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人の心が見える俺にはハーレム生活イージーモード、でも一人に絞るのは無理ゲーだったin二度目の人生。  作者: iron-bow
第03話【その恋、危険につき】

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ep006:その一太刀、音速につき


Scene013【突入】



突入を前に、守は晴道と和也へ黒い革手袋を差し出した。

指を通すと、拳の甲には鈍く光る鋼鉄の輪が埋め込まれている。


「ナックルダスターだ。拳を保護しつつ、一撃の威力を底上げしてくれる」


どうやら由美子は、すでに同じ物を装着しているらしい。

守は自分の拳を軽く掲げて続けた。


「本来、我々『草』が使うのは鉄貫てっかんだ。鉄輪ではなく刃が付いた武器だな」


一拍置いて、静かに続ける。


「だが時代は変わった。昔は命を奪うことが任務だったが、今は生かしたまま制圧する任務の方が圧倒的に多い」


拳を軽く握り直す。


「だから現在の標準装備は、このナックルダスターだ。必要十分な制圧力があり、無駄に命を奪わずに済む」


晴道は手袋をはめ、何度か拳を握って感触を確かめる。


「これ、良いですね」

「その武器は、拳を守るための物でもある。遠慮なく振り抜け。武器の方が先に受け止めてくれる」

「分かりました」


晴道は軽く頷き、拳を一度だけ握り締めた。



守が作戦を立案する。


「まず、俺と晴道が飛び込み、入口の二人を制圧する。

続いて和也が“気脈探知オーラ・サーチ”で地下の様子を確認しつつ、地下に突入」


「いっ、いや、その名は……」


わざとだった。


「俺と晴道が続き、由美子がしんがりだ」

「仮面のくの一赤影」


由美子がニヤニヤしながら和也に視線をやる。

あなたに合わせてあげたわよ、という意味だ。


「くっ、くぅ……」


和也が更に落ち込むが、それは結果として肩の力を抜かせた。

突入を前に緊張しすぎと判断した守と由美子のナイスフォローだった。


「残りの四人はその後1階のもう一人を制圧後、気付かれぬように連絡まで待機。

人質安全確保の連絡を受けたら3階の制圧に向かってくれ」

「はっ」


晴道たちに重要な役割を任せ過ぎだが、

“彼らはもう素人とかいうレベルではない”という守の判断だった。


「では行くぞ」


まず和也が自ら気を放ち“気脈探知オーラ・サーチ”で中の様子に変化がないかを確認し、頷いてドアを開け放った。


すかさず飛び込む、守と晴道。

一人を守は鳩尾を貫き昏倒させる。

もう一人は抜き身の日本刀を所持しており、晴道たちに気付きそれを振りかざす。


(反応が早い、素早く無力化しなければ)


晴道はそう判断して、渾身の力を込めて拳を振り抜く。

それは男の顎を砕き、そのまま首を跳ね上げるように吹き飛ばした。


晴道が冷静になって男の様子を伺うと、顔の輪郭が完全に変形していた。

呆然とする晴道に、守が声を掛ける。


「相手は凶器を持っていた、お前は悪くない。

ただ当たり所が、あと少し上だったら即死だった。

もう少し力加減をした方が良いな」


その横を他の隊員が駆け抜け、1階のもう一人を制圧に行く。

それに和也が声を掛ける。


「一番奥の扉です」


まだ呆然としている晴道を、由美子がそっと後ろから抱きしめた。


「晴道は悪くないよ、私たちの心配をしてくれたんだよね」


晴道はふっと息を吐き、由美子に向き直り抱きしめ返した。


「うん、ありがとう」



「二人が傷付けられていたら、俺、自分を抑えられる自信がありません」


晴道はそう言いながら、男が取り落した日本刀を拾った。


「目立つ武器を持っていた方が、相手が怯んでくれますよね」


守は完全につぶれた男の顔を見ながら答える。


「そうだな、その方が良いかもしれないな。

ただし自分や味方を傷つけないように取り回しには気を付けてくれ」


「はい、大丈夫です。

俺、剣道やっているので」


今世の晴道は剣道三段の有段者だった。



Scene014【選択】



地下に侵入した四人。


晴道は中の花音に連絡をする。


(地下に侵入しました)

(貴方たちから見てドアは右端、目の前に一人、武器は所持していない。中央手前、銃を所持。左奥手前ナイフを所持、直ぐに投擲可能。私たちは中央奥)


晴道は小声で三人に伝える。

情報を聞き、守が即座に作戦を立てた。


「由美子がドアを蹴り開けてくれ。俺がドア前を無力化する。晴道と和也は即突入して人質の元へ。銃とナイフは危険だ、由美子は突入するな」


全員が頷く。


「GO」


由美子がドアを蹴り開けた。

守が飛び込み、目の前の男を一撃で昏倒させる。


続いて晴道と和也が突入する。

その瞬間、晴道は左奥の男が既にナイフの投擲動作に入っていることに気付いた。


千晴さんと花音は、僅かに離れて床に座らされていた。


一瞬の躊躇の後、晴道は花音の前に立ちふさがる。

しかし、男の放ったナイフの軌道は――千晴を向いていた。


(間に合わない)


そう思った瞬間、和也が千晴の前に立ちふさがる。


その瞬間から、晴道には全ての動きがスローモーションに見えた


和也の肩にナイフが突き刺ささり


和也が崩れ落ちる


銃を持った男が


引き金を引いたのが見える


銃口は確実に自分に向いていた


(簡単に避けれる)


(でも避ければ花音さんに)


そう思った瞬間


晴道は手にしていた日本刀を振り上げる


腕が重い


いや違った


加速した晴道の思考に


身体が付いて行っていないのだ


それを力ずくで動かす


肩が軋む


腕の筋肉が悲鳴を上げ破断する


指先の毛細血管が弾ける


(刀を離しては駄目だ)


晴道は気の力で血管と筋肉を修復しつつ


思うように動かない腕を振り下ろし続ける


そして銃弾の弾道を見極め


刃先の軌道を合わせる


晴道には刃先が銃弾に当たるのが判った


銃弾は運動エネルギーを相殺され


真っ二つになり床に転がる


ズッガーーーン


次の瞬間、部屋の中に凄まじい衝撃が走る


最高速で振り下ろされた刃先が音速を超え、

衝撃波ソニックウェーブを発生させたのだ。


引き裂かれた空気が一直線に男へと走る。

晴道の気が乗ったその衝撃波は、拳銃を握ったままの男を直撃した。


男は肉体ごと激しく壁へと叩きつけられ、背後のコンクリートに蜘蛛の巣状のひびが入る。


「M-Monster!!」


衝撃波の範囲は狭かった。

それから外れていたナイフ男が引きつった悲鳴をあげ、晴道に向かってナイフを投擲した。

渾身の力を振るった直後の晴道は、その反動で身動きができず、避けることができない。


その時――


「晴道!」


由美子が飛び出し、その軌道に割り込んだ。

抜群の動体視力と反射神経でナックルダスターを突き上げ、ナイフを正確に跳ね上げる。


しかし、ナイフ男はニヤリと笑った。

その一本目はただの囮。

男は僅かなタイムラグを置いて、二本目のナイフを既に放っていたのだ。

一本目を弾いた直後で、完全に無防備になった由美子の胸元をナイフが襲う。


ガツン、と硬質な音が響いた。

ナイフは新型防弾スーツに阻まれ、脇へと弾かれた。


「よくも晴道を!! それに痛かったわよーーーーっ!!」

由美子はその場から信じられない跳躍を見せると、ナイフ男の顔面に強烈な飛び蹴りを叩き込んだ。

男は次のナイフを構える暇もなく、そのまま意識を刈り取られて昏倒した。



「晴道!!」

「和也!!」


口の拘束まではされていなかった花音と千晴が、それぞれの名前を叫ぶ。


守がすぐに倒れた和也の元へ駆け寄り、肩のナイフを素早くチェックした。


「大丈夫だ、太い血管は切れていない。

だが引き抜く時に傷つける可能性があるから、医療班が来るまでこのままにするんだ」


「晴道、大丈夫?」


ナイフの男が完全に動けないのを確認した由美子が、心配そうに戻ってきた。


「ああ、大丈夫だ。

少し無理をしたけれど、もう治癒しているよ」


晴道がなんでもない風に言った。


「これが『少し無理した』ってレベルか?」


守が呆然と呟く。

晴道が放った衝撃波は、コンクリート壁を大きく陥没させていた。

その中心で完全に壁にめり込んでいる男を見つめながら、守は

(死んでいなければ良いのだがな……)

と、心の中でただ祈るばかりだった。


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