表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人の心が見える俺にはハーレム生活イージーモード、でも一人に絞るのは無理ゲーだったin二度目の人生。  作者: iron-bow
第04話【その人、危険につき】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/29

ep005:その一突き、必殺につき


Scene023【天体観測】



俺たちは夕食の後、天体望遠鏡の元へと戻った。


「凄い……」


みんなが言葉を失った。

満天の星空、それ以外に表現のしようが無かった。


「プラネタリウムなんか目じゃない」


俺は思わず呟いた。

千紗がプラネタリウム好きで、最新鋭の施設には何度も一緒に行った。

でも違う。空が暗い。

プラネタリウムの空はあくまで灰色のスクリーンなのだ。

この空は深淵の暗闇だった。

そこに浮かび上がる星々。

それは全くの別物だった。


「空にミルクが流れてる」


そう表現したのは由美子だった。

俺は応える。


「そうだよ、天の川は英語では『milky way』って言うんだよ」

「えっ、あれが天の川なの?」


声を上げたのは梨子お姉ちゃんだった。

天の川は南の地平から、東に傾き天頂に向かって伸びていた。

それは確かに空を流れ落ちるミルクに見えた。


「そう、あの白い帯が全部、星の光で出来てるの」


千紗がうっとりとした声で言った。

これこそプラネタリウムでは到底再現できない世界だった。



天体望遠鏡を使って初めに見たのは木星だった。


「凄い、本当に縞々にみえる!」


一番手は千紗。


「良く見たら、衛星も見えるはずよ」


花音さんが声を掛けるが、千紗は気付かず集中していた。

由美子と梨子お姉ちゃんは顔を見合わせて笑い、流れ星を数え出す。


「数えだしたらきりがないわよ、まだまだ、こんな物じゃないわ」


花音さんがそう言うと、


「私、一生分の願い事を叶えられるかも」


そう言う由美子に、花音さんは応える。


「ふふ、でもね、一つの流れ星が消える前に唱えきれるかしら?」

「意外と難しいかも」


梨子お姉ちゃんは既に試してみたのか、そうしみじみと言った。


由美子と梨子お姉ちゃんも木星を見る。


「TVで見たそのまんまだ」


由美子があげた声に、千紗が応えた。


「でもね、これは本物なの。そこに実際に有るんだよ」



次に見た土星は圧巻だった。


「輪っかって本当に有るんだね……」

「それに隙間が有った」

「カッシーニの空隙って言うの。こんなにはっきりと見れるなんて……凄い」


もう花音さんの解説も必要なかった。

ただ、


(本物の感動と説得力、これ以上の学びはない)


そんな心の中の声が漏れていた。



海王星と天王星探しは難航した。

普通ならネットで検索すれば、なんてところだが、ここは圏外。

結局花音さんに教えてもらった。



「さあ、トイレを済ませておいて。ここからは流星観測よ」


霞の者の人たちはテント式の簡易トイレまで準備していた。

前にはあの後方部隊の女性が立っていた。


「あっ、今晩は……。

そう言えばまだ名前を聞いてなかったです」

「そう言えばそうかもね。

私の名前は橋本花月はしもと かづきよ」

「橋本って、板長の?」

「あら、もう聞いたの?

今晩はしゃぶしゃぶだったから部屋に付かなかったけれども、

明日は鉄板焼きだから担当するわよ」

「あの、花音さんと誕生日が近かったりします?」

「よく分かったわね、誕生日一緒なのよ。

双子みたいに育ったの。

花音、花月、美由、由美、合わせて四人の幼馴染みなのよ」


そういって花月さんは笑った。

そっか、前世では里見(さとみ)さんが娘さんを死産したって聞いていたけれども。


今世は幸せな人生を送っているんだな。



Scene024【流星】



気付けば日付はとっくに変わっていた。


「さあ、ここに寝ましょう」


花音さんがブルーシートを広げ、俺たちを誘った。

横になった俺たちが空を見上げると、


「わぁ!!」


先ほどまで惑星に夢中で気付かなかったが、それは凄まじい流れ星だった。

次々と光の尾が夜空を流れていく。

ペルセウス座流星群の極大期、それがまさに今だった。


「こんなの数えきれないよ……」


千紗が声をあげる。


「ふふ、でも部活なんですからね。

千紗には部長としてレポートを上げてもらう必要があるのよ」


そうだった、反射式望遠鏡にもアダプターを付けて写真を撮っていた。

でも、これは……写真には残せない感動だった。


「一時間に百個とか行きそう」


由美子がしみじみと言う。


「そうね、それでも嘘にならないわ。

本当にそれくらいは行きそうよ。

私だって、こんなに凄いのは初めて」


花音さんもそう言った。


梨子お姉ちゃんが俺の隣に寝転ぶ。

そしてふと、そっと手を伸ばしてきた。

俺はその手を優しく握り返した。


このロマンチックな夜空の下だ、これくらいあっても良いんじゃないかな。

自然とそう思えた。



俺たちは夜空を見上げながら、思い思いの事を話し出した。


学校の事、友達の事、兼部している部活の事、進路の事、将来の夢――。


激しく流れる星々に目を奪われながらも、俺たちは自分たちのこれからを、静かに語り合っていた。



Scene025【朝食】



やがて俺たちは、夜が明ける前に下山する事になった。

観測装置は、夜が明けてから霞の者の部隊で撤収するという。



部屋に戻ると、夜も明けていないのに朝食が準備されていた。

おにぎりに卵焼き、味噌汁。

それだけなのに、今の俺たちには極上のご馳走に思えた。


「こんな早い時間なのに、わざわざ作ってくれたんですか?」


俺たちが恐縮すると、花音さんは笑って言った。


「もう、板場は準備を始める時間よ。

それに今朝は部隊の人間たちへの食事もあったしね」



朝食をいただき、順番に温泉に入って昼食まで仮眠を取る事にした。


「昨晩と逆順ね」


千紗がそう宣言して、俺から先に入る事になった。


風呂から上がると、三人は浴衣に着替えていた。

俺も脱衣所に準備されていた浴衣に着替えている。

そして奥の部屋に三つ、手前の部屋に一つ、布団が敷かれていた。


俺が布団に入って横になっていると、梨子お姉ちゃんが戻ってきて奥の部屋へと入っていく。


「おやすみ、晴道」


入れ替わりで、千紗と由美子が温泉へと向かう。


「覗いちゃだめだよ、晴道」


そう言ったのは千紗だったのか、それとも由美子だったのか。

俺は心地よい疲れに身を任せ、深い眠りについた。



「おはよう、晴道」


そんな声に、俺は起こされた。

声の主は梨子お姉ちゃんだった。

お姉ちゃんは既に私服に着替えていた。

可愛らしい黄色のワンピースだ。


ミニスカ気味で、胸元がふんわりとしている。

控えめな胸元の梨子お姉ちゃん。

しかも俺の顔を覗き込むようにして屈んでいたので、胸元が丸見えだった。


「お姉ちゃん、見えちゃうよ!」


そう言った俺に、梨子お姉ちゃんは真面目な顔で言った。


「晴道、見えちゃうじゃないのよ、見せてるのよ!」

「りっ、梨子お姉ちゃん!?」


俺は慌てて飛び起きた。


「ねぇ、晴道、目が覚めちゃった」


時計を見ると、四時間ほど寝ただろうか。


「凄く良い天気で、気持ちいいの。

お散歩しよ!」

「判ったよ、着替えるからちょっと待ってて」


俺はそう言って、梨子お姉ちゃんを軒先に待たせて、急いで支度をする。

俺が着替え終えて部屋を出ようとすると、外から声がした。


「晴道、先行っちゃうよ!」


梨子お姉ちゃんは待ちきれずに先に駆け出していた。

黄色のワンピースに麦わら帽子、ピンクのサンダル。まさに夏の少女そのもので、俺には眩しすぎた。


俺が追いかけようと部屋を一歩出た瞬間、


『パパ、忘れ物』


そんな声が聞こえた気がした。

千紗か由美子が起きたのかと振り返ったが、部屋には誰もいない。

それに『パパ』って……。


その時、軒先に“ナックルダスター”が入った袋と、例の杖が目に入った。


「一応持って行くか」


俺はそう呟き、手ぶらだからと“ナックルダスター”を袋から出して拳に装着し、杖を手に持って歩き出した。



Scene027【遭遇】



梨子お姉ちゃんは先を走っている。


「晴道、畑があるよ、スイカみたい!」


俺は、その後ろ姿のスカートをたくし上げるふとももがまぶしく。

つい目を細めて眺め、ゆっくりと歩いた。

だから”それ”に気付くのが遅れた・・・

その畑の中に黒い小山のような物があった。


熊だった。


梨子お姉ちゃんに気付いた熊が立ち上がる。


「きゃーーーー」


梨子お姉ちゃんの叫び声が響く。


その瞬間から全てがスローモーションに見えた


あの花音さんを救った時と同じ


俺の思考が加速する


叫び声に気付いた熊が右手を振りかざす


大丈夫


梨子お姉ちゃんが恐怖で尻もちをついた


頭の位置が低い


手は当たらない


しかし次は


俺が梨子の所まで走っても未だ20歩はある


足元を見て足場を確認


あそこ と あそこ と あそこ


足に気を込めていっきに飛び出す


3歩で到着する


限界を越え損傷した足を気で修復する


熊の左手が振り下ろす


俺はナックルダスターを装着した右の拳で熊の腕を叩き上げる


熊が体勢を崩し僅かに後ろへ下がる


いける


右手を素早く下ろす


左手に構えていた杖の柄を握る


隠しボタンを押し刃を取り出す


鞘を投げ捨てる


抜き放たれた刀を両手で構える


突きの構え


一瞬で決めなければ


刃の先端に気を込める


身体ごと刀を突き出す


ごめんお前は悪くない


でも梨子を危険にさらすわけにはいかない


熊の胸に剣先が届く


肋骨の隙間を狙う


剣先がするりと入っていく


俺は、熊の心臓を捉えたのをはっきりと、この手に感じた。

命を奪う感覚。

熊の背中から、剣先が突き出る。


熊は叫び声を上げる間もなく、後ろへと倒れていった。



Scene028【閑話】



私は観測者だ。観測者は観測対象に干渉してはいけない。それが鉄則だ。干渉してしまえば観察対象に影響を及ぼす。それは観測の意味をなくす。


でも私はパパをこんなに早く死なせたくなかった。せっかく前世の記憶を残してやりなおしているのに。そしてママのひとりも死なせたくなかった。


だから私は禁を破った。それがこの世界にどんな影響をあたえるのか、私には判らなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ