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人の心が見える俺にはハーレム生活イージーモード、でも一人に絞るのは無理ゲーだったin二度目の人生。  作者: iron-bow
第04話【その人、危険につき】

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ep006:その食事、弔いにつき


Scene029【殺した】



熊が倒れた後、俺は激しく力を使った反動で力が抜け、座り込んだ。


刀は熊の胸に刺さったままだった。

それを見た瞬間、俺は実感した。


俺が殺した


罪の無い命を奪った


ふと隣を見ると、梨子お姉ちゃんが自分の肩をかかえて震えていた。


『もう、大丈夫だよ』声を掛けないと、

でも俺の口は開かなかった。


どれくらい時間が立ったのか、

長い時間のように思えて、

実際には短い時間だったのだと思う。


「よくやった、晴道」


守さんだった。

気付くと花音さんもいて、梨子お姉ちゃんを抱きしめていた。


(梨子ちゃんは任せて)


そんな心の中の声が届き、花音さんは梨子お姉ちゃんを宿へと連れていった。


「お前があの子の“命”を救ったんだ」


守さんが言葉を続けた。


「すまない、観測器具の撤収に人を割きすぎた。

油断した」


守さんが深々と頭を下げる。


「いえ、こうして無事ですから」

「いや、君が居なかったら、あの少女だけでなく、

里の人間や宿泊客にも被害が出かかもしれない。

君は恩人だよ」

「そんな……俺はただ……」


俺がそう言うと、守さんは倒れている熊を見て言った。


「なら、何故君はそんなに震えているんだ?」


そう言われて、俺は初めて自分の手が、肩が、足が、震えているのに気付いた。


「俺、殺しました。

なんの罪のない、

生きていたこいつを、

この手で殺しました」

「そうだ、そんな事を、俺たちは君にさせてしまった。

だから、本当にすまない」


守さんは再び深々と頭を下げる。

その時


「はーるーみーちーー」

俺の背中に何かがぶつかってきた。

由美子だった。


「晴道大丈夫?」


由美子は倒れているクマを見て言った。


「晴道は悪くないよ。

晴道は私たちを助けたの」


由美子から暖かく優しい気が流れ込んでくる。

いつのまにか凍り付いていた、

俺の心が暖かく溶けていく。


「ありがとう、由美子、いつも支えてくれて、ありがとう」


いつしか俺の目から涙が溢れていた。




Scene030【尊い命】



守さん達は監視カメラで熊の侵入に気付き、

捜索をしていたのだそうだ。

由美子は俺の気の爆発で目を覚まし、部屋を飛び出たらしい。

そして周りを探している時に梨子お姉ちゃんを抱えている花音さんを見付け、話を聞いて駆けつけてくれた。


俺は動かぬ熊を見て、守さんに聞いた。


「こいつ、どうするんですか?」

「喰らうさ」

「えっ?」

「尊い命だ、全て喰らい尽くす。

見事なまでの即死だ、肉は獣臭さがまったく出ないだろう。

死後硬直もずっと先になるから、すぐに食べられる。

それが俺たちにできる、最大限の弔いだ」


守さんは、熊を見下ろしながら言った。


「だったら、俺も食べます。

いや、食べなきゃいけないんです」

「だったら、私も食べるよ。

晴道が背負う物は、私にも背負わせて」


由美子が俺の背中を抱きしめながら言った。

俺はそんな由美子の手を取り、抱きしめ返して、


「ありがとう」


そう言ってキスをした。

しかしそんな俺たちを見ていた守さんは言った。


「背負うか・・・、

いやそんな大袈裟なことじゃなくてな」


そして、どこかニヤニヤと笑いながら


「単純に美味いぞ!!」


そう言ったのだ。



Scene031【温泉】



「すぐにこいつを、処理する。

晴道君、君は温泉にでも浸かって身体を休めてくれ」

「いえ、大丈夫です」


そう言って、俺は立って見せようと思ったが。

立てなかった。

足に力が入らなかった。

疲れや損傷じゃない。

そんな物は気の力で、とっくになくなっている。

まだ精神的にまいっているんだ。


「情けない」

「そんなことないよ、晴道は、それだけの事をやったんだよ」


由美子がそう言って、肩を支えてくれた。

俺たちは宿に戻る。

さっきは夢中で気付かなかったが、

宿の目と鼻の先だった。


「あぶなかったな」

「だから、言ったでしょ、晴道は私たちを助けてくれたのよ」


宿の前には花月さんが待っていた。


「千紗ちゃんは未だ寝てるの。

本館のチェックアウトが終わってる部屋を使って」


俺たちは本館の別の部屋へと案内された。


「由美子ちゃん、晴道くんを温泉に入れてあげて」


花月さんはそう言って、部屋を離れていった。



情けないが、俺は由美子の手を借りて服を脱いだ。

そして、由美子も服を脱ぎ始める。


「ちょっ、ちょっと、由美子!」

「何、いまさら恥ずかしがっているのよ。

散々見たじゃない」

「てっ、そう言う問題じゃなくて・・・」

「今の晴道、一人でお風呂に入れる状態じゃないでしょ」


俺は、かけ湯も由美子にしてもらい。

横たわるように、金の湯に浸かった。



静かな時間が流れる。


ふと、心が軽くなる。


筋肉ではない。

張り詰めていた心の緊張が、ようやく解けたのだ。


すると、どうしても気になってしまった。


「なぁ、由美子、また大きくなった?」


何がとは言わない。


「分かる?」

「あっ、ああ、ついこの前、1カップ上がったって、言ってたのにな」


だって、由美子のおっぱいは湯に浮いていたのだ


「この前買い揃えたばかりのブラをまた買い替えなきゃいけないの」

「……大変だな」

「ねえ、晴道」

「なんだい?」

「おっぱい見すぎ」


仕方ないだろ!

湯面でぷよぷよ揺れてるんだぞ!!

目を離せるわけがないだろ!!!



おかげで少し心が軽くなり。

自分で動けるようになった。


(ありがとう、由美子)

(どういたしまして)

(えっ、由美子も心の中の声が聞こえるようになったの?)

「なに?」


気のせいか?


(聞こえなくても分かるのよ)

「愛しているから」


キスされた。


それは気の注入でもなく、癒しでもなく

ただただ、生と生のぶつかり合いだった。


俺たちは、湯面が激しく揺れるような事をしてしまった。



特別室に戻ると、千紗が泣きべそをかいていた。


「ふぇーん、起きたら誰も居なかったよ。

みんな、私の事置いて、どこ行っちゃってたの?」


あっ、すっかり忘れていた。



Scene032【弔い】



千紗の機嫌を取りつつ、ゆっくりしていると


「晴道、ちょっと良いか」


守さんに呼ばれた。

連れて行かれたのは板場。

待っていたのは花月さんと、その父であり板長の橋本猛(たけし)さんだった。


「晴道くんはもう大丈夫?」

「あっ、はい、大丈夫です。花月さんは?」


霞の者後方部隊の花月さんがなぜ板場に居るのか、

という意味を込めた。


「私はね、作戦がない時は、ここで働いているのよ。

それでこっちが……」

「板長の猛だ。里を救ってくれたと聞いた。感謝する」


猛さんが深々と頭を下げた。

花月さんが話を続ける。


「晴道くん、ちょっとお願いしたい事があるの。

レポートで読んだのだけれども、

和也さんが使った、“気脈探知オーラ・サーチ”って使える?」


あー、そういうのまで記録に残されちゃうんだ。


「ええ、使えます」

「じゃあこの肉に寄生虫がいないか、調べられないかな?」


それはピンクの美しい固まりだった。


「これは?」

「熊の肩ロースよ。

解体はまだ終わりきっていないけれども、

取りあえず貰ってきたの。

あなた達の昼食に使おうと思って」


気の力で、食材チェックか。

つい先ほどは殺すのに使った力を……。

うん、いいじゃないか!


「少し離れてください」


そう言って、俺は極めて高密度の気を肉の内部へ流し込んだ。

例え虫であっても、何らかの反応が有るだろう。


「大丈夫です、何も居ません」

「じゃあこれを」


花月さんが次の部位を出した。


「レバーですか?」

「よく判ったわね。内臓は傷みやすいから、真っ先に取り出すの」


俺はレバーにも同じように気を流し込む。

何か微細な反応が有る。


「こっち半分には寄生虫がいます」

「そうか」


猛さんが切り分けて、再度試す。


「はい、もう大丈夫です。細菌、ウィルスも有りません」

「分かるの?」


驚いて聞いてきたのは花月さんだった。


「ここには、生きた反応を感じません」


本当は気の力で、細菌やウィルスを死滅させたのだが、

それは言わない。


「だから、これをこのまま、生で食べても良いですか?」

「いや、しかしそれは……」


そう渋る猛さんに守さんが声を掛けた。


「いや、いいんじゃないか。

もしも、何か有っても、

彼なら自分でなんとかすると思うしな」



猛さんが切り分けてくれた肝を、

俺は静かに受け取る。


わさび醤油を少しだけ付け、

一口でいただいた。


美味しいとかそういうのではない。

希少な部位を食べてみたいとか興味でもない。

ただ”熊の命を感じたい”それだけだった。


「あいつの命は俺の中にあります」

「そうだ、その通りだ」


守さんがそう言ってくれた。


俺の中で弔いが終わった。

今度はみんなで、この命に感謝しながらいただこう。



Scene033【食べる】



俺が部屋に戻ると、梨子お姉ちゃんも戻っていた。

あのワンピースのままだった。


「晴道、どこ行ってたの?」


聞いてきたのは千紗だ。


「昼食をどうするか、聞かれてた」

「あれ、宿は昼食出してないから、

街に降りて食べるんだよね?」

「それがね、良い肉が入手できたから、食べないかって。

すっごく”美味しそう”な肉だったぞ」

「えー、それイイ、絶対食べたい!」

(ええ、昨日のお肉だって凄かったのに、もっと美味しいのかな!)


千紗が飛び上がりそうな勢いで言った。


「ああ、もう少しでできるそうだから、待っていよう」


由美子は、俺が”美味しそう”と言った事に、

一瞬ピクリと反応したが、にっこりと笑って頷いた。


(もう大丈夫みたいだね)


そんな心の中の声が聞こえた。


(正直、あんまり食欲ないけれども)


梨子お姉ちゃんからは、そんな心の中の声が聞こえた。



それからすぐに花月さんが呼びに来た。


「晴道くん、準備ができたわ」

「はい、ありがとうございます、花月さん」

(あっ、昨日トイレの使い方教えてくれた人。『晴道くん』って“私の晴道”になれなれしい。でも良かった、巨乳枠じゃなくて)

(巨乳枠じゃなくて、悪かったわね)


あー、千紗さん、心の中の声が聞こえなくったって。

考えている事、丸見えですよ・・・



食事のテーブルに着くと、

真ん中にグツグツと煮えている汁があった。

匂いからして、醤油系のタレのようだ。

あと、おひつのごはん。

つけ合わせ用の野菜類とお味噌汁。


「熊の肩ロースです」


熊と聞き、梨子お姉ちゃんが一瞬ビクリとした。

俺はテーブルの下でそっと手を握る。

梨子お姉ちゃんの肩からふと力が抜けた。


「それじゃあ、作って行きますね」


今日は花月さんが作ってくれるみたいだ。

厚めに切られた肉をタレでさっと煮る。

本当にさっとだ、まだ赤みが残っている。

それを次々とお茶碗によそったご飯に乗せていく。

4人分ができた。


「「「「いただきます」」」」


「なっ、なにこれ、美味しすぎる!」

「こんなの初めて食べた」

「おいしい、凄く脂が甘いの」


みんな驚きの声を上げる。


「えっ、なんで、こんなに柔らかいんだ?

あんなに筋肉質だったのに」


しまった、熊が生きていた時の事を言ってしまった。

でも誰も気にしていなかった。

夢中で食べていた。


「ふふ、気付いた?

お父さんの隠し包丁の技よ。

完璧に筋を切っているの」

「えっ、こんなに分厚くて、全然形が崩れていないのに?」


反応したのは、千紗だった。

俺は単純にあの筋肉質そうだった肩の肉がこんなに柔らかく食べられる事にびっくりしたが、

料理の経験が豊富な千紗にはその技術が驚きだったようだ。


「ふふ、お父さんにしかできない技よ」

(凄いんだから)


花月さんが猛さんの事を誇りに思っているのがよく伝わってきた。


「おかわりはいっぱい有るわよ」

「「「「はい!」」」」


みんな沢山食べた。

美味しい、ただそれだけに、感謝をした。



Scene034【閑話】



俺たちが部屋に戻り食休みをしていると、

花音さんと美由さんがやってきた。

美由さんは今日は非番なのか私服だった。


(巨乳枠二人がやってきた)

「あっ、花音さん、美由さん、お昼ご飯凄く美味しかったです。

ありがとうございます」


千紗の心の中の声と、表の差が。


「私たちも賄いで食べたわ。

お礼は晴道に言ってね。

熊を仕留めたのは晴道だから」

「なっ、なんだって〜〜〜」


千紗が文字通り飛び上がった。

そして梨子お姉ちゃんの心の中の声が聞こえた。


(そうだ、ちゃんと晴道に助けて貰ったお礼を言わないと)


その千紗には衝撃の発言の余韻もないまま、

花音さんは話題を変えた。


「ねえ、由美子ちゃん、千紗ちゃん、私たちと一緒に街に降りてみない?」

「えっと、私と由美子だけに声をかけるって?」


千紗の疑問ももっともだ。


「あのね、大きなサイズのブラの品揃えが自慢のランジェリーショップがあるのよ。

私や美由のサイズでも、可愛いのがいっぱい有るわよ」

「行きます、行きたいです!!」


飛びついたのは由美子だった。


「私も行きたい!

でもなんで、そんなお店が、こんな所に?」

(ちょっと失礼かもだけれども、不思議だよね)


うん、まあ確かに。


「この辺りは旅館が多いでしょ、だから仲居も沢山住んでてね、需要が多いのよ」

「なる程!それで花音さんや美由さんが上得意だから、

大きなサイズの品揃えが豊富になったんですね」

「違うわよ」

「え?」

「需要があるから、お店を作ったのよ」

「作ったって・・・」

「そのお店、私がオーナーなの」

「なっ、なんだって〜〜〜」


本日二度目の千紗の叫びが上がった。


「だから、原価割れにでも値引きしてあげるわよ!」

「行きます、連れて行ってください〜〜〜」


由美子が飛びついた。



そうして千紗と由美子は花音さんに連れられ街へと繰り出した。

部屋を出るとき、花音さんと由美子の心の中の声が聞こえた。


(梨子ちゃんと二人でゆっくり話なさい)

(この時間は譲ってあげる)


二人ともありがとう。


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