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第84話:闇のカルマちゃんガチ恋勢


「闇のカルマ氏! 赤いカラーリングが三倍というネタを知ってござるか!」


 夏休みはかき入れ時。相も変わらずキモオタ(俺を含む)の相手をしているカーマは、まさにプロのメイド。嫌な顔一つせずキモオタに付き合っている。


「うーん。美味い」


 プロが淹れたわけじゃないインスタントであろうメイド喫茶のコーヒーを飲み、俺はそんな一言。そもそも味を味覚で分析するような高度な舌は持っていないので、素人が淹れたコーヒーでも俺は美味いと思ってしまう。


「闇のカルマちゃん。萌え萌えケチャップアートをお願いするでござる!」


「わっかりましたー。ではご主人様に誠心誠意ご奉仕させていただきまーす」


 まさにプロの仕事。何のプロなのかは俺もよく分かってはいないが。


「ご・しゅ・じ・ん・さ・ま?」


 店内でコーヒー三杯で粘っている俺は、それはそれは面倒な客だったろうが、それに文句を垂れるわけでもなく、闇のカルマちゃんは俺にニコッと微笑んでくれる。


「お茶のお代わりは如何ですか?」


「じゃあコーヒー。ブラックで」


「えー? 私の混ぜ混ぜサービスは要らないんですか?」


「じゃあミルクだけ追加で」


「承りましたー。誠心誠意ご奉仕します」


 そうして四杯目のコーヒーを頼んで、店内をちょっと探る。


「やはり闇のカルマちゃんは神。あの愛らしさは違法ですらある」


「ロリ巨乳だよなー。あれで高校生っていうのは詐欺が過ぎる」


「しかし中学生はバイトできないでござろう?」


「というかあのおっぱいは中学生が持てるモノじゃないはず……」


 注文を厨房に持っていったカーマの不在を狙って、性的な議論でカーマこと闇のカルマちゃんを批評する二人組の客。どう考えてもローティーンなのに、あんなご立派な胸を付けているだけで彼女の年齢は容易に測れない。まぁ俺は彼女が高校一年生であることを知っているのだが。


「はーい。ご主人様。コーヒーだぞ。ミルクを混ぜ混ぜさせてもらいます」


 キュンと童貞を勘違いさせそうな振る舞いをして、闇のカルマちゃんは俺のコーヒーのミルクを入れる。


「ミルクって牛のか?」


「やだもー。他に何のお乳があるんですかー?」


「いや、ほら、色々と」


「出禁食らいたいんですか?」


 結構真面目に怒られた。


「とはいえだ」


 俺がここでコーヒー四杯で粘っているのにも理由はあって。


「じゃ、お疲れ様でしたー」


 カーマがシフトを終えて店を出る。俺も合わせて会計を済ませ、コーヒー四杯とは思えない金額を請求されたが。まぁそれはよく。


「せーんぱい。送ってくださてありがとうございます」


「どうせ帰る場所一緒だしな」


「先輩と同棲してますもんね。私」


「同居だ」


「同じでーす」


 そんなわけでカーマと二人駅まで歩いているわけだが。


「つけられているな」


「ストーカー……ってことですか」


「可能性は無いではない」


 そもそも闇のカルマちゃんは可愛すぎるので男から見ても魅力的だろう。だから何ってのが俺の意見だが。


「もっしもーし。お兄さん。街角アンケートにご協力ください」


「出来れば財布の中身とか教えてくださると嬉しいでーす」


 ベタというかなんというか。二人のチャラ男が俺に絡んできた。髪を染めてピアスをして、パンクなファッションまでベッタベタだ。


「金が欲しいなら働け。クズども」


「やー。恐いなーお兄さん。正論では人は救えないんだよ?」


「なので献金お願いしまーす」


 言った瞬間、俺のみぞおちに膝蹴りが入った。


「がッッ」


 呼気が逆流する。俺はそのまま腹を抑えて倒れ込んで、その頭部を蹴られた。


「先輩!」


 俺が不死だと知っているカーマにしても座視は出来なかったのだろう。だが関わっても損をするだけだし、そもそも俺は問題ない。


「あっれー。そっちの子、超イケじゃん。俺らと遊ばねー?」


「こんなクソザコナメクジ、一緒にいてもつまんないでしょ? お兄さんたち経験豊富だよー?」


 女と見ると孕ませるしか考えられない生物。ソレを男だとカーマは言った。現状況で考えると否定できないのが俺の悲しいところ。


「ま、待てー!」


 そうして倒れている俺の頭を踏み潰して、悦に入るチャラ男二人にかかる声。勇気を振り絞って声をかけた……つもりなのだろう。痛いオタクがこの場に介入した。まぁ痛いオタクは俺も一緒だが。瓶底眼鏡にランダムのビームセイバーみたいなリュックサックに差してあるポスター。もはやこっちもテンプレをなぞっているのか聞きたくなるベッタベタなオタク。


「闇のカルマちゃんに手を出すことはまかりならん!」


「は、てめーもこのクソザコナメクジの二の舞になりたいのか?」


「可哀想になぁ。楯突いていい存在かもわからないバカはこうやって地べたを這いつくばることになるんだよ」


「たとえそうだとしても! 引くわけにはいかん!」


 好きな女子の前でカッコつける、というとベタかもしれないが、確かな勇気がクソオタにはあるように見えないことも無く。


「どうしても闇のカルマちゃんに手を出すというのなら! 先に拙者を殺してみせろ!」


 ビシィとチャラ男二人を指差して勇気の宣言。だがチャラ男どもは肩をすくめて、俺の頭部から靴底を離した。


「ち。白けるぜ。解散解散」


「そこのオタクに助けられたな。クソザコナメクジ」


 そう言ってチャラ男たちは去っていく。


「先輩!」


 倒れている俺に寄り添うカーマ。そのカーマに声をかけるオタク。


「だ、大丈夫だったかい!? 闇のカルマちゃん!」


「ええ、私は……。助けてくださりありがとうございます……」


「なんの。こんなことでよければいつでも助けになるよ。拙者は闇のカルマちゃんのナイトだからね」


 ナイト、ね。


「それよりそっちの男性は……?」


「あ、先輩……」


「ああ、大丈夫。ケガは快癒した」


 コキコキと首を鳴らして俺は復活する。


「貴殿! 何者だ!」


「田中三郎。夢を追うフリーターだ」


「先輩……」


 個人情報を提供する気のない俺の名乗りに、カーマがジト目になる。


「では田中氏! 君に闇のカルマちゃんは相応しくない! 即刻離れろ!」


「でもバイト帰りの送り迎えは必要だろ?」


「それは拙者がやる! 実際に闇のカルマちゃんをさっき救ったのは拙者だ!」


 喪武タロウと名乗る彼は、俺にそう言って宣戦布告してきた。


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