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第49話:学内問題


「失礼しまーす」


 で、俺が休日の職員室に顔を出す。休み返上で働いている聖職者には頭が下がるが、此処でその仕事を増やすのは、俺の本意であって。


「ああ、伏見か。なん…………だ…………?」


 まず真っ先に担任に報告すべきだろうと、その席に顔を出す。いない可能性もあったが、誰に訴えても同じなので、とりあえず一番顔を知られている担任を指定したのは必然というか。


「どうした!?」


 頭から多量に出血して、ホラー映画さながらに出血ペイントを施したような俺が現れれば、そりゃ普通は驚く。


「さっき五名の生徒に襲われまして。全身金属バットでボコボコに」


 あっはっはーと笑いながらそういう俺に、泡を食った感じで、担任は言う。


「襲われたのか!? ていうかその出血で無事なのか!?」


「鍛えてますんで」


 金属バットで頭部を殴られて、筋肉がどういう風に関係するかはこの際議論しないとして。


「ちょちょちょ。待て! とりあえず救急車!」


 焦っている担任の空気は周囲にも伝わる。そうして流血が垂れている俺の顔を見て、職員室の全員がドン引きしていた。事情は聴きたいが、まずは俺の治療。というわけで、慌てて養護教諭を召喚。応急処置を施して、救急車へ。救命隊員も俺を見てドン引き。そのまま輸血と、ケガの治療を簡潔に行い。病院についたら医者も驚いて、そのまま俺の意識を確かめ、治療。とはいえすでに怪我は癒えている。流れた血の量にしては軽傷。そういうわけでMRI検査を受けて、脳にも支障無しとなった。付き添った担任の教諭と、担当している医者に事情を聴かれて、俺はスマホで砂漠谷エリが撮っていた証拠画像を提供する。男子生徒五名が、俺を金属バットでボッコボコにする動画。顔までバッチリ映っているので言い逃れは無理だろう。動画で見るに手加減している様子でもないし。医者も「よく無事だったね」と驚いている。この動画を見て、血を流してはいるが脳に異常が無いというのは奇跡的だと思ったらしい。そもそも無限に再生するのでバットくらいでは死なんのだが、それはそれとして。


 俺の状況が落ち着くと、入院を勧められたが、異常も無いので俺は辞退した。だが医者も引くわけにはいかなかったのだろう。せめて一日だけ、と言われて、経過観察も兼ねて一日入院することに。


 担任の教諭は学校に連絡。五名の生徒に関して議論することに。別に俺はどうでもいいのだが。


「ネバダ先輩!」


 同居しているカーマに、今日は帰れんというと事情を聴かれて。誤魔化すことも出来たが、今更だなぁとも思って。桃缶を買って見舞いに来いというと、マジでカーマは桃缶を買ってきた。


 俺は頭部を包帯で巻いて、そのままベッドに横たわっており。ケガなんて数分で快癒しているし、その事を誰よりカーマは知っている。俺が不死身であることを知っているのはカーマとエリだけだ。


「どうしたんですか?」


 なんと話したものか。


「詳しいことは後でな」


 アキラと安藤先輩には連絡していない。言うまでもないだろというか。言っても面倒になるだけ。


「さて、君たち」


 一日検査入院。そのあと月曜日に登校。俺は即座に校長室に呼ばれた。さすがに学内で刑事事件が起これば、校長も座視できない。というか、場合によっては役職解任もありうる。朗報なのは俺の保護者がおらず。俺の舌先三寸で立件しないという選択肢もあり得るという話だけ。


「伏見くん」


「はい」


「証拠動画は見せてもらったが……君を殴ったのはこの五人でよかったかね」


「間違いないですね」


「「「「「…………」」」」」


 既に証拠動画は精査され。言いわけの余地なく、五人は断罪の時を待っていた。


「何を思って伏見くんを?」


 重々しく聞く校長。


「そ、そいつが悪いんです!」


 悲鳴を上げるように一人が俺を指差した。


「何か伏見くんに不手際が?」


 さらに追及する校長。


「伏見が調子にのってるから!」


「そもそも発端は伏見の挑発にあり!」


「っていうか風紀違反だろ!」


「常闇さんと須藤さんとイチャイチャしていて!」


 言い訳にしてはきついな。


「つまり……」


 そうして考えるように校長は思索して。


「あの月影の女神と恋堕の天使とイチャイチャしていて、伏見くんが気に食わなかったから……暴行をした……と?」


「そ……れは……」


 まとめるとそうなる。俺が女子とイチャイチャしていたので気に食わなくてやった。そう言う風にしか取れない。


「でも挑発したのは伏見からです!」


「だから殴っていいとはならんのだよ。学則でも刑法でも……」


「だ、だって……」


「君らがやったことは殺人未遂だ。伏見くんが起訴していないから警察が動いていないだけで、学校としては頭が痛い問題だ」


「ごめんなさい!」


「処罰は受けます!」


「悪気はなかったんです!」


「反省文も書きます!」


「だからどうか!」


 頭を下げる五人。


「伏見くんはどう思う?」


「この後警察に連絡するつもりです」


 ヒラヒラーとスマホを見せる。いち、いち、まる、と番号を打てば即座に通報。五人は青ざめた。


「やめてくれ! お願いだ!」


「いや、そもそも通報は義務だ。ここで警察に連絡しないと学校側に迷惑がかかる」


「そうだな。さすがにこれはシャレで済むレベルを超えている」


 校長も同感らしい。


「まさか私も還暦を迎えずに校長を辞する事態になるとは思わなかったよ」


「すみませんね」


「君のせいじゃない。全てはそこの馬鹿どもだ」


「ちょ! 待って! コイツピンピンしてるじゃん!」


「そもそも怪我してねーのに俺らに罪なんて!」


「学校側も問題起こしたくねーんだろ!?」


 そういう問題か?


「じゃあネットにアップするか? あの動画」


「「「「「ッッッ!」」」」」


「で、どうして俺を殺そうと?」


「それは――――――――」


 まぁ大体分かってるけど。そうして五人の退学処分が決まった。そのことはニュースになり、学校側が会見を開き、校長は自らに減俸処分を下すことで社会的に決着を見る。


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