四話 一匹狼と不在の呪術師
「ボクはイヤだ!悪魔と暮らすだなんて冗談じゃない!!」
「気持ちはわかるけど実際これが一番安全なんだよなぁ……」
ラージュ達勇者パーティーはリヴェルの要求をのみ、ある程度の自由を許可した。そして、その場にいなかった最後の転生者にリヴェルを紹介していたところだった。
中学生くらいの少年は叫ぶように言う。
「……っ!!悪魔だぞ!?危ないだろ。」
「な!?危なくないのだ!ワレは約束を守るのだ!!」
「まぁまぁ、落ち着いて二人とも。」
メリーは落ち着いて二人をなだめたが、本音は少年と同じだった。
本当にこの悪魔は信用できるのか。全員が心の奥底では疑っている。でも、リヴェルの提案した方法が一番お互いにとって都合がいい。
彼は下を向き、少し考えてから「部屋に戻る。」と言い、去って行ってしまった。
「追わないのか?」
「……一人にさせるべき。」
リヴェルの言葉にシルディアが答える。
「そうか。」と返事をしたリヴェルは気になっていたことを問いかける。
「一ついいか?」
「なんだ?」
「あいつは、あの時の獣人……だよな?」
勇者パーティーのパーティーメンバーは全部で5人。
勇者兼剣士のラージュ・アルティネス
治癒師のシルディア・クラーク
暗殺者のメリー・フォーランド。
そして近接戦闘を得意とする獣人と後衛の青年。
これが魔王城に来た時のメンバーだ。
しかし、一つ疑問がある。
「あの獣人、女ではなかったか?なぜ性別が変わっているのだ?」
「オレが知ってるわけないだろ。」
「むしろこっちが聞きたいわねぇ。」
性別が変わる、なんて魔法は聞いたことがない。それに、彼女を彼に変えても誰にとってもメリットもない。なぜそうなったのかも、なぜそうしたのかもわからないという状況だった。
「あ~でも、一つ仮説があったな。」
「仮説?」
「ああ、あいつ、ガルシアは拳闘士だ。魔王戦で殴る蹴るだけで戦えるほどの身体能力を持っていた。だから、女性より力のある男性の体じゃないといけなかったんじゃないか?っていうな。」
「それだったらラージュが太ってるのはおかしい。」
「おい、シルディア!」
拳闘士ガルシア。身体能力の高い獣人の娘。
そして、現男子中学生。
「む?これで全員か?」
「ええ、そうね。」
「呪術師の男はどうしたのだ?」
「……さあね、どうせ、どっかほっつき歩いているのよ。きっと……。」
メリーは長いまつ毛を伏せて言う。どこか、そうあってほしいという願望が隠せていない、暗殺者にあるまじき態度だった。
「そう、か。」
リヴェルは短く返事をする。
リヴェルは幼いが、ただの子供ではない。魔王の娘であり、50年近く生きた悪魔だ。魔王に溺愛されていたから学べなかったことも多いが、それ以上に学んだことも多い。
シリアスな場面にピンポーンと、なんとも気の抜ける音がした。
「な、なんなのだこの音は?敵襲か!?」
慌てるリヴェルに追い打ちをかけるように、インターホンごしに声が響いた。
『千結~、いる~?遊び行こ!』
「……わかった、すぐ行く。」
インターホンから聞こえる学友の声にシルディアは返事をする。
「ちゆ?なんだ、なにが起こっているのだ!?」
混乱するリヴェルをおいてシルディアはカバンを取り、ラージュとメリーに一声かけてそそくさと出て行った。
「あ~、と、まず千結って言うのがシルディアのこっちの世界での名前だ。フルネームが天草千結な。オレが天草優輝。メリーが天草冥。ガルシアは大狼ロウだ。とりあえず外ではこっちの名前で呼んでくれ。」
「え、あ、え?チユ、ユウキ、メイ、ロウだな?あ、なぜガルシアだけアマクサじゃないのだ?」
あ~、と言いながら濁そうかどうしようかラージュが悩んでいる間にメリーが説明する。
「ガルシアはね、養子として引き取られたらしいの。で、苗字を変えなかったから大狼のままね。」
「ヨウシ?それに、らしいとはなんだ?お前たちの事だろう?」
「養子は、そうねぇ。血はつながってない大人と親子として生きている子供、だと思ったらいいわ。らしい、と言うのは、実際に経験してないからかしら。」
「経験してない?どういうことなのだ?」
「いずれ話すわ。今ここで説明してもめんどくさくなるだけでしょう?」




