ep007:その確認、本気につき
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Scene015【治療】
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俺、小泉晴道は暗殺集団の無力化に成功したことで一息をついていた。
「晴道!!」
「和也!!」
花音さんの声が遠くに聞こえるが、身体が思うように動かない。
体内の気を循環させて、回復に努める。
守さんが和也さんの元に駆け付けた。
「大丈夫だ、太い血管は切れていない。
だが引き抜く時に傷つける可能性があるから、医療班が来るまでこのままにするんだ」
「晴道、大丈夫?」
ナイフ男が完全に動けないのを確認した由美子が、心配そうに戻ってきた。
由美子には助けられてばかりだ。
「ああ、大丈夫だ。少し無理をしたけれど、もう治癒しているよ」
「……これが『少し無理した』ってレベルか?」
守さんが呟き、コンクリート壁にめり込んでいる男を見つめている。
うん、まぁ、自分でも信じられないよ。
俺は由美子に手を引かれ、なんとか立ち上がった。
そして、律儀に着けたままだった由美子の赤い仮面を取り外す。
「由美子、いつも助けてくれてありがとう」
「何言ってるの。
いつも助けられているのは、私の方だよ」
俺たちは見つめ合い、自然とキスをした。
そして唇が離れた、その瞬間だった。
俺は重大なことを思い出す。
「そうだ由美子、胸!!」
「えっ?」
「ナイフ、胸に当たっていた。
守さんが、運動エネルギーを相殺する訳じゃないから衝撃は伝わるって……」
「えっ、あっ、うん、痛かったけれども」
由美子が困惑しているが、それは俺にとって極めて重大なことだった。
「由美子のおっぱいにあざなんてできたら大変だ!!
治療するから、ちゃんと見せて!」
俺は確認の為、由美子の防弾スーツを脱がそうとする。
「えっ、晴道、こんな所じゃ駄目ーーーっ!!」
ボコッ!
由美子に殴られ、ようやく正気を取り戻した俺は和也さんの元へ行った。
そこには守さんに拘束を解いてもらった千晴さんが縋りつき、泣きじゃくっていた。
花音さんも守さんに拘束を解いてもらい、何やら話し込んでいる。
「千晴さん、今から和也さんの治療をするので、少し離れていてくれますか?」
「えっ、さっきの人が、医療班が来るまで動かさないでって……」
泣きじゃくって目が真っ赤でも、千晴さんは圧倒的に綺麗だった。
「大丈夫です、俺を信用してください。――って、こんな子供を信用しろって言われても困りますよね」
千晴さんは少し考える様子を見せたが、
「ううん、えっと……小泉くんだっけ」
おいおい、今日一日一緒にプールで遊んでいたじゃないか。
未だその程度の認識なのか。
前世で最愛の人だった千晴さんからそんな扱いだと知って、俺は心の中でちょっと泣きそうになった。
「お願い、和也を助けて!」
「任せてください」
俺は和也さんの前に腰を落として言った。
「気の治療を行いますね」
「ああ、頼む」
「ちょっと痛むかもですが、我慢してください」
俺はそう言って、左手で和也さんの傷口に気を送り込みつつ、右手で一気にナイフを抜いた。
ナイフが抜けた瞬間、血が噴き出す。
「はっ……!」
千晴さんが息を呑む。
しかし、血は一瞬で止まり、傷口はみるみるうちに塞がっていった。
俺は千晴さんに声を掛けた。
「はい、もう大丈夫です」
「ありがとう……和也を助けてくれて、ありがとう、小泉くん」
千晴さんが俺の手を握って、涙を流す。
この涙は、どこまでも和也さんのためのものなんだよな。
俺は少しだけ悲しくなり、千晴さんには笑顔だけで答えて立ち上がった。
そういえば、未だ花音さんに声を掛けていなかった。
俺は花音さんの元に駆け寄り、声をかける。
「花音さん、大丈夫ですか? 怪我とかしていませんか? 何かあったらすぐに治療します!」
花音さんはにっこりと笑って言った。
「私の心配は、由美子ちゃんのおっぱいより後なのね!」
あっ、俺は盛大にミスったかもしれない……。
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Scene016【チェック】
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花音さんはまた守さんとの会話に戻ってしまった。
花音さんの機嫌を取り戻すのには時間が掛かるかもしれない。
そう判断した俺は、まず重要案件を先に済ませる事にした。
「由美子、ちょっと良いかな?」
「何、晴道?」
「隣の部屋で」
俺は隣の部屋に由美子を連れて入る。
「由美子、脱いで」
「えっ」
由美子が怪訝な顔をする。
「おっぱいをちゃんとチェックしないと!!」
俺が真面目な顔で声をあげると、
由美子はがっくりと肩を落とした。
「本気だったのね」
「当然だろ。由美子のおっぱいは、俺の理想そのものなんだ!!」
心の中で(いつの人生でも)と付け加える。
由美子は黒装束と防弾スーツを脱ぐ。
素晴らしい、おっぱいが現れた。
俺は急いでチェックをする。
「やっぱりだ」
ナイフが当たった所に、赤くアザができていた。
「こんなの、すぐに治るよ」
由美子はそう言うが、俺は納得しない。
早速、気の治療に入る。
アザの上へとそっと手を当て、気を送り込んでいく。
「あんっ……いきなり……」
みるみるうちにアザが薄れていく。
「あっ……あんっ……あぁぁ……はぁるぅみぃちぃ……」
由美子の声が甘く震える。
そうだった。
気の治療は細胞を活性化させるため、一時的に感覚を極めて敏感にしてしまう。
それがおっぱいともなれば、なおさらだ。
そこで由美子が、ふっといたずらっぽく笑った。
「あのね、晴道。私ね、前回足を治療してもらってから、バストが一カップ大きくなったの」
「あっ……うん。そんな気はしてた。まだ二週間しか経ってないのに」
「気の循環で身体能力が上がるなら、胸だって成長するのかもね」
その言葉を聞いた瞬間だった。
今まで治療のためだけに集中していたはずのおっぱいを、急に性的な意味で意識してしまう。
「あん……晴道。流れてくる気、少し変わったよ?」
由美子がクスッと微笑む。
「……ばれた?」
「うん、ばれた」
見つめ合う。
「晴道……」
由美子はそっと、俺の手に自分の手を重ねた。
「これ以上続けたら、私も我慢できなくなっちゃうよ?」
その問いにどう答えたかは――神のみぞ知る、ということにしておいてくれ。
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ようやく我に返った俺たちが身なりを整えている時、由美子の心の中の声が聞こえてきた。
(私、これ以上成長したら……花音さんに勝っちゃうかもね。でも、今日は譲ってあげる)
そうだったな、今日は花音さんとのデートだったんだ。
すっかり忘れていたよ。
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Scene017【後始末】
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俺たちがみんなの居る部屋に戻ると、部隊の人間が増えていた。
3階へ向かった戦闘部隊の人たちではなく、
医療班を含む後方部隊のようだった。
俺は守さんに尋ねた。
「暗殺部隊って、全員拘束できたんですか?」
「いや、ここに居たので全員ではない。
しかし、草の根をかき分けても全員を見つけ出す」
(姫さまをこんな目に合わせたんだ、死ぬより怖い目に合わせてやる)
あっ、守さんの心の中の声って初めて聞いた気がする。花音さんは本当に里の人たちに愛されているんだな。
(姫さまの初デートをむちゃくちゃにしやがって!!)
あっ、そっちね。
「全員集めてどうするんですか?」
「解放するさ」
「えっ?」
「ただし、霞の者の怖さを十分思い知らせてからな。
そして、霞の者に手を出せばどんな目に遭うかを、
噂で広げさせる」
(二度と姫さまのデートを台無しにするような者が現れないように)
うん、やっぱりそっちが重要なんですね。
「それで、すまないが晴道には気の治療を施してもらいたい者がいるんだ」
あっ、心の中の声が聞こえなくなった。
冷静沈着な守さんに戻ったんだ。
「はい、構いませんよ」
「君が最初に顔面を潰した奴と、
壁にめり込んでいた奴だ」
「えっ?」
「医療班によると、一人目の奴は二度と喋れないかもしれなくてな。
喋れないと霞の者の怖さを他人に伝えられないだろ」
「まっ、まぁ……」
守さんの顔は本気で怖かった。
「二人目の奴は、二度と歩けそうになくてな。
流石にその状態で放り出す訳にもいかんだろ。
だが、姫さまに銃を向けた奴などの面倒を見たくはないからな」
二人とも俺がやり過ぎたわけだし、仕方ないか。
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治療は上手くいった。
治してやったのに、奴らはむしろ強烈な恐怖の目で俺を見ていた。
まぁ、ばらばらになった骨が巻き戻しのビデオみたいに元へ戻っていくんだから……。
あれは、怖かったのかもしれない。
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Scene018【閑話】
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暗殺集団の治療が終わって、やっと一息ついた。
ちなみに、治療は医療班の車の中で実行した。
あんなの、人に見られたらどう思われるか……。
治療してやった奴らだけでなく、立ち会っていた医療班の人まで恐怖の目をしていたもんな。
ゲームの中の人が“ベホマ”とか使ったら、現実にはあんな感じなのかな。
あと、夢中でよく分かっていなかったけれど、
さっきの剣先から衝撃波が出て壁にひびを入れたとかって、対戦ゲームの必殺技かよと自分でも思う。
これ、俺を転生させた“アレ”が言っていた力なんだろうな……。
『では、今世のように貴方が不幸にも突然死ぬことがないように――貴方に、貴方が私にくれた力の一部を返します。それは一人の人に与えるには大きすぎる力かもしれません。気をつけて使うんですよ』
なんて言っていたけれど。
いやいや“大きすぎる”って、気を付けようがないだろ?
助かっているのは事実なんだけれどもさ。
超人的な運動能力と言い、花音さんと繋がったテレパシーもどきと言い、俺、もう人間やめちゃってない?




