第97話:墓穴を掘る
「なーんで安藤先輩がウチに来るんですか……」
「……伏見くんが心配だから」
「ちゃっかりエッチしようとか」
「……まぁありえない話でもない」
「ちょっと。ネバダ先輩。安藤先輩……こんなこと言ってますけど!?」
「大丈夫だ。俺は呪術誓約で童貞捨てれないから」
「ソレは聞きましたけどぉ」
「……呪術誓約?」
クネリ、と首をかしげて安藤先輩が問う。今日のご飯はカーマが作るので、俺はダイニングでコーヒーを飲んでいた。上がり込んだ安藤先輩も同様に。飯の材料は下校中に買ったし、今日は安藤先輩も泊っていくらしい。銃撃事件の犯人が俺を狙っていることに危機感を持っているらしいが、それ自体は安藤先輩に止められる代物では……まぁ無いわけではないか。
「呪術誓約ってオウスとかゲッシュみたいな?」
「そ、代償を支払うことで魔術を行使する裏技」
例えばエリの黒子迷彩がわかりやすい。美少女になる代わりに誰からも認知されなくなる。何かを差し出すことで何かを得る。
「墓穴効果って言ってな。一定のデメリットを提案することで、魔術で得られるメリットの実現性を高める呪いだ」
「魔術……って言ったけど」
「実際にエネルギー保存則を無視している意味では魔術だよ。その魔術に墓穴効果を取り入れると日本では呪術って呼称するの。俺は俺が一番大好きな人に巡り合うために、巡り合うまで童貞を捨てないと誓約をかけている」
「……ツクモ……さん」
話そのものは安藤先輩にもしてあった。あまり外聞は良くないが。
「……つまり伏見くんは……双子のお兄さんと……殺し合っていて……自分は化け物になって」
「今でもツクモを取り合ってる」
「……そもそも唯神教の教会……だっけ? ……化け物退治が出来るの?」
「そこが神威装置の面白いところでな。さっき言った墓穴効果だ。呪術誓約。神威装置が神敵と認定した存在と互角に渡り合う能力を得る代わりに、一般人には攻撃できないようになってるの」
「……それで伏見くんと……渡り合う能力を獲得して」
「だからじゃんけんみたいなものだ。一般人は化け物に弱く、化け物は威力使徒に弱く、威力使徒は一般人に弱い」
「上手く出来てるんだね」
「こっちからしたら傍迷惑も著しいが」
一般人に攻撃しないことを化け物殺しの言い訳にしないでほしい。
「……でも、……童貞を捨てないって」
「ツクモと巡り合うまではしょうがない」
「……拙じゃ……ダメ?」
「はーい! 今日は皿うどんです!」
ドン! と三皿を用意するカーマだった。もちろんエリの分は想定されていない。とはいえ買い出しの段階でソレは想定されていたが。
「別にツクモに出会わなくてもボクに童貞を捧げればいいんじゃない?」
「そう思えればいいな」
「ボクとしては何時でもウェルカムだからね?」
残念ながら今はまだ無理だ。
「……むぅ。……皿うどんは……食べにくい」
大皿から口に運ぶ類のものは難しいだろう。Pカップの超乳が食事と咀嚼のあいだに立ちはだかる。
「くぅぅ……さりげなくおっぱい自慢ですか」
「……純粋に困ってるんだけど」
「さぞ大きなおっぱいですからね!」
フンと拗ねて、皿うどんを食べ始めるカーマ。俺もモグモグ。
「じゃあネバダはエチチできないわけだ」
「性欲を発散するのに女性は必要ないから」
「ボクのことも?」
「そりゃエリは可愛いけどさ」
それとこれとは話が別というか。皿うどんを食って、そのあと皿洗い。エリもエリで余計に買っていた材料で皿うどんを作っていた。フライパンは後で洗うとして。
「……伏見くん」
風呂に入って、汗を流し、そのまま寝ようとすると。
「……伏見くん……その……ネバダは……童貞さえ捨てなければ何でもできるんだよね?」
「制約上そういうことになるな」
「……示威行為は大丈夫」
「制約上そういうことになるな」
「……拙を……使わない?」
「どうやって?」
「……ん……その」
もじもじとして、それから濡れた瞳でレアスは俺を見つめる。惚れている男に尽くしたくて仕方がない目だ。
「……その……これで」
と爆乳さえ超える超乳を下から持ち上げて、ポヨポヨと上下に揺らす。
「……挟んであげる」
「いいのか?」
「……拙が……ネバダにしてあげたい」
「そうか。じゃあ――」
「待ちやがってくださぁいッッ!!!」
俺が肯定しようとすると、バンッと扉が開けられ、中にカーマが入ってきた。
「嫌な予感がすると思えば! 何をしようとしているんですか!」
ナニ、って言っていいのか。
「どうしてここに?」
「虫の報せです!」
多分エリが告げ口したんだろうな。意識できないエリの忠告を聞かないふりをしながら言葉の意味までは違えない。
「挟むのなら私がしますから」
「ボクだってしてあげるよ?」
「……拙も」
順番に巨乳、爆乳、超乳だ。ここまで大きなおっぱいが揃い踏みというのもおいそれと見れる光景ではない。三人とも下着姿だったり彼シャツだったりとそれぞれだが、その御立派なものを隠せるほど安易な大きさをしていない。
「じゃあ全員でしようか」
「それは……ネバダ先輩を挟んで、ネバダ先輩のブツを挟むと?」
「したくない奴は不参加でいいぞ」
「「「…………」」」
まだジャージを履いている俺の股間を見て、カーマとエリとレアスがゴクリと唾を呑む。
「言うほど御立派なモノじゃないが」
「ネバダ先輩は謙遜が酷いです」
「皮肉というかなんというか」
「……拙的には十分なんだけど」
タユンと胸を揺らして、三人の乙女が俺に傅く。ベッドに腰かけている俺に服従するように床に膝をついた。
「それでは……させてもらいます」
「ボクの爆乳を味わって?」
「……拙ので……気持ちよくなってね」
そうして全員が満足するまで月は夜空に輝いていた。




