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人の心が見える俺にはハーレム生活イージーモード、でも一人に絞るのは無理ゲーだったin二度目の人生。  作者: iron-bow
第09話【その転校生、可憐につき】

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ep002:その再会、運命につき

⸻


Scene005【記憶】


⸻


「さて、座席ですが、一番後ろに席を追加していますので、今日のところはそこに座ってください」


それは、俺の斜め後ろだった。

そして隣は京子なので、京子の後ろということになるな。

その時、京子が手を挙げた。


「先生!」

「なんでしょうか、中里さん」

「私が後ろに下がるので、水野さんはこの席でもよろしいでしょうか?

私が後ろから様子を見て、何か分からないところがありそうだったりしたら、すぐに声をかけられるので」


さすがは京子だ、面倒見が良い。


(晴道の隣を独占できないのは残念だけれども)


俺は窓際なので、確かに隣の席は一つだけだ。


(授業中ずっと、大好きな晴道の後ろ姿を見ていられるのも良いかも!)


心の中の声を聞く能力を”オフ”にするようになってからも、京子の心の中の声だけは防ぎきれなかった。


⸻


京子の机には私物や教科書が入っているので、机ごと入れ替える必要がある。

俺は席を立って手伝った。


「ありがとう、晴道」

(ああ、晴道、優しい……。晴道、晴道、大好きよ)


うん、京子の心の中の声は相変わらずだ。


「あっ、私も!」


早紀が小走りにやってきた。


「大丈夫、もう終わったよ」

「ありがとうございます」


そう言った早紀と目が合った瞬間──。

(晴道くん……! なんで? だって晴道くんとは大学で……。でも、あれは私の妄想じゃ……。でも大学で会ったら聞きたかった。あれは前世の記憶なの?)


そんな強い心の中の声が聞こえてきた。

そうだ、早紀は前世で愛を交わした最後の一人。

俺が立てた仮説。

『俺を知ったり会ったりするのがきっかけで、前世で交わした愛を起点に前世の記憶が蘇る』

それが正しいなら、早紀がドラマに出演している俺を見て、記憶が蘇っていてもおかしくない。


でも、今は記憶について触れないでおこう。


「初めまして、水野さん。俺は小泉晴道。これからよろしくね」


すると早紀は、真っ赤になって俯いてしまった。


(あの初めての時、晴道は優しく私を……。あの時は朝まで激しく激しく……)


って何を思い出しているんだよ!!


ふと気づくと、クラスメイトの大半が後ろを振り返り、こちらの様子を窺っていた。


((晴道がもう”落としている”……そうなるよな))


男子の強い心の中の声が重なり、


((はぁ、晴道だもん、仕方ないよね))


女子の強い心の中の声が重なる。

そして──。


(もう落としてる!! 席を譲ったの、失敗したかも!!)


京子の心の中の叫び声が響いた。


いや、誤解だ。

落としたのは大学に入ってからであって……。

あれ? 誤解じゃないのか?

前世の影響で出会う前から落としてる!?


この時俺は、クラスメイトの”強い心の中の声が聞こえている”ことで、少し思い違いをしていた。


俺は、心の中の声を聞く能力を意図して”オフ”にしているんだと思っていた。


でも本当は違ったのだ。心の中の声を聞く能力を意図して”オン”にしていなかったのだ。


心の中の声を聞く能力を意図して”オンにせずとも”、強い心の中の声は”聞こえてしまっていた”ということ。

心の中の声を聞く能力を意図して”オンにしないと”、普通の心の中の声は”聞こえない”ということなのだ。


⸻


Scene006【対策】


⸻


水野早紀は小柄で、大人しくて、控えめ。

なのに脱いだら凄いし、いざという時は積極的だ。

俺はそのギャップにやられた。


今日は始業式で、簡単なオリエンテーションだけで授業もなく、帰宅となる。

そこで、俺は花音さんに早紀のことを相談することにした。


⸻


俺は花音さんと生徒指導室に入った。


「どうしたの晴道、改まって」


俺は今まで聞けなかったことに踏み込むことにした。


「花音さん、前世の記憶が蘇っていますよね?」

「ええ、そうよ」

「それは、洋介父さんのインタビューの日に俺と会ってからですか?」

「ええ、それに貴方のことを調べた時にね」

「やっぱり」

「それに、和也との記憶もね」


それは、和也さんと愛し合った記憶だろう。

俺は少し嫉妬した。

俺は頭を振り払い、記憶が蘇る仕組みの仮説を花音さんに話した。


「なるほど、理屈は通るわね。

千紗ちゃんと由美子ちゃんに記憶が蘇らないのも」

「あの、美由さんは?」


そう。この仮説から考えたら、美由さんに記憶が蘇っていてもおかしくない。


「あら、美由は和也の彼女だったのよ。

あの一晩のことくらいで、魂が繋がるほど愛し合ったと思った?」


あっ、そうか。美由さんとは一夜限りの関係だった。

それにしても……。


「魂が繋がる?」

「そうよ。前世の記憶を共有するくらいの関係よ。

魂が繋がっているのよ」


それは、花音さん独自の解釈かもしれない。

それでも、納得のいく考え方だった。


「それで、この話を切り出した理由は何?」


そう、早紀のことを話すのに必要だったんだ。


「今日、転入してきた水野早紀って知っていますか?」

「ええ、こんな時期に珍しいわね」

「彼女は、俺と愛し合った記憶を持っています」

・

・

・

「水野早紀、愛人枠NO.2」

花音さんは目を見開いた。

「思い出したんですね」

「ええ、一緒に貴方に愛してもらったわ」


花音さんはどこか懐かしそうな顔をしたが、

いや、未だ未来の話なんだ。

いつもながら、ややこしいな。


「それで、早紀がどうしたの?」

「転入してきた理由って知っていますか?」


職員の方々は情報を持っているんだろうか?


「いえ、職員会議では『母親の仕事の都合』としか言われなかったわ」


やっぱり、そうか……。


「早紀は、ストーカーから逃げてきたみたいなんです」


心の中の声だ。間違いない。


「なるほど、調べてみるわね」


こうして、水野早紀ストーカー対策は秘密裏に始まった。


⸻


Scene007【そこに居る】


⸻


花音さんとの話も終わり、

部活もなかった俺は自宅へと帰った。


マンションのエントランスで、ばったりと鉢合わせたのは早紀だった。


「えっ、晴道くん!」

(なんで、晴道くんはあのシェアハウスに……あっ、あれは大学時代の記憶)

「早紀……、水野さん!」


「水野君、こちらの方は?」


早紀の隣にいた若い男性が早紀に声をかけた。


「あっ、こちら小泉晴道くん。今日から通っている学校のクラスメイトです」

「ほう、それでもうお互いに名前呼びか」


その男性が少しからかうような調子で言った。

親類かと思ったが、『水野君』と呼んでいたな。


「晴道くん、こちらは出納先生。前の学校のクラス担任だったんです」


早紀が親しげに紹介してくれた。

しかし、クラス担任を紹介するには……

いや、これは俺の嫉妬か。


(あっ、晴道くん誤解したかも。説明したいな。このあと時間あるかな?)


うん、いざとなったら意外と積極的なのが早紀だった。


「それじゃあな、水野君。

何かあったら連絡くれたまえ」

「あっ、はい、出納先生」


その男性はマンションを出て行った。


「あっ、あの、晴道くん、このあと時間ありますか?」

「ああ、大丈夫だよ」


ちょうどいい機会だ。

色々と聞きたいこともあるしな。



⸻


Scene008【前世】


⸻


早紀は俺を部屋へ招き入れた。

部屋は3階だった。

しかもうち(小泉家)の真上。

あれ? この部屋って確か……


「晴道くんがこのマンションに住んでいたなんて、

びっくりです」


「ああ、この真下の部屋なんだよ」

「えっ、そうなんですか!」

(これって運命!!)


まるで誰かに仕組まれたような。

俺、ラブコメの主人公だっけ?


「さらにもう一つ下が千紗の部屋なんだ」

「えっ? 千紗ちゃんの?」

「千紗のことをいつ知ったの?」


そう、今日初登校だ。千紗を知る機会はなかったはずだ。


「あっ!」

「早紀、前世の記憶があるね」

「はい。ドラマで晴道くんを見たら、頭の中に記憶が溢れてきて……晴道くんと……」

(抱いてもらっていた)

「私の妄想かと思っていました」


早紀は赤くなって俯いてしまった。


「俺にも前世の記憶がある。

だから、早紀のことも思い出した。

あのシェアハウスで、みんなと一緒に楽しく過ごしていた」


俺にとって、一つ前の前世ではなく何回か前の記憶だが、早紀にとってはどうなんだろう?


「はい、とても幸せでした」

「俺にとって、早紀は大切な人だ。

だから、何でも相談してほしいんだ」


早紀は小さく頷く。


「俺はこの部屋のオーナーを知っている。

家具を揃えて、短期専用賃貸に出している」


運用を開始するときに、周りの部屋に説明に来ていた。


「親の仕事の都合っていうのは嘘だよね」


心の中の声でストーカーのことも知っているが、

それを口に出すわけにはいかない


「実は私!」

(助けて晴道くん!!)


⸻


Scene009【ストーカー】


⸻


「初めはね、ちょっとした違和感だったの」


早紀は話し始めた。


「鉛筆が足りなかったり。

上履きが記憶と違う向きになっていたり」


早紀は俯いてしまった。


「でも段々と、おかしなことが起こりだしたの。

体操服が見当たらなくなって、

見つかったと思ったら、

変なシミが付いていたり」

(気持ち悪い)


それはかなり、やばい。

警察は動かないのか?


「出納先生が私の様子に気付いて相談に乗ってくれて、

学校の監視カメラの映像をチェックしてくれたりもしたけれど、何も見つからなくて」


あのさっき会った若い男か。


「そのうち変な手紙も届くようになって」

「どんな?」

(いやらしい、気持ち悪い)


早紀の顔色が悪くなった。


「ごめん、話さなくていい」

「それで、出納先生が警察に相談もしてくれたのだけれど、まだ事件性がないから警察として動くのにも限界があるって」


確かにストーカー規制法は犯人に対しての法律だから、

見えない犯人には動きづらいか。


「そのうち、出納先生が怪しい人影を見かけるようになって……」

「人影ってことは、顔とかは見てないわけだ」

「若いのか、年配なのかも分からなかったって」


手掛かりなしか。


「お母さんも家の周りで怪しい人影を見たって。

だから少しの間だけ別の学校に通って、

その怪しい人影がどう動くか見てみようって話になったの」


何か違和感がある。

早紀が一人無防備になるじゃないか。


「この部屋は?」

「晴道が通っている学校の校長先生が、私の通っていた学校の校長と知り合いらしくて。

3学期の間だけこっちに通ってみて、ストーカーがどう動くか見てみようってことになったの」

「それって、ここにいる間、早紀が無防備なんじゃないか?」

「だから出納先生は、私がここに住むのは周りに秘密にしようって。

それで、出納先生がちょくちょく見に来てくれるって言ってくれたの」

「ずいぶん出納先生のことを信頼しているんだな」


これは嫉妬か?


「優しいし、ストーカーのことも真剣に考えてくれて」


担任の先生なら、それくらい普通なんじゃ?


「少しだけ、晴道くんに似ていて」


それはとても小さな声だった。


⸻


なんだか、無理のある対策な気がする。

少なくとも、このマンションにいる間だけは俺が守ろう。

マンションにいる間はなるべく一緒にいよう。

俺はそう決めた。


⸻


Scene010【閑話】


⸻


私、水野早紀は引っ込み思案で人見知りなので、

高校に入ってから、なかなか周りに馴染めなかった。

そんな時、優しくしてくれていたのは担任の出納先生だった。

入学して、担任の先生として初めて会った時、

私は少しだけ胸がトクリとした。

なぜかは分からなかった。

もしかして、私は出納先生のことが好きなのかなとも思った。


そして、出納先生は優しくて親切だった。

とても面倒見が良かった。


私は少しだけ、出納先生に甘えていたかもしれない。

夏休みには個人的に出納先生と会ったりもした。

少しだけ胸がドキドキした。


⸻


二学期が始まり一ヶ月ほど経った時に、たまたま目にしたドラマで、ある男性を見て胸が張り裂けそうになった。


思い出した、晴道くん、私の最愛の人。


でも、それは私が大学生の時の記憶。

えっ、私はまだ高校生。


未来の記憶?

もしかして、前世の記憶?

それとも私の妄想?


深く深く愛し合った記憶。


そして次の日、高校に登校して気づいた。

出納先生は、少しだけ晴道くんに似ているんだ。

だから胸が少しだけときめいたのかな?


たぶんその日から、私の出納先生への接し方は少しだけ変わった。

晴道くんを思い出してしまったら、

もう他の男性にはときめかなくなってしまったから。


それからしばらく経った時だった。


あれ、鉛筆が足りない?


それが違和感の始まりだった。


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