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第27話:今日はベビードール


五月もそこそこに過ぎ中間テストが近づく頃。


「ヤー。衣替えの季節だね」


 ちょっと軽めの羽織っぽいシャツを着て、下はベビードールだけのエリがそこにいた。エロイというか、ここまでくれば痴女だ。下着姿で堂々と教室にいる様はまさに異常性癖。だというのに、その破廉恥を認識できるのが俺だけという不思議。


「えへー。ネバダ。ボクに欲情してる?」


「そうだな。超エロイな」


「お相手仕ろうか?」


「大丈夫だ。そもそもお前で欲情している自分に残念な限り」


「素直じゃないなー」


「ていうかベビードール姿って。そんなエロい下着どこで調達するんだ?」


「ランジェリーショップに売ってるよ? 買い物だってできないわけじゃ無いし」


 あくまで黒子迷彩は存在の解像度を下げているだけで、無意識での対応……レジの清算や席替えの処理、あるいは歩いていてぶつからないように避ける……などのことは普通に成立するのだ。だからその下着を買って俺に下着一枚で会おうとするその度胸がヤベーが。


 白い髪と赤い瞳。いるだけで男を堕としそうな絶世の美少女なのに、ソレを代償に誰にも認知されない彼女。その爆乳があまりにドスケベで、盛り上がりがハンパない。股間も色々とスケスケで童貞にはキツイ仕様。


「ネバダ。目がエッチ」


「童貞をからかうんじゃありません」


 ポス、と彼女にチョップして、窓際最後方の席に座る。


「ところで月影の女神とはどうなったの?」


「何やら惚れられているのは悟れる」


「応えるの?」


「あまり前向きではない」


「そりゃ惚れるよねー。ボクでも惚れるもん」


「お前は可愛いんだから、あんまり男に惚れるとかだな――」


 説教をかまそうとしたら、それ以上喋れなくなった。エリがキスをしてきて、俺の口をふさいだのだ。


「だぁーい好きだよ……ネバダ♡」


「俺に惚れるタイミングあったか?」


「眠り姫が王子様にキスされると惚れちゃうのは昔からの王道じゃん」


「寝てないだろ」


「でもボクを見つけてくれた」


「それはあくまで俺の目がいいだけで」


「だから、そのことにボクは救われているんだよ?」


「……………………勝手にしろ」


「うん。勝手にする。ネバダにおっぱいを押し付けて、ネバダとキスをして、ネバダとセクロスする」


「言っておくが、俺のアレは然程でもないからな」


「じゃあ見せて?」


「断る」


 俺にも恥という概念はある。アダムとイブが楽園を追放されたことにも意味はあるのだ。


「ネバダくん!」


 で、昼休み。隣同士で授業中イチャイチャしたまま、俺はエリと時間を過ごした。別に勉強は出来るし、授業を妨害されても問題はないのだが。


「何か?」


「お昼ご飯を食べましょう」


「じゃあ学食行くか。エリも来るだろ?」


「もち。券売機はボクを無視しないからね」


「ところで、そのー」


 アキラが何か俺を見て、不審そう。


「どうかしたか?」


「なにやら今のネバダくんを見るとイライラするんですけど」


 そりゃエロ下着だけを着た痴女が俺と腕を組んで、その肘にHカップの爆乳を押し付けていれば、恋する少女に思うところは三つはあるだろう。


「ちゅ♡」


 そのアキラをからかうようにエリは俺にキスをする。そのことを視認しても感知は出来ないアキラ。


「なんでしょう……なんでこんなに脳破壊されているので?」


「あぁん。ネバダぁ♡ ……そんな激しくおっぱい揉まないで」


 揉んでねーよ。というわけで俺とエリとアキラで学食へ赴く。月影の女神こと常闇アキラは学校では高名な存在。学内三大美少女の一人で、二年生代表に選ばれている乙女。で、付いたあだ名が月影の女神。月が陰るように儚い乙女を演じているかと思いきや。最近は俺にベタ惚れで、クラスが別だというのにちょくちょく俺にちょっかいをかけてくる。その事に不満を持っている男子も結構存在し、俺が刺されていないのは偏に言って日本の刑法のおかげと言っても過言ではない。


「担々麺でも食うか」


「私は肉うどんを」


「ボクはシチューがいいな」


「これ以上牛乳飲んでもおっぱい大きくならないだろ」


「ネバダ的には高嶺の唯華なみの大きさのおっぱいってどう思うの?」


「ある意味最高」


 俺とキスをするために、胸が邪魔になるというあの矛盾は、まさに至福のひと時で。俺の胸板におっぱいを押し付けて、押し潰して、ようやく俺とキスを出来るというあの難易度はまさに神。


「ボクくらい大きくても十分でしょ?」


「まぁお前も爆乳だしな」


 俺以外の誰にも見られていないけど。学生制服が多大にいる中で、俺は学校指定ジャージ。エリに至っては下着姿。それでもツッコミが来ないのは、ある意味で妥当。


「ほら、行きますよ。ネバダくん」


 その下着姿でバインボインと胸を揺らしているエリを認識しているのか。自覚は無いのだが、何故か二人掛けの席には座らなかった。理解はしていないが、どこかで知っているのだ。俺とアキラだけでなく、この場にはエリがいるということを。砂漠谷エリ。その存在が、彼女の心をかき乱す。


「その。朝は済みませんでした」


 そしてアキラが謝ってくる。朝、というのはつまりカーマにペンを突き刺そうとしたことだ。俺が手の平で受け止めたが、既にその傷も快癒している。それこそ一般人なら針縫い手術をするところだが、不死身の俺の再生力を持てば物の数分で傷痕もなく治癒する。


「本当に病院に行かなくていいんですか?」


「治ってるし」


 手の平を見せる。


「治癒力が高い……と」


「不死身だしな」


 信じてもらわなくていい。というか信じられないだろうと思って、俺は率直に事実を言った。


「不死身……ですか」


「中々難儀な浮世だな」


「次は優しいネバダくんがフォローできないくらい即決で須藤さんを殺しますから」


「傷一つでも付けたらお前を嫌いになるからな」


「え?」


 いや、そこで困惑は間違ってる。


「ちなみに朝のことって?」


「カーマが俺の部屋から朝帰りして、ソレに激昂したアキラがペンでカーマの目を刺そうとして、俺が左手で庇った」


「……………………アキラは殺していいかな?」


 お前までヤンデレになられると話がこじれる。


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