ep001:その救世主、魔法少女につき
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Scene001【不穏】
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斉藤守さんは栞さんと結婚。
早紀も養子縁組を行い、守さんの養女として斉藤早紀となった。
二人の結婚式は霞の里内にある神社で、和式にしめやかに行われた。
斉藤守さんは花音さんの専任護衛役の任を解かれ、
霞の者の東京支店の支店長に任命された。
そして、栞さんと早紀の部屋で一緒に暮らしている。
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3月にはドラマアカデミー賞が発表され、
あのドラマで瑞月さんが主演女優賞、
千紗が助演女優賞を獲得した。
千鶴さんは悔しがったがドラマ出演のオファーが相次ぎ、夏の連ドラでは主演を務めるようだ。
当の千紗は女優を続ける気がないようでオファーを断り続けている。
ただし、俺も一緒に出る場合は受けるようで、単発ドラマ1本が予定されている。
ちなみに俺の役はチョイ役で、
千紗を釣るための餌なのは見え見えなのだが、
沙織母さんの仕事関係なので仕方がない。
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そんなこんなで、あっという間に4月に入った初日。
つまり、エイプリルフールの日。
俺は守さんに呼び出された。
「晴道、実はな、最近このあたりには“もののけ”が出るんだ」
俺は呆然とした。
「もののけって……鬼とか幽霊とかですか?」
「いや、もののけに鬼は含まれない。
一般的には幽霊・悪霊と呼ばれるものたちだ」
念のため確かめる。
「エイプリルフールってわけじゃないですよね?」
「俺がそんなことをする人間に見えるか?」
「いいえ」
俺は首を振る。
「ふむ、それで……鬼というのもあながち無関係ではない」
「えっ?」
「最近、このあたりでは、もののけに取り憑かれた者が鬼と化して人を襲う事象が発生しているのだ」
この時、俺はまだ、そのとんでもない事象に自分自身が深く関わることになるのを知らずにいた。
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Scene002【魔法少女】
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4月3日は花音さんと花月さんの誕生日だ。
本当は別々に祝ってあげたいところだけれど――。
「私たちは愛人枠No.1と2ですもの。二人一緒で十分よ」
と異口同音に言われ、2日の夜から三人でホテルに泊まることになった。
幸い、今年のこの日付は土日となっていた。
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2日のディナーを三人で楽しむ。
ディナーは楽しく美味しかったが、微妙な緊張感があった。
それもそのはず、この後は三人でホテルに泊まるのだ。
花音さんとは複数人でしたことがあるが、
花音さん・花月さんという組み合わせは初めてになる。
そして、ディナーのお店を出てホテルへと向かっていたときのこと。
ふと、寒気がした。
背中がチリチリとした。
「花音」「花月」
二人の呼び合う声が重なる。
「「晴道、気をつけて」」
二人の警告の声が重なる。
二人は既に気を張り巡らせているようだ。
それは『気を張る』や『神経を張り巡らせる』の誤用ではなく、実際に気の力をあたりへと送り、レーダーのように使う技だ。
それは和也さんの“気脈探知”をヒントに最近開発された技で、今は花音さんと花月さんしか使えないという。
「「あそこ」」
二人の声が重なる。
空気が揺らいでいる。
そして、それは現れた。
“もののけ”と呼ばれる者、俺の感覚で言うなら“レイス”だ!
俺はポケットからある物を出して、力を込める。
それはあのクマや軍人崩れの連中と戦ったときに使った日本刀の柄、握り手の部分だ。
「光よ」
普通の人には見えないだろう。
しかし、そこには気の力で作った刃が伸びていた。
俺は今まで刃に気を纏わせて切れ味を増していた。
あの銃を切ったときは、刃こぼれ一つできなかった。
ならば、それは刃ではなく、気の力だけで切っているのでは?
そうイメージしたときに、技は完成していた。
昨日、守さんに“もののけ”の話を聞いたときに、
幽霊=レイスのイメージから物理攻撃が効かないことを考え、準備していたのだ。
レイスは俺に向かってきた。
しかし――
「はっ」
光の剣がかすめると、レイスは霧散した。
うん、やっぱり光の剣はレイスに有効だった。
そのとき――
「きゃーー!」
それは花音さん、花月さん、どちらの悲鳴だったのか。
そんなことはどうでもいい、油断した!
レイスは一体じゃなかったのか!?
レイスはまさに二人に襲いかかろうとしていた。
気の刃を飛ばそうとしたが、間に合わない。
そのとき――
「Magical Arrow!」
そんな掛け声と共に光の矢が目の前を走り、レイスは霧散した。
振り返ると、そこには奇妙な格好の少女がいた。
年の頃は俺と同じくらいだろうか。
金髪碧眼はまさに西洋風。
しかし、顔立ちはどこか東洋人を感じさせた。
その容姿に俺は妙なところで納得した。
『Magical Arrow』というあの掛け声は、日本のファンタジー英語の『マジック・アロー』ではない、ネイティブな発音だったのだ。
そして奇妙な格好というのは――
ひらひらしたフリルの服にミニのパニエスカート。
肩もパフスリーブで丸く膨らませられており、全身にリボンが巻かれていた。
いわゆる魔法少女の姿だったのである。
「Who are you?」
少女は俺のその問いかけには答えず、
「We’ll meet again. I was born to meet you.」
そう答え、信じられないような跳躍力で闇夜へと消えていった。
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Scene003【バースデイズ】
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魔法少女(もうそう言い切ろう)が消えたあと、
花音さんと花月さんが走り寄ってきた。
「二人とも何ともないですか?
レイスには触れられませんでした?
それにしても、あの魔法……」
「「晴道、格好良かった!!」」
二人の声が俺の言葉を遮った。
「光よ!」
「ズバって」
「何よ、あんな技、いつ開発したの?」
「何でも切れるの?」
もはや、どちらの言葉かも分からない。
どうやら二人には光の剣が見えていたようだ。
良かった、光の剣が見えず柄だけを振り回しているのは、正直間抜けなのだ。
「「……」」
二人の眼差しが熱い。
目がハートになっている気がしてならない。
「「晴道、はやくホテルへ行きましょ!!」」
えっ、いや、今、実際にレイスに遭遇したり、
謎の魔法少女が現れたり、
すげーシリアスなシーンだったよね?
そんなに簡単に切り替えられるものですか?
しかし俺は文字通り、二人に引きずられホテルへと連れ込まれていったのだった。
そして、朝までたっぷりと搾り取られたのだった。
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Scene004【閑話】
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私が見守る晴道の世界に、不穏なものが現れた。
レイス・鬼?
私はそんなもの作っていない。
誰かが干渉を始めている。
こんなことができるのは、私と同じ高次元の情報生命体だけ。
私の他にも自我を持ち始めている存在があるの?
対抗手段を考えなければいけない。
晴道の世界を守るために。




