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御人形様と規則、そして対価 (6)




(な、なんなの……?)


彼は私を自分の腕の中に閉じ込めるように抱き寄せると、私の背中をぽんぽんと叩き始めた。幼い子を寝かしつけるような、ゆっくりと規則的な手つきだった。この状況で眠れると思っているのだろうか? そもそも、思考というものがあるのだろうか? この人形が何をしようとしているのか、本当にさっぱり分からな……。


(待って)


理解不能な状況の中、ふと一つの考えが頭をよぎった。最近よく見ていた夢。ジンが私の部屋に入ってきて、頬を撫でていた夢。最後の夢を見た時、私はジンに言ったのだ。頬ばかりいじってないで、布団に入ってきなさい、と。


(まさか……)


あれが現実で、ジン……いえ、御人形様は私の頼みに従っているのだろうか? あり得ないと思いながらも、そうでなければ現状を説明することができない。呆然とした顔で御人形様を見上げた私は、思わず彼に問いかけた。


「御人形様。もしかして……んぐっ」


私が口を開いて彼を呼ぶと、無機質な瞳で私を見つめていた御人形様が、突然私の口を塞いだ。突発的な事態に私が目を見開くと、彼は乾いた唇を微かに動かした。彼の口が初めて開いた瞬間だった。


『ジ、ン』

「……え?」

『ジン』


声は聞こえなかったが、彼は間違いなく「ジン」という名前を繰り返していた。これは一体……ああ。


「ジン……という名前の方がいいんですか?」


口を塞いでいた手を下ろしながら問い返すと、彼はこれまでの通り沈黙を守るだけだった。しかし、古来より沈黙は肯定と言うではないか。


「じゃあ、その。ジン様?」

「……」

「ジンさんと呼ぶのがいいですか?」

「……」

「えっと……ジンって呼んだ方がいい?」


三度も同じ質問を繰り返してようやく、彼は上げていた手を下ろし、再び私の背中をぽんぽんと叩いた。いや、さっき口を動かしたくせに、なぜ今回は何の反応も示さないのだろうか。


横になって背中を叩く行為もそうだ。最初から最後まで、彼について理解できることが何一つない。理解できる日が来たりするのだろうか。


(……疲れた、本当に)


こんな状況なのだから、絶対に眠れるはずがないという予想に反して、一定のリズムが繰り返されるうちに、じわじわと眠気が襲ってきた。普段とは違う、彼の温かい体も眠気を誘うには十分だった。


(……体が、なんで……温かいんだろう……?)


微睡みの中でも、そんな疑問が浮かんだ。耳を寄せている彼の胸からは、何の音も聞こえない。当然だ。


私と一緒に横たわっているのはプラスチックで作られた人形で、人形の体から音がするはずがないのだから。けれど、横たわっているのがプラスチックなら、なぜ体温があるのだろう。


私の体が冷え切っているから、相対的に温かく感じるだけなのだろうか。それとも、ふかふかの布団の熱がプラスチックの体まで温めているのだろうか。


私の常識の範囲では、理解できることは何一つない。理解できないことを考え続けても頭が痛くなるだけなので、思考を止めた。すると、本格的に深い眠気が押し寄せてきた。


私の呼吸が緩やかになったことに気づいたのか、ジンの手の動きもゆっくりになっていった。そこでようやく、彼が私の呼吸に合わせて背中を叩いてくれていたのだと気づいた。


(考えがあるのか、それともただの偶然なのか)


何にせよ、ここまで尽くしてくれるのだから、危害を加えることはないだろう。安堵感が心に宿ると、無防備すぎるほどあっさりと深い眠りに落ちていった。



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