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第59話:安藤先輩の誘い


 時間もそこそこ過ぎ。銃弾で撃たれたアキラも無事退院。ケガの原因は黙秘として。月影の女神が学校に来ないことで、意気消沈していた男子も数多く。結果恋堕の天使が告白されまくり。その全てを叩き落として、恋堕の天使こと須藤カーマは俺に好意を見せていた。そこに退院した月影の女神ことアキラまで加わって。イチャイチャしながら今日のエリのエッチ衣装はどんなだろうとワクワクしている俺がおり。今日のエリの衣装は水着だった。泳ぐわけでもないのに、開放的な水着を着ていてちょっとエッチ。前のV字水着ほどじゃないが、それでも彼女が水着を着ると普通にエロイ。


 ところで阿久津は捕まっていない。どこかに隠れているのだろう。学校にも来ていないし家にも帰っていないらしい。ソレでどうやって生活しているのかは知れないが。


「先輩。お昼食べましょ?」


「ネバダくん。お昼……」


「ネバダ。ボクとチュッチュしよ?」


 しません。というわけで学食へ。そもそも米糠高校の学食はバリエーションが多すぎる。こんなもの頼むのかと言わんばかりのメニューが揃っている。ので南蛮漬け定食を頼む。マジであるんだから偉いというかなんというか。


「…………」

「…………」

「…………」


 周囲の視線を集めているのも俺のプレッシャーに加えられている。あの月影の女神と恋堕の天使が俺と一緒に飯食っているんだから思うことの五つはあって。なんであんな冴えない奴と学内最高位の美少女たちが、みたいな。


「で? ネバダくん?」


「はいはい」


 アジ南蛮を食べながら、俺は答える。学食は広く、利用者は多いが、席は埋まっているわけでもなく。金をかけているというかなんというか。


「私を助けてくださった……ですよね?」


「何のことだ?」


「救急車に乗った時には既に私の傷は塞がっていたそうです。つまりネバダくんのおかげですよね?」


「アキラ先輩怪我してたんですか?」


 だから入院したんだろうが。黙秘事項だが。


「何をしたんですか?」


「傷を治した」


「どうやって」


「お前の銃傷に唾液を流し込んで」


「?」


「?」


 まぁ意味不明だろうな。


「俺の唾液には怪我を癒す能力があるんだよ」


「へー…………あ……先輩のそれって……」


「お前がアキラに刺された時もやった」


「なるほどー」


 唾液を流し込んで怪我を癒し、結果アキラにしろカーマにしろ生き返らせたわけだ。


「じゃあそういうことが先輩には出来るんですねー」


「俺の前で死なれても困るしな」


 だからお前らも刺し合うのは止めろよ、と言いたかったのだが。


「じゃあカーマを刺しても大丈夫ですね」


「俺はお前のこと嫌いになるけどな」


「ネバダくんは意地悪です」


 そういうお前はヤンデレすぎる。そうして昼食を終え。そのままグダグダ。


「じゃ、お疲れ様でしたー」


 担当教諭の解散の一言で今日の学業は終わり。俺はエリを連れて文芸部室に。


「失礼しまームギュ」


 で、安藤先輩に抱きしめられた。


「先輩?」


「……ちょっと我慢できなかった。……常闇さんと須藤さんと仲良くしてるから」


「おっぱいが当たっているのですけど」


「……当てているんです……でいいんだっけ?」


 まぁベタなヒロインならそんなところでしょうな。


「……伏見くんは……嬉しい?」


「嬉しくないはずも無く」


「……ねえ。……伏見くん。……夏休み初日は暇?」


「そもそも夏休みに予定が無いんですが」


 悲しいキャラだ。俺らしいとも言える。


「……じゃあ初日は……拙の家に来て」


「何をするので?」


「……ナニしてもいいよ?」


 そっかー。何してもいいのかー。


「そのドスケベボディで歓待してくれるんですか?」


「……もちろんだよ。……拙は伏見くんのために……ドスケベになったんだよ?」


 その責任を俺に押し付けるのは……うーん。まぁ嫌いじゃないけど。ドスケベ。


「……伏見くんが言ったんだよ? ……拙のおっぱい好きって」


「そりゃそれだけ見事だと否定する要素もないような」


「……気持ち悪いって言われたから」


 心無い言葉だな。


「……だからね。……拙にはネバダくんだけ。……ネバダくんがいればいいの」


 別に俺じゃなくても、とは言わなかった。彼女にとっては慰めにならないから。であれば俺に出来るのは。


「悲しかったな。安藤先輩」


 ギュッと抱き返すくらい。ジトーッと俺を見ているエリにはこの際ツッコまないとして。


「……愛してる。……伏見くん」


「俺もですよ。安藤先輩」


 そしてチュッとおでこにキスをして、それで俺たちは離れた。俺と安藤先輩のムツゴトをアキラとカーマに見られるわけにもいかないし。安藤先輩は、俺のことを好きだというのは二人だけの秘密にしておきたいらしい。


「先輩! 新しいプロット考えてきたんですけど!」


「私が先です。ネバダくん。新しいプロット……」


 お前ら。俺は創作AIじゃねーぞ?


「先輩の手で私と先輩の甘い一夏のアバンチュールを描いて欲しいんです」


「私とネバダくんのドスケベラブコメを描いて世界中に発信しましょう」


 もうすでにドスケベではあるように思うが。エリとか水着着ているし。


「あ、プロットではアキラ先輩はライバルキャラですからね」


「私のでは須藤さんは悪役キャラですけど」


 お互い思考が一緒らしい。


「……ねえ……伏見くん……この時の魔法の設定だけど」


「そこは因果律の崩れから世界に流入した魔力が……」


 で、俺にアイデアを聞いてくるのは安藤先輩も一緒だ。ただし俺とのラブコメを書いていない時点でアキラやカーマよりはちょっと良心的。とはいえ彼女の理想の男性キャラが微妙に俺の特徴と被っているのは、この際ツッコまないとして。


「魔法使う時の制限についてだけど……」


「誓約のスティグマによる覚醒段階を設定して……」


 一番創作に真摯なのは安藤先輩だろう。彼女の勤勉さには頭が下がる。勤勉じゃないけど。趣味として小説を書くのはいいが、それでも作品を発表して続けられるだけでも大したものだと言える。やっぱり好きだけじゃやれないけど、好きじゃないとやれないと思うし。


「そしてこの時性的に興奮した先輩は――」


「あ。ダメ……。そう言った私の肩をネバダくんが掴んで――」


 アキラ。カーマ。創作でマウント取るの止めないか。


「とりあえずお前らはラブコメから離れてファンタジーのプロットを持ってこい」


 そしたら代筆も一考してやる。


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