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第43話:闇のカルマちゃん


「お疲れ様でしたー」


 そうして今日のバイトも終わり。メイド服を脱いで、帰宅用の服に。それから裏口から退勤してカーマは駅へと向かった。


「あー、先輩? バイト、定刻で終わりましたー。もう駅いますか?」


 いるぞ、と答えて、それから俺の監視用のハエがストーカーを察知していた。つけられているぞ、とカーマに忠告。そうして俺は駅からメイド喫茶へと歩き出す。すれ違うことはあり得ない。とりあえずカーマの安全優先で。


「や、や、闇のカルマちゃん……ッ」


 で、俺と合流するより早く、ストーカーはカーマに接触した。目が血走っており、何を考えているのかはわかりやすいくらいわかっている。


「よ、夜の帰宅は危ないよ。拙者が送ってあげる……」


「いえ。遠慮します」


 キャピ、と愛らしい笑顔を見せて、その行為を袖にするのだが、それで納得するキモオタでもない。


「だ、大丈夫。分かってるよ。闇のカルマちゃんは拙者のことを愛してる。せ、拙者はその愛を受け止める所存にござる」


「えー。お客様には真摯に対応しておりますが」


「わ、わかってる。わかってるから。拙者のことが大好きで仕方ないんでしょ? 拙者もだよ。拙者と闇のカルマちゃんは相思相愛。え、遠慮することは無いんだ。拙者が責任もって自宅まで送って差し上げる……」


「犯罪です♡」


 軽やかな笑顔で、カーマはギロチンのひもを切った。


「メイド喫茶でお客様に媚びを売るのは仕事ですし、ソレでガチ恋勢になられても文句は言いませんけど、流石にリアル凸はドン引きします♡」


「な、何を言ってるの? 闇のカルマちゃんは拙者を愛してるじゃないか。ああ、照れているんだね? 拙者の前じゃ素直になれないと」


「まったく興味がありません♡」


 キャピとまた同じように愛らしい笑顔を見せる。言っていることは公開処刑も同様だが。


「そんな……嘘だ……闇のカルマちゃんは拙者のことが好きで……愛してるって言ってくれて……だから拙者は……あああああぁぁぁぁ!」


 何やら脳破壊されているようだが、ここからの展開は読めるようだ。というか俺の却下ン視(サイドシーイング)ではまぁ想像がついて。


「裏切り者! 拙者をたぶらかして騙したんだな!」


「メイドとして接客しただけですよー?」


「ああああああ!」


 そもそもそんな物騒なモノを持ち歩くな、と言いたいがナンパオタクはナイフを取り出してカーマに襲い掛かった。座視する俺ではない。


「はい、そこまで」


 カーマ目掛けて振るわれたナイフを、俺の手の平が受け止める。ザシュッと刺されて血が流れて。それがソーシャルカメラに映っていることを確認。


「大丈夫か?」


「はい。先輩はいつも私を助けてくれますよねー。まさに王子様って感じです」


 だからそんな御大層なモノじゃなくて。


「ひ、は、ザマァ……ッ」


 狂っているような事態を認識していない顔でナンパオタクは俺を挑発する。


「ていうか痛くないんですか?」


「超痛いけど、慣れてるから」


 一応不死なので、痛い目には結構遭遇している。


「警察に連絡」


「あ、そうですね。逮捕して貰わないと」


「なんでだよ! 闇のカルマちゃんは拙者のこと大好きだったろ! 通報するならそっちの男だろ! 拙者と闇のカルマちゃんの恋路の邪魔をしたんだから! 訴訟ものだ!」


「ああ、私は先輩に憧れていますので」


「せ、拙者のことは……?」


「ロボット掃除機より興味ないです♡」


 軽やかにとどめを刺すカーマ。そのEカップの巨乳を俺に押し付けて、そのドスケベボディを見せつけるように俺におっぱいを擦りつける。童貞には辛い仕様。俺にとっても。見ているナンパオタクにとっても。


「ふざけるな! ふざけるな! 闇のカルマちゃんのおっぱいは拙者のだぞ!」


「既に先輩に捧げているので。このおっぱいはすでに私のモノじゃないんですよー。所有権は先輩にあって、私は先輩に望まれたらいつでもどこでもこのおっぱいを差し出すように命令される立場ですから」


「ドスケベだな。カーマは」


「先輩のアレを挟むならアキラ先輩より私の方が出来ますよ?」


「でもボクの方がさらに出来るけどねー」


 俺のシャツを着ているだけのエリがそう言った。俺のワイシャツだけを着ておりノーブラノーパン。俺的にも煽情的で色々と色々なものが元気になる。で、警察に連絡。ナンパオタクがカーマを刺そうとして庇った俺を刺した。それだけ言って、とりあえず開放。


「闇のカルマちゃん! 拙者を弁護してくれ! 拙者は悪い事してないだろ!?」


「警察の御厄介になってくださーい。アデュー♪」


「そんな! 闇のカルマちゃんはその男に騙されているんだ! そいつは闇のカルマちゃんのおっぱいが狙いの最低の男だ! 拙者は闇のカルマちゃんの全てを愛している! だから闇のカルマちゃんは拙者と添い遂げるべきなんだ! ここで運命の相手を失うつもりか!」


「いいからパトカーに乗れ」


 で、俺はと言えば病院を勧められて、はい、後で行きますとだけ言って解散。


 最後に砂漠谷エリがナンパオタクに囁いた。


「この後闇のカルマちゃんはあの男と滅茶苦茶セクロスするんだよ?」


 聞こえないはずの声。理解できないはずの言葉。だが無意識の底の底で、ナンパオタクはその言っている意味を認知できなくて。なのに分かってしまう、何かの絶望があって。闇のカルマちゃんを寝取られる。自分以外の人間に股を開く。そう思った瞬間にオタクの脳は破壊されていた。


「相変わらずエグイな。黒子迷彩って」


「Vなのだー!」


 ニッと笑ってピースサインをするエリ。ともあれ。


「こういうことはあるのか?」


「私は初めてだけど、無いわけじゃ無いらしいですね。メイド喫茶の店員にガチ恋して、ストーカーするのって」


「まぁ恋堕の天使はアイドルより可愛いしな」


「もしかして口説かれています? 私……」


 いきなりしおらしくなって、赤面している。こういうところは可愛いんだが。


「いや、一般論」


「先輩さいてー」


「だろ? こんな奴相手するのも損だぞ」


 俺がやれやれと、そう言うと。


「ちゅ♡」


 いきなり不意打ちでカーマがキスをしてきた。


「でもそんな先輩だから好き♡」


 だから俺は童貞なんだって。


「むー。ネバダ。カーマとキスした」


「お前とも結構してるだろ」


 それも内外問わず。エリに至っては授業がつまらないとか言う理由で、授業中に俺にキスをしてくる。一応黒子迷彩で誤魔化してはいるのだが。しかも毎度毎度エッチな衣装で誘惑してくるものだから、俺の理性も決壊寸前。


「カーマよりボクのほうがおっぱい大きいもんね!」


「なんでしょう。今私……誰かに失礼なことを言われているような」


 恋堕の天使より可愛くておっぱいの大きい誰かさんは今日も絶好調。南無三。


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