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第47話:虚構の恋


「今度の土曜日、時間をくれませんか?」


 靴箱を開けるとレターが入っていて、そこには指示の場所と時間が書かれていた。土曜日は学校は休みなので、登校する意味はないのだが。文芸部の活動も何やかやあって、顔を出すのはいいとしても。これって。


「愛の告白?」


「多分男どもの陰謀じゃない?」


 そんなこと言ってたな。レターを読みつつ、そうして一日が終わり。つつがなく土曜日へ。朝、目を覚まして俺は朝食をとると、同居しているカーマに「出かけてくる」と書置きして外へ出る。駅まではすぐそこ。電車は毎日動いているのに、電車の運転手さんは元気な不思議。そりゃ休み返上で運転しているわけでもないので当たり前だが、コンビニといい電車といい休みなくインフラが運営されるにはされるだけの理由がある。


「ちーす」


 土曜日の学校。米糠高校。時間まで結構あるので、俺は文芸部に顔を出した。そこには安藤先輩がいて、難しい顔でキーボードを打ってる。色々と俺がクリエイティブの感性に傷をつけたのは詰られたが、意図的じゃなかったのよ。


「小説は書けてるか?」


「……そこそこ」


 高嶺の唯華は文芸部室が最も執筆が進むらしい。


「……今日は来ないと思っていた」


「来るつもりはなかったですけどね」


 実際に用事が無ければ来るつもりはなかった。昨日呼び出しのレターを貰ったので、そのせいだ。


「……また伏見くんがバスケするところ見たい」


「バスケ小説でも書くのか?」


「……バスケ部のイケメンとの……ラブコメ」


 そもそもバスケについてどれだけ描写が出来るのかって話だが。


「あと俺はイケメンじゃねえ」


「……ご謙遜」


 有難い評価だが、マジで自覚無いんだよなー。


「……ほら。……二人きりだから。……愛し合おう?」


「俺以外にもしているのか?」


「……伏見くんだけ……特別……拙の特別」


 俺に抱き着いてハァハァと息を荒くさせる。俺にハグするだけで性欲が高ぶるらしい。別に否定されるべきことではないが、なんというか。


「……不思議。……伏見くんに触れると……ドキドキする」


 それが恋じゃねーの? 自覚なのは安藤先輩も一緒か。


「……恋?」


「好意的ではあるんじゃないか?」


「……拙は……伏見くんに……恋してる?」


「じゃあ仮の設定を考えよう」


「……?」


「俺が他の女子とキスしているとどう思う?」


「……不快」


「俺が安藤先輩とキスしていると?」


「……嬉しい」


「安藤先輩が他の男とキスできる?」


「……無理」


「つまりそういうことじゃない?」


「……拙は……伏見くんに……恋してる」


「俺も好きだぞ。安藤先輩のこと」


「でも月影の女神と恋堕の天使が……」


 まぁそこは懸念点になるよな。


「……ボソボソ(あいつらとは遊び。本命は安藤先輩だから)」


 耳元で誰にも聞こえないように囁く。その言葉を聴覚で受けて、ビクビクゥッと先輩が痙攣した。


「……本当ぉ?」


 で、俺を蕩ける目で見て、安藤先輩は俺に酩酊する。唇がつやつやに濡れて、そのままキスしてしまいたい。


「そりゃアキラとカーマともイチャイチャはするけどさ。心は安藤先輩のものだから」


「……うん……信じるよ。……伏見くんは……拙が好き」


「学校で二人とイチャイチャするのは多めに見てくんない? ほら、正妻の余裕とかそういうので」


「……大丈夫……伏見くんが裏切らないなら……拙は我慢できるよ?」


「イイ子イイ子」


 官女の青色に輝く黒髪を撫でる。可愛い女の子だ。


「愛してるぞ。レアス先輩。世界で一番愛してる」


「……伏見ぃ……しゅき♡」


 そうして俺をハグして、抱きしめたまま発情する。俺は何を言うでもなく彼女に抱かれたまま。俺の太ももに股間を擦りつけて、彼女は性欲をクールさせようとするが、それも無理だろう。喘げば喘ぐだけ、彼女の性欲は高ぶっていく。


「……伏見ぃ……ネバダぁ……しよ♡」


「すまんがこの後予定があってな。人に会うから出来んのよ」


「……女の子?」


「一応女子からの呼び出し」


「……嫉妬」


「可愛いな。レアスは。好きだぞ」


 彼女のおでこにキスをして、俺はニッと笑う。


「簡潔にフッてくるから、そこは安心してくれ」


「……その女の子はどうとも思ってないの?」


「だってレアスが愛してくれるんだぜ? あの高嶺の唯華が。もう他の女いらないだろ」


「……ネバダぁ♡ ……だいしゅきぃ♡」


「俺も好きだぞ」


 さらに耳元で囁く。ビクビクゥとまた痙攣する。


「……ふわ」


「逝ったか?」


「……ちょ……ちょっとだけ」


「ナニも触っていないのに。レアスは敏感なんだな」


「……ネバダにハグしていると全身が敏感になって」


「嬉しいか?」


「……ネバダの匂い凄く良い。……興奮する」


「体臭はそんなにないんだが」


「……なんかフェロモンでも出てるんじゃ」


 可能性は否定できんな。アキラもカーマもなんか俺といると変だし。


「……ネバダ……好きって言って?」


「大好きだぞ」


「……ッッッ!」


 さらに痙攣する安藤先輩。


「……拙の……拙だけのネバダ……拙を愛してくれるんだよね?」


「世界で一番好きだ」


「……拙もぉ♡ ……ネバダが一番しゅきぃ♡」


「相思相愛だな」


「……ネバダぁ……月影の女神と恋堕の天使とは遊びだよね?」


「お前がナンバーワンだな」


「……えへー……拙もネバダがナンバーワンだよぉ♡」


 さて、そろそろ指定された場所に行くか。誰が待っているかなんて、聞くまでもないことだが。俺にを抱きしめて、俺の体臭を嗅いで、発情している安藤先輩には悪いが、さすがにここでセクロスすると呼び出しの際に支障が出る。南無三。


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