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人の心が見える俺にはハーレム生活イージーモード、でも一人に絞るのは無理ゲーだったin二度目の人生。  作者: iron-bow
第05話【その隣人、有能につき】

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ep002:その隣人、有能につき


Scene006【彼氏】




翌日、俺は千紗と駅前に買い物に出掛けたところで、花月さんを見掛けた。


「あっ、花月さ……」


千紗が声を掛けようとした時、気付いた。


「ナンパされてる」


「そりゃ仕方ない、あんなに美人なんだから」


俺の呟きに、千紗が心の中の声で突っ込んだ。


(昨日まで、美人なんて言い方しなかったのに。一日で何があったのよ)


あっ、いや、そうだっけ?


「お姉ちゃん、お茶くらい付き合えや」


いや、ここまでいかにもチンピラだって奴、まだこの世に居たんだな。


「何度もお断りしているはずですよ?」


花月さんは本気で迷惑そうだ。


「分かってるよ、彼氏待ちなんだろ。

その彼氏が来るまでで良いからよ」


えっ、彼氏がいるの?

聞いてないよ!


俺は何かモヤモヤした。


「晴道、花月さんのこと、助けてあげてよ」

(本気で嫌がってる、早く早く)


「あっ、彼氏が来たわ」


花月さんは、こっちを見て言った。

良かった、彼氏ってナンパよけか。ならちゃんと役に立たないと。


「彼氏の許可を得られたら、お茶だってなんだって付き合ってあげるわ」


「あんだ、まだガキじゃねえかよ」

(一発脅してやって、許可取ったってことにして、ホテルへ連れ込んでやる)


俺は心底、腹が立ってきた。


「でも気をつけてね、私の彼氏は一人で熊を倒せるのよ」

(晴道、しつこいよ、助けて)


「がはは、じゃあ俺様は熊より強いな」


俺はあの熊との死闘すら侮辱された気になって……


「失せろ」


その言葉に、あのドーベルマン達を一撃で退散させた威嚇と同等の力を乗せて放った。


「しっ、失礼しました〜!」


チンピラは腰を抜かして、へこへこと歩いて行った。

ズボンの股間が濡れているのは見なかったことにしてやろう。


「晴道、ありがとう。助かったわ」

(それに、格好よかった)


「千紗ちゃんごめんね、デートの邪魔しちゃって」


「いえいえ、そんなことないです」

(役に立てて良かった。それにやっぱり、私と晴道はデートに見えるんだ♡)


「それじゃ、デートの続き楽しんでね」

(邪魔しちゃった、千紗ちゃんごめんね)


花月さんは颯爽と去っていった。


「花月さんって素敵な人よね」

(花音さんにもどこか似てる)


千紗の無意識の呟きに、俺は。


「本当にそうだな」


心底そう思うのだった。




Scene007【指導】



翌日、俺と花月さんは千紗の部屋にいた。

合宿のレポートを作り始めるのだが、顧問の花音さんは忙しくて連絡が取れない。


だから、花月さんが見てくれることになったのだ。


「花月さんはね、花音さんと一緒にアメリカへ留学して、ハーバード大学に飛び級で入学したんだよ。

それで、花音さんと主席争いをしたんだって」


俺は、そんな優秀な花月さんの指導を受けられるなんて幸運なことだと、

千紗に教えてあげたくて言ったんだ。


でも、そこで花月さんが割り込んだ。


「違うわよ晴道、主席争いをしたのは高校だけ。

結局一度も勝てなかったしね。

私は大学では人から認められるような研究成果を出せてないの。

やっていたのは花音の助手みたいな事だけ。

だから花音が日本に帰るのに合わせて休学して、卒業してないのよ」

(花音を手伝うために、草の技術も使って源氏物語の古写本集め。私はそれが嫌じゃなかった、むしろやりがいを感じた。だから私は日本に戻って霞の者になる決意をしたの。花音を助けるために)


俺は花月さんのバックボーンを知って、感動していた。

だから、


(花月さん、自分に都合の悪いところもきちんと言えて、かっこよくて素敵……)


そんな千紗の心の中の声に、心底賛同した。



「千紗ちゃん、レポートで一番何を伝えたいか考えて。

次に、それを誰に伝えたいか。

そこから積み上げていくの」

「星空を見た感動を、星空を見上げる余裕の無い人に伝えたいです」

「余裕の無い人?」

「はい。今の時代、皆が目の前のことでいっぱいで、夜空を見上げる余裕がないんだと思うんです。

そんな人たちに『一歩立ち止まって、夜空を見上げてみて。そうすればきっと心が軽くなるよ』って、そう伝えたいんです」


「素敵ね。だとすれば、まず自分があの夜空を見て、どれだけ感動したのかを伝えないとね」

(千紗ちゃんは本当に優しい子なのね)


俺はそんな二人のやり取りに見とれていた。

千紗の「皆の心を救いたい」という心意気。

それにそっと寄り添える花月さんの優しさ。

とても美しく思えた。



千紗がレポートの作成を進めていると、美優さんが顔を出した。


「橋本さん、お夕食食べていきますよね?」

「えっ、あっ、はい! ありがとうございます、いただきます」

「はい、それじゃあ準備を始めちゃうわね」


そう言う美優さんに、花月さんは言った。


「私、手伝います!」

「それじゃあ、お願いしちゃおうかしら」


しばらくすると、キッチンから二人の楽しそうな声が聞こえ始めた。

俺と千紗は、そっと様子を覗いてみた。


「あら、いやだわ花月さんったら」

「本当です、美優さんは私からしたら、お姉さんって感じで……」


あっ、もう名前呼びになってる。


そんな二人の様子を見た千紗が、ふと呟いた。


「花月さん、凄くいいな。あんなお姉さんがいたら良いのにな」

(花音さんも好きだけれども、花月さんも好きだな)


俺は今、千紗のお兄さんの健一さんが居ないことを幸運に思った。

だって、健一さんは美優さんの息子で千紗の兄だけあって、美形で格好いいのだ。

俺と千紗のオタク的サブカルチャーの師匠ではあるけれども、それを差し置いてもモテる。

俺と千紗の3つ上で、花月さんと年齢も近いから会わせたくなかった。


この時の俺は、なぜそう思ったのか、まったく自覚できずにいた。



Scene008【部活】



剣道部の部活が再開した。


千紗が家族と旅行に出かけてしまうため、お弁当をどうするか考えていると、

花月さんが作ってくれることになった。


やった、楽しみだ。


花月さんは道場までお弁当を届けにきてくれた。

顧問の先生はデレデレして、見学していかないかと声を掛けていた。


仕方ないよな、あんな壮絶美人だから。


もしこの時、千紗もいたら

『先日は“あんなに美人なんだから”だったのに、“壮絶美人”にランクアップしている』と、

心底あきれたかもしれない。

けれど、この時の俺はまったくの無意識だった。



昼休みに入ると、花月さんは部員皆に声を掛けた。


「みんな、一緒に食べない?

お弁当が無い人も、持っている人も、たくさんあるわよ」


花月さんは、とても大きなお重を持ってきていた。


食堂の一角を独占し、部員全員で花月さんのお弁当を囲んだ。


「すげぇ、うまい!」


中学から一緒に剣道をやっていた篠原潤(ふくはら じゅん)が声を上げる。


「そうだろ、そうだろ」


なぜか俺は自慢げに言った。


「あんな美人、どこで知り合ったんだよ」

「俺の彼女さ」

「なっ、なんだってぇ~!」


潤が叫び声を上げる。


「声が大きい。冗談だよ。お隣に住んでるお姉さんさ」

「えっ、お前の隣のお姉さんって梨子さんだったんじゃ……」

「ああ、反対側の隣さ。両手に花ってやつさ」


そう言う俺に、潤はあきれ顔で言う。


「お前、足元にも学園一の美少女の千紗がいるんだし」


潤は少し複雑な顔をした。

潤は今世でも千紗のことが好きみたいだ。


「最近、里塚とも仲が進んだんだろ?」


バレバレか。


「まったく、お前のハーレム生活は羨ましいというか、なんというか……。

まぁ、気苦労も多いだろうがな」


潤はそう言いながら、花月さんの顔を眺めた。



午後の部活が再開して、部員同士で軽い手合わせをすることになった。

俺は少しばかり、花月さんに良いところを見せたくなっていた。


だから潤と手合わせをした時、


「突きーーー!」


盛大に吹き飛ばしてしまった。


「大丈夫!?」


花月さんが吹き飛ばされた潤の元に駆け寄り、そっと抱き寄せ、面を外し、優しく見下ろした。


「動かないで。頭は打っていない?」


「あっ、はい……。とっさに受け身を取ったので、少し腰を打っただけです」


そう答える潤に、花月さんは安堵の息をついた。


「念のため、保健室へ行きましょう。

校医さんはいらっしゃるかしら?」

「いえ、夏休み中は居ないです」


そう答える担任に、花月さんは応えた。


「それじゃあ、私が付き添いますね。

手当てと看護の心得がありますので。

えっと、潤くんだっけ?」

(晴道がそう呼んでた)


「あっ、はい」

「じゃあ行きましょうか」


花月さんはそう言って、潤に肩を貸す。そして、俺の顔を一度見た。

その時、心の中の声が聞こえてきた。


(晴道は力加減を覚えないとね。由美子ちゃんはできているわよ)


うん、反省しないとな。



Scene009【嫉妬】



しばらくして、花月さんに付き添われて潤が帰ってきた。


「念のため、今日は帰りましょうね。私が送るわ」


花月さんにそう言われて、帰りの支度を始めた潤に俺は声を掛けた。


「潤、本当にすまなかった」

「良いってことさ。たまたま、いいところに入っちゃったんだろ」

「いや……俺の力加減の問題なんだ」

「力加減?」

「……ごめん、忘れてくれ」


そう言う俺に、潤は笑いながら言った。


「それにしても、花月さんって素敵な人だな。

好きになっちゃいそうだ」

「駄目だ!」


俺は思わず声を上げていた。

幸い、練習の騒音で潤以外は気付かなかったようだ。


「おいおい、千紗に里塚に梨子さんと居ても、まだ足りないのかよ」

(梨子さんとも仲が進んでいるって噂も聞いたし、これで花月さんも?)

「あっ、いや、なんで俺……」


この時になって、俺は気付いた。

俺は花月さんに介抱された潤に嫉妬したんだ。

俺のせいでそうなったのに、俺って最低だ。


「俺としては、花月さんとお前の仲が進んでくれた方が都合が良いんだがな」

「えっ?」


潤はにやりとして言った。


「そうしたら、千紗がお前を諦めるかもしれないだろ」

(まずそんな事無いと思うがな)

「えっ、いや」

「気付いていなかったのか? 俺は中学の頃から千紗のことが好きなんだ!」


やっぱり今世でもそうだったか。

でも、俺はこう返した。


「それは千紗次第だな」

「あーあ、自信たっぷりかよ。

これだからモテる男はよ!」

(俺は、お前のことが好きで一生懸命な千紗のことが好きなんだからな)


そんな潤の心の中の声も聞こえてきた。


そして俺たちは顔を見合わせて、心の底から笑った。



Scene010【告白】



俺が部活を終えて自宅に戻ると、花月さんが一人で夕食の準備を進めていた。

実は昨日、沙織母さんと花月さんとの間に、こんなやり取りがあったんだ。



「花月さん、実はね、取引先から明日のホテルのディナーショーのチケットを貰ったの。宿泊権付きで。

取引先だからね、ちゃんと行って感想を伝えないと駄目なのよ。

だから明日、晴道の夕食をお願いしても良いかしら?

千紗ちゃんも居ないんでしょ」

「分かりました、大丈夫ですよ」

「ありがとう、これ合鍵ね」

「えっ、そんな! まだ早いです!」

(なんで? なんで?)

「ふふ、まだ早いって事は、そのうちゲットするつもりだった?」

「あっ、いや、あの、そういう訳じゃ……」

(うっ、言葉のあやというか、でも本当は欲しかった)

「全然早くないわよ! 晴道のこと、末永くお願いね」

「あっ、それって……」

(お嫁さんって認められた?)

「ふふふ」

(照れちゃって可愛い)



キッチンで夕食の準備をしている花月さんは、夫の帰りを待つ新妻のようだった。

俺はそれが嬉しい。


もう誤魔化さない。

俺は花月さんが好きなんだ!


「もうすぐできるから、先にお風呂に入っちゃって」


お風呂。身体を清めて、それで花月さんと……。


(今日も美味しいの作っちゃうわよ)


いやいや、何を妄想しているんだ俺。部活帰りで汗臭いんだから、風呂くらい普通だろ!!


風呂から上がると、夕食の準備ができていた。

二人での食事は、まさに至福だった。



片付けも終わって、花月さんが帰ろうとする。


「それじゃ、おやすみ晴道。

また朝食を作りにくるわね」


「嫌だ」


思わず声が出ていた。


「帰らないで」


花月さんは優しい顔で言った。


「なぁに、晴道くんは一人が怖いのかしら」

「違うんだ、花月さんと一緒に居たいんだ!」


俺は告白する決心をした。

唐突かもしれない。でも止められなかった。


「花月さん。好きだ、愛している。

俺には好きな人がたくさんいるから、花月さん一人だけを特別に愛するわけにはいかないかもしれない。

それでもよかったら、俺と付き合ってほしい!」

「90点ね」


花月さんがそう応えた。


「えっ?」

「そこはかっこよく、“花月”って呼び捨てにしてくれたら120点だったのに」


そして、俺はキスされた。


「でもね、付き合うのは嫌よ」

「えっ」


俺は絶望の淵に落とされる。


「だって、私は千紗ちゃん、由美子ちゃん、梨子ちゃんの邪魔はしたくないもの。

花音と同じで愛人枠で良いのよ。

ううん、花音の邪魔もしたくないから、愛人枠No2で良いわ」

「えっ、それって……」

「それでも、良かったら私のことを愛してくれる?

私は晴道のこと、精一杯愛するわ」


「はい、お願いします。

俺も花月のことを精一杯愛します」


そう応えるしかなかった。


そして、二人は一つになり、そのまま朝を迎えた。



翌朝、俺は花月に、もう一つ告白をする。


「花月」

「何かしら?」


俺は一呼吸置いて言った。


「霞の者のレポートで知っていると思うけれども、

俺は人の心の中の声が聞こえる。

花月の本心も全て見えていた。

それでも、俺と一緒に居てくれるかい?」


俺の勇気を振り絞った告白に、花月は笑って答えた。


「なによ、今更そんな事」

「だって、何も本心を隠せないんだよ? 怖くない?」


そう言う俺に、花月さんはこう言ったんだ。


「いま、私の心の中の声が聞こえる?」


えっ、そういえば、昨晩愛の告白をした頃から、花月さんの心の中の声を全く聞いてないような……?


「気の放出を止めて、気配を消しているからよ。

霞の者の後方部隊よ? 作戦現場で見つからないように待機していないといけないの。

気配を消すなんて基礎中の基礎。

それは気の放出を止めるのにも通じるわ」


俺は驚愕した。


「じゃ、じゃあ、今まで花月から聞こえてきた、心の中の声は?」

「聞かせたい事だけ選択して、放出していたに決まっているでしょ」


「なっ、なんだって~~~!」


そう叫んでしまった俺に、花月は可愛らしく首を傾げて言った。


「あら、花音だって、由美子ちゃんだってやっている事でしょ? 当然じゃない?」


あっ、そういえばそうじゃん……。

俺は完全に花月さんの手のひらの上で転がされていたんだ。


人の心が見える俺にはハーレム生活イージーモード、でも、人の心が見えるが故に攻略されてしまっていた俺だった。



Scene011【敵わない】



俺と花月さんは朝食を終えた。

今日は部活が休みだ。

花月さんとデートがしたい。


俺がそう思った時、花月が話しかけてきた。


「そういえば、千紗ちゃんの誕生日どうするか決めたの?」


えっ……。あの、今俺は花月のことで頭がいっぱいで……。


「言ったでしょ、私は愛人枠のNo2。

ちゃんと彼女のことを考えてあげて」


「はい……。

ディナーは由美子の誕生日と同じ店を予約しているんですが、その後のことが決められなくて。

何か特別なことをしてあげたいんですが、

合宿が特別過ぎて、

それ以上のことが思いつかなくて」


それに対して、花月は何でもないように言った。


「じゃあ、晴道の部屋に泊めてあげたら?

近すぎて、逆にそんな機会なかったでしょ?」


そっ、それはそうだけれども。


「いえ、でも……今回は両親が外泊でしたが、

両親がいるなかでそういう訳には……」


「じゃあ、“また”何かきっかけを準備してあげる」


「えっ、それって……!?」


花月はあきれたような顔をして言った。


「あら、気付いていなかったの? 昨晩のディナーショーのチケット、私が裏で手を引いて手配したのよ」


「なっ、なんだって~~~!」


今朝2度目の俺の叫びが部屋に響いた。


俺、告白のタイミングすら花月さんにコントロールされていたんだ。


「花月には一生敵わない気がする」


思わず呟いた俺に、花月さんは応えた。


「ふふ、そうかもね」



Scene012【閑話】



観測者を止めた私は、パパを見守り続ける。

パパはまた、新しいママの候補を作ってしまった。

しかも、前世までには居なかった新しい人。


もやもやするこの気持ちは何だろう……。


それでも、私は見守り続けるしかない。


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