五話 消失の謎
魔王は頭を抱えていた。ある日突然娘が行方不明になったからだ。
子供っぽいいたずらっ子のような一面もあるリヴェルだが、超えてはいけない一線には触れないどころか近づかない、しっかりとした一面もある。
それに何より、リヴェルが自分の意思でここを離れるはずがない。絶対にない。
そうだ誘拐だこれは。大切な愛娘を奪おうとした変質者はこの手で叩き潰さねば。そんなクソカス野郎、生かしておくわけにはいかない。
もしかしたらリヴェルがいなくなった時に現れた侵入者がなにか関係があるかもしれない。普段ならその場で殺すが、なぜか殺せなかった正体不明の刺客を閉じ込めている檻へと向かう。
「魔王様!」
「なんだ」
話しかけてきた配下にも雑な対応をする。今は気が立っているんだ。許してほしい。
配下は冷や汗を流しながら言う。
「それが、その、お嬢様が行方不明になった件について気になることがありまして……」
「手短に言え」
「はっ!!それが、その、お嬢様が行方不明になられたと思われる時刻に、お嬢様が通られたかもしれない廊下で光る何かをみた、と言っている者がいまして……。魔法の類かと思ったのですが……」
魔王は顎に手を当てて考える。
「魔法……外部から魔法が入り込むとは考えられん。おそらくリヴェルが魔法の練習をしていた所、それが暴発したのだろう。リヴェルなら転移系の魔法も使えるかもしれない。何が何でも探し出せ!」
「でも、普通歩きながら魔法の練習しますかね?」
「やかましい!さっさと探し出せ!!」
「は、はい!!承知いたしました!!」
* * *
「誰だって大切な者の身に何かがあれば冷静さを失う、ですか。ほんと、その通りですね。」
従者服を身にまとう青年は薄汚い檻の中で手錠につながれていた。
青年は独り言を言う。だれにも届かない言葉だが、なんとなく口に出したかったのだ。
「私は役目を終えられましたか?私は皆さまの役に立てたのでしょうか?」
「私は早まったのでしょうか、」
「私はどうすればよかったのでしょうか」
「ついて行かなくてはならなかったのでしょうか」
「私はまた、皆さまと笑えるのでしょうか?」
「皆さまは笑えていますか?」
「ラージュ様、シルディア様、メリー様、……ガルシア様、イヴァン様、……」
青年は手を伸ばす。が、手錠がジャラジャラと音を立てて彼の行動を拒んだ。それでも手を伸ばす。手錠が手に食い込み、血が流れても手を伸ばす。
その先にあるのは小さな宝石だった。エメラルドのような緑の宝石だった。ただの従者にはふさわしくない程、美しい宝石だった。それに触れたとたん、力が抜けて、意識が薄れて行った。




