ep005:その潜入、規格外につき
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Scene011【作戦会議】
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やがてバンは停車し、作戦会議が始まった。
守が図面を差し出す。
「これが奴らのアジトだ」
「ここまで用意されているって事は、
この計画を把握していたって事ですよね」
晴道が問う。
「ああ、奴らが姫さまを誘拐する計画を立てていたのは分かっていた。
だから、この新型の防弾スーツも準備していた」
守はふと由美子に目をやる。
「それで、そのスーツを何故由美子が?」
晴道の疑問はもっともだ。
それには由美子が答えた。
「私が気の扱い方を守さんに教わりに行ってたらね、
試着してみてくれないかって言われたの」
「まあ、うちにも女性隊員はいなくはないのだが、
姫さまと体格が似ている者がいなくてな」
「えっ、由美子は花音さんより背は高いけれども……」
守はふと目を逸らす。
「胸元とかどうかって」
由美子がそう言った。
((まぁ、うんそうだよな))
晴道と和也は納得した。
由美子の胸元はその、見事に盛り上がっていたからだ。
「そのスーツはうちが出資している、
アメリカの研究機関が開発した物で、
柔軟性と強度を兼ね揃えている。
その薄さで、ナイフの刃も通さず、
拳銃程度の弾丸も防げる。
もっとも運動エネルギーを相殺する訳じゃないから、
衝撃は伝わり、直撃すれば骨折ものだろうがな」
「すっごく動きやすいのよ」
由美子がそう言って身体を動かすと、
その豊かな胸元も柔軟に動くので、
晴道と和也の視線は釘付けになるのだった。
「それで、その試着中に奴らが動き出したと情報が入り、緊急出動したんだが」
「由美子が付いてきてしまったんですね」
「だって、晴道が被害あうかもしれなかったから……」
「うん、ありがとう」
「では、図面見て貰えるか。
建物の周りは4mを超える塀で囲まれている。
だから逆に監視カメラの死角を使えば、
接近しても中から気付かれる心配はない」
そう言って守は図面の一角を指さした。
「この塀から攻める。
中には番犬が放たれているが、
麻酔銃で素早く無効化しよう」
そう言う守に晴道は簡単に言い放った。
「それは、俺がなんとかできると思います。
黙らせれば良いんですよね」
「分かった任せよう。
後は彼女と姫さまが何処に監禁されているかだが、
部屋の配置から考えて……」
「攻め込まれるまでに時間が稼げる場所。
この地下室か、3階ですね」
和也が答えた。
「ああ、そうなるな。
建物に入った後、いかに素早く敵勢力を無効化し、
気付かれずにその場所に行けるかが鍵となる。
みんな図面は頭に入ったか? 作戦を開始しよう」
守の掛け声と共に作戦は始まった。
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Scene012【侵入】
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作戦への参加は、晴道・由美子・和也・守と、
別の車で駆けつけた隊員四名の計二チームとなった。
各チームがそれぞれ、地下と三階を目指す。
「では、侵入を開始する」
守がかぎ爪の着いた縄を振り回す。
「本当にそういうのを振り回すんですね。
俺がやっても良いですか?」
晴道が変なところで感心する。
「空気銃式とかも有るんだがな、
信頼性と命中度を考えると、これの方が良い」
守は晴道が振り回すのかと思い、かぎ爪を渡しつつ、
「これでも、中々、鍛錬が必要……」
「よっ、と」
晴道はロープの付いたかぎ爪を手に、
軽々とジャンプをして塀の天辺に手を掛け、
自らを持ち上げた。
「ここに引っ掛ければ良いですね」
晴道はそう言うと、軽々と内側へと飛び降りた。
そして、由美子がもう一個のかぎ爪を持って続く。
「あーん、晴道待ってよ。――和也兄さん、お願い」
「はいよ」
その意図を正しく理解した和也は、
壁に背を向け、中腰になり手を組む。
「はい」
掛け声と共に由美子が駆け寄り、
和也の手に足を掛ける。
「せいや!」
和也が腕を振り上げ、
由美子が完璧なタイミングで飛び上がる。
由美子は軽々と塀の上に着地し、
かぎ爪を掛けると向こう側に飛び降りた。
「俺は二人みたいに行かないので」
和也はそう言うと、助走をつけて飛び上がる。
そして易々と、半分以上の所に足を掛け、
ロープを掴んで壁を駆け上がった。
「だから、垂直高跳びのギネス記録は1.7m、
助走をつけても1.8mなんだぞ……」
守は呆然と呟いたが、
気を取り直して隊員たちにはっぱを掛ける。
「さあ、俺たちも行くぞ」
守は掛けられたロープを使い、
それでも素人が見れば飛び上がったのかと思うような速度で壁を駆け上がりながら、
(普通なら『女子供に負けているんじゃないぞ』と言うところだが、もうそんな存在じゃないな)
そう思った。
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壁を飛び降りた晴道の周りには、
すぐに番犬が近寄って来た。
獰猛なドーベルマンだ。
晴道は全ての犬が集まるまで待ってから仕掛ける。
(痛い目に遭いたくなければ、隠れていろ)
気にその言葉を乗せて放ったのだ。
気に乗る言葉は別に日本語なわけではない。
もっと根源的な物だ。
それは人間の言葉では通じない動物にも届く。
ドーベルマン達は文字通り、尻尾を丸めて逃げ出して行った。
それを壁の上で見ていた守は、もうため息しか出なかった。
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全員は素早く建物に張り付く。
「後は二人が地下か、上か」
「聞いてみますね」
晴道はそう言うと、強い気を放った。
(花音さん、助けに来ました。何処ですか?)
(地下よ、階段から二つ目のドア。千晴さんも居るわ、二人とも縛られている。部屋の中には三人、ナイフ使いと、銃を持っている奴が居るの)
晴道は周りにそれを伝える。
「信じるしかないな。
後はそれ以外にどれだけ居るかだが」
守の呟きに答えたのは和也だった。
「そこの入り口前に二人。
一階は後、奥に一人。
二階は無人、三階に二人
地下はその三人だけのようです」
「どうして分かるんだ?」
守の疑問はもっともだが、
「今、晴道が放った気に反応したからです。
でも何か気づいた者は居ないでしょう」
和也さんは当然という感じで言い放つのだった。
それを聞いた晴道は思った。
(あれは、和也さんが前世で自ら名付けた“恋域索敵”と同等の力。流石は和也さん、今世でも変わらぬ力を持っているんだ)
その時、和也さんから小声が聞こえた。
「よし、この力を“気脈探知”と名付けよう」
それを聞いた晴道は思った。
(流石は和也さん、今世でも変わらないんだ)
そして突入を前に高まり切っていた緊張が少しだけ溶け、肩の力が抜けたのだった。
(和也さん、ありがとう。みんなの緊張を解く為に、敢えて口にしてくれたんですね)
晴道がそう感心した、次の瞬間。
(あっ、口に出していた。恥ずかしい……!)
そんな心の声が聞こえてきた。
(流石は和也さん。今世でも、思ったことをすぐ口にしてしまうところは変わらないんだ)
晴道は自分を差し置いて、そう思ったのだった。




