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第29話:アキラの自慢


「えへへー。格好良かったですよ? ネバダくん?」


 俺が体育館で練習試合を終えた後、そのままシャワーを借りて、体操服から着替える。と言ってもジャージなのだが。血塗れになっている学校制服はまだ帰ってきていない。


「普通自分のシュートミスからダンクに繋げますか!? センターより高く跳んでいましたよね!? アレってフィジカルですか?」


「まぁ運動は嫌いじゃないというか」


「なんで文芸部に?」


「あくまで好みは静かに本を読むことだからな」


 キラキラした瞳で俺を見るアキラ。その目が勿体ないと言っていた。とはいえ、本気で俺の意識は文系なのだ。体育会系はちょっと。


「ガチカッコよかったよ。ネバダってなんでそんなイケイケ?」


「カッコよかったのはいいんだが。そもそもお前は服を着ろ」


「下着姿でももう寒く無い季節だし」


「オッパイが零れそうだろうが」


「バストネックを見たいなら遠慮なく言ってね?」


 で、俺の両腕をアキラとエリが占領していて。もちろんアキラにエリのことは見えていないので、彼女を襲っている嫉妬の感情は何処から湧いているのか本人にもわからない。


「なんか……根拠ないですけど……ネバダくん浮気してます?」


「してません」


 そもそも恋人いないので浮気が成立しない。


「そーだよー。ネバダはボクが本命だから浮気じゃないよー」


 その声も意識上では意識できないのだが。


「ね~ぇ? ネバダぁ♡ キスしよ?」


「構いはしないが。アキラの目の前でか?」


「ドキドキするでしょ?」


 趣味が悪いというかなんというか。


「ん」


「んぅ♡」


 そしてアキラの目の前で俺はエリとキスをする。もちろんそれをガン見して、だが何が起こっているのか認知できないアキラ。


「なんだろう……今ネバダくんを見てドキドキしてる。恋だと思う?」


 寝取られの感情じゃないか?


「でも、気のせいですよね。今ネバダくんは私が独占しているわけですから」


「駅までは腕組んでていいぞ」


「家までお送りしますよ」


「むしろ俺が送る。アキラは可愛いから襲われる可能性もあるし」


「私……可愛いですか?」


「月影の女神……だろ?」


「ボクとどっちが可愛い?」


「エリ」


「えへー。大好きだよぅ♡ ネバダぁ♡ あ、おっぱい揉む?」


 御遠慮する。そして三人でイチャイチャしながら下校する。


「ネバダくん……私のこと好きですよね?」


「顔は好き」


「身体は?」


「服の上からなら評価不能」


「…………ここで脱げ、と?」


 言ってないから。そもそも既に下着姿で俺と腕を組んでいる超絶美少女がいる。


「ボクの方がおっぱい大きいもんね」


「ソレで張り合うと安藤先輩が一人勝ちなんだが」


「あそこまで大きくてもいいの?」


「限度はあるが、有難い気持ちにはなるな。菩提樹を眺めるような」


「信者に起こられるよ?」


 自重しよう。


「じゃあ下校デートですね。私を家まで送ってくれる……。あ、夕食食べていきますか」


「謹んでごめんなさい」


「遠慮しなくていいんですよ?」


「お前を見ているとちょっとな」


「何も企んでいませんってー」


 それが虚偽だと俺の却下ン視(サイドシーイング)が言ってる。夕餉に睡眠剤でも入れられる可能性がある。別に毒も効かないので、究極的にはどうでもいいのだが。


「ちなみに駅近くか?」


「都心の自宅ですよー。両親に感謝ですね」


 じゃああまり心配する理由も無いか。


「でもたまにはバスケもしてくださいね」


「カッコいいところを見たいからか?」


「ええ。超絶カッコいいです。マジ推し。私だけの王子様。私の好きピですから」


「付き合ってないけどな」


「好みじゃないですか?」


「とは言わんが」


 エリが圧倒的すぎる。月影の女神では勝負にならない。さすがに黒子迷彩を代償に得た美貌だ。その呪い的な美少女ぶりは俺にとって太陽の直視。


「ボクのことが好きだもんねー。ネバダはぁ♡」


「だな」


「おや、言葉にするのは珍しい」


「キスするか?」


「青姦してもいいよ」


 俺が捕まるから。そうして駅で電車に乗って、別の駅へ。そこから歩いて数分。アキラの自宅へ。都心の駅近に立っているが、そこそこご立派な邸宅。稼いでいるのだろう。


「送ってくださってありがとうございます」


「ここから俺のアパートまで一緒に登校するために待ち伏せているのか」


「意外と近いでしょ?」


 無理をしていないのは分かった。


「泊っていってもいいんですよ?」


「親御さんにどう説明する気だ」


「そこら辺は大丈夫ですけどね」


 俺の却下ン視(サイドシーイング)が、アキラに陰りを見た。親とは何かあったのか。


「じゃ、また来週」


「一緒に登校しましょうね」


「あー、はいはい」


「愛していますよ?」


「キスできるか?」


「できるよ!」


 エリ。お前には聞いてない。


「出来ればネバダくんから情熱的に奪ってくれると……」


 そんな少女漫画のイケメンみたいなことできるか。


「じゃ、チュ♡」


 俺はエリにキスをして。


「じゃあな」


 アキラとは何もしないまま帰る。その俺の背中を見送るアキラは、無意識下で下着姿のまま俺の隣に寄り添うエリを見て複雑な気分になっているらしい。


「愛されてるね。ネバダ」


「月影の女神が……ねぇ」


「ボクより好き?」


「お前の方が好きだ」


「実はパンツがちょっと濡れちゃって」


 ソレを俺に言ってどうしたいのよ。マジで。


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