ep004:その静寂、盲点につき
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Scene015【真実】
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翌日も三人で登校した。
千紗と早紀はすっかり打ち解けていた。
仲良く二人で並んで歩く。
そこですかさず由美子が俺の腕を取って歩く。
その様子を振り返って見た早紀は、少しだけ悲しそうな顔をした。
「あの、早紀って子も晴道のことを?」
「まあな」
「ふぅ、仕方ないね」
(もしあの子に本気になったら言ってね。私はいつでも身を引くから)
「いいんだよ、そんな無理しなくて」
「うん、ありがとう」
(由美子さんって、今世でも晴道の一番なのかな?)
そんな早紀の強い心の中の声が聞こえた。
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放課後になり、早紀と帰ろうとすると花音さんに呼び止められた。
「伝えたいことがあるの。
いつもの部屋で待っていてくれる?」
(早紀のことよ)
「分かりました」
俺は一緒にいた千紗に、早紀のことを頼んだ。
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指導室で待っていると、しばらくして花音さんがやってきた。
「ごめんなさい、生徒に捕まっちゃって」
うん、仕方ない。
花音さんはちゃんと先生をやっているから。
「それで、何が分かったんですか?」
逸る俺を宥めるように、花音さんはゆっくりと言った。
「結論から言うと、ストーカーはいないわ」
「えっ、そんなわけは!
だって早紀は実際に物がなくなったり、
いやらしい手紙が来たり……」
「落ち着いて、晴道。順を追って話すわ。
まず早紀の家の周りの監視カメラ、住民の目撃談。
徹底的に調べたけれど、それらしき影も噂もなかったわ」
「でも、早紀のお母さんが不審な人影を見たって」
「そりゃね、娘がストーカー被害に遭っているって聞いたら、何でも不審者に思えてしまうものよ」
「そっ……それはそうかもしれないですね。
でも実際の被害は?」
「全て、学内よ」
「犯人は生徒か教師……」
花音さんは頷く。
「それでね、学校の監視カメラの記録を調べたの」
「何か分かったんですか!?」
花音さんは首を振った。
「学校に設置されているような監視カメラは容量が小さいわ。
今年の冬休みは二週間以上あったでしょ?」
「そうか……もう二学期の記録は残っていなかったのか」
「でもね、十一月に一度録画装置の故障で修理が入っているの。
その時の業者が規定に従って、学校にバックアップを要求した」
「それが手に入ったんですか!」
「ええ、普段使われていない外付けHDDに残っていたの」
「それじゃあ、犯人は!」
花音さんは呆れたように俺を宥めた。
「もう、落ち着いて。
学校だって、早紀のストーカー被害で監視カメラの記録は見ているはずよ。
でも何も残っていなかった。
そもそも、教室の中までは録画されていないんだから」
「そんな、それじゃあ……」
花音さんは少しだけ笑いながら言った。
「何もなしに、私が晴道を呼び出すと思う?」
「えっ」
「録画されたデータには、確かに不審なものは何も映っていなかった。
おかしいのよ、実際に事件は起こっているのに、何も映っていないなんて」
俺はハッとする。
「そうよ、改ざんされているのよ」
「じゃあ、それを改ざんしたのが犯人……!」
「そうなるわね」
俺は思わず身を乗り出す。
「それは誰なんですか!?」
「霞の者の情報班に徹底的に検証させたわ。
その結果、ある人物の行動記録が不自然に飛んでいたの」
やっとだ、やっと犯人の尻尾を掴める!!
「それは――早紀のクラス担任、出納って男よ」
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Scene016【思い込み】
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「でも、学校だって早紀のストーカー被害を調べてくれたんだから、そんなことをしていたら気づくんじゃ……」
俺は咄嗟に出納先生がストーカーだとする説を否定する根拠を探そうとした。
でないと俺は……。
「早紀からストーカーの話を聞いて、親身に調べてくれたのは誰?」
「出納先生だって早紀が言っていました」
「そのために、出納は監視カメラへのアクセス権を入手したらしいわ」
あっ、あっ……。
「そうだ、心の中の声……出納先生からは何の悪意も何も聞こえてこなかった!」
花音さんは宥めるように言った。
「晴道、あなたは今、心の中の声を聞かないようにしているんじゃなかったの?」
「ええ、でも出納先生と会ったとき、
意図的に聞かないようにしていたわけじゃなくて」
「あなた、勘違いしているわ。
あなたは人の心の中の声を聞くのを”耳を澄ませる”イメージと結びつけて、
それをしないことで人の心の中の声を”聞かない”ようにしたのよね」
そうだ。だから俺は今、平穏を手に入れた。
「あなた今、”意図的にオフにはしていなかった”って言ったけれど。
普段”耳を澄ませて”いるの?」
「えっ、そんなわけは……」
「つまりは、普段は耳を澄ませていない。
今のあなたは、普段意識しなければ人の心の中の声を”聞けない”のよ」
「っ……! いま、出納は俺たちのマンションの周りにいつもいる。
花月さんに連絡を!」
「ごめんなさい、花月はまだ早紀の学校を調べているの。マンションにはいないわ」
「俺、マンションに戻ります!」
俺は椅子を蹴るように立ち上がった。
「それがいいわ、これを持っていきなさい」
花音さんはいつも持ち歩いている、
暗器の苦無を渡してくれた。
「でも、やりすぎないようにね」
「はい!」
俺は部屋を飛び出した。




