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人の心が見える俺にはハーレム生活イージーモード、でも一人に絞るのは無理ゲーだったin二度目の人生。  作者: iron-bow
第09話【その転校生、可憐につき】

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ep005:その救出、間一髪につき

⸻


Scene017【純愛】


⸻


時は少しだけ遡り、水野早紀の視点で語られる。


⸻


私はこの三日間、とても充実した日々を過ごしていた。

前世で最愛だった晴道くんと再会し、一つ屋根の下で過ごした。

まあ部屋は違うんだけれども、それでも前世のシェアハウスでの経験よりずっと親密に思えた。


ストーカーへの恐怖も忘れられた。


今日も晴道くんと一緒に帰宅しようとした時、

晴道くんが花音さんに呼び止められた。


「伝えたいことがあるの。

いつもの部屋で待っていてくれる?」

「分かりました」


晴道くんは、一緒にいた千紗ちゃんに声をかけた。


「千紗ごめん、早紀と一緒に先に帰っておいてくれるかな?」

「分かったわ、早紀ちゃん行こ」


そうして私は、千紗ちゃんと借り住まいのマンションへと帰ることになった。


⸻


マンションに着いた時、エントランスに出納先生が待っていた。

優しくて、どこか晴道くんに似ていて、晴道くんと再会していなければ初恋になったかもしれない人。

ストーカーのことも親身に相談に乗ってくれた。


「水野くん、その後はどうだい?

少し話を聞けるかな?」


千紗ちゃんが何か言いたそうな視線を送ってきたが、

私は『大丈夫だから』という気持ちを乗せて千紗ちゃんに頷いてみせて、

出納先生に答えた。


「はい、今なら大丈夫です」


晴道くんもまだ帰ってこないし。


「部屋に上がってください」


⸻


「先生、リビングで待っていてください」


先生にそう声をかけ、部屋に入り制服の上着を脱ぐ。

私服に着替えるほどもお待たせしない方がいいかな?

私はそう考えて、リビングへと向かった。


私がリビングに入ると、先生はソファにも座らず立っていた。


「水野さん、ストーカーの件はどうかな?」

「はい、姿は見当たりません。

晴道くんが見守ってくれていますし、大丈夫です」

「そうか、ここの生活はどうだい?

俺も一緒にいた方がよくないかい?」


私はその言葉の意味を深く考えずに答えてしまった。


「大丈夫です。晴道くんもすぐ下にいますし、一人で大丈夫です」

「晴道、晴道……そんなにあの男がいいのか!」


先生の様子が急変し、私の肩を強く掴んだ。


「せっ……先生?」


怖い、声が出ない。


「俺は先生だからな、今までもずっと我慢していたんだ。

ラブレターをくれる生徒もいた。

直接告白してきた生徒もいた。

肌を露わにして誘惑まがいのことをしてきた生徒もいた。

そして水野さん、君は控えめに慕ってくれた。

でも俺は、今まで通り我慢していた。

なのに君は、夏休みにデートまで誘ってきた。

意外と大胆で、俺は……俺は……」


あれは、一学期に引っ込み思案でなかなかクラスに馴染めない私に優しくしてくれたから。

クラスに馴染めるように上手く誘導してくれたから。

感謝の気持ちで……。


でも、本当?

少し先生のことを意識していたんじゃない?


「なのに、君はいつからか冷たくなった」


それは秋になってドラマで晴道くんを見て、前世の記憶を思い出したから。

また晴道くんに恋してしまったから。


「だから俺は、ありもしないストーカーを仕立て上げた。

君の心を取り戻したかったから」


えっ、どういうこと……?


「ストーカーから守ってあげれば、

また君が俺のことを慕ってくれると思ったから」


そんなことって……!?


「それで、君をストーカー対策という理由で転校させ、この環境を作った。

二人で数日一緒に過ごせたら、満足するつもりだったんだ。

そしたら『ストーカーは諦めたみたいだね』と、

全て元通りにするつもりだったんだ」


そんな勝手なこと。

でも、準備も全て先生がやってくれて、費用も全部先生が持ってくれている。


「それなのに、お前はあんな男にうつつを抜かして!

一体俺は何のために!!」


全部私のせいなの?

私が晴道くんのことを思い出さなければよかったの……!?


⸻


Scene018【凶変】


⸻


先生が私の肩を強く掴んだ、その拍子に少し胸元がはだけた。

先生の目つきが変わる。


「こっ、こんなに育って……」


先生の腕に力が入った。

プチプチと弾けるような音を立ててブラウスのボタンが飛び、胸元が露わになる。


「なんだ、このエロい下着は! あいつに見せるつもりだったのか!?」


それは、昨日買ったばかりの下着だった。

そう……晴道くんに見てもらいたくて買った。

あまりに的確な指摘に、私はさらに何も言えなくなった。


「けしからん、けしからんぞ!

これは指導だ、指導だからな!!」


そう叫ぶと、先生は私を無理やり床に座らせ、

自らは私の後ろに回り込んで股間に挟み込んできた。


嫌だ、嫌だ、こんなの酷い……!


「少しだけだ……少しだけ指導をしたら終わりだ。

お前があの男のことを忘れたら、全て元通りだ。

俺が忘れさせてやる」


私が少し我慢すればいいの……?


その時、先生の手が私の胸元に触れた。

嫌悪感で激しい鳥肌が立つ。


やがて先生の手は、私の下着の中にまで侵入してきた。

ダメ、前世でも晴道くんにしか触らせなかったのに……!


嫌、嫌、嫌……っ!


だが、先生の手つきはしつこく、いつまでも敏感な場所を刺激してくる。

身体が熱くなっていく。

私は昨日も一昨日も、晴道くんを思って自分でしてしまっていた。

身体が敏感になっていた……熱くなってしまっていた。


いやだよ、こんなの酷いよ、こんなので感じたくない……!


でも、その身体の変化を先生に悟られてしまった。


「どうした、身体が熱いぞ……感じてきたか!?

先生があいつのことを忘れさせてやるぞ!!」


先生は私のスカートをたくし上げ、その中に手を伸ばす。


ダメ、ダメ、ダメっ! そこまで熱くなっていることなんて知られたくない!!


嫌、嫌……晴道くん、助けて!!


私は叫んだ。でも声が出ない。

心の中で必死に叫んだ!


けれども、無常にも先生の指先は私の大切な場所に届いてしまう。


「早紀、濡れてるぞ……感じてきたな」


私が完全な絶望の底に落ちかけた、その時――。


ガチャンッ!


ベランダの方からかすか音が響いた。


ガラガラガラッ!


ベランダの窓が開け放たれる。


「出納!! その手を放せ!!!!」


そこには、冷たい表情の晴道くんが立っていた。


⸻


Scene019【間に合え】


⸻


俺は学校を飛び出すと、全力で走った。

多分周りからは異様に見られていただろう。

構わなかった、とにかく一刻も早く早紀の元に駆け付けたかった。


やがて、マンションへと着いた。


「晴道! 早かったのね」


買い出しに出かけるのか、私服の千紗がいた。


「早紀は!?」

「えっ、出納さんだっけ? 先生と一緒に部屋に入ったよ」


なっ! 俺は耳を澄ませた。


(嫌、嫌……晴道くん、助けて!!)


俺は頭が爆発しそうになった。


「晴道?」


千紗が攫われた時、俺は頭が爆発しそうになり、莉子を怖がらせた。

しかし、今はそれを通り越し冷たくなっていた……。

目の前、一階は如月家のベランダ、その上が小泉家、さらに上に早紀とあいつがいる。


俺は一飛びで一階のベランダの手すりに飛び乗る。

さらに飛び上がり、二階のベランダの手すりに手をかけ、身体を引き上げる。

もう一度飛び、三階のベランダに到達する。


地上では千紗がぽかんとした顔でこちらを見上げていた。


そして中は……カーテンは開いていた。


いた、早紀とあいつだ! あいつの手が早紀の身体を……。

俺は花音さんから預かった苦無に気をまとわせ、切れ味を増す。


シャン


ベランダの窓ガラスをわずかに切り落とす。


ガチャンッ!


切り落としたガラスが落ちて小さな音を立てる。

手を差し込み鍵を外し、窓を開ける。


ガラガラガラッ!


「出納!! その手を放せ!!!!」


俺は部屋へと入っていった。


⸻


Scene020【命令】


⸻


「おっ、お前、どこから!?」


出納が狼狽える。

しかし、出納の両手はまだ早紀の服の中だった。

左手はブラジャーの中で早紀の乳房を掴み、

右手はスカートの中だった。


死ね、感情が抑えられない。


俺は強い気を乗せ、命令した。


「立て、動くな、喋るな、いや呼吸もするな」


出納は早紀の服の中から両手を取り出し、

ぎこちなく立ち上がった。

そして直立不動で黙り込む。

ああ、これが花音さんも使っていた、命令の気なんだ、簡単じゃないか。


俺は出納を放置し、早紀を立たせて抱きしめた。


「ごめん、ごめんな、俺がこいつのことに気付かなかったから、早紀をこんな目に合わせてしまった」


俺の目から涙がこぼれた。

俺は強くなったと思っていた。

気の力でなんでもできると思っていた。

でも実際には、好きな女の子一人守れなかった。

その危機にすら気付いてやれなかった。

何を己惚れていたんだ。

俺は非力だ。


「晴道くんは悪くないよ、私が油断しただけ。

私が出納先生に変な気を持たせてしまったの」

「早紀…」


俺と早紀は見つめ合い、その距離がゼロになりかけた時


ヒック、ヒック


変な音が聞こえた。


「晴道くん、出納先生の顔が真っ青!」


あっ、出納が呼吸をしてない。

凄い、気による命令は死の恐怖すら超えるのか?

死ねって命令しなくて良かった。

もしかしたら心臓の鼓動すら止まっていたかも。


「死なない程度には、呼吸をしてもいいぞ」


ぷはー


出納が呼吸を再開した。

その時、


「晴道! 居るか! 俺だ守だ!」


外から声が聞こえてきた。


⸻


Scene021【後始末】


⸻


俺は早紀の服装の乱れを直してから、

守さんを招き入れた。


「こんなに早く、ありがとうございます」

「ああ、俺はいつでも出動できるように待機しているからな」


いや、本当、千紗がさらわれた時もあっという間に駆けつけてくれた。


「こいつがか?」


守さんは、直立不動のままの出納を見て言った。


「はい、警察に突き出して貰えますか?」

「分かった、そうしよう」

「あっ、その前に」


俺は強い気で出納に命令する。


「この人に着いていって、警察に出頭するんだ。

そして自分がやった事を全て話すんだ。

自分の考えは喋るな、事実だけを話せ」


守さんが苦笑いする。


「お前の前では黙秘権も何もあったものじゃないな。

しかし、ストーカー行為と監視カメラデータ偽装では大した罪にはならんかもな」


俺は早紀の手を強く握りながら言った。


「婦女暴行があります。後、監禁未遂も」


早紀がびくりと震えたが、俺は手から癒しの気を流し込む。

早紀の緊張がほぐれた。


「それじゃ、連れて行く事にしよう。

本人が全てを話せば、それなりに裁かれるか」


守は黙ったままの出納を連れて行った。


⸻


外には千紗が立っていた。


「早紀ちゃん大丈夫?」


千紗は優しい。


「ありがとう千紗、大丈夫だ、俺が付いている」

「なら、大丈夫だね」

「なあ、千紗、一つだけ頼まれてくれるか?」

「何?」


千紗は可愛らしく首を傾げて聞いてきた。

自己演出と分かっていても、

可愛らしいのは仕方ない。

俺は心がほぐれるのを感じた。


(いつも、ありがとう、千紗、大好きだよ)

(どういたしまして、私も大好きよ、晴道)


早紀に聞かれぬように、

心の中の声でやり取りをする俺たち。


「後で夕食を届けてくれないかな? 俺と早紀の二人分」

「うん、分かった、遅めの時間で良いね。温まる物作ってあげる」

(それとも、精の付く物がいいかな? 今晩は早紀に譲ってあげる)

「ああ、ありがとう」

(いやいや、精の付く物って、そんな事しないって)

(本当かな?)

(早紀がそんな気分になれるわけないだろ)


千紗は多分どんな事があったか、察してる。


(じゃあ、早紀ちゃんがそんな気になったら、やるんだ?)

(あっ、いや、それは、言葉のあやというか)

(私とは未だのくせに)

(あっ、いや、それは、タイミングの問題というか)


(晴道と千紗ちゃん通じ合っているって感じがする)


ああ、早紀を放置していた。


「うん、それじゃあ、また後でね。

早紀ちゃん、晴道に思いっきり甘えて良いよ」


千紗はニコニコしながら、そう言った。


「えっ、あの、それは…」


しかし千紗は答えず去っていった。


(ほんと、ほんと)


そんな心の中の声を残して。


⸻


Scene022【閑話】


⸻


出納は当然ながら、教職より追放された。

生徒には体調不良による退職と発表された。


出納は女生徒には人気があり、また誠実な態度だったので、多くの女生徒が悲しんだ。

ただ、この年齢の少女たちの心は移り変わりも早く、

やがて出納は忘れられていった。


⸻


そして、これは晴道が知らぬ事。

敢えて目を逸らした結末。


出納は警察に出頭し、全ての罪を自白した。

そして早急な裁判を希望した。

今さらながらに自分がしでかした事を自覚したのだ。

出納のパソコンからは監視カメラからコピーしたデータが見つかった。

オリジナルデータと改ざん後の両方のデータが。

また早紀に届いた、いたずら手紙の元データすらも。

この事からも、出納は用意周到で悪質な犯罪者ではなく、水野早紀という一人の少女に魅了され、一時狂わされた者だと知れた。

しかし、それと実際に実行した犯罪の重さとは関わりない。

裁判は早紀や晴道が出廷する事もなく、判決が言い渡された。

出納は上告することもなく、実刑5年が確定した。


⸻


長くて短いような5年が過ぎ、出納は出所した。


厳しかった両親からは勘当を言い渡され、

誰も迎えなどないはずだった。


しかしそこには一人の少女がいた。


「出納先生、お待ちしていました」

「ああ……こんな、何もなくなった俺で良いのか?」


それは以前、出納に熱烈なラブレターを送った女生徒だった。

早紀の1年先輩。

出納にそのラブレターをそっとたしなめられた後も、出納の事を慕い続けていた。

彼女は出納の退職後も、多くの女生徒が出納を忘れていくなか、出納の事を忘れなかった。

さらに真実を追い求め事実を知る。


それでも、出納の事を想い続けた。


そして、何度となく出納の元に面会に訪れる。

やがて二人の間には愛が育まれるようになった。


その後、二人はささやかながら、幸せな家庭を作る事になる。


⸻


この後、同じ水野早紀という一人の少女に魅了された、一人の少年の決断が語られる。


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