ep003:その覗き聞き、危険につき
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Scene011【覗き聞き】
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俺、小泉晴道は、ひとつ上の階に住むようになった早紀を夕食に誘った。
「家具は備え付けなので、自分で自炊しようと思っていました」
そう控えめに遠慮する早紀に、花月さんは笑った。
「もう一人分増えるくらい、なんともないわよ」
「あの……それじゃあ、お願いします」
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早紀を含めた夕食は盛り上がった。
ただ、花月さんも早紀もふと前世の話題を出しそうになり、慌てていた。
うーん、なんというか、複雑な関係だ。
何度か前の前世では愛人枠No.1とNo.2で、一緒に俺に愛された仲。
でも今日、今初めて顔を合わせた仲。
二人とも、このまま知らないふりを続けるのだろうか。
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夕食の後、俺は早紀を部屋へ送っていった。
早紀はどうやら、俺の部屋の真上を寝室として使うようだ。
そう言えば、あの部屋の間取りはうちと同じくファミリータイプ。
女子高生一人が隠れて過ごすには広すぎないか?
ふと俺は早紀の様子が気になり、耳を澄ませるイメージで、心の中の声を聞く能力を”強化”した。
(晴道くん、やっぱり格好よかった。やっぱり好き。大好き)
いやいや、これって盗み聞きだよな。
よくない、って俺の能力は基本盗み聞きだった。
だから、”強化”をやめるきっかけを失っていた。
(晴道くん、私、貴方に見られるだけで、身体が熱くなるの。ほら、ここだってもう……)
って、おーーい、早紀は俺を思って……。
(ねえ、晴道くん、私のここ、もうこんなになってる……)
ダメだダメだ、これはダメだ!!
しばらく耳を澄ませるのは“封印”だ。
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Scene012【登校】
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「おはよう晴道!」
千紗が元気よく起こしに来た。
最近は朝食が千紗、夕食は花月さんが作るのが定番となっている。
「ああ、おはよう千紗。今日も可愛いな」
以前なら、ここで思いっきり照れる千紗の心の中の声が聞こえてきて和んでいた。
でも、今の千紗は気の放出を抑える術を知っていて、それが聞こえない。
少しだけ残念だ。
「晴道、何か疾しいことでもあるの?」
いや、言えるわけないだろ。
昨晩、早紀の心の中の声に当てられて、
あの後一人で”シテ”しまったなんて。
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「「「ごちそうさまでした」」」
俺と両親の声が重なる。
「行ってきます」
俺は両親に声をかけ、部屋を出る。
そして3階へと上がる。
「えっ、晴道どうしたの?」
千紗が首を傾げる。
そうだ、千紗には全然話していなかった。
「転校生が引っ越してきてね。
同じクラスだから、一緒に登校してあげようかと思ってね」
ストーカー対策だが、それは千紗には話せない。
「可愛い子なんでしょ」
あー、うん。早紀は千紗とタイプは似ている。
ロリ巨乳なところが、
でも
千紗はアザと可愛い。
早紀はおとな可愛い。
と、方向性が違うし。
千紗は見るからに巨乳。
早紀は脱いだら巨乳。
と違う所も多い。
いや、今世ではまだ二人とも脱いだところを見ていないから、まだそんなに成長していないと思う。
……してないよね?
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早紀の部屋でインターホンを鳴らす。
「おはよう、早紀。迎えに来たよ」
早紀には昨日のうちに迎えに来ると話しておいた。
「もう、名前呼び?」
ちっ、千紗の声が冷たい……。
「おはよう、晴道くん」
早紀が出てきた。
そして、後ろにいる千紗に気づいた。
(千紗ちゃん……私が一度も勝てなかった人。千紗ちゃんの邪魔をしたくなかったから、私は愛人枠を名乗った。今世でも私の前にいるんだ)
それは、早紀の心の中の強い叫びだった。
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マンションを出ると、あの出納という先生がいた。
先生だろ、自分の学校は?
「出納先生、晴道くんが送ってくれることになりました。
今朝は大丈夫です」
早紀がそう言うと、出納先生は去っていった。
「出納先生は、二、三日学校を休んで、様子を見てくれるって言ってくれたんです」
そうか、熱心な先生なんだな。
でも俺は気づいていなかった。
出納先生の俺を値踏みするような目線に。
心の中の声で相手のことが丸見えなのに慣れすぎていたことに。
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学校に向かう途中に由美子が待っていた。
「おはよう晴道!!」
(誰よ、その子)
由美子は強い心の中声を飛ばしてきた。
それに応えるように、早紀の驚きの心の中の声も。
(由美子さん……最後に晴道くんが選んだ人。晴道くんの唯一の地位を手にした人)
早紀は愛人枠を名乗っていたと言うから、
そうなんだろうと思っていたけれども。
やっぱり、早紀は俺が由美子と結婚した人生の記憶を引き継いでいるんだ。
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俺は千紗と由美子の冷たい目線で肝を冷やしながら、登校することになった。
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Scene013【日常】
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早紀はうちのクラスに急速に馴染んでいった。
世話焼きの京子がついていたこともあってのことだろう。
”俺を取り巻く女性陣の一人”として認知され、打ち解けていったらしい。
普段なら、心の中の声を聞いて色々と把握するのだが、今はそれを”オフにしている”。
まあ少なくとも、強い悪意などが籠もった心の中の声なら聞こえてくるだろうから、それがないということは平穏なのだろう。
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放課後は、日用品を買いに行きたいという早紀を、千紗が少し離れたショッピングモールに連れて行くことになった。
俺もストーカー対策で付いて行くことにする。
「晴道はご熱心ね! 私のことがそんなに好きなの!?
それとも早紀ちゃんが気になって仕方ないのかな??」
千紗にはそんな風に揶揄われた。
ストーカーのことを話してしまいたいが、
早紀が言わない以上、俺からは話せない。
(晴道くん、やっぱり千紗ちゃんと付き合っているのかな?)
早紀は俺のことを考える時は想いが強すぎるのか、心の中の声が自然と聞こえてしまう。
そんなことを考えていると、千紗に声をかけられた。
「晴道、どこまで付いて来るつもり?」
「えっ?」
「下着買いに行くんだけれども!」
そこはランジェリーショップだった。
「ごめん、外で待ってる!!」
(えー、晴道選んでよ!!)
千紗が揶揄いを強い心の中の声で飛ばしてくる。
(もっと大人っぽい下着にしたら、晴道くん喜んでくれるかな? あっ、その前にどうやって見てもらうのよ!!)
早紀さん、勘弁してください。
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ショッピングの後、三人で夕食を済ませてから帰ることになった。
チェーン店のパスタ屋だったが、千紗と早紀が一緒だからか華やかに感じられて、とても美味しかった。
とても楽しい時間だった。
そしてマンションに着いた時、隠れるような人影を見かけた。
あの出納という先生だろうか?
特に変な想いの籠もった心の中の声は聞こえなかったから、気にする必要はないか。
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Scene014【閑話】
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俺は夕食を済ませてきたので、早めに入浴を済ませてベッドへと入った。
そんな時――
(晴道くん……晴道くんは)
早紀の心の中の声だ。
早紀の心の中の声は本当に強い。
耳を澄ませていなくても、
一階下まで聞こえてくるんだから。
聞こえそうで聞こえない。
思わず俺は耳を澄ませてしまう。
(やっぱり、これくらい大人っぽくないと晴道くんは振り向いてくれないかな? ううん、エロくないと)
俺はあの大人しそうな早紀の心の中の声で”エロ”なんて単語を聞いたことに高ぶってしまう。
いや、あの前世で早紀がやる時はどれだけ大胆か、散々知ってはいるんだけれども。
知っていても、このギャップは効く。
(晴道くんがエロい目で見てくれたら、きっと私、全てを捧げちゃう。前世と一緒で)
そうだ、あの前世でも早紀は『生涯で身を捧げたのは、晴道君だけよ』と晩年話していたっけ。
(想像しただけで、私もう……だめ、新品の下着が汚れちゃう)
ああーー、昨日に続いて、これは駄目だろう。
俺は耳を澄ませるのをやめる。しかし――
(晴道くん……ここ……っている……濡れ……いい……すご……あつ……いっ……)
ぐおーーー、心の中の声は耳を塞いでも聞こえるんだよ!!
聞こえそうで聞こえない、断片的な心の中の声が余計に想像を掻き立ててしまうじゃないか!!
いっそ耳を澄ませて、全部聞いてしまえば!
(いっちゃう!!)
ふぅ、一緒に昇天しました。




