのにね」
違和感がある。
おかしい。
「そんな話、一度も聞いたことなかった」
優香がつぶやく。
そうだ。莉子は優香の親友で、話題に出たことがないのはおかしい。
それに莉子は昨年夏から俺に積極的にアタックしてきている。
当然、家族構成の話題なんかも振ってくる。
俺にも話したことがないのは不自然だ。
「話したことなかったっけ?
そう言えば、キャサリンとはいつ頃から話してたっけ……。
あれ? 記憶はあるのに覚えていない?」
「The memories haven’t fully settled in.」
キャサリンのつぶやきはネイティブ英語で早口だったので、俺以外には聞き取れなかったようだ。
どういう意味だ?
「Hello, everyone. Let me introduce myself properly. This is my cousin, Riko. She’s told me so much about all of you that I already feel like I know you. Harumichi, would you mind translating for me?」
キャサリンが始めた挨拶を俺は通訳をした。
「皆さん、こんにちは。改めて自己紹介させてください。
こちらは私の従姉妹の莉子です。
彼女から皆さんのことをたくさん聞いていたので、もうすっかり知り合いのような気がしています」
キャサリンは続けた。
『Riko has told me all about what a wonderful guy Harumichi is. She’s talked about him so much. I’ve wanted to meet him for the longest time. I came to Japan to meet Harumichi. Harumichi, could you translate this for me, too?』
えっ、あの夜とさっきも聞いた『I was born to meet you.』はそういう意味なのか?
そんなことを考えていたので、俺は直訳してしまった。
「莉子から、晴道がどれほど素敵な人かいろいろと聞いていました。
彼女はいつも晴道の話をしていましたから。
ずっとお会いしたいと思っていたんです。
私は晴道に会うために日本に来ました」
「キャ、キャサリン!! 何言ってるのよ!」
莉子は慌てて否定しようとしたが――
「莉子、キャサリンの言っていること、本当だろうなって、みんな思っているよ」
千紗のツッコミは容赦なかった。
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Scene008【閑話】
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ここで、守が晴道にも告げていない情報を公開しよう。
この鬼化の事件は、晴道の住む大田区周辺だけで発生している。
鬼化しているのは男性だけだが、
被害者は若い女性だけだった。
こんな事件が明るみになれば世間は大騒ぎになる。
政府はその判断のもと、事件を非公開としているが、
そこにはもう一つ理由があった。
被害者の女性は全員が晴道と同じ高校に通っている、
もしくは卒業したばかりの生徒だったのだ。
この高校で何かが起こっている――目ざとい者は気づき始めていた。
そして守は、もう一つの共通点を見出していた。
被害者の女性は、例外なく全員が巨乳だったのだ。
守は真っ先に義理の娘の早紀を心配した。
だから、晴道にも話した。
しかし、晴道と話している間にある可能性に気づいた。
この女性たちは、晴道と同じ高校に通う女性で、しかも晴道の好みのタイプだ。
つまりは、晴道に好意を寄せられる可能性がある女性ばかりなのではないか?
もし晴道にこのことを気づかれたら、
晴道は自分のせいで女性が被害に遭っていると悩むかもしれない。
晴道は自分の彼女たちが被害に遭うかもしれないと、
事件解決のために無理をするかもしれない。
そう咄嗟に判断した守は、
被害者の情報をあえて晴道に伝えなかった。
この判断が、この事態にどう影響するのか――。
それはまだ誰にも分からなかった。




