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第44話:デートと暴力と


「じゃ、行ってきまーす」


 そうして休日。六月も中旬。梅雨にはなっているが、今日は生憎と快晴で。俺は今日はアキラとデートの予定があった。そのアキラとは駅で待ち合わせ。今日は無難に映画でも。既にチケットは取っているので、見る者は決まっている。アメリカで人気のヒーロー映画だ。


「アキラ先輩ばかりズルいです」


「つけてきても分かるからな?」


「ハエの使い魔で監視してるんだよね?」


「そ。お前らの動向は逐一監視している」


「じゃあその監視下でオナニーしたら勃つ?」


「勃つかもしれんが、襲うのはアキラだぞ?」


「大丈夫です。そしたら私がアキラ先輩を刺すから」


「お前、アイツが好きなんだろ?」


「アキラ先輩神ってますよねー」


「じゃあな」


「エッチしちゃダメですからね!?」


 しないから安心しろ。


 そうして家を出て、駅まで。相手との待ち合わせ。これってもうデートだよな。デートだけども。とか思っているとガチコーディネートしているアキラがナンパにあっていた。俺はまだ駅についていないので、ちょっと走る。そうして辿り着くと。


「いいじゃん。彼、まだ来てないんでしょ? なら俺らと一緒しようぜ」


「お茶奢るからさ。ソイツに見切りをつけて」


「俺らの方がいい目見せてやるぜ?」


 軽薄を絵に描いたようなナンパ男ども。


「はい。そこまで」


 そして俺がポンポンと肩を叩いて、相手をいさめる。


「なんだぁテメェ?」


「その子のデート相手」


「は、軟弱な奴じゃねーか。じゃあお前から言えよ。『男としての格が違うから俺よりこのお兄さんたちとデートしなさい』リピートアフタミー」


「頭悪いんだな。可哀想に……」


「ああ? 頭が悪いだぁ?」


「盛りのついたサルみたいに女をナンパして、男を嘲るように唾棄する。頭が悪い以外の評価があるか?」


「テメェ!」


 あっさりと挑発に乗る当たり、中々短絡的な御仁で。


「オラァ! オラァ! はは! ザマアねえな! 男として劣ってるぜ! お前!」


 俺を殴って、そのまま馬乗り。そうしてさらに殴ってくる。だが俺は抵抗しない。非暴力主義は相変わらずだ。


「何してるの! 君たち!」


 そうして警察がやってきて、場は収まる。というかこの前も警察にお世話になったし。なんか縁でもあるんだろうか。


「違っ! そいつが! 俺たちを挑発してきて!」


「俺たちは悪くねえ!」


「そもそもそこの女が俺たちに声をかけてきて!」


 とはいうものの。既に彼らの暴力は駅を歩いている人間のスマホのカメラに映っており。一方的に殴っている動画は証拠映像として警察に提供された。


「じゃあ映画行くか」


「え、でも先に病院に……」


「ああ、気にすんな。ケガもないだろ?」


「ホントですね……」


「これでも結構不死身だったりするので。殴られるくらいじゃ俺は問題ないの」


「治癒力が高いってことですか?」


「ま、そうだな。その感覚で間違っていない」


「便利ですね」


「実際助かっている面もあるしな。それより映画だ。もちポップコーンも買うぞ。やっぱりヒーローものってテンション上がるよなー」


「ネバダくん、ヒーローが好きなんですね」


「俺自身非暴力主義だからさ。逆に暴力で解決するヒーローって憧れるんだよ」


「なんで非暴力主義に?」


「秘密♪」


 ウインクして唇に伸ばした人差し指を当てる。然程御大層な理由でもないし。自慢できるものでもない。


「じゃ、いくか」


 そんなわけでデートを開始。映画を見て。昼飯食って。会話して、服を見て。そのまま楽しいひと時を過ごした。デートの最後は喫茶店でお茶をして。俺はコーヒーを。アキラは紅茶を頼んだ。


「ねえ。ネバダくん」


「なんでっしゃろ」


 俺はアイスコーヒーを飲みながら、アキラの会話を聞く。


「正式に私と付き合わない?」


「謹んでごめんなさい」


「なんで? 私じゃ……ダメなの……?」


「月影の女神が可愛いことは否定しないよ。お前だったらアイドルにもなれると思う。ただ、俺がカーマを刺したことに何も思っていないと思われても困る」


「だってあんな泥棒猫……要らないでしょ? 私とネバダくんの間には」


「おっぱいはアイツの方が大きいしな」


「おっぱいで女の子を選別するの?」


「いや。可愛い方がいいが、出来れば純情な方が好み」


「私純情だよ?」


 ある意味な。


「ネバダくん以外の男に色目は使わないし。それにネバダくんに一途だし。ネバダくんを裏切ったりしないし。ネバダくん以外には抱かれないよ?」


 付き合う前提で話を進めるな。


「代わりに俺も拘束するんだろ?」


「しないよ。しないよ。ちょっとスマホを見せて貰うのと、女のアカウントを削除するのと、一日十回愛してるって言ってもらうだけ」


 重いんだよ。それ。


「で、俺と仲良くしてる女子は?」


「地獄に行ってもらう」


 良くそれで許可が下りると思ったな。


「とにかく私はネバダくんが好き。ネバダくんは?」


「今は返事保留」


「キープ?」


「そ。キープ。なんで、いつでも見限ってくれて構わんぞ」


 そもそもこんなとっさのことで人を刺すようなヤンデレにお付き合いを求めるのは勇者かバカだけだ。俺は不死身だから刃傷沙汰に耐性があるだけで。もし一般人だったらすでにカーマに刺された段階で死んでいる。持っててよかった不死の身体。


「カーマのことが……好きなの?」


「いや?」


「でも同棲してるんでしょ?」


「アイツ両親がいないのよ」


「そうなの?」


「で、生活費用がカツカツらしくてな。せめて部屋代を浮かせるために、って転がり込んできただけ」


「でも……男女が同じ部屋にいたらやることは一つでしょ?」


 アイツ男にアレルギー持ってるから、その懸念は不毛なのだが。中々上手くいかないね。


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