ep003:その監視、公私混同につき
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Scene007【企み】
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「それじゃあ、私はしばらく晴道の観察を続けるわ」
「分かりました、それではその間、実働部隊の指揮は守に任せる事としましょう」
私は一族を束ねる象徴として首を務めている。
戦闘力としては、守には及ばない。
気を扱う能力も、里の冬美には遠く及ばない。
私は里の代表として、顧客との折衝をやっていれば、
里の運用は廻るのだ。
「例の件、進めておいて。
政府への借りを使っても良いわ」
「そこまでしてで、有りますか」
爺やは驚きに目を見開いた。
「あら?電話やメールでなく、直接、しかも資料すら残さず報告してきたのは爺やですよ」
うん、けっして晴道が気になって仕方ないとかじゃないから、違うわよ。
「それ程に、あの少年の事が気になりますか」
爺やの顔に揶揄いの色が浮かぶ。
「そっ、そんな事は無いわよ、私は単に里の代表として・・・」
「はて、爺やは”里への脅威”としてという意味で話したのですが、姫さま”どういう意味で”考えておりますのやら」
爺やは私を本当の孫のように育ててくれた。
きっと全てお見通しだ。
私は顔が赤くなるのを隠せなかった。
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私は晴道の観察を続けた、隠れてではなく堂々と
幾度か千紗ちゃんや由美子ちゃんとデートをしている時に、顔を出すと
「花音さん、暇なんですか?」
と晴道に呆れられた。
暇なんで失礼な、”晴道を観察する”という立派な任務を遂行中なのよ!
それにしても、晴道ったら千紗ちゃんや由美子ちゃんとデートしすぎじゃ無い?
未だ15歳よね?
私なんてもうすぐ誕生日なのに、男の人とデートなんてした事ないのよ!!
と思っていたら、4月に入ってすぐ、晴道から呼び出された。
先日遭遇した、駅前のカフェ。
晴道は先に席に着いていた。
「晴道、貴方から呼び出すって何かしら?
携帯の電話番号はお父さんから聞いたの?」
「はい、そうです、ごめんなさい急に連絡してしまって。」
「別に構わないわよ」
これってデートの待ち合わせみたいじゃない?
私はクールに答えている積りだったが、頬が熱くなるのを抑えれなかった。
表情を隠すなんて草の基本の基本技術なのに、私は晴道の前にいると
すっかり調子が狂ってしまう・・・
「あの、これ」
晴道は真っ赤なバラの花束を差し出してきた。
「えっ、これは?」
そう戸惑う私に晴道は当然とばかりに答えてきた。
「だって、今日は花音さんの誕生日じゃないですか!!」
えっ、あっ、そうだった
「本当はデートにでも誘いたかったのですが、
未だ出会ったばかりでぶしつけかなと思ったので、
これが俺の気持ちです」
晴道はそれだけを言うと席を立って帰ってしまった。
彼からは伝わってくる気には恥ずかしそうな感情がこもっていた。
こんなのって私だって恥ずかしいわよ!!
でもデートはしてみたかったな・・・
しかし今の私には、晴道を呼び止める勇気は無かったのだった。
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晴道の観察の中で、千紗に3つ上の兄がいる事を知った。
なぜ報告しなかったのか爺やに問い詰めると、
「はて、姫さまは晴道殿にしか興味が無いのかと、
上嶋和也殿の報告にも全く興味がなさそうでしたし。
今も楽しそうに、晴道殿を観察し続けているようすでし。
先日など、花束を貰って、もう浮かれまくっていたと聞きましたぞい」
「なっ、なんでそんな事まで」
「守から、随一報告を受けております故に」
まっ、守、今度覚えていらっしゃい!!
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Scene008【驚愕】
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それから1週間程して、私はある場所で紹介される順番を待っていた。
「それでは、次の先生を紹介いたします。
こちらの先生は皆さんと同じく、今年度からこの本校に所属しました。
新入生の皆さんはご存じないですが、昨年度まで古文の授業を担当していた先生が産休に入られた為、その代理として授業を受け持っていただく”一ノ瀬花音”先生です」
呼ばれた私は、体育館に並ぶ高校新入生たちの前に立った。
「みなさん、初めまして。
一ノ瀬花音と申します。
私は今まで古典文学の研究を行っておりました。
こちらの学校にて、産休に入られる先生の代理が見付からず困っていると聞き、代理を務めさせていただこうと名乗り出させていただきました」
嘘。本当は産休に入るのはまだ先の話だったのを、年度初めの切りが良い時期の方がいいと説得して、無理やり入り込んだのだ。
「教職に就くのは初めてです。
新入生の皆さんと同じく、フレッシュな気分でやっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します」
教職に就くのは初めてどころか、教員免許だって持っていなかった。
まぁ、そんな物は政府に頼めばなんとでもなるし、
そもそも古典を教えるのに私以上の適任者なんて、
日本中探してもそうそういないでしょうしね。
私は新入生の中、一人驚愕の表情を浮かべている晴道を見付け、
その瞳に向けて、にっこりと微笑んであげるのだった。
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私が割り当てられた準備教室の整理をしていると、一人の生徒が訪ねてきた。
当然、晴道だ。
「花音さん、これって一体!?」
「言ったでしょう、あなたの事を監視するって」
「だからって、先生にまでなるなんて……」
困惑している晴道が可愛いから、ちょっと揶揄ってあげる。
「あら? 私の授業を受けるのは嫌?」
それに対して、晴道ははっきりと答えた。
「いえ、先生の授業は大好きなんで、凄く嬉しいです!!」
あまりにも真っ直ぐな答えと視線に、私の方こそ戸惑ってしまい、
誤魔化すようにブラウスのボタンを上から外していった。
「か、花音さん! 何やってるんですか!!」
「えっ? 晴道の視線が胸元に来ているから、巨乳が消えた理由を知りたいのかなって」
「いえ、確かに気になっていましたが……って、何言ってるんだ俺。
それはともかく、学校の中ではそんな事止めてください!!」
真っ赤になって声を上げる晴道。
「あら、二人っきりの時なら良いのね」
「もちろんです。
たっぷり見せて貰いますから」
うっ……まさかのカウンターの反撃を喰らった。
恥ずかしさのあまり何も言い返せず、ブラウスのボタンすら上手く嵌められなくなってしまった。
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やがて授業も始まる。
授業は至極真面目に進めるわよ。
ちょっと、いやかなり、晴道を贔屓しているのはバレバレみたいだけれども、
”私の論文を晴道が中学生の頃に英語の原文で読んでいて、それがきっかけで顔見知りだった”
と説明したら、みんな納得していた。
うん、嘘はついていないわよね。
そんな日々の中、私はいつ晴道がデートに誘ってくれるのかと心待ちにしていたけれど、流石に教師と生徒ではそんなきっかけもなく。
三ヶ月が過ぎようとする7月になって、ある大事件が有った。
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