騒ぎの収まった村で (4)
私の切実な心の叫びをよそに、両親の追及は続いた。けれど、世界は私に意地悪ばかりするわけではないのか、曇り空からひとひら、ふたひらと雪が舞い落ちてきた。
ただでさえ除雪が不十分で、松山へ降りるには一苦労するこの場所で、再び雪が降ってくれたおかげで、私は苦しい説戦をなんとか切り抜けることができた。
もちろん、週に一度は必ず実家に帰ること、今日はこの家ではなく近所の家に泊まること、そして最後に、一週間以内に「彼氏」と一緒に住むこと、という不当な条件を突きつけられはしたが。
それでも、実家が物理的に滅びてしまうよりは、不利な条件で契約を交わす方がはるかにマシだ。なんとか両親を送り出し、悪い意味で騒がしかった家に静寂が訪れた。
「ああ、疲れた……死にそう」
時計の針は正午を過ぎたばかりだというのに、なぜこれほどまでに体が重いのか。
このまま横になって一眠りできれば最高なのだが、残念ながら、昨日起きた出来事はそれほど単純なものではなかった。
(まずはジンのところへ戻って様子を確認して、おばあちゃんに御人形様について聞くべきかしら。何か知っているかもしれないし。昨日は着替えもせずにベッドに上がったんだから、洗濯も掃除もしなきゃ……田舎暮らしって、なんでこんなに忙しいのよ)
頭の中でやるべきことを整理した私は、まず早く終わることから手をつけようと立ち上がった。手早く洗濯と掃除を済ませ、遅めの昼食を摂るために台所へ向かう。
何もないだろうという予想に反して、冷蔵庫の中はおかずでいっぱいだった。母が詰めていってくれたようだ。
「もう……大変なのに、こんなことまで……」
積み重なったおかずの山を見ると、さっきまで突っぱねていた自分が申し訳なくなった。私のことを心配してここまで来てくれたというのに、あまりにも子供じみた振る舞いをしてしまった気がする。家に着く頃に電話をして謝ろう。
「やるべきことリスト」に「両親への連絡」を追加した私は、本当に久しぶりに母の味でお腹を満たした。簡単な用事はすべて片付いた。
(さて、ジンの服を着替えさせて別棟の掃除をしてから、おばあちゃんに御人形様の話を聞くのが……いいわよね?)
ジンとは円滑なコミュニケーションが取れないので、彼との対話は極力減らしたい。できることなら顔を合わせる機会も減らしたいが……それは不可抗力というものだろう。
午後の計画をまとめた私は、短く深呼吸をしてから玄関の扉を開け、別棟へと向かった。
「ジン、遅くなってごめんね。家の片付けをして……え?」
別棟の扉を開け、いつものように挨拶を交わそうとしたが、ソファに座って私の挨拶を受けてくれるはずのジンがいなかった。ちょっと待って。彼、どこへ行ったの?
呆然とした目で空っぽのソファを見つめる。あるべき場所に、あるべきものが存在しないという事実に遅まきながら気づいた私は、当惑して周囲を見渡した。
がらんとした別棟には、不吉な静寂だけが降り積もっていた。
「ちょっと……靴も履いてないのに、どこへ行ったっていうのよ!」
どこかへ行くなら行くと言ってよ! というか、御人形様が家の外に出られるシステムだったの? 動けるとしても、普通は家の周りを徘徊するくらいが常識じゃない? 私の常識が間違っているの?
昨日の混乱を収拾する間もなく、新しい混乱が降りかかってきたせいで、頭がうまく回らない。当惑して瞬きを繰り返しながら、私は別棟を出て「やるべきことリスト」を更新した。
(落ち着いて。大したことじゃないわ。まずはジンを探すの。道は……雪に足跡が残っているかしら。できるだけ探してみよう。一人で探し回るとすれ違うかもしれないから、情報を知っていそうな人に聞けば……)
一見すると整った容姿の青年が、真冬に上着も着ず、素足で辺りを徘徊している光景を思い浮かべた私は、即座に110番通報されてもおかしくない刺激的な絵面であることに気づき、溜息をついた。
こうしている間にも、ジンは私から遠ざかっているかもしれない。
上着とスマートフォンを手に取った私は、ジンに着せるための服も一着持って外に出た。
人が頻繁に行き交う村ではないとはいえ、時間が経過してしまったせいか、ジンの足跡を見分けるのは困難だった。




