表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/66

第48話:邪魔を排斥する意思


「どもっす」


 で、土曜日の休みの学校。その目の届かないところ……となると、この前もちょっとだけ利用された屋内プールの陰。水泳部は今日もを利用しているので、いやらしい視線を阻止するために屋内ではカーテンが敷かれていた。その建物の陰まで呼び出されて、俺は一人の女子を見かける。見たことのない……というか記憶にない女子だ。俺を見て怯えてさえいる。


「ええーと。呼び出したの君?」


「はい。そうです。そのー」


 何かを言いたいが、何も言えない。そう言う感じだった。


「ご、ごめんなさい!」


 で、俺は告白していないのだが、いきなり謝罪されて女子生徒は駆けだして、去っていった。


「?」


 と思ったら、屋内プールの陰から男子生徒が現れた。計五名。前に三名。後ろに二名。全員が金属バットを持っており。それでホームランを打とうというにはこの場はあまりにそぐわず。そもそも女子を使って俺を呼び出して、そのままバットを装備している時点で警察の案件な気はするのだが。


「笑えるぜコイツ。女に呼び出されてノコノコ来やがった」


「告白を期待してたかー? 残念でしたー」


「ちょ。マジ笑える。告白どころか逃げられてるし」


 それはお前らのせいじゃね?


「ということはお前らが俺に用か?」


「ああ、ちょっと教育的指導をな」


 ヒュンと金属バットを振って、肩にかける。全員武装しているわけで。このままだと中々難儀なことになる。とはいえ非暴力主義としては、穏便に解決したいのだが。


「教育的指導」


「お前ちょっと転校してきてから調子乗り過ぎ」


「月影の女神と恋堕の天使と関係を持つな」


 ああ、そういう。


「とは言っても俺からコミュニケーションはとってねえぞ?」


「あ? 自慢してる?」


「アイツらから関わっているという事実がお前らに不快なら……自慢かもしれないな」


「お前。マジで月影の女神と恋堕の天使がマジだと思ってんの?」


「笑える。勘違いの童貞って厄介だよな」


 そうなんだよ。童貞って厄介なんだよ。虚しいなぁ。俺。


「じゃ、そういうことで」


「逃がすわけないだろ。月影の女神と恋堕の天使に関わるのを止めろ。ほら言ってみろよ。クズのボクには過ぎたる幸運ですってな」


「クズのアイツらには過ぎたる幸運だな」


「あ? 今、月影の女神と恋堕の天使をクズって言ったか?」


「俺に惚れて簡単な奴らだよなー」


 挑発するように俺が言うと、ザワッと五人の殺意が高ぶった。


「とりあえず、だ」


 俺は言う。


「俺からアイツらとの関係は終わらせないよ。関係が無くなるとしたら、月影の女神と恋堕の天使が俺に興味が無くなったときじゃね?」


「地獄が見てえようだな……?」


 ギラギラと嫉妬の目で俺を睨みつけるチンピラども。


「調子のってるよなぁ? 月影の女神と恋堕の天使に気に入られて王様気分か?」


「ま、可愛いところあるよな」


 俺がそう言った瞬間、ガンッ! と高等部をバットで殴られた。視界の中で火花が飛ぶ。俺は不死身だが、それは再生能力が異常なだけであって、殴られれば痛いし、頭に衝撃を受ければ眩暈も起こす。


「テメェ如きが触れていい女じゃねえんだよ! 月影の女神と恋堕の天使は!」


「この童貞野郎! 死んで思い知れ」


 そして五人のチンピラがバットで俺をボコボコにする。もちろん俺は抵抗しない。殺す手段は無いではないが、別に殺す程でもないだろう。どうせバットで殴られた程度で俺が死ぬわけないし。


「ねえ。殺しちゃダメ?」


「ダメだ」


 俺とチンピラ五人。そこに加えてもう一人。俺以外に知覚できない女子が存在していた。


「この! クソが!」


「思い知れ!」


「ははっ! やっぱ雑魚だな!」


「調子のってるからこういう目に合うんだよ!」


「死ね! 死ね! 死ね!」


 倒れた俺目掛けて、容赦なく金属バットを振るう。そして何度も叩いて。


「…………」


 俺が物言わぬようになったら。


「「「「「…………」」」」」


 神妙な空気が周囲に降った。


「……おい?」


 俺に呼びかける声。


「…………」


 俺は答えない。


「ちょ……ヤバくね?」


「もしかして死んでんじゃ……」


「おい。ジョークだろ? 早く目を覚ませよ」


 かすれた声でチンピラどもが焦る。


「やべえ。やべえよ……」


「俺は知らねえぞ! そもそも責任ねーし!」


「お前らがやろうって言ったんだろ!」


「ああ!? そういうお前こそ!」


「とりあえず救急車……」


「ふざけるな! そんなことしたら警察が!」


「やべーって! 俺知らねえ!」


 バットを捨てて一人が逃げ出す。それに合わせるように他の面々も逃げ出した。残されたのは頭から血を流している俺と、さっきまでのいきさつを動画に撮影していたエリだけ。


「だ、大丈夫なの?」


 頭から血が流れているが、まぁ頭蓋骨もひびが入った程度だし。打撲くらいの傷は一分もあれば快癒する。


「それはそれでどうかと思うけど」


「不死身でネバーダイだから伏見ネバダなんだよ」


「それって自称?」


「まぁ。役所にもソレで通ってるし」


「で、これからどうするの?」


「職員室だろーなー」


 あくまで再生するのは俺の怪我の部位であって、流した血はそのままだ。俺のおでことかこめかみから普通に流血の跡はあるし。状況証拠としてはまずまずだろう。ついでにエリが動画で証拠を残しているので、アイツらに無実を訴える余地はない。


「殺していいんならボクが殺すんだけど」


「生憎と非暴力主義だ。俺は」


「それって損な生き方じゃない?」


「だから不死身なんだよ」


「?」


 ま、別に非暴力主義についてここでトクトク語るわけにもいかないし。ムズムズした額を腕で拭うと、腕に血がついた。うーん。笑えないが、これも有力な証拠か。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ