ep003: そのスター、圧倒的につき
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Scene007【スター】
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千鶴……いや、今世では年上だから、千鶴さんと呼ぶべきか。
俺は千鶴さんと再会してから、彼女のことを調べてみた。
俺はグラビアアイドルに興味が無いので知らなかったが、驚くべきことに、彼女はグラビアクイーンとして有名だった。
そして、女優としても存在感を放ちつつあるという。
そして、千秋()はいなかった。
いや、もちろん一般人としては居るのかもしれないが、グラビアアイドルとしての千秋は存在しなかった。
俺はふと思う。
今世では千鶴と千秋、二人で一人の「千鶴さん」として存在しているのではないだろうか。
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「その役、私に受けさせてもらえない?」
千鶴さんのその声に、場がざわついた。
「グラビアクイーンの千鶴だよな」
(やっぱり、エロいな)
「存在感凄いな」
(オーラか?)
「ああいうのをスターっていうんだろうな」
そんな周囲の声を聞いた千紗は、また落ち込んでしまう。
(なに、あの輝き……。あれをスターっていうの?)
「それは、島村社長の孫娘としてですか?」
監督の言葉に、さらに場がざわめく。
「島村って、メインスポンサーの?」
「えっ、そうなの?」
「スポンサーのごり押し?」
そんな中、千鶴さんははっきりと宣言した。
「いいえ。女優、千鶴としての立候補よ」
(晴道様と一緒に仕事できるなら、出演料なんていらないわ!)
一瞬で場が静まり返る。
(かっこいい……)
(スターの貫禄ってやつか?)
それに、監督が応える。
「スポンサーのごり押しなら断るところですが、
それなら大歓迎です」
(この前出演してもらったドラマ、あの演技は良かったからな)
(彼女なら、もうイメージ沸きまくりっす!)
(私は……スポンサーのごり押しだった……)
さらに落ち込む千紗に、俺は言ってあげたかった。
『最初の起用はそうだったかもしれないけれど、継続は監督たっての希望なんだよ』と。
でも、心の中の声に直接応じるわけにはいかない。
だから、俺は千紗の手をそっと握る。
けれど、千紗は握り返してこなかった。
「契約はいかがしましょうか?」
「私はフリーでやっているから、今すぐにでも良いわよ」
(晴道くんと一緒に仕事をするために、スケジュールを全部キャンセルしてきたの。信用なんてどうでも良いのよ、晴道と一緒にいられるなら!)
心の中の声が怖いんですけれども……。
「分かりました、それでは今すぐに。
他の皆さんは申し訳ない。
至急シナリオを仕上げますので、
今日のところは解散で!」
(しばらく徹夜だな……)
「出ました、監督の定番無茶振りっすよ」
(でも、やってやるっす!)
その時、香織姉さんが声を上げた。
「今、主な登場人物で男性はうちの晴道だけなんですよね?」
「そういう状況ですね」
(もともと和也は舞台装置で、女同士の駆け引きがメインだったからな)
香織姉さんは満面の笑みで言った。
「じゃあ、女性陣全員が晴道に恋してしまえば良いんじゃないですか?」
千鶴さんがそれに即答する。
「それ、いいですね! 三人が彼を射止めるために競い合う。
演じ甲斐があります!」
(晴道様と恋仲、晴道くんと結婚、そして現実でも晴道とゴールイン!! きゃーきゃーきゃー!)
(私も演技が出来るなら、一緒に……! ドラマの中なら、結婚だってできるじゃない!! きゃーきゃーきゃー!)
二人が揃うと、心の声がうるさすぎる。
「なるほど、彼なら三人の女性が取り合っても説得力があるな」
(いける、いけるぞ!)
監督もやる気になってきた。
「晴道くん、後でインタビューさせてもらいたいっす!」
(特に女性遍歴! まだ高校一年生でも、きっと色々有りそうっすよ!)
シナリオライターさんの追及、めちゃくちゃ激しそうだ。
こうして、今世のドラマは、前世の三年後のドラマとほぼ同じ構成になっていくのだった。
千晴さんが演じた役を千鶴さんが演じることに変わったけれど、一体どんな結末を迎えるんだろうか。
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Scene008【プロフェッショナル】
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翌週には完璧なシナリオが準備され、撮影が再開された。
(流石に倒れるかと思ったっす……)
シナリオライターさん、本当にお疲れ様でした。
これぞプロフェッショナルなんだろう。
俺と千紗は、少しだけ授業を休んで撮影に来ていた。
二人とも成績は優秀で、先生方の信頼は厚い。
俺は剣道の大会でも好成績を残しているし、
千紗は仕上げた合宿レポートの評価が高く、
担当教師から「文化部の合宿レポートのお手本だ」と褒められていた。
だから、撮影のための休みは簡単に許可された。
ちなみに新学期は先週から始まっているので、
当然、花音さんも戻ってきている。
「私も撮影現場に行ってみたいな〜」
(ねえねえ晴道、連れて行って。お・ね・が・い)
「花音は授業があるから駄目でしょ!!」
(晴道が心の中の声でなんて言ってるか知らないけれど、甘やかしたら駄目よ)
「じゃあ、天文観測部の顧問として!」
「天文観測部の顧問がなんで、ドラマの撮影に付き添うのよ!」
そんなやり取りが小泉家のダイニングでもあった。
なぜそんなことになっているかというと、
千紗が演技の勉強で放課後レッスンに通っており、
小泉家の夕食を作りに来るのを休んでいるからだ。
その代わりに、今は花月さんが作りに来てくれているのだ。
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話が逸れた。
撮影は順調に進んだ。
驚いたのは、千鶴さんが撮影を開始すると、一切心の中の声が聞こえなくなったことだ。
普段はあれほど騒がしいのに、それだけ役に集中しているということだろうか。
これぞプロフェッショナルなんだろう。
俺は演技をしている時の千鶴さんに見とれてしまい、
千紗がどこか哀しそうな顔で俺のことを見ていたことに、この時はまだ気付いていなかったんだ。
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やがて、シナリオ改変のあったシーンを撮影し直し、
編集し直された一話から三話が一気に上がってきた。
裏方のゴタゴタを一切感じさせない。
初めからこのストーリーだったのだと思わせる、完璧な仕上がりだった。
監督の手腕、これぞプロフェッショナルなんだろう。
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Scene009【閑話】
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パパを見守り続ける私は、
パパの近くに現れた”一人の”女性に気づき、
ふとある事を思い出していた。
それは、前回の世界で晴花が生まれる前から、気に掛けていた”二人の”少女。
その”二人は”『いつまで経っても、妹分から抜け出せない』ことに心を痛めていた。
だから、私は今回の世界を始める時に、
その二つの魂をそっと寄り添わせた。
そうすれば今世でのパパとの関係にも変化が出るだろうから。
そしていま、”一人の”女性は確実にパパに女性として意識され始めている。
それは年齢の変化だけではなく、もっと根源的な魂の関係性。
私はその関係性の変化に胸を躍らされた。
自分でもなぜ胸を躍らされるのか、分かっていなかった。
今回、晴道が思い出したのは
前作
三人のヒロインとシェアハウスすることになった僕は、全員を本気で愛して呪われてしまった。 ――告白は観覧車のてっぺんで
【第17話】─ 番外編:芸能界編
〉いや、もちろん一般人としては居るのかもしれないが、グラビアアイドルとしての千秋は存在しなかった。
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となります




