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人の心が見える俺にはハーレム生活イージーモード、でも一人に絞るのは無理ゲーだったin二度目の人生。  作者: iron-bow
第06話【その幼馴染み、負けヒロインにつき】

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ep006:その本音、双方向につき


Scene017【後片付け】



守さんに合図を送り、中に入ってもらう。

「十二人中八人を一瞬で、か……

あの銃身は刀で切ったのか?」

「ええ、まあ……」


一度目の救出作戦とクマとの戦いで、イメージは掴めていた。

気の技は、イメージさえできれば成功する。

片付けるために刀を受け取った守さんは、刃を確かめながら言った。


「刃こぼれもなし、血痕もなしか。

……あれはどうやった?」


守さんは、遠くに倒れて足首から血を流している男を見て言った。


「気を飛ばしました」


一度目の救出作戦では威力があり過ぎた。

だから、あれを薄く収束させるイメージで放ったのだ。


俺は千紗を助けに行く前に、空に飛ばした奴、顎を粉砕した奴、そして足首を切った奴の手当てを素早く終わらせる。

それを見ていた守さんが、呆れたように呟く。


「近距離は何であろうと、叩き潰されるか一刀両断。

遠距離は気で切り落とされる。

さらに自己回復も他者治療も有り、か……

晴道、お前が格闘対戦ゲームのキャラクターなら、

とんでもないバランスブレイカーだな」

「守さんも、ゲームやるんですね」


そう尋ねた俺に、守さんは大真面目な顔で答えた。


「当然だ。あれは対人駆け引きの訓練に最適だ」


そして、ニヤリと笑って付け加えた。


「もっとも、晴道みたいなキャラがいたら、即刻使用禁止だがな」



その時、霞の者の応援が到着した。


「千紗を助けに行って来ます。

千紗にはこんな光景を見せたくないので、

俺が戻るまでに片付けておいてもらえますか?」


守さんは、周囲をぐるりと見回して言った。


「分かった、三分待ってくれ」


早いな、カップラーメンかよ。


でも、そのおかげで俺は張り詰めていた気が緩むのを感じた。

守さん気を使ってくれたのかな。

俺は、千紗の元へ向かうことにした。



Scene018【千紗】



俺は廃工場の中へと入る。

千紗は奥だ。


いた、千紗だ。

椅子に縛り付けられ、目隠しをされている。


酷い……、手足は大丈夫か!


「晴道、私は大丈夫! 手足も痛くはないよ。それより、莉子は!?」


えっ、今……。


いや、莉子は大丈夫だ。花月さんがケアしてくれている。


「えっ、花月さん? ……莉子、無事で良かった」


やっぱりだ。

俺は今、声を出していない。


千紗、聞こえるか?すぐに行く


「うん、”聞こえるよ”

来てくれてありがとう。

……あいつらは?」


やっぱりだ、千紗は俺の心の中の声に反応している。

俺は千紗の元へと駆け寄り、拘束を解いて目隠しを外した。


「晴道、晴道、晴道……っ、うわぁーーん!」


目隠しが外れた瞬間、千紗は俺に抱きついて激しく泣き出した。


「怖かったな。もう大丈夫だ」

「うぐ、うぐっ……、あいつらは、どうしたの?」


おそらく、千紗にはもう隠し事はできないだろう。


「俺が全部やっつけたよ」

「えっ……?

晴道がそんな危ない目にあうのは嫌だよ!」


この期に及んで、自分のことよりも俺の心配をするなんて。

だから、俺は少しだけ冗談めかして言った。


「クマや暗殺者集団に比べたら、

軍人崩れなんてチンピラと大差ないさ」

「へっ?」


千紗は涙をためたまま、ぽかんと目を丸くした。



Scene019【聞こえる】



俺は、千紗には全てを話す決心をした。


「なあ千紗、今から大切なことを話したいんだ。

誰かに聞かれるわけにはいかないから、

もう少しここに居てもいいかな? ――怖くないかい?」

「うん、大丈夫!」


(晴道と一緒なら、地獄の底でも怖くないよ)


「はは、地獄の底は嫌だな」

「えっ? ……今、私、声に出してた?」

「千紗、実は俺……人の心の中の声が聞こえるんだ」

「嘘、でしょ……?」

「嘘じゃない。これは花音さんも、花月さんも、由美子だって知ってる」

「知らなかった……。私だけ?」

「いや、そういうわけじゃないよ。

あと知ってるのは……そうだな。

守さんと和也さんくらいかな」


(じゃあ、じゃあ……あんなことや、こんなことまで、全部聞かれていたってこと……!?)


「はは、”あんなこと”や”こんなこと”が具体的に何を指しているのかは分からないけれど……、

うん、きっと聞いちゃってたかな」


千紗は恥ずかしそうに俯いてしまった。

やっぱり、自分の心を覗かれていたなんて嫌だよな。

そう思ったのも束の間、千紗は不意に顔を上げると、

不思議そうに首を傾げた。


「あれ? ……でも、別に困らないかも??」

「あ、あはは。由美子も同じようなことを言っていたらしいよ」


以前、花音に聞いたことがある。


「そりゃそうよ。

だって由美子の想いなんて周りに垂れ流しで、

晴道じゃなくても丸聞こえだったもの」

「じゃあ、千紗は?」


そう尋ねた俺に、千紗は何を今さらと言いたげな顔で言った。


「私、晴道に隠し事なんてしたことある?」

「いや、無いな」


俺は即答した。


「でしょ? さっき言った”あんなこと”や”こんなこと”だって……聞かれていたなら、むしろ好都合っていうか」


そうだった。

俺はこれまで、千紗の心の中の声に何度も救われてきた。


「可愛い」と思わされ、

「やっぱり好きだ」と思い直させられ、

「なんて健気なんだ」と感動させられてきた。


いや、確かに「いや、意外に腹黒いな」なんて思ったりすることもあったけれど……。

それすらもギャップとして「好きだな」と思えたり。


「『腹黒だから、好きだな』って

……晴道は、いったいどれだけ私のことが好きなのよ!」

「……なあ千紗。今、俺は声を出してなかったんだ」

「え……?」

「”千紗も”今、俺の心の中の声が聞こえたんだよ」


それを聞いた千紗は、驚くよりも先に、

なぜか深く腑に落ちたような表情を浮かべた。


「そっか……。それでね。

私、小さな頃から『晴道は思っていることをすぐに口に出しすぎ』ってよく言ってたじゃない?」

「そうだな。同じマンションに住みだした頃には、もう千紗の口癖みたいになってたな」


懐かしい思い出だ。

しかし、次に千紗の口から出た言葉は、

その穏やかな感慨をすべて吹き飛ばした。


「あれってさ、実はその頃から、

私は晴道の心の中の声を聞いていたんだと思う。

……そう思えば、すっごく納得できる思い出がたくさんあるの!」

「な、なんだってぇぇぇ~~~~~っ!?」


いつもなら千紗が上げるはずの定番の叫び声を、

俺の方が全力で上げていた。



Scene020【敵わない】



千紗は明るい顔で言った。


「晴道の心の中の声を聞けるのは私だけ?」

(だよね、だよね? 私だけが知る晴道の本音……!)


「あー……。いや、ごめん。

花音さんも聞こえてる」


千紗は見るからにがっくりと落ち込んだ。


「私はいつも、二番目の女……」


はぁ、面倒な子だ。


「今、面倒って思った!」

(ひっどーーい!)


うっ。

俺は慌てて気の放出を抑える。


「あ、晴道の声が聞こえなくなった。

えっと、こうかな?」


その瞬間、千紗の心の中の声がふっと聞こえなくなった。


「千紗、今のって……?」

「えへへ、晴道の真似をしただけだよ?」

「ははは。そっか、千紗にはかなわないや」


とっくに三分は経っている。

そろそろここを出ようか。


「本当は、もう一つ話したいことがあったんだけど……。続きは俺の部屋でしよう」


すると、千紗はからかうような表情を浮かべた。


「えー? 晴道、大好きな千紗ちゃんを自分の部屋に連れ込んで、”何”するつもり?」


それに、俺は全力で乗っかって返す。


「もちろん、”何”に決まっているだろ。

俺は千紗のことが大好きなんだからな!」


(えっ!? 何って……だ、駄目、まだ早いよ! ううん、早くはないけれど……でも、シャワーくらいは浴びさせて……って、私、何を考えて──!?)


「なあ、千紗。

シャワー浴びる時間は十分あるぞ」

「えっ!? なんで……いや、そうじゃなくてっ!」


(キャーキャーキャー! 聞かれてる、聞かれてるよね!?)


「うん、千紗。めちゃくちゃ漏れてるよ」

「はぅ……っ、やだ、恥ずかしいっ!」


千紗は顔を真っ赤にして、両手で顔を覆って俯いてしまった。

気の制御、早く覚えないとな。



建物の外に出ると、そこには何も無かった。

あいつらの姿も、飛び散っていたはずの血痕も、

戦い(いや、一方的な蹂躙だが)の痕跡すらも。

そして、霞の者の人たちの姿も。


「あいつらは……?」


千紗が怖々と辺りを見渡す。


「言っただろ『俺が全部やっつけたよ』って」

「でも、ナイフや銃を持っている奴もいて……」


俺はここぞとばかりにドヤ顔で言ってやった。


「これも言っただろ『クマや暗殺者集団に比べたら、軍人崩れなんてチンピラと大差ないさ』ってね」

「はぁ……。何がなんだか、全然分からないけれど」


これは完全に冗談だと思っているな。

俺はこの後、自分の部屋で全てを話すつもりだ。

その時、千紗がどんな顔をするか今から楽しみだ。


(それはともかく……。晴道が、助けてくれたんだよね)

「ああ、そうだよ」

(ありがとう)

「ところで千紗、なんでそこは心の中の声でなんだ?」

「オンオフの練習だよ」


そう言ってウィンクをしてみせる千紗が、酷く可愛らし過ぎて、俺はまた惚れ直してしまうのだった。


「ねえ、晴道。

『酷く可愛らし過ぎ』って何よそれ!

それに、ウィンクくらいで惚れ直すなんてチョロ過ぎない?」


うぉっ! 心の中の声、漏れてた!!



Scene021【火種】



門の外には、まだ花月さんの車が止まっていた。

俺たちに気付いたのか、車から早乙女さんが勢いよく飛び出してきた。

花月さんと守さんも車外へ出てくる。


「千紗!! 大丈夫なの!? 痛いところはない?」


(千紗を置いて、私一人だけ安全な場所に逃げるなんて……)


「私は大丈夫! 莉子こそ、怖い目に遭わせてごめんね……っ」


(莉子、ごめんね。ごめんね……)


千紗と早乙女さんは抱き合って、そのまま泣き出してしまった。

それを見た花月さんが、二人を優しく包み込むように抱きしめてくれている。


その間に、守さんが小声で話しかけてきた。


「依頼主は、例の芸能事務所の社長だ。

後始末は任せてくれるか」


状況は理解できた。

守さんが言っているのは、裏で色々と画策していたというあの芸能事務所の社長のことだろう。

だが──正直に言って、俺はその男の顔も名前もまともに知らない。

そんな見ず知らずの、どこの誰とも分からない奴の執念で、なぜこんなプロを雇った拉致まがいの大騒動に巻き込まれなきゃならないんだ。

やり過ぎだろ。


でも──。


「殺しちゃ嫌ですよ」


死なれたりしたら、後味が悪すぎる。


「当然だ。殺す価値もない三下だ。

だが、火種はきっちりと消さなければならない」


「消すんですか」


「そうだ。殺しはしない。”消す”」


”消す”って……いや、むしろ”殺す”より響きが怖いんですが。



やがて泣き止んだ早乙女さんが、俺の元へと歩み寄ってきた。


「小泉くん、千紗を助けてくれて、本当にありがとう……っ」


(千紗が無事で、本当に本当に良かった……!)


「いや、俺と千紗のごたごたに早乙女さんを巻き込んでしまったんだ。

ごめんね。

それに、千紗の事を知らせに来てくれてありがとう」


(晴道くん、優しくてかっこいい……。それに──あの時、キスしてくれた……)


いやいやいや! キスなんてしてないよ!?


(ねえ、晴道。『いやいや、キスなんてしてないよ』って、何のこと?)


千紗の冷ややかな心の中の声が飛んできた。

やばい、動揺のせいで気の制御が緩んで、心の中の声が漏れている!


「あの、晴道くん……」


(莉子が『晴道』って呼び出したんだけど? あなた莉子に何をしたのよ)


(いや! 早乙女さんが奴らのことを怖がっていたから、落ち着かせようとして抱きしめて……頬を寄せて『大丈夫だよ』って言っただけで!)


(頬を寄せたぁ!?)


「あ、ごめんなさい。つい”晴道”って呼んじゃった」


「あ、いや、全然問題ないよ! みんなそう呼んでるからさ」


「本当? じゃあ……私も”莉子”って、呼んでほしいな」


(親友の優香が好きかもしれないからって遠慮していたけれど。優香は武くんと付き合いだしたし……もう、遠慮しなくても良いのかな?)


できれば遠慮してもらえると、助かるんだけれども。


(何の遠慮よぉぉぉ!!!)


「えっと、莉子ちゃん。

今日のところは花月さんが家まで送ってくれると思うから、またゆっくりお礼を……」


「お礼なんて良いの。代わりに、これから莉子って呼んでくれたら……っ」


(ふぇぇん、莉子が本気だよぉ……!)


新たな火種が勢いよく燃え上がった気がするんですが!

誰か助けて。


あっ、千紗の心の中の声がパタリと聞こえなくなった。

だんまりを決め込まれるのが、一番怖いんですけれども!!


守さん、こっちの火種も消せませんか……?


そっと視線を送るが、守さんは「我関せず」といった風に夜空を見上げている

花月さんに至っては、ものすごく冷たい目でこちらを見ているし。


ああ、空にはほぼ満月に近い、綺麗なお月様が昇ってきた。


「月が綺麗ですね」


莉子ちゃんが、じっと”俺の顔”を見つめながら囁いた。


「夏目漱石ですか!?」


「はいっ!」


莉子ちゃんが満面の笑みで答えた。


……俺のハーレム要員、また増えてます?



Scene022【閑話】



ある芸能事務所の社長が蒸発した。

それと同時に、会社の金庫から現金が消えた。


『事務所の金を持って海外へ逃亡したらしい』


そんな噂も流れた。

しかし、それにしては消えた現金は少なすぎた。

確かに海外の怪しげな口座への入金記録も見つかったのだが、海外逃亡資金と呼ぶには心許ない額だった。


取締役会は社長の横領を事実と認定し、即日解任。

新しい社長が就任した。

新しい社長は元社長のブレーキ役だった役員で、

この事務所の良心とまで呼ばれていた男だった。


元社長の横暴な経営態度に嫌気がさしていた社員たちが、反対するはずもなかった。


こうして大手芸能事務所は速やかに平穏な運営を取り戻す。


その裏にどんな暗躍があったのか、知る術もなく。


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