ep006:その親子、平穏につき
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Scene023【選択】
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朝食は地獄の気まずさだった。
ただし、部屋に戻った頃には、もう元の空気に戻っていた。
栞さんと守さんはずっと手を握っていた。
しかし、ふと栞さんの表情に冷静さと母親の顔が戻った。
「早紀、少し話があるの。いいかしら?」
「はい、お母さん」
早紀の栞さんの呼び方も戻った。
二人とも心の中の声は聞こえない。
俺が耳を澄ませていないこともあるが、
二人が冷静な証拠だ。
「早紀、お母さんは守さんと結婚しようと思うの。
こちらの守さんを“お父さん”と呼べるかしら」
いつの間にそこまで……。
それに早紀ははっきりと答えた。
「お父さんと呼べるかはまだ分かりません。
でも、お母さんの再婚には賛成です」
「早紀は、水野早紀のままでいることも、
斉藤早紀になることも可能よ。
守さんの養子になることも、
守さんの養子にならないまま、
私の子として斉藤姓になることも」
難しい選択だと思う。
でも早紀の選択は早かった。
守さんに視線を向けて言った。
「私を守さんの養子してください、
お母さんと一緒に家族になります」
それは幼い頃に父親を亡くした早紀が、
家族を求めた結果かもしれない。
「今すぐ小泉早紀になれるなら、
そっちの方が良かったのだけれどもね。
女の私はもう結婚できるけれど、
男の晴道は18歳になるまで無理よね」
そう言って、満面の笑みを浮かべるのだった。
早紀さん、さっきは『由美子さんや千紗ちゃんから、晴道くんのことを奪おうなんて思わないの』なんて言っていませんでしたか?
そんな俺の心の中の声が聞こえたわけでもないだろうに、早紀はこう続けた。
「晴道くんが……私を選んでくれるなら、
それは奪うことにはならないよね」
はは、それはそうだ。
全ては俺が選ばないといけないんだよな。
守さんは栞さんを一生守ると決めた。
俺は今世、晴花に再会することを目標に生きてきた。
けれども誰と結婚しても晴花に逢えると気づいた時、
自由に女性を好きになろうと決めた。
でもいつかは選ばないといけないんだ。
俺はその時、どんな選択をするんだろうか。
でも、俺の周りは素敵な女性ばかりだ。
今日もこれで締めよう。
「人の心が見える俺にはハーレム生活イージーモード、でも一人に絞るのは無理ゲーだった」
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Scene024【閑話】
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私は晴道が
『でもいつかは選ばないといけないんだ』
そう考えた時、『私を選んで!』と頭に浮かんだ。
ああ、私は晴道が好きなんだ。
晴花のパパとしてではなく。
一人の男性として、一人の女性としての私を愛してほしいんだ。
個ではなく群として存在していた情報生命体の私の中に生まれた“我”。
でも、私と晴道の間には大きな次元の壁がある。
晴道と触れ合える肉体だって持っていない。
私にできるのは、晴道を見守ることだけ。
それが悲しかった。




