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人の心が見える俺にはハーレム生活イージーモード、でも一人に絞るのは無理ゲーだったin二度目の人生。  作者: iron-bow
第06話【その幼馴染み、負けヒロインにつき】

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ep001:その決意、星(スター)につき


Scene001【ドラマ】



8月末の千紗の誕生日直前になって、

7月末に出演の打診を受けていたドラマの撮影が始まった。

本来ならもう少し早く撮影が開始される予定だったが、俺たちのスケジュールと、共演する瑞月さんのスケジュールとのすり合わせが上手くいかなかったそうだ。

俺たちが未成年で、遅い時間に撮影できないという事情もあった。


出演シーンは短く、簡単な台詞しかない。

スタジオに組まれたセットで、数カット撮影するだけ。

そう、それだけのはずだったんだ。



撮影現場で会った女優の瑞月さんは、確かに前世で愛し合った美月さんだった。

でも、今世の美月さんは香織姉さんの顧客ではなかった。

だから、香織姉さんを通して俺のことを知る機会もなかった。

そんな状況で、しかも高校1年生の俺と、何か関係に進展があるはずもなかった。


しかし、千紗は違った。

持ち前の人当たりの良さと人懐っこさで、あっという間に美月さんと仲良くなっていた。



「美月さんと、ちょっとご飯食べてから帰るね」


千紗はいつの間にか、本名で呼ぶような仲にまでなっていた。


「千紗、付いていかなくて大丈夫か?」

「もう、晴道は過保護なんだから、大丈夫だよ」

(晴道は、私のこと、好きすぎるんだから!)


そう言って、千紗は美月さんと街へ連れ添って行った。


「まだ時間は早いし、瑞月さんといるんだから大丈夫でしょ。

私たちも食事して帰りましょ」

(晴道とデート、晴道とデート、晴道とデート)


香織姉さんの心の中の声は相変わらずだった。



Scene002【決意】



千紗の誕生日が来た。

由美子の時と同じレストランでディナーを楽しみ、

準備しておいたネックレスをプレゼントする予定だ。


千紗に選んだのは、三日月をモチーフにしたシルバーのネックレスだ。

月の上には小さな猫が腰掛けていて、

八月の誕生石であるペリドットと戯れている。

ペリドットの石言葉は――『夫婦の幸福』『和合』『希望』。少し重いかもしれない。

それでも、それが俺の正直な気持ちだった。

一番近くにいる天体、それが月。

俺にとって、一番近くにいる存在、それが千紗だった。



花月さんは約束通り、俺の両親が外泊するように仕向けてくれた。

でも、沙織母さんは全て分かっていて、それに乗った節がある。

なぜなら、俺の勉強机の引き出しに、“あれ”がこっそり置いてあったから……。

前世でも散々これでからかわれたけれど。さすがにまだ早いよ。

あっ、いや、そうする為に仕向けているわけだから、早くないのか。



レストランでのディナーを終えて、由美子の時と同じバースデープレートを披露した。

そしてネックレスをプレゼントし、それに込めた想いを伝えた。


「あのね晴道、ネックレスとっても嬉しい。

涙が出そう。

でもね、由美子は翼だった。

由美子は自分の翼で進んで行くの。

そしてオリンピックでレギュラー選手になって、晴道に求婚するって目標に向かって。


私は三日月。

太陽に照らされた部分は明るく綺麗。

でも、太陽の光が届かないところは、暗くて寂しい」

(合宿で見たの)


千紗は俯いてしまった。

俺は思い出した。

合宿の二日目の夜、俺たちはあの反射望遠鏡で薄い三日月を観測した。

三日月の部分は明るく綺麗だったが、大半の部分は暗くて寂しかった。

そして花音さんの解説。


『月の表面を覆う砂や岩石には、隕石の衝突でできた細かなガラスの粒が混ざっているの。

だから太陽の光を効率よく反射して、あんなに綺麗に輝いて見えるのね。

でもね、実際はそんなに明るくないの。

地上なら、日に照らされたアスファルトくらいの明るさしかないわ。

月は漆黒の夜空に浮かんでいるから、眩しいほど輝いて見えるだけ。

本当は、暗い天体なのよ』


その話を聞いた時だった。

千紗はなぜか俯き、心の中の声さえ聞こえなくなってしまった。

でも俺はあの時、色々と有りすぎて、そんな千紗のことを考える余裕なんて無かったんだ。

幼馴染み失格だ。


そう俺まで落ち込みかけた時、千紗は顔を上げた。


「私、スターになる!」

(負けない!)

「えっ?」

「美月さんに誘われたの。事務所に入らないかって。『貴女なら、きっとスターになれる』って」


あの日、美月さんと食事に行って、そんな話になったのか?


「だから、私はスターになって、晴道に告白するのよ!!」


そうだ、そうだった。俺の幼馴染はそんなに弱くなかったんだ。


そして、その夜、千紗は俺の部屋に来なかった。



Scene003【閑話】



俺はリターナーだ。

前世の記憶を持ちながら人生をやり直している。

生まれた直後からはっきりと前世から引き継いだ、

自我と記憶があった。


良く見えぬ目、動かぬ体。

しかし聞こえてくる会話から、自分が人生をやり直していることを理解していった。


前世の記憶ははっきりしている。

ただし、人に関する記憶はぼんやりとしていた。

ほとんどが思い出せない。

しかし、その人の名前を聞いたり、実際にその人に会ったりすると、はっきりとした記憶を取り戻すのだ。


生まれて一ヶ月が経った頃、俺は再会した。

美優さんに連れられた千紗に。


「美優さん、よく来てくれました。千紗ちゃんだって、まだ二ヶ月でしょ」

(健一くんだってまだ小さいのに)


「何言っているのよ、従姉妹の初産よ?

会いに来ないでどうするの?」

(可愛い顔、きっとイケメンになるわ)


俺は周りの気の様子を窺う。

俺は良く見えぬ目の代わりに、気を使って周りを探ることを続けていたので、

気に乗った人の想いが見えるようになっていたんだ。


「だーだーだー」

(だれそれ〜)


聞こえてくる想いは、別に日本語というわけではない。

もっと根源的なもの。

だから、まだ喋れない千紗の想いも伝わってきた。


「千紗ちゃん、この子は晴道くん。

あなたのはとこ、あなたの将来の旦那様よ」

(きっと運命よ)

「やだ、もう美優さんったら、

そんな子供の頃の約束を覚えていたんですか?」

(恥ずかしい)

「だって貴女が言い出したことじゃない。

お互い、男の子と女の子の子供ができたら、

結婚させようって」

(ふふふ、懐かしいわ)

「だぁ」

(ずっといっしょ)


俺はその時、千紗のことをはっきりと思い出した。


前世ではみとこ同士(親がはとこ同士)だったけれど、

今世でははとこ同士(親が従姉妹同士)らしい。


でも、前世で千紗とは結婚していなかった。

千紗は晴花の母親ではなかったんだ。


前世でも、それ以前の人生でも。


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