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人の心が見える俺にはハーレム生活イージーモード、でも一人に絞るのは無理ゲーだったin二度目の人生。  作者: iron-bow
第01話【そのハーレム生活、イージーモードにつき】

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ep005:その献身、愛おしにつき


Scene015【千紗の決心】



これは、晴道も知らぬ物語



私、如月千紗は、小学校5年生の時に大きなピンチを迎えていた。

それは、私の大好きな幼なじみの晴道が、転校生の中里さんと凄く仲良くなったことだ。


私は、ずっと晴道のことが好きだった。

幸いだったのは、恋のライバルになるかと思った優香が、同じ幼なじみの武と仲良しカップルになったこと。

おかげで、私は晴道を独占できた。

活発だった私は、晴道と男友達のような関係だったけれど、それだけで十分に満足していたのだ。


でもある日、気付いてしまった。晴道が転校生の里塚さんと仲良くなっていることに。

しかも、里塚さんは間違いなく晴道のことが好きだ。

そして、晴道も中里さんのことを好きになり始めているのが、はっきりと分かった。

やがて周りからも、二人は仲良しカップルと見られるようになっていく。


そんなある日、私はお兄ちゃんに相談をした。

当時人気だったアニメを観ている兄に、ぽつりと問いかけたのだ。


「兄貴……男の人って、どんな女の子が好きなの?」


兄はTVから目を離さないまま、あっさりと言った。


「そうだな。可愛くて、甘えん坊で、ぶりっ子で……何より巨乳。そんな妹キャラなんかは、実際に妹がいない晴道くんには刺さると思うぞ」

「はっ、晴道は関係ないってば!」


私が睨みつけると、兄はいつの間にか真剣な眼差しで私を見ていた。


「なれるよ、千紗はとびっきり可愛いし。……母さんを見てみろ、巨乳美人だぞ」

「バカなこと言ってんじゃないわよ……でも、ありがと。“お兄ちゃん”」


そこから、私は変わる努力を始めた。

当時の私は――思ったことはすぐ口にするし、男の子にだって蹴りを入れるような性格だった。


そんな私が、ある日突然「甘えん坊でぶりっ子で、ロリ巨乳(予定)」なんて路線を走り出したのだから、当然のように周囲の目は冷たかった。


それでも、少しずつ、時間をかけて。

友達には好印象を保ちつつ、嫌われないように慎重に、“ぶりっ子”の角度を調整していった。

自分自身にも、そのキャラクターを馴染ませるようにして。


でも、それだけじゃ駄目だって分かっていた。

そんな外見だけの付け焼き刃じゃ、里塚さんには勝てない。

だから私は、晴道が憧れている梨子姉さんを参考にすることにした。


梨子姉さんは、

誰にでも優しくて、

気遣いができて、

いつも周りの人が幸せになるように動いていて、

誰にでも隔てなく接してくれて、

人のために努力できる人。


……うん、難しい。

ただ真似するだけじゃ駄目だ。そんなのすぐにバレてしまう。

本当に心から身につけないと。


それに、なんだかこれだと里塚さんとキャラクターが被るかもしれない。

そっか。晴道が里塚さんを好きになったのは、憧れの梨子姉さんの姿を重ね合わせた部分もあるのかも。


そう気づいた私は、少しだけ方向修正を試みる。

美優お母様に頼み込み、家事を徹底的に叩き込んでもらったのだ。

特に、料理を重点的に。

胃袋を掴むのだって、立派な作戦だ。

そうして努力を重ね、高校1年になる頃にはすっかり形勢が逆転し、私と晴道が仲良しカップルと見られるようになっていた。


でも私は、里塚さん――いいえ、由美子には感謝している。

由美子と晴道が仲良くならなければ、私は変われなかった。

晴道とは、男友達のような関係のまま、それ以上進めなかっただろうから。

だから、私は由美子には、これからも晴道と仲良くしてほしいと思っている。


たとえ、その由美子と晴道の関係が、私と晴道との関係に影を落とすことになるとしても。



Scene016【晴道の決心】



俺は午前中の授業を終えて由美子が来るのを待っていた。

食堂で一緒に昼食を取る約束をしていたからだ。


そこに、千紗が慌てた様子でやってきた。

今学年、千紗は校内ではほぼ俺の所へとやってこない。

クラスの友達との付き合いを優先しているのと、放課後はほぼ俺を独占しているため、校内では由美子や京子たちに俺との時間を譲ってくれているのだ。

それが、俺の大好きな千紗だった。


(由美子が……由美子が!!)


千紗から強い心の声が聞こえてくる。

俺は『由美子がどうかしたのか!』と叫びそうになったのを寸前で押し留める。

千紗はまだ何も口にしていない。

今、由美子のことを問いただしたら、心の声が聞こえているのがバレてしまう。


やがて俺の元にたどり着いた千紗が、口を開いた。


「由美子が! 由美子が体育の授業で怪我をしたの!」

「なっ、なんだって!?」


由美子は高校に入学して初めてのバレーボールの大会を目前に控えていた。

バレーボールの強豪校からの誘いを蹴って、俺と一緒にいることを選んだ由美子。

せめてこの高校では、確かな実績を積み上げてほしかった。

だって由美子は、将来オリンピックの代表選手に選ばれるはずなのだから。


「由美子は今、保健室にいるから、行ってあげて」

(由美子、この大会でベンチ入りできたら晴道に告白するつもりだった。怪我でそれを諦めるなんて、絶対ダメ!)


それは、俺が由美子と千紗の心の中の声で既に知っていたこと。

でも、二人ともまだ口にはしていない。

だから、俺は知らないことにしないといけない。


「分かった、行ってくるよ」


走り出そうとした俺を、千紗が引き留める。


「あっ、晴道、由美子には私が呼びに来たって言わないでほしいの……。

でないと、由美子が私に引け目を感じちゃうかもだから」


そして千紗は、何かを決心したような表情で続けた。


「あと、今日由美子の家には晴道一人で行ってくれるかな? 私は別件の用事で行けなくなっちゃったんだけど……由美子は怪我をして不安になっているだろうから、晴道だけでも行ってあげてほしいの」

(嘘、用事なんてできてない。でも、今の由美子には晴道が必要。私はそれを邪魔したくない)


「うん、それじゃあそうする」


俺はそう返事をして、千紗をぎゅっと抱きしめた。


(えっ……晴道……)


千紗が目を閉じて、俺にそっと体重を預けてきた。


(えっ、えええっ!?)


教室の中の心の声が一斉に騒がしくなるが、構うもんか。

俺は千紗が愛おしかったから、抱きしめたんだ。



俺が保健室に着くと、由美子は体操着のまま、ベッドの上に腰掛けていた。


(こんな時に怪我するなんて……。大したことはないみたいだけど、大会には間に合わないかも。そうなったら晴道に告白できない……)


そんな心の声が聞こえてきた。


「由美子、約束したのに来ないから、あちこち探したぞ!」


俺は何も知らないふうを装った。


「あっ、晴道ごめんね。体育の授業で転んじゃって。

大したことないのに、保健医の先生が大げさに包帯を巻いたりしちゃってさ」

(捻挫だって……。ちゃんと運動できるようになるまで、少し時間がかかるかも)


由美子の顔は、今にも泣き出しそうだった。だから、俺は由美子を抱きしめた。


「強がらなくていいんだよ」

「晴道……」


由美子の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。

それは、俺の“前世での記憶”で、オリンピック直前に怪我をした由美子の姿とまったく一緒だった。


「私ね、頑張っていたの。

今度の大会、レギュラーで参加できるって言われていたのに……」

(嫌だ、嫌だよ、こんなことで諦めたくないよ。レギュラーになって、晴道に告白するはずだったのに……!)


だから、俺は決心した。


「ねえ由美子、俺のことを信用してくれるかい?」

「えっ、何を?」

(私、いつだって晴道のことなら何だって信頼しているよ)

「俺に、由美子の足を治療させてくれないかな?」

「えっ、ええっ!?」

「混乱するのは分かる。信用できないかもしれない」

(そんなことない! 私、晴道の言うことなら何だって信じる)

「俺には、特別な力があるんだ。それを使って由美子を治療する。絶対に大会に間に合わせてみせる」

「分かった」

(晴道が私のために、何かをしようとしてくれている。それはきっと、晴道にとってもリスクのあることなんだ……。そんなの、私にはもったいないよ)


ああ、これが由美子だ。控えめで思慮深くて、優しい。


「俺を信用してくれるなら、病院には行かずに家で待っていてくれるかい?

俺は少し用事を済ませたら、すぐに由美子の家に行くよ」


下手に病院に診せて、事情を知られない方がいい。


「分かった、家で待ってる」

「うん、午後の授業は休んで待っていてほしい」

「分かった……」

(あっ、千紗が来るまで、部屋で晴道と二人きり……?)


その時、ベッドに置かれていた由美子のスマホにメッセージの着信があった。

きっと家族などに連絡するために、千紗が教室から持ってきてくれていたのだろう。


「えっ、千紗、今日来られなくなっちゃったって」

「そっか、仕方ないな」

(晴道と朝まで二人きりって……“朝まで”って何よ!?)


そんな由美子の心の声に、俺は昨晩の優香のことを思い出してしまう……。

おいおい、俺まで大人の階段を上っちゃうのか!?

いや、今は由美子の治療をする算段が先だ。


「千紗に着替えとカバンを持ってきてほしいって頼んだよ。着替えたら先に帰ってるね」

(えっと、この足でも、シャワー浴びたりくらいはできるよね……って、私は何を期待しているのよ!)

「うん、俺はちょっと寄る所があるから、もう行くよ。タクシーを呼んで、歩かないで帰るんだよ」

「分かった、家で待ってるね」


俺は決意を固めた。

俺の秘密を明かすことになったとしても、由美子を助ける。

それには、花音さんの助けが必要だ。



教室に戻った俺は、京子にお願いをする。


「俺、ちょっと用事ができたから、午後の授業をふけるよ。

先生にはうまく言っておいてくれないかな?」


そう言った俺に、京子はにっこりと笑いながら応えた。


「分かったわ、うまく言っておくね。

ねえ、由美子ちゃんのことでしょう?」

「えっ?」

「ごめんなさい、さっきの千紗ちゃんとの会話が聞こえちゃったの。

由美子ちゃんの所に行くんでしょ?」

「あっ、うん、そうなんだ」

「いってらっしゃい」

(この優しさが晴道だよね。私の好きなところ……)


そんな心の中の声を背中に受けながら、俺は教室を後にし、職員室へと向かった。



Scene017【閑話】



――俺、小泉晴道は、最愛の〇〇さんと結婚した後も、しばらく子供を作らなかった。


二人きりの生活を楽しみたかったというわけではない。

そもそも、なかなか二人きりになれなかったからだ。

〇〇さんと結婚した後も、俺の周りにはたくさんの愛する女性たちがいたのだから。


それでも数年後には決心をする。愛する〇〇さんとの間に、子供が欲しいと……。


そして、俺と〇〇さんの間には可愛い女の子が生まれた。


こんなにも愛おしい存在がこの世にあったのか、俺は心からそう思った。


名前は「晴花はるか」と名付けた。



晴花は可愛らしく、すくすくと育っていった。

俺は間違いなく、幸せの絶頂にいた。

でも、その幸せは長くは続かなかったのだ。



今回の話は

前作

三人のヒロインとシェアハウスすることになった僕は、全員を本気で愛して呪われてしまった。 ――告白は観覧車のてっぺんで


【第03話】何度負けても、あなたを好きでいた ― 千紗が選んだ愛のかたち

https://ncode.syosetu.com/n8087lr/4/


との差異を楽しんで貰えればと思います。

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